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埼玉県の導水路 ウィキペディアから
武蔵水路(むさしすいろ)は、利根川の水を荒川に導くための導水路。利根川水系に属する。埼玉県行田市の利根大堰で利根川から取水され、鴻巣市で荒川に注ぐ。全長は14.5 kmで、全体が開水路である[1][2]。管理者は独立行政法人水資源機構。東京都水道局の約4割、埼玉県企業局の約8割の給水エリアの水道水を送っている[3]。また、周辺地域の洪水や出水を取り込む役割(内水排除機能)を果たす[4][5]。1965年(昭和40年)、見沼代用水路の一部を使用して緊急送水を開始、1967年(昭和42年)、武蔵水路の工事が完成した[6]。2015年度(平成27年度)までに改築工事を実施(後述)し、これに伴い、一部区間で治水機能を新たに有したことから、2016年(平成28年)に利根川水系に属する一級河川に指定された[7][8]。
利根大堰からほぼ真南に流下し、鴻巣市糠田(糠田橋上流側)で荒川に注ぐ。
この水路で荒川に通された水は秋ヶ瀬取水堰から朝霞浄水場、大久保浄水場を経てそれぞれ東京都、埼玉県の広範な地域に上水道として供給し、首都圏の生活を広く支えている。
伏越(サイホン)を8箇所、流量調節堰を1箇所、水門を3箇所、放流口を6箇所、制水ゲートを5箇所備える。水門と放流口は、洪水時に周辺の中小河川などから水路へ内水を受け入れ、荒川に排水するために用いられる(内水排除機能)。
上流(利根大堰側)から順に掲載。
通水後35年以上を経て、水路沿線の地盤沈下と水路自体の損傷、そして老朽化が大きな問題になった[11]。地盤沈下については、国道125号を潜る行田市の長野サイフォン付近、最下流の鴻巣市糠田地区の区間で特に著しい。地盤沈下により、水路の沈下・変形、底板隆起や側面パネルの欠損などが発生し、このため本来ならば毎秒50立方メートルの導水機能を有していながら、毎秒40立方メートル以下の水しか導水できないという機能不全の状態に陥った。併せて耐震性の低下や不足も指摘された。大規模地震が発生し、この地域で予想されている最大震度である震度6強の揺れが生じると、水路や付帯施設に甚大な被害が発生する恐れがあり、この場合には長期の通水不能や周辺地域への被害、影響が予想された(水資源機構)。
いずれにせよ、武蔵水路は全面的な改修が必要な時期が来ていたため、管理者である水資源機構が改築事業を計画[12][7]、全面的な改築事業を実施。2015年度(2016年3月[13])に事業が完了した。
幹線水路は、従来の断面が逆台形のコンクリートライニング構造から、耐震性の高い矩形断面の鉄筋コンクリートフルーム構造へ改築された[14][15]。改築区間は、中央に分離壁が設けられた狭い水路が2本平行したような構造になっている。これは、メンテナンスを行うときに片方の水路のみを止水し、もう片方の水路は通水したままにしておくことで、メンテナンス中の通水を確保するためである。
このほか、サイホンや水門の耐震工事、糠田排水機場のポンプ増強、管理設備の更新などが行われている[16]。開水路部の施工は半川締切工法を採用し、施工の難易度が高いとされるサイホン部は、パイプインパイプ(PIP)工法と呼ばれる既存の水路の内側に鋼管を通す工法が用いられた[13]。また、改修により生まれた用地を活用して水路の管理用通路(隣接する県道の歩道として運用)が整備された[14]。
水路の岸や橋のたもとからはオレンジ色の球体が等間隔にぶら下がっており、また、網のついていない虫取り網のようなものが岸に設置されているが、これらは万が一流されたときのための救命道具である。これは当水路の流れが非常に速く、一度流されると自力で脱出するのが困難なためである。橋の架け替えに伴い、一部の橋梁は拡幅が実施された[14]。
上流から順に掲載
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