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映画ドラえもんシリーズ通算第28作 ウィキペディアから
『映画ドラえもん のび太と緑の巨人伝』(えいがドラえもん のびたとみどりのきょじんでん)は、藤子・F・不二雄の漫画『ドラえもん』を原作とした、2008年の日本のアニメ映画。映画「ドラえもん」シリーズの第28作目である。並行し、藤子プロの岡田康則によって漫画化され、『月刊コロコロコミック』2008年2月号・3月号に掲載、同年3月に結末を含む描き下ろし30ページを加えた完全版として単行本化された。大長編ドラえもん作品では前作『ドラえもん映画ストーリー のび太の新魔界大冒険』に続き26作目、第2期大長編シリーズでは2作目。監督は渡辺歩、脚本は大野木寛が務めた。
キャッチコピーは「僕らの希望が未来を動かす。」
原案はてんとう虫コミックス『ドラえもん』33巻収録の短編「さらばキー坊」。地球の植物を自分の星に移住させ、地球人を根絶やしにしようとたくらむ植物型宇宙人の計画を阻止しようとするドラえもん、のび太らの活躍を描く。前作まで大長編のリメイク作品が製作されていた第2期シリーズにとっては、初のオリジナル作品である。
予告編と実際に上映された本編の映像とでは異なる部分があり、予告編に登場した空飛ぶ乗り物「スカイリーフ」は映画では登場しない[注 1]。
また、本作を元としたゲーム『ドラえもん のび太と緑の巨人伝DS』も発売された。こちらは前作のようなカードゲームではなく、横スクロールアクションゲームである。
映画のエンドロールが終わった後には前作と同じくおまけ映像があり、その中で2009年にも映画が公開されることがドラえもんによって発表されている。一瞬だけドラえもんと共に『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』に登場したチャミーが現れ、宇宙空間を漂う映像になる(映画公開から約4ヶ月後、『ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史』の情報が正式に発表された)。
2009年2月6日にテレビ朝日開局50周年記念番組の50時間テレビの一番組として初めてテレビ放送されたが、放送時間の都合上一部の場面がカットされた(ドラミがひみつ道具を取りに来る場面など)。
ある日のび太は、裏山にあるゴミの不法投棄された場所で小さな苗木を見つけ、家に持ち帰る。しかしママには「庭に植えてはいけない」と言われてしまう。困ったのび太がドラえもんに相談すると、ドラえもんはひみつ道具の植物自動化液を取り出す。これを植物にかけると、どんな植物も自由に動けるようになるという。さっそく液をかけた次の日の朝、自由に動けるようになった苗木に「キー坊」とのび太は名前をつけ、弟のように可愛がる。ママたちともうち解け合い、キー坊はやがて野比家の家族となっていく。
しかし、裏山で発見された謎の物体を追っていくうちに植物型宇宙人たちが住む惑星・緑の星に迷い込んでしまったドラえもん達は、地球の植物を全て緑の星に移住させるために地球の人類を根絶やしにするという恐ろしい企み「地球人絶滅計画」を知る。緑の星の女王であるリーレと出会い、彼女の手を借りて地球へ戻ろうとする一同だが、大臣のシラーは絶滅計画の切り札である緑の巨人を復活させる為の生贄としてキー坊を誘拐した。計画に反対する長老ジィの助けで何とか地球へ戻ったドラえもん達だったが、地球全土は既に「緑兵」の侵攻を受けて緑に覆われてしまっていた。
人類は滅ぼされたかに思われたが、緑の星へ飛ばされた際にドラえもんのポケットからこぼれ落ちたタンマウォッチの効果で、地球全土の時間が停止している事が発覚。まだ計画を止めるチャンスがあると気づいた一同は、緑の巨人復活を阻止するべくキー坊の救出に向かう。のび太の呼びかけにより生贄にされる寸前で脱出したキー坊だったが、彼の目の前には、かつて一緒に遊んだ女の子の持ち物であるジョーロが落ちていた。女の子が死んだと誤解したキー坊の悲しみと怒りは緑の巨人を覚醒させてしまい、ドラえもんたちはおろかシラーたち緑の星の住人も緑に呑まれていく。かろうじて意識を取り戻したのび太にリーレは怒りをぶつけるが、のび太はただひたすらキー坊を救い出そうと尽力する。その姿に心打たれたリーレも協力し、キー坊は緑の巨人から解放。その影響で緑の中に囚われていたドラえもん達やシラーも解放される。
暴走した緑の巨人は緑の星にも壊滅的な被害を与えており、土砂に覆い隠されていた戦争の痕跡が露呈する。シラーは緑の星もかつて人類と同じ過ちを犯していたことを知って計画を後悔し、のび太とキー坊の関係に希望を見た長老ジィは最期の力で滅びかけた両星を救う。のび太と和解したリーレは人類に時間を与える事を議会に訴え、遂に人類絶滅計画は撤回された。同時にのび太達はキー坊の言葉を理解できるようになる。のび太達は無事に地球に帰宅した。長老ジィの後を継ぐことを決意したキー坊は緑の星に留まる事を決意し、のび太達に別れを告げて去っていく。その夜、帰宅したドラえもんとのび太の様子に全てを察したパパとママは、あえてキー坊の行方を問いただすことなく二人を暖かく迎えたのだった。
今作では子供が声優として声を担当しているが、これは監督の渡辺の要望によるものである[2]。
渡辺はこれまでの映画ドラえもんにおける「長編のパターン」ではないかたちで何か描けないかと、「今後、手がけてみたい作品」[4]として以前より挙げていた、てんとう虫コミックス『ドラえもん』12巻収録の短編「ゆうれい城へ引っこし」を原案とした企画を進めていた。しかし藤子プロより「さらばキー坊」が提案され、『緑の巨人伝』の制作がスタートすることとなる[5]。「ゆうれい城へ引っこし」は映画化されなかったものの、渡辺が絵コンテを担当しテレビシリーズという形で制作された[6]。
制作当時『ドラえもん』へ対しストイックになっていた渡辺は「ドラえもんはこうあるべき」という自身の主張と、エコロジーをテーマとするにもかかわらず安易な本作のプロットやシナリオと相容れることができず、反発心がぬぐえなかったという。結果として決定稿がまとまらないまま、スケジュール的な理由と総意で渡辺は絵コンテの作業へ突入することとなった[5]。
反発したその主たる理由の一つが、本作の原案となる「さらばキー坊」で渡辺が注目した、「のび太とキー坊の関係」であった[7]。キー坊は言葉を話さない植物の擬人化であり、人と緑を繋ぐ存在である。しかしそこでドラえもんの道具を使い、キー坊と同じ木々を変形して遊んだり、森や土の気持ちを理解するという描写をすれば、キー坊の存在する意味が無くなるだけでなく、キー坊がラストで発言する内容にも説得力がなくなるというのが、渡辺の主張であった[5][7]。
そのため、映画と映画ストーリー(漫画)、更にはゲームでそれぞれ展開や描写に違いが多く見られ、特に中盤からエピローグ直前までは大部分が異なる。例えば映画ストーリーでは後半に暴走した植物型宇宙人のシラーたちを明確な悪役に位置付け戦いを繰り広げている一方で、映画は地球だけではなく彼らの母星である緑の星にも大規模な被害が出てしまい、シラーが己の愚かさを悟るという展開になっている。テーマも「環境問題を火種とした戦争」(後述)の物語へと移行する映画と違い、映画ストーリーは一貫して「動物と植物」の共生についてクローズアップがなされている。
題材 | 映画での描写 | 映画ストーリー |
---|---|---|
「心の石」 | 場面ごとカット。 | 意思を持った裏山が、変形した木々や植物で、のび太たちをもてなす[8]。 |
「時門」 | 時門がタンマウォッチに置き換えられている。UFOに吸い込まれる際ドラえもんが落としたタンマウォッチが、のび太とキー坊が助けた小さな木に偶然引っかかる形で時間が停止する[9]。 | 裏山が時門を閉じて時間を停止させ、ドラえもんたちに助力する。 |
緑のくるくる[10] | ドラえもんが取り出した双葉型の道具で、具体的な名称や用途は作中で明言されない[7][注 2]。初登場は漫画版の「双葉型の笛」が裏山から送られる場面に相当。終盤の泥に包まれた大地に、花が咲き乱れる場面でも登場する。 | 「双葉型の笛」として裏山から送られ、緑の巨人となったキー坊の心を呼び覚ます為に使われる[11] |
作中ではキー坊をはじめ植物に対しのび太や登場人物たち(ジョーロの少女や町の住人といったモブキャラクターも含む)が水を与える場面が繰り返し強調されているほか、「靴」が度々小道具として登場する。渡辺は「二人(のび太とキー坊)の関係の象徴」であり、「植物なのに動けるということの象徴」に位置付けている[7]。
「のび太とキー坊の関係」に作品の重きを置いた結果、便利な道具を使って科学(人間)対生物(緑)の勝敗をつけた、地球を守る物語にはどうしてもしたくなかった渡辺は、「エコの前に考えることがある」と、戦争に対する思いや、「みんなは何をもって大切なものを守るのか」という部分に時間を割き、描いていく方向へと進めていく[5][7][12]。だがクライマックスに近づくほど、物語は戦いの帰着点で折り合いを付けなくてはならなくなっていった。前述の通り勝敗の白黒をつけた物語にはしたくなかった渡辺には、藤子Fが「さらばキー坊」でもその場で結論を出さず次代につないだ問題を、映画で具体的に答えを出すことが最早困難であった。そんな中、渡辺は演出を「感じてもらう」方向へ舵を切ることを決断する。それは意図的に説明を抜いて奇妙なシーンでぼかし、抽象的となった描写から一つの結論に絞り込まず、どんどん広げ外に放つというものだった[5]。
「感じてもらう」作品となったことで、初号試写は誰にも意味が分からず、すさまじいものだったという。一番それを理解していた渡辺自身は本作を指し「世の愚作というのは、こうしてできていく」「駄作」[5]と評しており、同時に、これで二度と『ドラえもん』の監督をやることはないなと思ったという[5]。後年の『海獣の子供』に関するインタビュー内では、本作を「観る人に解釈をゆだねる作品」とインタビュアーが位置付けたことに対し、「自分が悩みながら作っていく過程で、結果的にそういう在り方を見いだした」「映画を作る喜びと同時に、映画の厳しさも教えられた作品」としている[13]。
ライターの小黒祐一郎は渡辺へのインタビュー記事内で、「初っ端から非常に曖昧なまま話が進んでいって、ラストでその曖昧さがピークに達するという、かつてない映画」と評しており[5]、「「『海獣の子供』は『緑の巨人伝』を思わせる作品だ」と言ってるファンもいる」とも発言している[14]。
2008年の映画公開より15年の時を経てノベライズ化された。キャッチコピーは「緑の巨人とは一体何だったのか!? 小説ならではの解釈で今、問い直す。」[16]。
映画版をベースにしつつも映画ストーリー(漫画版)で語られた設定(緑の星でかつてあった植物と動物の戦争や土地が痩せていることなど)を盛り込み、著者の涌井が過去に手掛けた『小説 映画ドラえもん』シリーズ同様[17]、オリジナルシーンの追加や登場キャラクター・テーマに対し独自の掘り下げで再構成している。例えば緑の巨人の中をのび太とリーレが歩いている途中でシラーと出会い3人でやりとりするなど、映画版の中盤からエピローグ直前などは大部分が置き換えられている。
また、『小説 映画ドラえもん』シリーズでの前作である『小説 映画ドラえもん のび太と空の理想郷』(2023年)と、今作の次作となる『小説 映画ドラえもん のび太の地球交響楽』(2024年)などでクレジットされていた「監督」が、今作ではクレジットされていない。
ドラえもん春休みスペシャル もうひとつの“緑の巨人伝” | |
---|---|
ジャンル | テレビアニメ |
原作 | 藤子・F・不二雄 |
監督 | 善聡一郎 |
声の出演 |
水田わさび 大原めぐみ かかずゆみ 木村昴 関智一 他 |
音楽 | 沢田完 |
国・地域 | 日本 |
言語 | 日本語 |
製作 | |
チーフ・プロデューサー |
杉山登(テレビ朝日) 山崎立士(ADK) 増子相二郎(シンエイ動画) |
プロデューサー |
吉川大祐(テレビ朝日) 小川邦恵(ADK) 齋藤敦、高橋麗奈 (シンエイ動画) |
撮影監督 | 熊谷正弘 |
編集 | 岡安プロモーション |
製作 |
テレビ朝日、ADK シンエイ動画 |
放送 | |
放送局 | テレビ朝日系列 |
映像形式 | ハイビジョン制作 / 文字多重放送 |
音声形式 | ステレオ放送 |
放送国・地域 | 日本 |
放送期間 | 2008年3月28日 |
放送時間 | 金曜日19:00 - 19:54 |
放送枠 | ドラえもん (2005年のテレビアニメ) |
放送分 | 54分 |
『ドラえもん春休みスペシャル もうひとつの“緑の巨人伝”』は、2008年3月28日に放送されたテレビアニメ『ドラえもん』(第2作2期)の特別番組。「もうひとつの“緑の巨人伝”」「キー坊が恋をした」および「ジキルハイド」の3作品から成る。『ドラえもん のび太と緑の巨人伝』と関係する2作品(「もうひとつの“緑の巨人伝”」「キー坊が恋をした」)について説明する。
登場人物は以下の通り。
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