山本義隆

日本の科学史家、自然哲学者、教育者、元学生運動家 ウィキペディアから

山本 義隆(やまもと よしたか、1941年昭和16年)12月12日 - )は、日本科学史家自然哲学者教育者。元学生運動家駿台予備学校物理科講師。元・東大闘争全学共闘会議代表。妻は装幀家山本美智代。東京大学大学院博士課程中退[1][2][3]

概要 山本 義隆(やまもと よしたか), 生誕 ...
山本 義隆やまもと よしたか
生誕 (1941-12-12) 1941年12月12日(83歳)
日本大阪府
国籍 日本
研究分野 物理学科学史科学哲学
出身校 東京大学大学院博士課程中退
主な業績 『磁力と重力の発見』(2003年)
主な受賞歴 第1回パピルス賞
第57回毎日出版文化賞
第30回大佛次郎賞
補足
駿台予備学校物理科講師
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来歴・人物

要約
視点

大阪府出身[1]大阪市立船場中学校大阪府立大手前高等学校を経て、1960年昭和35年)東京大学理科一類入学、1964年 (昭和39年)東京大学理学部物理学科卒業[1]

その後、同大学院で素粒子論を専攻、京都大学基礎物理学研究所に国内留学する[1]。秀才でならし、将来を嘱望されていたが、学生運動に没入した[4]。学生運動の後は大学を去り、大学での研究生活に戻ることはなかった。

1960年代東大ベトナム反戦会議の活動に携わり、東大全共闘議長を務める。1969年 (昭和44年) の安田講堂事件前に警察の指名手配を受け地下に潜伏するが、同年9月の日比谷での全国全共闘連合結成大会の会場で警察当局に逮捕された。日大全共闘議長の秋田明大とともに、全共闘を象徴する存在であったが、くしくも2人は拘置所で顔を合わせることとなった(1969年、秋田保釈時の会見[5])。なお、全共闘に関するマスコミ取材は一切受けていない。

全共闘運動については「68・69を記録する会」として一次資料収集活動をしている。その活動の中で、運動当時のビラ、立て看板などを集め、成果として『東大闘争資料集』全23巻を国会図書館におさめた。また、写真家渡辺眸の写真集『東大全共闘1968‐1969』(2007年) には手稿を寄せた。2015年に、全共闘当時についての記述を含む著書『私の1960年代』を刊行している。

東大闘争後は在野の研究者として研究を続ける。東京拘置所から出所した後、1979年エルンスト・カッシーラーの『実体概念と関数概念』を翻訳し評価を受けた。カッシーラーの著作の翻訳にはその後も長く関わることになり、『認識問題』の翻訳も手がけて1996年みすず書房が公刊した。

さらに、物理学を中心とした科学史の分野での著作も知られている。力学の発展を綿密に追いかけた著作群としては、1981年の『重力と力学的世界 古典としての古典力学』、雑誌「数学セミナー」の記事から発展した『古典力学の形成 ニュートンからラグランジュへ』(1997年) 、そして『磁力と重力の発見』(2003年) がある。特に、遠隔作用概念の発展史についての研究をまとめた『磁力と重力の発見』全3巻は、第1回パピルス賞、第57回毎日出版文化賞、第30回大佛次郎賞を受賞して読書界の話題となった。近代科学はなぜ西洋に興ったのかという『磁力と重力の発見』の問題意識は、2007年の『一六世紀文化革命』に引き継がれた。また、熱素説のような発展途上の熱力学がどのような論理に支えられ、いかにして破綻し、別の理論に取って代わられたのかを、他の熱力学史にみられるホイッグ史観によらず丁寧に描き出した[6]『熱学思想の史的展開』も代表的著作である。この本は1987年に現代数学社から出版され、2008年には大幅な改訂を経てちくま学芸文庫から再刊された。

研究者のほかに予備校講師として、駿台予備学校で物理科の講師を30年以上務め、東大を筆頭とした最上位の学校の受験生(高卒生)を主に対象にした講義を行っている。

系列の駿台文庫から出版された『物理入門』および『新物理入門』は、微分積分学による高校物理の草分けとも言える参考書である。予備校での長い経験から教え子は多く、山形浩生も彼から物理を習ったという[7]

原子力発電所には東日本大震災以前から警鐘を鳴らし続け、事故後『福島の原発事故をめぐって』を出版した。

著作

要約
視点

評論

科学史関係

大学受験参考書

  • 坂間勇谷藤祐 共著『大学入試必修物理 駿台高等予備校副読本』 上、駿台文庫〈駿台受験叢書〉、1979年6月。
  • 坂間勇、谷藤祐 共著『大学入試必修物理 駿台高等予備校副読本』 下、駿台文庫〈駿台受験叢書〉、1980年2月。
  • 『物理入門 大学受験必修』駿台文庫〈駿台受験叢書〉、1987年8月。ISBN 4-88076-242-3
  • 『新・物理入門〈物理IB・II〉』駿台文庫〈駿台受験シリーズ〉、1987年7月。ISBN 4-7961-1608-7
  • 『新・物理入門問題演習〈物理IB・II〉』駿台文庫〈駿台受験シリーズ〉、1997年4月。ISBN 4-7961-1609-5
  • 『新・物理入門』(増補改訂版)駿台文庫〈駿台受験シリーズ〉、2004年6月。ISBN 4-7961-1618-4
  • 『新・物理入門問題演習』(改訂版)駿台文庫〈駿台受験シリーズ〉、2005年11月。ISBN 4-7961-1621-4

編訳書

  • '68・'69を記録する会 編『東大闘争資料集』 全23巻、'68・'69を記録する会、1992年。

以下は訳者による解説付き。

論文

  • 山本義隆「GeV領域のRegge Pole現象論」 日本物理学会誌 22, 352-355 (1967).
  • 江沢洋、中村孔一、山本義隆、素粒子論研究 36-4, 456 (1967).
  • H. Ezawa, K. Nakamura, Y. Yamamoto, 「A Renormalization Scheme for the Strong-Coupling λ Theory」,Nuov. Cim. 54A, 512-515 (1968).
  • H. Ezawa, K. Nakamura, Y. Yamamoto, 「Numerical Solution of an Unharmonic Oscillator Eigenvalue Problem by Milne's Method」Proc. Japan Acad. 46, 168 (1970).
  • ケプラー問題の初等的解法と離心ベクトルの保存について」 『駿台フォーラム』 4 (1986) ISSN 0289-5579
  • 「Retarded Gravitational Potential and the Shift in the Perihelion of Mercury (遅延重力ポテンシャルと水星の近日点移動)」 『駿台フォーラム』 13 (1995)
  • "Simon Stevin and the Cultural Revolution in the 16th Century", in a Garden of Quanta, ed. J. Arafune et.al., World Scientific (2003), pp.491-502.

脚注

関連文献

関連項目

外部リンク

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