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証拠金を業者に預託し、差金決済による通貨の売買を行なう取引 ウィキペディアから
外国為替証拠金取引(がいこくかわせしょうこきんとりひき、FX)や通貨証拠金取引や外国為替保証金取引は、証拠金(保証金)を金融機関に預託しての差金決済による外国通貨の売買である。FXは「Foreign Exchange=外国為替」の略である。日本国外では「Forex」 (Foreign Exchange:フォレックス) と呼ばれることが多い。差金決済取引(CFD)の一種であるが、日本国内の投資商品の品目上は FXとCFD は区分されている。
日本では1998年4月1日に外国為替及び外国貿易法が改正され、外国為替業務が自由化し、1998年10月よりダイワフューチャーズ(現・ひまわり証券)がFXの取扱いを開始した[1]。2000年5月にトレイダーズ証券(現・みんなのFX運営会社)が国内で初めて[2]個人投資家向けにインターネットを利用したFXサービスを開始すると[3]、ブロードバンドの普及も手伝ってFXの市場が急速に拡大した。(詳細は「金融ビッグバン」を参照)
商品取引員、証券会社のほか、本取引を専業で取り扱う外国為替証拠金取引業者もある。FXは取引の仕方によっては他の金融商品と比較しても特に高いリスクが生じうる、実施にあたっては相場や取引に関する十分な知識や経験を要する。
外国為替証拠金取引には、外貨預金・外貨建てMMFなど、他の外貨建て金融商品と比較して、以下の特徴がある。
外国為替証拠金取引では、これからの値上がりを期待した「買い注文」の方の通貨をロング、これからの値下がりを期待した「売り注文」の方の通貨をショート、と呼ぶ。常に何らかの通貨を売り、何らかの通貨を買う、という表現をするわけである。2つの通貨のペア間の比率の変動を取引の対象とするから、このような表現となる。通貨のペアは USD/JPY、EUR/JPY、EUR/USD、などと表記が決まっており、左側の通貨を右側の通貨で売買した場合の数値が取引の数値(=通貨レート)となり、また左側の通貨をどう取引するかを呼称する。たとえばUSDを買って円を売る場合はUSD/JPYのロングと言う。
決済通貨とは、取引される2国間の通貨取引によって、スワップ金利や損益が発生する通貨のことを言う。すべての場合において、主軸通貨(基軸通貨)/決済通貨と表記される。たとえばドル円の場合、「USD/JPY」のように表記される。異なる通貨同士の組み合わせを「通貨ペア」とも呼ぶ。従って、ポジションについては、主軸通貨(基軸通貨)買い/決済通貨売りの場合はロング(又は買い)、主軸通貨(基軸通貨)売り/決済通貨買いの場合はショート(又は売り)。スワップ金利については、主軸通貨(基軸通貨)/決済通貨売りのロング(又は買い)の時、プラススワップ金利は受け取り、マイナススワップ金利は支払い、主軸通貨(基軸通貨)/決済通貨売りのショート(又は売り)の時、プラススワップ金利は支払い、マイナススワップ金利は受け取りということになる。決済通貨が円の取引を対円通貨取引、円以外の場合を非対円通貨取引(外貨建て取引)という。非対円通貨取引の所得は、決済時の外貨建て実現損益を円に換算して所得を計算する。
一般の報道機関が「円」が上昇したと報道する場合は「円高」という意味での報道であるが、外国為替証拠金取引でいう「ドル円」が上昇したときは、前述の通り「円安ドル高」と正反対の意味になるため注意を要する。
外国為替証拠金取引では、レバレッジを利用することにより、証拠金以上の外貨を取引することができる。レバレッジの倍率を高くするほど為替相場の変動によるリスクは高まる。逆に証拠金と同額の外貨を取引する(レバレッジ1倍という)場合は、外貨預金に近い比較的低リスクな取引もできる。
仮にレバレッジが100倍で取引した場合、1%の変動(1ドル=100円から1ドル=101円, 100 pips [5])が100%の変動になる。利益なら証拠金が2倍になるが損失なら証拠金全額を失う。
高いレバレッジであるほど、リターンが高まる分リスクが高まることを理解しなければならない。注文後はすぐにストップロス(逆指し値)を必ず使い、被害を最小限に留めることが大切である。
実際には商品先物の証拠金取引はロスカットルール等の特約がない限り、追証制度があり、入金期限以後の商品先物取引業者の任意による強制決済か入金期限までの入金の選択ができ若干の時間的な余裕があるが、現在の外国為替証拠金取引(FX取引)では、それとは異なり、損失が一定額を超えると、ロスカットルールによってポジションが強制的に反対売買がされて、自動的に決済・解消される仕組みがある。
また、それよりも損失の小さい段階で追加証拠金の差し入れ(追証)を請求される(マージンコール)場合もある。ロスカット判断は取引時間中はほぼリアルタイムで行われているが、システム状態によっては必ずしもリアルタイムとならない場合もあるほか、週明けに大きな変動があることもあるため、特に高いレバレッジの損切りではロスカットルール以上の損失が発生するケースも昔、多かったが、現在、FX会社各社は自社の取引システムを頻繁に改善・リニューアルし、PC向け・スマホ向けの高度な取引ツールを用意しているので、そういう取引トラブルのニュースはなくなった。
外国為替を原資産とした場合、そもそも通貨の両替から派生しているが故に、上場の有価証券とは本来的にその性質が異なる。ここにおいて、レバレッジの概念は想定元本のみならず、評価損益をどの程度の頻度で管理すべきか、というきわめて高度な信用リスク管理と表裏一体の問題が出てきた。それゆえ、この部分を行政・立法という公権力もしくは業界団体による自主ルールで決めようとする試みがあるが、一方でリスク管理の問題は、今頃になって出てきた問題ではなく、従来から日本国内および海外において各金融商品取引業者、金融機関、機関投資家、投資銀行、証券会社、ヘッジファンドによってそのリスクに対する投資スタンス、考え方が大きく異なるというのが実状である。
2010年8月1日、金融商品取引業等に関する内閣府令が改正になり、FX取引の最大レバレッジを規制し、最大レバレッジが50倍になった。2011年8月1日より、最大レバレッジが25倍に引き下げた。(金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第7項)[6]
レバレッジ規制や損失補填の規制などのない国で運営されている取引業者が、25倍を超えるレバレッジを日本居住者向けに提供している場合があるが、金融庁はそのような業者に対して無登録業者として定期的に警告を行っており、同庁はトラブルが生じた際の追及が困難になるとして利用をしないように日本の投資家に呼び掛けている。[7]無登録業者は、まとめて海外FXと表現されることがある。[8]
現在の個人向けFX取引のレバレッジは最高で25倍だが、近い将来10倍にするとの発表を行っている。そのため、日本国内の投資家で海外のFX会社を利用するケースが増えている。海外のFX会社ではレバレッジが最高で3000倍の会社もある[9]。一方、金融庁は法人を利用したFX取引には高い倍率のレバレッジを認めており、国内のFX会社の場合、最高で100倍のケースが多い。そのため、国内で高いレバレッジを利用するために日本国内の投資家が「FX法人」を作るケースもある。[10]
1ドル=120円、レバレッジ20倍で取引する場合、60万円(5000ドル相当の円)を証拠金として預託すると、5000ドル×20倍=10万ドルの取引が可能となる。つまり、証拠金は取引額の5%になる。1ドル=120円のときに取引開始して10万ドルを買い、その後、円高となって1ドル=115円になったとする。このときの収支は、
上記と逆に、円安となって 1ドル=125円になった場合は、50万円の利益となる。つまり、初めの証拠金の60万円が110万円となり、およそ2倍となる[11]。
実際の取引においては、その相場の状況において根拠あるポイントで損切りを行い、1回あたりの取引における損失額を限定する必要がある(損切り時における一般的な損失額は1~3%、最大でも5%以内と言われている=上記例の場合、60万円×5%=3万円が上限となり、損切りまで5円の値幅を見込んだ場合6,000ドルまでしか取引することができない。60万円の資金に対して一度の取引で50万円を失う可能性のある取引はオーバートレードとなり、すべきではないことに注意する必要がある)。
以下のようなリスクが指摘されている[12]。
画像外部リンク | |
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図解参照 | |
会報 平成28年1月 NO.107 - 一般社団法人金融先物取引業協会 - FX取引は、インターバンク市場と対顧客市場を複雑に行き来してカバーディーリングが行われ、レートが提示される。(会報第19頁別添3第4頁「本邦のFX証拠金取引の外国為替市場への影響」参照) |
顧客のオーダーの処理方法は、いくつかの方式に大きく分類される。各方式選択制、もしくは内部的に組み合わせている事業者もいる。
DD方式, 相対取引
NDD方式(No Dealing Desk)
STP(Straight-through processing)
ECN(Electronic Communications Network:電子証券取引ネットワーク )
中華人民共和国の人民元(CNY)を取り扱っている業者は少なく、扱っていてもスワップ金利が付かない場合や、中にはスワップ金利が売り買い共にマイナスというケースもある。これは、人民元が先進国の通貨に比べて自由化されておらず、通常の方法で取引できないためである。
2004年4月1日施行の「金融商品の販売等に関する法律」(金融商品販売法)の改正により、店頭FXは直物為替先渡取引に該当することが明確になった。(金融商品販売法 第2条1項12号、同法施行令 第4条)
直物為替とは、スポット取引とされているもので、決済日が約定日から2営業日以内(本邦の休日のみならず、原則として二つの国の重複する営業日)に該当する。空港などである通貨とある通貨をその場で両替する行為は現金取引であり、先渡取引には該当しない。
店頭FXが、「金融商品の販売等に関する法律の対象」になったことによって、FX業者には一般投資家への事前のリスクの説明責任、担保金等の取り扱い、顧客資産の保護も厳格に適用されるようになった。今後は、さらに既存の与信取引の取り扱いが大きく影響を受けるのではないかという危惧がFX業界に横たわっている。
現在のFX業者はリスク等に対する説明義務が課せられているので、もしFX取引のリスクの説明が尽くされておらず、顧客が被害を受けた場合は、FX業者は損害賠償責任を負うことになる。(同法 第3条1項2号、第4条)
日本のFX取引は、かつては取引に関する法律(いわゆる「業法」)がなく規制もなかったため、多額の手数料を顧客から騙し取るといった悪徳業者が多発した。2005年7月1日に金融先物取引法が改正されたことで以下の規制が設けられたが、過当競争状態になっている証券会社などでのトラブルや、FX取引を騙っての詐欺事件が後を絶たない。
現在、FX取引を扱う金融業者(FX会社)は国の登録制となり、金融庁の監督下に置かれるようになった。
これら規制は、2007年9月30日に施行された金融商品取引法の一部として再構成された。また、FX会社の財務の健全性を示す指標として自己資本規制比率が「120%以上」維持することが金融商品取引法で定められ[23][24]、日本国内の全てのFX会社は自己資本規制比率を毎月、公表することになった。
日本では上記のような日本の法規制に従う証券会社がある一方で、日本の法規制に従わない日本国外の証券会社を利用するトレーダーがいる。彼らが利用する海外の証券会社は無登録業者や海外FX業者[25]と呼ばれている。
外国為替証拠金取引 (FX取引) は、個人の場合は2012年以降は「先物取引に係る雑所得等」に該当し、申告分離課税である。なお、その他の外国為替取引では、為替差益に対する課税は外貨預金の場合は「雑所得」(累進税率方式である総合課税)、外貨MMFの場合は「上場株式等に係る譲渡所得等」に該当する20.315%の申告分離課税(2016年以降)となり、利子に対する課税は外貨預金・外貨MMFとも「利子所得」(所得税・地方税合わせて20.315%の源泉分離課税)となる。
法人の場合は、通常の課税所得である。
FX取引を巡って、所得税の脱税や申告漏れが多数報告され、納税意識の低さが問題視されていた。2009年1月からは、取引所FX取引だけではなく、店頭FX取引についても、支払調書が税務署に提出されることとなった。2016年からはマイナンバー制度が始まり、税務署は個人投資家のFX取引の記録状況を容易に確認しやすくなっている。
米国では商品先物取引委員会(CFTC)がレバレッジを管理している[27]。ただし、全米先物協会(NFA)にも一時的に証拠金率を上げる権限が与えられている[27]。
また米国ではNFA規則による規制がある[27]。
EUでは欧州証券市場監督局(ESMA)による新規制案(レバレッジによる規制、証拠金建玉強制決済ルール(margin close-out rule)の導入、ネガティブ・バランス・プロテクション(negative balance protection)の導入など)が検討されている[27]。
ネガティブ・バランス・プロテクションは、日本ではゼロカット(和製英語)と呼ばれる[28]。現在もストップロス(損切り)とロスカット機能により注文が自動的に決済される仕組みはあるが、スイスフランショックなどの相場が急激に変動した場合に決済が間に合わない時がある。その様な場合、結果的に想定した以上の損失が発生し、口座残高が0円未満のマイナスになる可能性がある。残高がマイナスになった口座を0円に戻して借金を帳消しにする(損失補てんをする)仕組みがゼロカットである。
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