勝目 梓(かつめ あずさ、男性、1932年6月20日[1] - 2020年3月3日[2])は、日本の小説家・エッセイスト・俳人。
東京生まれ[3]。鹿児島県立伊集院高等学校中退[3]。
概要 勝目 梓(かつめ あずさ), ペンネーム ...
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幼い頃両親が離婚し、母とともに九州に渡る。高校中退後、長崎で炭鉱夫として働き、労組の責任者となるが闘争に敗れて退職。ほか養鶏業、自動車教習所教員など、さまざまな職を転々とし[3]、三年間の結核療養中に作家を志す[1]。
1962年、初めて書いた小説で文學界新人賞に応募、一次予選通過。
1964年、郷里に妻を残し、愛人とともに上京。運送会社のトラック運転手として働きながら、同人誌『文藝首都』に所属し[3]、翌年、19歳で入会してきた中上健次を知り、中上の才能に打ちのめされる。
1966年、34歳で、『文藝首都』の推薦作「玩具の花」を『新潮』に発表[4]。1967年、「マイ・カアニヴァル」(『文藝首都』)で上半期芥川賞候補[3]、1968年、「遠景」を『文學界』に、1969年、「花を掲げて」を同誌に発表、直木賞候補[3]となるが、芽が出なかった。
1970年、森敦と出会い、毎朝激励の電話を受けるなどして文学について教わった結果、娯楽小説に転じる決意をする。
1974年、42歳の時に「寝台の方舟」で小説現代新人賞を受賞[3]、1975年から官能小説を中間小説誌に発表するようになる。
1977年、45歳で、初の単行本『マン・フラワー号のハント旅行』(グリーンアロー・ブックス)を刊行。
1978年、五冊目の単行本『獣たちの熱い眠り』がベストセラーになり[3][4]、以後、主としてバイオレンス官能作家として、今日まで300冊近い著作を出している。
1981年、日本文芸大賞受賞[1]。
1983年、初期の作品「玩具の花」「寝台の方舟」が、『寝台の方舟』で初めて単行本となった。
1986年、「鷹羽狩行集」に長文の解説を掲載[5]、2004年に刊行された『俳句の森を散歩する』では、46人の俳人をとりあげて精細に論じている[5]。
勝目自身も俳人であり、「全日本俳句結社総評議会」と銘打った句会を20年以上にわたって主宰し、「一煙」の俳号をもつ[5]。
1997年、第50回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門、1998年、第51回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門の選考委員を務めた。
2006年、『小説家』、2007年、『老醜の記』で初めて私小説に手を染め、純文学を諦めて量産作家となった屈折を明らかにした。
2020年3月3日、心筋梗塞のため死去[2]。87歳没。
小説
遊乱二郎殺しのファイルシリーズ
- 四月の風は鉛色(1983年3月 トクマ・ノベルズ / 1988年1月 徳間文庫)
- けもの道に罠を張れ(1986年7月 徳間文庫 / 2001年2月 講談社文庫)
- 炎の黙示録(1988年6月 徳間文庫 / 1998年3月 日文文庫)
ふしだら探偵事件簿シリーズ
- 新宿・歌舞伎町殺人計画 ふしだら探偵事件簿(1984年5月 フタバノベルス)
- 収録作品:パンティ殺人計画 / のぞき部屋殺人計画 / デート・パブ殺人計画 / 出張トルコ殺人計画 / 裏ビデオ殺人計画 / ロリコン殺人計画
- 【改題】新宿歌舞伎町殺人計画(1986年10月 双葉文庫)
- 能登周遊殺人計画(1987年10月 双葉文庫)
- カルチャー教室トラブル中 ふしだら探偵おとぼけ事件簿(1989年3月 フタバノベルス)
- 収録作品:お料理教室 食中毒事件 / 書道教室 筆下ろし事件 / コピー・ライター教室 舌先三寸事件 / 俳句教室 字あまり事件 / 水泳教室 水難事件 / ミステリー教室 殺人未遂事件
- 【改題】ふしだら探偵トラブル中(1991年9月 双葉文庫)
私立探偵・伊賀光二シリーズ
- 扉は静かにノックされた(1984年10月 フタバノベルス / 1987年6月 双葉文庫 / 1996年4月 ケイブンシャ文庫)
- 矢は闇を飛ぶ(1983年6月 広済堂ブルーブックス / 1986年6月 双葉文庫 / 1997年3月 ケイブンシャ文庫)
- 仮面を脱ぐ女(1986年12月 フタバノベルス / 1989年1月 双葉文庫)
- あいつの堕ちる場所(1990年6月 フタバノベルス / 1992年8月 双葉文庫)
- 誰かが眠れない夜(1990年10月 双葉文庫 / 1996年8月 ケイブンシャ文庫 / 2003年9月 徳間文庫)
- 孔雀が踊れば鼠が笑う(1994年1月 トクマ・ノベルズ)
便利屋・芳賀連太郎シリーズ
- 悪党(わる)(1984年11月 カッパ・ノベルス / 1989年3月 光文社文庫)
- 悪女は午前二時に眠る(1986年6月 カッパ・ノベルス / 1990年11月 光文社文庫)
探偵・秋津慎平シリーズ
- 花言葉は死(1985年7月 講談社文庫 / 1997年8月 徳間文庫)
- 蛇淫の殺意(1985年10月 トクマ・ノベルズ / 1990年2月 徳間文庫)
- 雨の逃亡者(1986年7月 フタバノベルス / 1988年6月 双葉文庫 / 1997年9月 ケイブンシャ文庫)
- 殺人者は二度唄う(1987年6月 フタバノベルス / 1989年3月 双葉文庫)
- 街のけもの道(1989年1月 トクマ・ノベルズ / 1992年4月 徳間文庫)
- 収録作品:熱帯夜には殺しが似合う / ヘアー / 閃光の刻 / プレゼント / 雨 / 街のけもの道
- 押入れの中の髑髏(しゃれこうべ) 秋津慎平レイプ事件の暗部を抉る(1989年8月 フタバノベルス)
- 【改題】押入れの中の髑髏(1992年2月 双葉文庫)
- 雪の埋葬 秋津新平、小樽-東京を結ぶ謎に挑戦す(1990年7月 フタバノベルス)
- 潮(うしお)の葬列 秋津慎平海に消えた女の謎に挑む(1991年8月 フタバノベルス)
- 炎の埋葬(1992年6月 フタバノベルス / 1995年1月 双葉文庫)
- 砂の記憶(1994年11月 フタバノベルス / 2002年1月 双葉文庫)
- 波の殺意(1995年11月 フタバノベルス / 2000年5月 双葉文庫)
- 奴隷たちに花束を 探偵・秋津慎平の審判(1997年2月 フタバノベルス)
- 【改題】奴隷たちに花束を(2002年9月 双葉文庫)
- 視線の刃 探偵・秋津慎平の奔走(1998年2月 フタバノベルス)
- 夜を往(い)く者たち 探偵・秋津慎平の慷慨(1999年3月 フタバノベルス)
- 【改題】夜を往く者たち(2004年1月 双葉文庫)
- 獣の聖域(2006年5月 フタバノベルズ)
ボディーガード四人組シリーズ
- ボディーガード午前四時(1987年10月 角川文庫 / 2008年1月 光文社文庫)
- 息ひそめ、闇に羽撃(はばた)け(1988年10月 カドカワノベルズ / 1990年10月 角川文庫)
- 殺意の棲処(1990年2月 カドカワノベルズ / 1992年7月 角川文庫)
- 終わりなき十点鐘(テンゴング)(1991年4月 カドカワノベルズ / 1994年8月 角川文庫)
海鳴りのジョーシリーズ
- 非情の闇に罠を張れ(1988年1月 ジョイ・ノベルス / 1991年3月 角川文庫)
- 収録作品:拳銃密売人を追え / 標的は殺し屋 / 殺しの裏を暴け / 罠を手繰れ / 非情の闇に罠を張れ / コールガールを誘拐せよ
- 弔歌 男たちの祀り(1989年11月 ジョイ・ノベルス / 1993年6月 角川文庫)
- 獣たちの墓を掘れ(1991年10月 ジョイ・ノベルス / 1995年3月 角川文庫)
- 収録作品:ハイエナを追いつめろ / 黒幕を追いつめろ / クスリ屋をいぶり出せ / 罠には罠を / 脅迫屋の死を追え / 獣たちの墓を掘れ
ノンフィクション・評論・エッセイ
- ボクサー 渡嘉敷勝男にみる「男」の研究(1987年3月 実業之日本社 / 1990年5月 集英社文庫)
- 収録作品:1章 おれは普通の男じゃない / 2章 おれは具志堅用高を倒す / 3章 おれは主役だ / 4章 汚名はおれがそそぐ / 5章 夢がなくては生きていけない
- 俳句の森を散歩する(2004年1月 小学館)
- 下半身のおとこ 巨匠、勝目梓のパンツを脱がせる(2007年3月 リヨン社)
- 小説家(2006年10月 講談社 / 2009年10月 講談社文庫) - 初の自伝的小説
- 老醜の記(2007年1月 文藝春秋 / 2010年2月 文春文庫) - 『小説家』と対をなす自伝的作品
アンソロジー
「」内が勝目梓の作品
- ベスト小説ランド 1987-1 日本文藝家協会 編(1987年1月 角川書店)「爪」
- 小説現代新人賞全作品 3(1978年4月 講談社)「寝台の方舟」
- 愛! 日本冒険作家クラブ 編(1990年4月 徳間文庫)「ブラウス」
- 剣鬼情炎 日本文芸家クラブ 編(1993年1月 廣済堂文庫)「血しぶき女郎蜘蛛」
- さらに不安の闇へ 小説推理傑作選(1998年1月 双葉社)「影の構図」
- 好色の宴 特選官能アンソロジー(2002年1月 ベストロマン文庫)「熱愛者の嘆き」
- 極上掌篇小説(2006年10月 角川書店)「立ち話」
- 【改題】ひと粒の宇宙(2009年11月 角川文庫)
- 息づかい 好色時代小説集(2007年2月 講談社文庫)「振袖地獄」
- 薄灯かり 官能時代小説アンソロジー(2008年3月 講談社文庫)「長屋の夜」
- 短篇ベストコレクション 現代の小説 2010 日本文藝家協会 編(2010年6月 徳間文庫)「埋葬」
- 10分間の官能小説集1(2012年6月 講談社文庫)「トゥエンティー・ミニッツ」[6]
- 10分間の官能小説集2(2013年5月 講談社文庫)「始末書」
- 短篇ベストコレクション 現代の小説 2013 日本文藝家協会 編(2013年6月 徳間文庫)「家族会議」
- エロスの記憶(2015年2月 文春文庫)「橋」
- 戦後70年わたしの戦争体験(2015年7月 講談社)「低温火傷」
漫画
作画:小森一也
- 鮮血の十字架(1986年10月 壱番館Comic pack)
作画:かわぐちかいじ
- 私設探偵赤い牙 DX版 全2巻(1991年3月 芳文社コミックス)
- 私設探偵赤い牙 全2巻(2001年7月 ホーム社漫画文庫)
- 私設探偵赤い牙 SHUEISYA HOME REMIX(2008年2月 ホーム社)
- 赤い野獣 全3巻(1981年5月 芳文社コミックス)
作画:影丸穣也
- 昏き処刑台 Jyoya Kagemaru best selection 愛蔵版 全3巻(1999年10月 さくらコミックス)
作画:岸本加奈子+長崎真央子
- 陶酔のハイヒール 勝目梓傑作選(2000年1月 エメラルドコミックス)
- 収録作品:淫らな眼 / ガラスの欲情 / 氷の刃 / 陶酔のハイヒール / 華麗なる誘惑
勝目梓『女神たちの森』(2010年7月、光文社文庫 著者紹介)
勝目梓『ある殺人者の回想』(2016年3月、講談社文庫 著者紹介)
勝目梓『俳句の森を散歩する』(2003年12月、小学館 出版社内容情報)