全国城郭研究者セミナー

ウィキペディアから

全国城郭研究者セミナー(ぜんこくじょうかくけんきゅうしゃセミナー)は、城郭を研究する人たちが年1回集まって行う研究発表・討論会である。

概要

全国城郭研究者セミナーは、全国の研究者が集まり全国的な視野で城郭を検討することを目的としている。1984年から毎年基本的に8月の第1土・日曜日に開催し[1][注 1]、2019年には第36回が開催された(参加者247名)[2]。2021年には第37回が初めてオンラインで開催された(参加者253名)[3]

開催する2日間のうち、前半は「一般報告」として各種の報告を行い、後半は「シンポジウム」として各回ごとに設けたテーマに関する報告をする[1][注 2]。最後(2日目の午後)にパネルディスカッションをすることが多い[4]。さらに、3日目にオプションとして開催地付近の城郭の見学会をすることもある[5]。1日目の夜には、懇親会が催される。

主催と運営は、各回の実行委員会および中世城郭研究会が行っている[2][4][5]。会場付近の都市の教育委員会や城郭研究会が共催者になることもある[2][5]

設立

中世城郭研究会代表の八巻孝夫は、全国で初めて城郭研究者たちが発表し合う場となるセミナーを、1981年(昭和56年)ごろに企画している[6]全国城郭研究者セミナーの第1回は、1984年に開催され[1]、8月4日の定刻10時の開会時に八巻孝夫がセミナー開催の趣旨説明を行った[7]

理念

八巻は、全国城郭研究者セミナーの開催にあたって、理念を定めている。それは、2003年の第20回において壇上で発表された[8]。理念の概要は、次のとおりである。

  • 城郭研究の最新の成果が得られる場にしよう。
  • 発表者には、考古学文献史学縄張研究者を選んでいこう。
  • 地方開催でもテーマは全国的なものにしよう。
  • 発表者は全国からバランスよく選ぼう。
  • 大会につきものの記念講演はやめよう。
  • 少数精鋭でいこう。
  • 特に地方の研究者に光を当てよう。
  • 手造りの会にし、中世城郭研究会はボランティアに徹しよう。
  • 報告者には申し訳ないが交通費、宿泊代は自弁をお願いする。
  • なるべく一箇所に泊まり、夜を徹して話そう。
  • なるべく批判しあって、一歩前進をめざそう。
  • 日程は極力8月の第1土、日に固定しよう。

以上の12点は、守り続けたこともあまり守れなかったこともある[8]。しかし、この理念の大幅な変更はなく開催し続けている。

名称

会の名称「全国城郭研究者セミナー」は、次のとおりに決めた[8]。「全国」は列島のすべての城郭研究者とすべての城郭を対象とすることを意味している。「城郭」に時代を特定する中世などをつけなかったのは、全時代を対象としたいという願いだった。「研究者」としたのは、特に「者」に力点があった。これは、個々の研究「者」を大事にしていきたいという思いだった。名称一つにも、さまざまな思いを込めている。

報告集

全国城郭研究者セミナーでの報告の内容は、当日に受け取れるレジュメ(予稿集)だけでなく、翌年の『中世城郭研究』に要旨が掲載される。各報告の詳細は、レジュメにある[9]

レジュメ
『全国城郭研究者セミナー レジュメ』は1984年(昭和59年)の第1回に創られ、この年から毎年発行されている[10]。各テーマごとの最新の研究状況が知りやすくなっている[9]
『中世城郭研究』
第6回以降のセミナーの報告が、翌年の『中世城郭研究[11]に掲載されている。
  • 第6回(1989年)・第7回(1990年)・第9回(1992年)の全国城郭研究者セミナーについては、それぞれ『中世城郭研究』の第4号(1990年)・第5号(1991年)・第7号(1993年)に、各4ページの概要が報告されている[12]
  • 第10回(1993年)の全国城郭研究者セミナーについては、翌年発行の『中世城郭研究』第8号(1994年)に、各発表の報告要旨とシンポジウム概要が掲載されている。これ以降、毎回同様の記録・報告が現在まで継続されている[12]

歴史

要約
視点

全国城郭研究者セミナーは、1984年から毎年開催されている。第13回(1996年)からは、東京都内と他地域の都市とで交互に開催され、第19回(2002年)と第20回(2003年)だけは連続して都内で開催されている[1]。2020年は、新型コロナ禍の影響で開催されず、第37回(2021年)と第38回(2022年)は、ビデオ会議で開催された。開催記録を表に示す。

さらに見る 回数, 開催年 ...
全国城郭研究者セミナーの開催記録
回数開催年開催地会場テーマ
1 1984渋谷区ヒルポートホテル(なし)
2 1985渋谷区ヒルポートホテル[13]
3 1986神戸市兵庫県埋蔵文化財調査事務所いわゆる畝状竪堀群について 
4 1987渋谷区ヒルポートホテル城郭研究の方法論をめぐって
5 1988石和町帝京大学山梨文化財研究所[14]戦国期城下町
6 1989渋谷区東京高等専門学校城郭の構成要素を考える : 曲輪虎口
7 1990小田原市MRAアジアセンター中世城郭から近世城郭へ : その差異と接点
8 1991奈良市奈良大学小規模城館
9 1992静岡市静岡商工会議所中世城館の保存と活用
10 1993豊田市高橋コミュニティセンター城と合戦[15][16][17]
11 1994小山市白鷗大学中世の絵画にみえる城郭
12 1995更埴市長野県立歴史館の城を考える
13 1996八王子市中央大学近世城郭の成立について
14 1997盛岡市盛岡市中央公民館[18]中世城館の成立について : 古代末期の東北地方を中心として
15 1998渋谷区國學院大學障子堀」について
16 1999和田山町和田山町文化会館桝形虎口の再検討
17 2000世田谷区駒澤大学戦国期城郭の石垣
18 2001高知市高知大学本拠における城郭体制
19 2002新宿区早稲田大学惣構」の再検討
20 2003世田谷区駒澤大学城郭遺構論の現状と課題
21 2004仙台市東北大学近世城郭を見直す
22 2005新宿区早稲田大学陣城・臨時築城をめぐって
23 2006京都府木津町中央交流会館城館の分布から何がわかるか
24 2007千葉市千葉大学海城
25 2008津市三重大学中世後期の方形城館と地域
26 2009渋谷区國學院大學大名系城郭を問う
27 2010姫路市イーグレひめじ横矢掛りから考える
28 2011 [注 1]世田谷区駒澤大学城郭遺構の認識を問う
29 2012上越市上越教育大学山城の実像を問う
30 2013世田谷区駒澤大学縄張考古文献 : 城郭研究の明日
31 2014福岡市九州大学近世城郭をどう捉えるか
32 2015世田谷区駒澤大学「障子堀」の新展開
33 2016岐阜市ぎふメディアコスモス連続空堀群再考
34 2017世田谷区駒澤大学幕末の城
35 2018豊橋市豊橋市公会堂馬出を考える : 定義と分布
36 2019世田谷区駒澤大学真剣討論・城郭研究
37 2021 [注 1]オンデマンド映像電子掲示板ビデオ会議徳川の城 [3]
38 2022 [注 1]オンデマンド映像、電子掲示板、ビデオ会議文献史料からみた攻城戦の実態 [19]
39 2023豊島区大正大学山城の階段状削平地群 [20]
40 2024世田谷区駒澤大学城攻めの実像 [21]
閉じる

脚注

  1. 第28回(2011年)は、東日本大震災の影響で10月に開催された。第37回(2020年)は、東京オリンピックの影響によって8月末に開催される予定であったが、新型コロナ禍の影響で、2021年に延期。東京オリンピックも延期したので、第37回は2021年8月末にオンラインで開催した。第38回も同様に2022年8月末にオンラインで開催した[1]
  2. テーマが設けられたのは第3回目(1986年)。

出典

参考文献

新聞記事掲載

関連項目

外部リンク

Wikiwand - on

Seamless Wikipedia browsing. On steroids.