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全国城郭研究者セミナー(ぜんこくじょうかくけんきゅうしゃセミナー)は、城郭を研究する人たちが年1回集まって行う研究発表・討論会である。
全国城郭研究者セミナーは、全国の研究者が集まり全国的な視野で城郭を検討することを目的としている。1984年から毎年基本的に8月の第1土・日曜日に開催し[1][注 1]、2019年には第36回が開催された(参加者247名)[2]。2021年には第37回が初めてオンラインで開催された(参加者253名)[3]。
開催する2日間のうち、前半は「一般報告」として各種の報告を行い、後半は「シンポジウム」として各回ごとに設けたテーマに関する報告をする[1][注 2]。最後(2日目の午後)にパネルディスカッションをすることが多い[4]。さらに、3日目にオプションとして開催地付近の城郭の見学会をすることもある[5]。1日目の夜には、懇親会が催される。
主催と運営は、各回の実行委員会および中世城郭研究会が行っている[2][4][5]。会場付近の都市の教育委員会や城郭研究会が共催者になることもある[2][5]。
中世城郭研究会代表の八巻孝夫は、全国で初めて城郭研究者たちが発表し合う場となるセミナーを、1981年(昭和56年)ごろに企画している[6]。全国城郭研究者セミナーの第1回は、1984年に開催され[1]、8月4日の定刻10時の開会時に八巻孝夫がセミナー開催の趣旨説明を行った[7]。
八巻は、全国城郭研究者セミナーの開催にあたって、理念を定めている。それは、2003年の第20回において壇上で発表された[8]。理念の概要は、次のとおりである。
以上の12点は、守り続けたこともあまり守れなかったこともある[8]。しかし、この理念の大幅な変更はなく開催し続けている。
会の名称「全国城郭研究者セミナー」は、次のとおりに決めた[8]。「全国」は列島のすべての城郭研究者とすべての城郭を対象とすることを意味している。「城郭」に時代を特定する中世などをつけなかったのは、全時代を対象としたいという願いだった。「研究者」としたのは、特に「者」に力点があった。これは、個々の研究「者」を大事にしていきたいという思いだった。名称一つにも、さまざまな思いを込めている。
全国城郭研究者セミナーでの報告の内容は、当日に受け取れるレジュメ(予稿集)だけでなく、翌年の『中世城郭研究』に要旨が掲載される。各報告の詳細は、レジュメにある[9]。
全国城郭研究者セミナーは、1984年から毎年開催されている。第13回(1996年)からは、東京都内と他地域の都市とで交互に開催され、第19回(2002年)と第20回(2003年)だけは連続して都内で開催されている[1]。2020年は、新型コロナ禍の影響で開催されず、第37回(2021年)と第38回(2022年)は、ビデオ会議で開催された。開催記録を表に示す。
回数 | 開催年 | 開催地 | 会場 | テーマ |
---|---|---|---|---|
1 | 1984 | 渋谷区 | ヒルポートホテル | (なし) |
2 | 1985 | 渋谷区 | ヒルポートホテル | |
3 | 1986 | 神戸市 | 兵庫県埋蔵文化財調査事務所 | いわゆる畝状竪堀群について |
4 | 1987 | 渋谷区 | ヒルポートホテル | 城郭研究の方法論をめぐって |
5 | 1988 | 石和町 | 帝京大学山梨文化財研究所[13] | 戦国期城下町と城 |
6 | 1989 | 渋谷区 | 東京高等専門学校 | 城郭の構成要素を考える : 曲輪・堀・虎口 |
7 | 1990 | 小田原市 | MRAアジアセンター | 中世城郭から近世城郭へ : その差異と接点 |
8 | 1991 | 奈良市 | 奈良大学 | 小規模城館 |
9 | 1992 | 静岡市 | 静岡商工会議所 | 中世城館の保存と活用 |
10 | 1993 | 豊田市 | 高橋コミュニティセンター | 城と合戦 |
11 | 1994 | 小山市 | 白鷗大学 | 中世の絵画にみえる城郭 |
12 | 1995 | 更埴市 | 長野県立歴史館 | 村の城を考える |
13 | 1996 | 八王子市 | 中央大学 | 近世城郭の成立について |
14 | 1997 | 盛岡市 | 盛岡市中央公民館 | 中世城館の成立について : 古代末期の東北地方を中心として |
15 | 1998 | 渋谷区 | 國學院大學 | 「障子堀」について |
16 | 1999 | 和田山町 | 和田山町文化会館 | 桝形虎口の再検討 |
17 | 2000 | 世田谷区 | 駒澤大学 | 戦国期城郭の石垣 |
18 | 2001 | 高知市 | 高知大学 | 本拠における城郭体制 |
19 | 2002 | 新宿区 | 早稲田大学 | 「惣構」の再検討 |
20 | 2003 | 世田谷区 | 駒澤大学 | 城郭遺構論の現状と課題 |
21 | 2004 | 仙台市 | 東北大学 | 近世城郭を見直す |
22 | 2005 | 新宿区 | 早稲田大学 | 陣城・臨時築城をめぐって |
23 | 2006 | 京都府 | 木津町中央交流会館 | 城館の分布から何がわかるか |
24 | 2007 | 千葉市 | 千葉大学 | 海城 |
25 | 2008 | 津市 | 三重大学 | 中世後期の方形城館と地域 |
26 | 2009 | 渋谷区 | 國學院大學 | 大名系城郭を問う |
27 | 2010 | 姫路市 | イーグレひめじ | 横矢掛りから考える |
28 | 2011 [注 1] | 世田谷区 | 駒澤大学 | 城郭遺構の認識を問う |
29 | 2012 | 上越市 | 上越教育大学 | 山城の実像を問う |
30 | 2013 | 世田谷区 | 駒澤大学 | 縄張・考古・文献 : 城郭研究の明日 |
31 | 2014 | 福岡市 | 九州大学 | 近世城郭をどう捉えるか |
32 | 2015 | 世田谷区 | 駒澤大学 | 「障子堀」の新展開 |
33 | 2016 | 岐阜市 | ぎふメディアコスモス | 連続空堀群再考 |
34 | 2017 | 世田谷区 | 駒澤大学 | 幕末の城 |
35 | 2018 | 豊橋市 | 豊橋市公会堂 | 馬出を考える : 定義と分布 |
36 | 2019 | 世田谷区 | 駒澤大学 | 真剣討論・城郭研究 |
37 | 2021 [注 1] | オンデマンド映像、電子掲示板、ビデオ会議 | 徳川の城 [3] | |
38 | 2022 [注 1] | オンデマンド映像、電子掲示板、ビデオ会議 | 文献史料からみた攻城戦の実態 [14] | |
39 | 2023 | 豊島区 | 大正大学 | 山城の階段状削平地群 [15] |
40 | 2024 | 世田谷区 | 駒澤大学 | 城攻めの実像 [16] |
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