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『二人の子どもフランス漫遊記』(ふたりのこどもふらんすまんゆうき、仏語France tour détour deux enfants、「フランス 一回り 回り道 二人 子どもたち」の意)は、監督・脚本ジャン=リュック・ゴダール、アンヌ=マリー・ミエヴィルによる、1977年 - 1978年製作のフランスのテレビドキュメンタリー映画である。
二人の子どもフランス漫遊記 | |
---|---|
France tour détour deux enfants | |
監督 |
ジャン=リュック・ゴダール アンヌ=マリー・ミエヴィル |
脚本 |
ジャン=リュック・ゴダール アンヌ=マリー・ミエヴィル |
原作 | G・ブリュノ |
撮影 |
ウィリアム・リュプチャンスキー ドミニク・シャピュイ フィリップ・ロニ ピエール・バンジェリ |
編集 |
ジャン=リュック・ゴダール アンヌ=マリー・ミエヴィル |
製作会社 |
フランス国立視聴覚研究所(INA) ソニマージュ |
配給 |
アンテーヌ2 放送 東京日仏学院 特殊上映 |
公開 |
1977年 - 1978年 放送 2002年5月 特殊上映 |
上映時間 | 312分(各話26分、全12話) |
製作国 | フランス |
言語 | フランス語 |
1973年、住み慣れたパリからグルノーブルに移住したゴダールとミエヴィルは、映画会社「ソニマージュ」を設立、「ジガ・ヴェルトフ集団」時代に『万事快調』(1972年)を製作した若手プロデューサーのジャン=ピエール・ラッサムの資金調達のもと、『パート2』(1975年)、『ヒア & ゼア こことよそ』(1976年)と『うまくいってる?』(1978年)映画を製作した。『パート2』以外は、ゴダール=ミエヴィルの共同監督作品である。
ゴダール=ミエヴィルは、グルノーブルのソニマージュ時代に、上記のほかに、フランス国立視聴覚研究所(INA)との共同製作で、テレビ局「アンテーヌ2」向け、ベータカム撮影による2本のテレビ映画製作を行なった。第一作が『6x2』(1976年)で、初めての全編ベータカムによるビデオ撮影であった。本作はその第二弾で、やはり『6x2』のように「2本が対」になり、6セットのスタイルで構成された。この「2本が対」のスタイルは、10年後に始まる『ゴダールの映画史』(1988年 - 1998年)でもその後、踏襲されることとなる。
『France tour détour deux enfants』という原題を『二人の子どもフランス漫遊記』と訳すのはこなれ過ぎで、実際はぶつぶつと切られた単語の並びである。オープニングタイトルでは、
という形で黒味画面の上に並んでいる。détourが唐突に挿入されているという形であり、この語は当時ゴダールの傾倒するアンリ・ベルクソンらの用いたフランス現代思想用語でもある。本作は、G・ブリュノの名作『Le Tour de la France par deux enfants(二人の子どもたちによるフランス一周)』(1877年、ISBN 2701100429)を緩く原作にしているのだが、détourを挿入することで、19世紀から現代へ脱構築することをゴダール=ミエヴィルは目論んだのだ。
撮影のウィリアム・リュプチャンスキーとドミニク・シャピュイは、ゴダール=ミエヴィルの前作『6x2』からの連投。フィリップ・ロニは基本的には演出畑の人間で、1990年代には短篇映画を演出したりテレビ映画の脚本を執筆している。ピエール・バンジェリはこのあとも、『ゴダールのリア王』(1987年)のスピンアウト作で、ウディ・アレンへのゴダールによる出演交渉を収録した、ゴダール監督の短篇ビデオ映画『ウディ・アレン会見』(1986年)のカメラマンをつとめている。
本作のあと、既述の『うまくいってる?』を撮り、1979年、ゴダール=ミエヴィルはグルノーブルをあとにし、スイス・レマン湖畔のヴォー州ロールへと移住、商業映画復帰第一作『勝手に逃げろ/人生』(1979年)にとりくむことになる。1973年から1979年までの6年間は、1967年8月の「商業映画からの決別宣言」から1972年10月の「ジガ・ヴェルトフ集団」解散までのいわゆる「ゴダールの政治の時代」とは区別され、「ゴダール=ミエヴィルの共同監督時代」であり、「ビデオ映画の時代」であり、なによりも「ソニマージュ(音響と映像の対等な融合)の時代」なのである。もちろんグルノーブルでつちかったことは、その後、『ゴダールの映画史』を頂点とするビデオ映画のかずかずの作品に結実していく。
下記のような構成である。各話26分、1977年から1978年までの全12回、フランスのテレビ局アンテーヌ2(Antenne 2)で放映された。
回 | 小題 | 原題 | |
---|---|---|---|
運動 1 | 暗部 / 化学 | Mouvement 1 | Obscur / Chimie |
運動 2 | 光 / 物理 | Mouvement 2 | Lumière / Physique |
運動 3 | 既知 / 幾何 / 地理 | Mouvement 3 | Connu / Géométrie / Géographie |
運動 4 | 未知 / 技術 | Mouvement 4 | Inconnu / Technique |
運動 5 | 印象 / 聞き取り | Mouvement 5 | Impression / Dictée |
運動 6 | 表現 / 国語(仏語) | Mouvement 6 | Expression / Français |
運動 7 | 暴力 / 文法 | Mouvement 7 | Violence / Grammaire |
運動 8 | 無秩序 / 計算 | Mouvement 8 | Désordre / Calcul |
運動 9 | 権力 / 音楽 | Mouvement 9 | Pouvoir / Musique |
運動10 | 小説 / 経済 | Mouvement 10 | Roman / Economie |
運動11 | 現実 / 論理 | Mouvement 11 | Réalité / Logique |
運動12 | 夢 / 道徳 | Mouvement 12 | Rêve / Morale |
毎回、ビデオカメラやマイクを構える男の子、あるいは女の子のカットでタイトルが始まる。どちらかの子どもの着替えなどの日常的な基本動作をスローモーションや静止画像で見せ(コーナータイトル「テレヴィジオン Télévision」)、つぎに、「ロベール・リナール」という名のゴダールが、その子どもに、哲学的な概念、あるいは社会学的なそれ、といった抽象的で答えにくい質問をするが、チャールズ・シュルツの『ピーナッツ』の世界のように、おとなであるゴダールは姿を見せない(同「真実 Vérité」)。つぎに、男女ふたりのキャスターが、討論をする(同「物語=歴史 Histoire」)。そしてどちらかのキャスターが締めくくる。それで終わる場合もあれば、子どもの映像が入る場合もある。これが毎回の構成である。12の「運動」が、「運動1」と「運動2」(暗部と光)、「運動3」と「運動4」(既知と未知)、…のように二話ずつ6つの対になっている。
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