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ゲナサウルス類の下位分類群 ウィキペディアから
装盾類(そうじゅんるい[3])あるいは装盾亜目(そうじゅんあもく[3])、担楯類(たんじゅんるい)、担楯亜目(たんじゅんあもく[4]、学名: Thyreophora、「盾を持つ者」の意味)は、小型から超大型の装甲をまとい、前期ジュラ紀から恐竜時代の終わりまで全ての大陸で生息していた[8]、鳥盤類ゲナサウルス類の一群である[13]。
装盾類 Thyreophora | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ガストニア・ブルゲイのマウント、ブリガム・ヤング大学古生物学博物館所蔵。
ステゴサウルス・ステノプスのマウント、ロンドン自然史博物館所蔵。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
前期ジュラ紀 - 後期白亜紀 (ヘッタンギアン〜マーストリヒチアン)[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Thyreophora Nopcsa, 1915[2] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
装盾類(そうじゅんるい)[3] 装盾亜目(そうじゅんあもく)[3] 担楯類(たんじゅんるい) 担楯亜目(たんじゅんあもく)[4] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
下位分類群[5][6] | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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装盾類の大まかな分布図 |
装盾類は主に剣竜類や、体が装甲に覆われた曲竜類が含まれる[13]。最も代表的なな属は、アンキロサウルスやステゴサウルスが挙げられる[5]。装甲をもった唯一の鳥盤類で、竜盤類のティタノサウルス類でのみ装甲が並行進化的にみられた。また、本分類群にはレソトサウルス[8][14]、ラキンタサウラが含まれる可能性がある[7]。
装盾類は、イグアノドンやトリケラトプスよりもアンキロサウルスやステゴサウルスに近縁な種で構成されるグループと定義されている。ゲナサウルス類の中では角脚類の姉妹群である[15]。
装盾類はその名のとおり、全身を覆う鎧のような皮骨を持っていたことが特徴である[7]。基盤的な属は、単純で低く、キール(生物に見られる竜骨状の構造)のある鱗状の皮骨を持っていたが、より派生したものはサゴマイザーや防弾チョッキのような装甲など[16]、より精巧な構造を発達させた。全ての装盾類は草食性で[17]、前足は五指性であり、足指は3本か4本だった。体の大きさの割に頭は比較的小さく、堅牢に作られ、眼も大きくはなかった。骨格は重厚な造りで、尾はやや長かった。一部の種では喉の下にぎっしりと敷き詰められた皮骨を備えていた。他のほとんどの恐竜と比べ、成長速度は比較的遅かったとされる。生息環境はとても多様で、砂漠から湿潤な森林といったあらゆる環境に生息していた[8]。初期の属は二足歩行をしていたが[17]、肉食恐竜が大型するにつれて、装盾類も大型化し、その体重を支えるため、後に四足歩行へと進化し、変化していった[18][19]。
thyreophoraの語源は、ギリシャ語の「θυρεός」と「φορά」から由来する。「θυρεός」は「盾」、「φορά」は「運ぶ」を意味し、合わせて「盾を持つ者」という意味になる[20]。
装盾類の最古の化石は、1832年にイギリスで発見されたヒラエオサウルスであり[21]、イグアノドンやメガロサウルスとともに、1842年にリチャード・オーウェンが恐竜という言葉を作った動物の一つだった。しかし、彼の発見は、19世紀に発見した他の化石と同じ様に、非常に不完全なものだった。また、ヒラエオサウルスと同様にポラカントゥス[22]、アカントフォリス[23]、ストルティオサウルスなど[24] 、19世紀にヨーロッパで発見された最も重要な化石は、このグループの非常に不完全な分類を形作っていた。
後に、装盾類の化石が発見されたのは、19世紀初頭のイギリスである。またその化石は下顎の断片で、1848年にレグノサウルス(剣竜類)と名付けられた。1845年、現在の南アフリカの地域で、後にパラントドンと名付けられる化石が度々発見された。後の1874年、イギリスで発見された化石はクラテロサウルスと名付けられた。3つの分類群はすべて断片的な化石に基づいており、20世紀まで可能な剣竜類として認識されなかった。また、彼らは恐竜の新しい特徴的なグループの存在を疑う理由を与えなかった。
また、基盤的な装盾類が発見され始めたのは1850年からである。最古の化石はイギリスで発見されたスケリドサウルスであり[25]、これまでの化石としては完全なものだった[26]。19世紀には、当時知られていたほとんどすべての装盾類がスケリドサウルス類のメンバーであると考えられていた。20世紀後半には、この用語はスクテロサウルス、エマウサウルス、ルシタノサウルス、タティサウルスなどの装盾類は、曲竜類や剣竜類の祖先に近い「基盤的な」鳥盤類の分類群を指すようになった[27]。
1874年、明らかにスパイクを備えた大型の草食動物であることが明らかだったものの広範な化石がイギリスで発見された[28]。剣竜類はここから本格的な研究が始まった。 曲竜類も第二次世界大戦後、より完全な形・化石で発見されるようになり、アジア産のタラルルスやサイカニア、北アメリカ産のサウロペルタやシルヴィサウルスなど、これら曲竜類の外見をよりよく識別できるようになった。1980年代には、オーストラリア大陸初の曲竜類であるミンミと[29]、南極大陸初の曲竜類であるアンタークトペルタが発見された。中国からは、1990年代以降、ティアンゼノサウルスやリャオニンゴサウルスなど、大規模なものが発掘されるようになった。同時期に、北アフリカでは、進化史にとって重要な曲竜類(ガルゴイレオサウルスとミモオラペルタ)が発見された[30][31]。
基盤的な(原始的な)装盾類は、曲竜類と剣竜類につながる系統を形成するか[16][32][33]、あるいは曲竜類との姉妹群関係にあり、剣竜類はその両者よりも基盤的になるかのどちらかである[34]。また、これらの分類群をスケリドサウルス類とする場合があり[18]、スケリドサウルス類についても合わせ解説する。前期ジュラ紀に出現した装盾類で[35][36][37][38]、後期ジュラ紀には見られなくなった[39]。これらの属は小型から中型の装盾類だった[8]。
頭は大きくなく、堅牢な造りで、嘴は幅狭く、眼も大きくなかった。上顎前端には歯があった。腹部等はやや幅広く、尾は長かった。二足歩行から四足歩行のものいる[38]。腕と脚は柔軟性があり走ることができた。また、鋭くない鉤爪を持っていた[8]。腕は短いものから長いものまでおり小さな原始的なこぶのある皮骨でできた板を持っていた[40]。基盤的な鳥盤類と体つきは似ており、ほっそりしていた[7][39][41]。スケリドサウルス、スクテロサウルス、エマウサウルス、ユシサウルスなど、これらの大部分は北半球の北アメリカ、ヨーロッパ、中国から知られている[38][35]。
他の大陸で発見されていないのは、調査が不十分が原因とされている。また、その大陸で発見された場合、分類をより細分化できる可能性がある[8]。
曲竜類(鎧竜類)は、Euankylosauria(アンキロサウルス科とノドサウルス科を含む)とパラアンキロサウルス類が主要なグループである[42][5]。
中期ジュラ紀に姿を現し、後期白亜紀に大繁栄し絶滅した[21][36][38]。一般的に皮骨の形態でグループの大別が出来る。皮骨の断面には、繊細で複雑に絡み合ったスポンジ状の構造が見える。装甲を発達させるために、自らのカルシウムが使用されており、他の恐竜の様に成長ではなく、防御力を高めることが優先されていた[16]。
アンキロサウルス科は、Euankylosauriaの2つの科のうちの1科。中期ジュラ紀から後期白亜紀まで存続し[43][38]、アフリカ以外の世界中で栄えた[35][37]。この属は、膨張した尾椎が融合しひとつの棍棒状の塊[16]となった大きな尾部が特徴的である[36]。その棍棒で捕食者を撃退したり[5][44]、種内闘争に用いられたと考えられている[40][21][45][46]。彼らは体格がよく、頭から尻尾まで骨の鎧で覆われ[43][8]、瞼のような小さな部分に至るまで装甲で覆われていた。また、"頸部"はほとんど、あるいは全くなく、頭部は平らでずんぐりしておおまかにシャベル型をしており、両側のほぼ耳と頬のあたりに2本の棘があるのが特徴。アンキロサウルス科は広くて平らな頭蓋骨を個体間の頭突きに利用していた可能性がある[45]。エウオプロケファルス・トゥトゥスは、おそらく最もよく知られたアンキロサウルス科である。
ノドサウルス科はEuankylosauriaのうちのもう一方の科であり、実際にはアンキロサウルス科の祖先が含まれている可能性がある。中期ジュラ紀(約1億7000万年前)から後期白亜紀(約6600万年前)にかけて生息し、アンキロサウルス科と同じように装甲をまとっていたが、尾部にはスパイクがなかった。その代わりに、体の他の部分を覆っていた骨の隆起や棘が尾まで続き、肩甲骨あたりに鋭い棘をまとっていた[43][35][37]。ノドサウルス類の例はサウロペルタやエドモントニアで、後者は前方に突き出た肩の棘が特徴的[37][40]。
パラアンキロサウルス類は、2021年に別の分類群として認識された、曲竜類よりも基盤的なグループである。中期ジュラ紀にEuankylosauriaから分岐したと考えられている。Euankylosauriaとは異なり、ゴンドワナ大陸に分布し、南アメリカ南部、オーストラリア大陸、南極大陸から知られている[42]。四肢が細長いなど、より基本的な特徴を残しているが、最も特徴的なのは尾の武器、マクアウィトル(macuahuitl、同名の武器にちなんで命名)で、尾の裏側に扇状の構造を形成する平らな骨皮の配列からなる。この構造は剣竜類のサゴマイザーや曲竜類のスパイクに似ているが、それとは異なった。マクアウィトルはステゴウロスの化石から完全に知られており、おそらくアンタークトペルタの断片的な化石からも知られている[42]。
剣竜類はステゴサウルス科とファヤンゴサウルス科からなる[16][8]。これらの恐竜は主に中期ジュラ紀から後期にかけて全ての大陸(主に北半球[16])で生息しており[8][40]、一部の化石は前期白亜紀にも見つかり[18]、白亜紀の中頃には絶滅したとされるが[35]、インドの後期白亜紀の地層から剣竜類とされる化石が沢山発見されているが保存状態が非常に悪い為、その実態は定かではない[21]。また、後期ジュラ紀に最も栄えた[36]。全ての属にプレートとスパイクやサゴマイザーがあった[40]。剣竜類は体に対し頭部が非常に小さく[18]、ステゴサウルス類は、単純な歯を持ち非常に小さな頭を持っていた[21]。また、脳の大きさは恐竜の中で最小だった[40]。剣竜類は、胴椎に沿った板や棘の列と、長い脊椎を持っていた。剣竜類の剣板は体温調節の役割があり[7][36]、種を識別するためのディスプレイとして、また求愛行動といった[40]、誇示行動やライバルを威嚇するために使われたと考えられていた[8][21]。だが、2004年に発表された研究では、この上記の説は否定され、アメリカの研究者が剣板の微細構造を解析した結果、単なる鱗の一種の可能性があるとした。この研究が正しいければ、剣板で個体識別を行ったと考えられている[44]。剣竜類でよく知られているものとして、ステゴサウルスやケントロサウルス等が挙げられる。
装盾類の分類学的位置を示す。以下のクラドグラムは、ゲナサウルス類を最初に定義したセレノの論文に基づくものである[47]。
ゲナサウルス類 |
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以下は、Butlerら(2011年)の分析に基づく、より新しいクラドグラムである。
ゲナサウルス類 |
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分類法は恐竜古生物学者の間では存続することが支持されなくなり、ほとんど廃れてしまったが、21世紀の出版物の中には分類法を残しているものもいくつかある。ほとんどの場合、装盾類は一般的に、剣竜類と曲竜類を含むランク付けされていない分類群として分類されているが、装盾類は、剣竜類と曲竜類を下目として装盾類が亜目に分類されることもあり[4]、剣竜類と装盾類が亜目として分類されることがある。
装盾類は、1915年にフランツ・ノプシャによって最初に命名された[2]。装盾類は、1998年にポール・セレノによって「トリケラトプスよりもアンキロサウルスに近縁なすべてのゲナサウルス類」と定義された。装盾様類(そうじゅんようるい[3]、学名 : Thyreophoroidea)は、1928年にノプシャによって最初に命名され、1986年にセレノによって「スケリドサウルス、アンキロサウルス、それらに最も近縁な共通祖先とそのすべての子孫」として定義された[47]。寛脚類(かんきゃくるい[3])あるいはエウリポッド類(えうりぽっどるい[8])、ユーリ脚類(ユーリきゃくるい、学名 : Eurypoda)、他にエウリポーダ類、エウリプス類、広脚類(などがあり、Eurypodaの定訳がない)は、1986年にセレノによって初めて命名され、1998年に彼によって「ステゴサウルス、アンキロサウルス、それらに最も近縁な共通祖先とすべての子孫」と定義された[48]。
2021年、Daniel Madzia率いる国際的な研究者グループは、鳥盤類分類の定義を標準化する目的で、最も一般的に使用されている鳥盤類の分類のほぼすべてを国際系統命名規約に登録した。Madziaらによると、装盾類はアンキロサウルス・マグニベントリスとステゴサウルス・ステノプスを含むが、イグアノドン・ベルニサルテンシスとトリケラトプス・ホリドゥスを含まない最大のクレードと定義されている[15]。
以下のクラドグラムは、古生物学者のRichard S. Thompson、Jolyon C. Parish、Susannah C. R. Maidment、Paul M. Barrett.による2011年の分析に基づいたものである[32]。
装盾類 |
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以下のクラドグラムはRiguettiら(2022)の系統解析であり、Soto-Acuñaら(2021)の曲竜類のクラドグラムに基づくものである[33][42]。翌年のジャカピルの記載により、Riguettiらは同じマトリックスを修正し、寛脚類の姉妹群としての位置を占めることを発見した[33]。
装盾類 |
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以下のクラドグラムは、2024年Fonsecaらによって更に分析され更新されたもの[6]。
装盾類 |
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2020年、デビット・ノーマンはスケリドサウルスのモノグラフの一部として、初期の装盾類の関係を修正し、今まで考えられていた説は、スケリドサウルスなどを含む装盾類が、このグループの中で一番基盤的な分類群とされていたが、この説では剣竜類が最も基盤的な装盾類であり、スクテロサウルス、エマウサウルス、スケリドサウルスは剣竜類+曲竜類ではなく、曲竜類の進歩的なステムグループであることを発見した。クラドグラムを以下に示す[34]。
装盾類 |
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低い位置から中程度、高い位置のブラウザー(低木や潅木の葉などを含む多汁質の養分量の多い草類や、果実、芽、花などを選択的に採食する草食動物)あるいはグレイザー(生草や牧草などを含む粗飼料を選択しないで採食する草食動物)だった。例外としては高木を食べることに良く適した剣竜類のミラガイアがいる。概して速く動ける体ではなかった。主に装甲で受動的に身を守ったが、一部の種は発達した棘などを武器として用いていた[8]。
装盾類の剣竜類には、性的二形の可能性を示すいくつかの発見がある。2015年Saittaは[49]、ヘスペロサウルスの剣板には2つの形態があり、1つの形態は幅の狭い背の高い形態よりも表面積が45%大きい幅の広い楕円形の板を持つという証拠を提示している。剣板がディスプレイ構造として機能した可能性が高く、広い楕円形が広い範囲での連続的なディスプレイを可能にしたことを考慮し、Saittaは表面積の広い形態をオスとし、もう一方をメスとした。
カリフォルニア大学バークレー校の古生物学者、ケヴィン・パディアンは、Saittaが標本の骨組織切片の特徴を誤認したと指摘し、「この動物が成長を止めたという証拠はない」と述べた。パディアンはまた、研究における一体一体の標本の使用について倫理的な懸念を表明した[50]。
剣竜類のケントロサウルス、ダケントルルス、ステゴサウルスもまた、メスに3本の余分な仙骨があるという形で二形を示したと示唆されている[51]。
2023年2月、研究者たちは、装盾類の曲竜類のピナコサウルス・グランゲリから発見された喉頭の化石に基づき、曲竜類が発声していた可能性があるとした。また、鳥の鳴き声のような発声であると報告した[52][53]。今後、研究が進めば、どのような声で発声してたのか、コミュニケーションをとっていたかが分かる可能性もあり、また、鳥のように多彩な発声を使い分けていた可能性がある[10]。
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