マレー鉄道
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マレー鉄道(マレーてつどう、略称:KTM, マレー語: Keretapi Tanah Melayu, 英語: Malayan Railways)は、厳密かつ狭義にはマレー半島南部を占める国マレーシアを縦断する鉄道路線の総称、もしくはこれを運営するマレーシア鉄道公社に対する一般的な呼称である。本項ではこの定義に基づいて記載する。
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歴史的経緯によりシンガポールにも鉄路を伸ばしている。現在、下部(資産所有・管理)と上部(運営・運行)を別事業体が行う上下分離方式が採られている。
なお、広義にはタイの首都、バンコクからタイ国鉄南線を経由し、マレーシア=タイ国境のパダンブサールを介して、ケダ線およびウエスト・コースト線を結びシンガポールに至る、マレー半島縦断鉄道ルートを総称する名称として用いられることもある。ただし、歴史的にはマレー鉄道とタイ国鉄南線はマレー半島縦断鉄道という構想のもとに計画されたものではない上に、現地でもマレー鉄道の名称は専らマレーシアの鉄道を指す語としてのみ使用されている。また、タイ国鉄では南線の呼称としてマレー鉄道の名称を用いることもない。従って、この広義の呼称は、太平洋戦争期における旧日本軍の戦略上の構想や、第三国の紀行作家もしくは旅行業者による誤解、誤記が広まって定着したものと思われる。
沿革と概要
歴史は海峡植民地時代にさかのぼり、1848年にスズの大鉱床がペラ王国(現在のペラ州)で発見され、スズを港まで運搬するために1885年6月1日にタイピン~ポート・ウェルド間(このポート・ウェルド支線はすでに廃線)がペラ国有鉄道(英語:Perak Government Railway)として開業したのが始まりである。
マレー鉄道開業100年にあたる1995年8月14日には、クアラルンプール近郊の交通渋滞解消を目的に既存のマレー鉄道の路線を複線・電化し電車を運行する都市型輸送に特化したKTMコミューターがラワン~クアラルンプール間で運行を開始した。その後KTMコミューターは徐々に運行範囲を拡大してきている。
- KTMコミューターの運行開始[1]とその後のKTMコミューターの歴史。
- ウエスト・コースト線
- 1890年5月6日、カムンティン~タイピン間の開業を皮切りに順次延伸し1918年までに全通している。なお、ジョホール・シンガポール・コーズウェイが建設される前はジョホール・バルからウッドランズ駅まで鉄道連絡船でジョホール海峡を渡り、連絡していた。ジョホール海峡を横断する土手道が1919年から建設が開始され、鉄道も敷設された。同区間は、1923年9月17日に貨物列車が運行を開始し、旅客列車は1923年10月1日に運行を開始した。現在、クアラルンプール近郊から北部にかけてはケダ線を含めてタイ国境まで電化され、KTMエレクトリック・トレイン・サービスとして高速電車サービスが運行されている。
- イースト・コースト線
- 1910年4月1日、バル~グマス間の開業を皮切りに1931年までに順次延伸し、スンガイ・コーロック支線を含んで全通している。第二次世界大戦の際、約250kmの区間が日本軍によって撤去された(泰緬鉄道に転用)が、終戦後に一部区間が付け替えとなったものの全区間で再敷設された。
所有
所有は、鉄道資産公社(略称:PAKまたはRAC, マレー語:Perbadanan Aset Keretapi, 英語:Railways Asset Corporation)である。
運営
運営・運行はマレーシア鉄道公社(略称:KTMB, マレー語:Keretapi Tanah Melayu Berhad, 英語:Malayan Railways Limited)である。
KTMBはPAKとともに1992年にマレーシア国有鉄道(英語:Malayan Railway Administration)から鉄道事業を受け継いで設立された会社であるが、いずれもマレーシア政府が管理する団体である。
路線
3つの本線といくつかの支線から構成されている。
西海岸タイ国境のパダン・ブサールからブキッ・ムルタジャムに至るケダ線158km、バターワースからブキッ・ムルタジャムでケダ線に合流しクアラルンプールを経てシンガポールに向かうウエスト・コースト線785kmがある。一般的には、この2本の本線はバダン・ブサールからシンガポールまで1本の本線で紹介されることが多い。
同じくタイ国境の東側海岸付近にあるトゥンパからマレー半島中央部を走ってウエスト・コースト線にグマスで合流するイースト・コースト線528kmなどがある。
かつては基本的に単線で非電化だったが、近年ウエスト・コースト線を中心に複線電化工事が進められ、KTMコミューター運行区間と、ウエスト・コースト線のバターワース〜グマス間、それにケダ線の全線で完了している。軌間は1,000mm。
ルート | 線名 | 区間 | インタ丨シティ | ETS | コミュ丨タ丨 | 貨物 | 記事 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
400 | ケダ線 | パダン・ブサール~ブキッ・ムルタジャム | ● | ● | ● | ||
100/200 | ウエスト・コースト線 | バターワース~クアラルンプール~ウッドランズ・トレイン・チェックポイント | ▲ | ▲ | ▲ | ● | KTMコミューター:タンジュン・マリム~タンピン間 |
110 | ファリム支線 | イポー~ファリム車庫 | 非営業線 | ||||
130 | バトゥ・ケーブス支線 | バトゥ分岐点~バトゥ・ケーブス | ● | ● | |||
210 | クラン支線 | ポート・クラン分岐点~ポート・クラン | ● | ● | |||
215 | スリ・スバン支線 | スバン・ジャヤ~スリ・スバン | 運行停止中 | ||||
218 | ノース・クラン・ストライト支線 | ジャラン・カスタム~ノース・クラン・ヤード | ● | ||||
プラウ・インダ支線 | ポート・クラン~ウエスト・ポート | ● | |||||
230 | ポート・ディクソン支線 | スレンバン~ポート・ディクソン | 運行停止中 | ||||
タンジュン・プレパス支線 | スクダイ~タンジュン・プレパス | ● | |||||
240 | パシール・グダン支線 | クンパス・バル~パシール・グダン | ● | ||||
300 | イースト・コースト線 | トゥンパ~グマス | ● | ● | |||
310 | スンガイ・コーロック支線 | (スンガイ・コーロック~)ランタウ・パンジャン~パシール・マス | スンガイ・コーロック~ランタウ・パンジャン間はタイ国鉄との連絡線
運行停止中 | ||||
●:すべての区間で運行 ▲:一部の区間で運行
運行概要
旅客輸送サービスは、長距離列車を運行するKTMインターシティ、都市間高速電車を運行するKTMエレクトリック・トレイン・サービスと、クアラルンプール近郊で通勤電車を運行するKTMコミューターに分けられる。
KTMインターシティ
→詳細は「KTMインターシティ」を参照
KTMインターシティは、ウエスト・コースト線タンピン駅以南及びイースト・コースト線で運行している。南部はシンガポールのウッドランズ・トレイン・チェックポイントまでマレー鉄道として運行されている。以前は3つの本線全域で運行され、北部はタイ国鉄に接続する直通列車もあった。
KTMエレクトリック・トレイン・サービス(ETS)
→詳細は「KTMエレクトリック・トレイン・サービス」を参照
2010年にウエスト・コースト線の複線電化区間で開始された運行サービスで、全列車専用電車で運転されている。
KTMコミューター
→詳細は「KTMコミューター」を参照
KTMコミューター(マレー語:KTM Komuter)は、長距離輸送のKTMインターシティに対してクアラルンプール近郊で近距離輸送に特化している。3ルートあり、運行区間は全線複線電化されている。また、バターワース~パダン・ルンガル、パダン・ブザール間でも運転されている。
KTMカーゴ
→詳細は「KTMカーゴ」を参照
マレーシア国内の長距離輸送手段として、多くの貨物列車がほぼ全線にわたって運行されている。KTMインターシティより運行本数が多い。タイ国鉄への直通列車も運行されている。
イースタン・オリエント・エクスプレス(E&O)
→詳細は「オリエント急行 § イースタン&オリエンタル・エクスプレス」を参照
シンガポールからマレーシアを縦断しマレーシア国内を観光する国際観光列車で、雰囲気やサービス、食事も豪華そのものである。運営はベルモンド社で、マレー鉄道やタイ国鉄は、路線を貸しているだけである。つまり、ベルモンド社は、日本の鉄道事業法でいうところの第二種鉄道事業者に相当する。
駅一覧
閉塞方式
利用状況
列車番号
車両
出典
関連項目
外部リンク
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