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日本の古文献、ヲシテ文字で記述した古代文献 ウィキペディアから
『ホツマツタヱ』は、「ヲシテ」なる「文字」(いわゆる「神代文字」の一つである)を使っているいわゆる「ヲシテ文献」のひとつ。公的な学術学会では研究が進んでいないものの、『古事記』『日本書紀』との原文比較などを基にそれらの原書であると主張する研究者も複数存在する[1][2][3][4][5][6]。
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五七調の長歌体で記され、全40アヤ(章)・10700行余で構成された、いわゆる「古史古伝」のひとつである。肯定派の研究者によれば、『古事記』『日本書紀』との内容比較から、成立時期はそれらよりも古く、記紀の「原書」であるとされる。但し、現存するものとしては安永4年に制作された書籍が最古の写本であり、それよりも古い写本は見つかっていない[7]。
『ホツマツタヱ』の成立時期は不詳であるが、安永8年版と安永9年版の二種類の版本が『春日山紀』にある。『春日山紀』には、『ホツマツタヱ』の40アヤの各所からの引用文がヲシテ文字の原文で縦横に掲載されている。
これら2書に加え、平成4年、高島市安曇川の日吉神社の蔵から全40巻が発見されたことが、研究に拍車をかけた[7]。
文献全体の包括的な史料批判は、池田満によって『定本ホツマツタヱ』(展望社)が上梓されて、『古事記』『日本書紀』との原文の内容比較がなされている。また、『日本書紀』『古事記』との、内容比較においてどう判断してゆくかは、『ホツマツタヱを読み解く』(池田満、展望社)によって公表されている。また、『ホツマツタヱ』などの内容についての総合的な解説は『ホツマ辞典』(池田満、展望社)によって、年表や、系図も付録されて詳しく公表されている。
『ホツマツタヱ』には、複数の写本が現存している。幾つかの写本では「ホツマツタへ」「ホツマツタエ」とも、また漢訳されて「秀真伝」「秀真政伝紀」とも表記されている[注 1]。『ホツマツタヱ』と同様の文字による古文書である『ミカサフミ』(「三笠紀」)『フトマニ』(「太占」)も発見されている。この3書に使われている文字は同一で、文書の中では「ヲシテ」と呼ばれている。
更に『よみがえる日本語-ことばのみなもと「ヲシテ」』(池田 満・青木 純雄・平岡憲人 明治書院)や『よみがえる日本語II-助詞のみなもと「ヲシテ」』(池田 満・青木 純雄・斯波 克幸)の出版を受けて、さらにその勢いは増しつつある。
諸写本の微妙な文字の違いの校異の表記、『古事記』『日本書紀』と『ホツマツタヱ』の3書比較、『ホツマツタヱ』『ミカサフミ』『カクのフミ(フトマニなど)』の総合的な研究とその本来のあるべき姿への復権が進められつつある(参考図書を参照のこと)。
ヲシテ(ホツマ文字)は1音1字の文字である。母音要素(母態)と子音要素(父相)の組み合わせで成り立っている。48文字の基本文字があり、変体文字を含めると197文字が確認されている。文字について詳しくは、『ヲシテ』を参照のこと。
同時代のヲシテ(ホツマ文字)で書かれた文献には、伊勢神宮初代の神臣(クニナツ)オオカシマ命が記した『ミカサフミ』、アマテルカミ(記紀にいう、天照大神)が編纂して占いに用いたと伝えられている『フトマニ』などが発見されている。類似文献について詳しくは、『ヲシテ文献』を参照のこと。
漢訳すると『秀真』となる。『ツタヱ』は『伝え・言い伝え』であり、『ホツマツタヱ』は、『まことの中のまことの言い伝え(真の中の真の言い伝え)』の意味である。『正式の伝記・正式の歴史書・正史』という意味となる。
『ホ』はそれぞれの名家に伝承されていた文書を示すとすし、あえて漢訳するとしたら『文』が適切であるとする。『ツ』は名家に伝承されていた複数の文書を集めるイメージになっており、あえて漢訳するとしたら『集』が適切であるとする。『マ』は集めた文書を平たく受止めたうえで、一つの筋に纏めて次に進めるというイメージになっている。現代語でいうと『編集』である。あえて漢訳すれば、『纏』が適切であるとする。いくつもの名家に伝わった文書を集めて、編集して、一つの文書に結実させてゆくプロセス。そのプロセスを『ホツマ』と命名しているとし、『ホツマツタヱ』はこうしたプロセスを経て纏められた文書群を後世に伝えたものであるとする。あえて漢訳すると、『文集纏伝』となる。この説はヲシテ文字の形に込められている意味やイメージを研究した結果導き出されたものであるとされる。[8]
クニトコタチ神の八人(ト・ホ・カ・ミ・ヱ・ヒ・タ・メ)のクニサツチの皇子の内、『ホ』の皇子が建国した『ホツ(の)マ』国が隆盛し、自らの祖先神、天皇の世の史実をヲシテ(文字)で『伝』えた古文献が『ホツマツタヱ』と云われる。そのこと示すようにホツマツタヱ4アヤ3には、『昔この 国常立の 八降り子 木草お苞の 秀真国』と記述され、トの国(常世国)、ホの国(秀真国)、ヒの国(日高見)が見える。
『ホツマツタヱ』は、アメツチの始まり(天地開闢)から、カミヨ(記紀にいう神代)、そして初代人皇のカンヤマトイハワレヒコ(神武天皇)を経て人皇12代のヲシロワケ(景行天皇)の56年までを記述している。
1アヤから28アヤまでが前編で「クシミカタマ」の編集、29アヤから40アヤは後編で「オホタタネコ」(大田田根子)の編著による。
皇室の祖先が8代アマカミのアマテルカミ(天照大神)や初代アマカミのクニトコタチまで遡る。
『ホツマツタヱ』では、上記の歴史の他、ワカウタ(和歌)の成立、アワ歌という48音の基本音を表すウタおよび「縄文哲学」の詳しい記述、皇室の成立と歴史、結婚の法、イミナの意味、ミソキの方法、正しい食事の法、マクラ言葉(枕詞)の意味、刑罰の法、国の乱れの原因、国の意味、統治理念、ヲシテという文字のなりたち、ミクサタカラ(三種の神器)(タマ・カカミ・ツルキ)の成立と意味、トノヲシテと呼ばれる当時の憲法、国号の変遷、乗馬の法、各地の馬の品種、トリヰ(鳥居)の意味、自然神の祭祀、大宇宙とヒトの関係、暦の法、ヤマトウチ(神武東遷)の背景、天皇即位の儀式の変遷、ツツウタの意味、葬儀の法などが述べられている。
また、歴代の天皇のイミナ(実名)と陵墓、伊勢神宮他主要な神社の創建のいわれ、ヤマトコトハ(大和言葉)の語源なども述べられている。
真書であれば、日本の国の創建と古代日本の文明を明らかにする書物ということになるが、その根拠は乏しい。真書としての根拠の提示に、池田満は、『定本ホツマツタヱ』(松本善之助 監修、池田満 著、展望社)、および、『ホツマツタヱを読み解く』(池田満 著、展望社)、『ホツマ辞典』(池田満、展望社)などを出版して世に問うている。「縄文哲学」の言葉は、池田満の命名による。またオホタタネコは崇神天皇と同世代の人物であり、景行天皇までの歴史を編纂したという内容を信じる場合、ホツマツタヱに記述されている通りの当人の長命を前提とする必要がある。
和仁估安聡本(やすとし本) ホツマツタヱの目録 「ヲシテをカナに直したもの(と漢訳文)」
古い時代の、ヲシテ文献の成立時代には、アヤの番号での呼び名は「ふそむのあやに」(ホ0-18)の用例がある事から、アヤ番号は用いられていた事が判る。だが、「アのヒマキ」などの区分は、ヲシテ時代においておこなわれていたのかどうかは、根拠がない。
肯定的な意見としては、『記紀』との原文比較を全文に亘っておこなうことで、それらの原書であるとするものが主流である。ヲシテ文献から記紀へと漢訳され、決してその逆はありえないと判断できる根拠を示す箇所はいくつもあり、そのひとつに、船の種類を指す「ワニ」を、漢字文献では「和迩魚」や「鰐魚」といった魚の種類に取り違えてしまった例がある。もしも仮に、漢字文献からヲシテ文献が作られたと逆の仮定を想定しようとしても、和迩魚や鰐魚をワニフネに差し換えることはあり得ず、また差し換え得たとしても周辺の物語に齟齬を生じさせることは必定である[2]。また、当時の母音を8つとする上代特殊仮名遣いは、帰化人による異音の聞き分けに過ぎずネイティブにとっては5母音であったと考えうる[9]。また、『妾(めかけ)』の単語を712年に編纂された『日本書紀』より抜粋すると、日本書紀の「巻第二」だけでも「妾を含む文章」が18件も記述されておりホツマツタヱの正統性は揺るがない[1]。
否定論者の主張は、「『妾(めかけ)』などの江戸時代以降使われるようになったとされる言葉も登場していること」が、古文献の検証不足も否めない。また、「奈良時代以前の日本語は、母音は8つあり、『ん』の発音もなかったが、ヲシテでは母音が現在と同じ五音であり、古代に作られたのならば入っているはずのない『ん』が入っている」として、「江戸時代に創作された偽書である」というものである。藤原明氏は『日本の偽書』の中で、「『秀真伝』は、偽書以外の何物でもない」と断じている[10]。これに対し千葉富三氏は、「『日本の偽書』では、その論法からしてほかのいわゆる「古史古伝」とは一線を画し、逆に秀真伝の真書性に確信が募るばかりでした」と述べている[5]。
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