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イネ目イネ科の植物で、木のように茎(稈)が木質化するものの総称 ウィキペディアから
竹(タケ)は、広義には、イネ目イネ科タケ亜科に属する植物のうち、木本(木)のように茎(稈)が木質化する種の総称。
本項では便宜上、狭義のタケを「タケ」、広義のタケを「タケ類」と表し、タケ類全体について述べる。ただし、「タケ類」はタケ亜科、あるいは狭義のタケの意味で使われることもあるので、注意を要する。漢字の「竹」は人文・産業的な文脈に限って用いる。竹は英語でbambooであるが、「バンブー」と「竹」は狭義の意味で区別されるので注意が必要である。
タケは気候が温暖で湿潤な地域に分布し、アジアの温帯・熱帯地域に多い。ササは寒冷地にも自生する。タケ、ササの分布は北は樺太から南はオーストラリアの北部、西はインド亜大陸からヒマラヤ地域、またはアフリカ中部にも及ぶ。北アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカの大部分には見られない。
稈の丈は代表種であるマダケなどで20mを超える[1]。稈はとても強く大きくしなっても簡単には折れない[1]。
通常は、地下茎を広げ、地下茎からタケノコが直接生えることでふえていく。これは、無性生殖の一種である栄養生殖である。次々とタケノコが生えることによって生息域を広げて竹林となるが、これらの竹はすべて遺伝子が同一のクローンである。このようにしてふえた(1本の)竹には寿命があるので、やがて竹林全体が花を咲かせて有性生殖を行い、子孫をつくったのちに一斉に枯死する。花が咲くことは極めてまれで、花が咲くときは4月から5月にかけてである[1]。一部のタケ類は周期的に開花し一斉に枯れることが知られている。その周期は極めて長く、ハチク[2]、マダケの場合は約120年周期であると推定されている[3]。しかし、まだ周期が分かっていない種類も多い(日本におけるモウソウチクの例では、種をまいてから67年後に一斉に開花・枯死した例が2例(1912年→1979年・1930年→1997年)報告されている[4])。竹の種類によって開花周期に幅が見られるが、一般にはおおよそ60年から120年周期であると考えられている[5]。
タケ類は成長力が旺盛で、ピークの時は1日で1メートル以上成長する。生長は極めて早く、マダケではタケノコから成竹になるまで30日という記録がある[6]。竹林の近くにある民家の中に竹が侵入する(タケノコが生える)被害もある。放置された竹林で地滑りの発生が多いという研究も報告があり[7]、事例も複数報告されている。また放置竹林によって山地が覆われ、元々植生していた広葉樹や針葉樹の光合成が妨げられ、生物多様性が損なわれ、結果として森林の減少を招くという問題も起こっており、各地で対策が講じられている。2017年、林野庁によると、全国の竹林面積は2002年約15万6000ヘクタール、2017年約16万7000ヘクタールと増え、都道府県別竹林面積は、鹿児島県1万7927ヘクタール、大分県1万4042ヘクタール、福岡県1万3619ヘクタール、山口県1万2001ヘクタール、島根県1万1157ヘクタールなど。竹材の生産は1960年は年間約40万トン、2010年は3万トンを切った[8]。
乾燥が十分なされたものは硬さと柔軟さを備えており、古来より様々な用途に使われてきた(詳細は「#利用」参照)。竹細工の材料、建材などのほか、繊維を利用して竹紙も作られている。竹酢液や竹炭としても利用される。前述した放置竹林の問題においても、これらの素材としての活用を求め、様々な研究、試行錯誤が行われている。
タケの芽を筍と呼び、食用とする[1]。葉を食料として利用する動物もおり、ジャイアントパンダはこれを主食としている。
モウソウチクを除く種の多くは、限られた地域でしか生育しないことが多い。その理由は不明である。
タケが草本か木本かは意見が分かれている。多くの草本類と同じく茎にあたる稈に年輪は見られないが、一方で木本類のように堅くなる性質がある[1]。また、通常の木本と異なり二次肥大成長はせず、開花後は枯死することが多い。分類上も、タケは単子葉植物であるイネ科植物で、イネ科をはじめとする単子葉植物は大半が草本として扱われている。このようにタケには草本の特徴が多く見られるため、タケを多年草の1種として扱う学説が多い。「木#学術的な定義を巡って」も参照。
タケ類はイネ科タケ亜科に属する。熱帯性木本タケ類と温帯性木本タケ類の2つの系統を合わせてタケ連として扱うこともある。タケ亜科にはタケ連のほかに Olyreae 連が属するが、Olyreae 連は典型的な草本であり、タケ連のような木質の茎を作らない。
Sungkaew et al.(2009)[9]の分子系統学的解析によると、タケ連は単系統ではなく、熱帯性木本タケ類と温帯性木本タケ類の2つの系統に分かれる。熱帯性木本タケ類が Olyreae と姉妹群となり、温帯性木本タケ類はそれら全体と姉妹群である。彼らはこの結果から、温帯性木本タケ類を Arundinarieae 連に分割すべきとしている。
タケ亜科 |
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タケ類は熱帯性木本タケ類と温帯性木本タケ類の2つの系統に分かれ生育型が大きく異なる。このことから、分類学的には従来、タケ連(Bambuseae)にまとめられていた。しかし、その後の研究によって単系統ではないことが判明し、分割が提案されている。
温帯性木本タケ類は地下茎で生育繁殖するが、熱帯性木本タケ類は分蘖(株分かれ)によって株立ち状になる。
バンブーは、熱帯地方に産する地下茎が横に這わず株立ちになるもののことを指す場合がある。紙パルプ業界にはタケとバンブーの区別がある。
タケは狭義にはササと区別され、稈が成長するとともにそれを包む葉鞘(竹皮)が早く脱落してしまうものをタケといい、枯れるまで稈に葉鞘が残るものをササという[1]。
一般的には丈の低いものが笹竹の略とされる。しかし、オカメザサのように膝丈ほどのタケや、メダケのような背の高いササもある。名前に「○○ダケ」「〇〇チク」「〇○ザサ」とついていても実際のタケやササの判断とは異なる場合がある。
ちなみに、日本に見られるタケの多くは帰化植物と考えられ、一部種類には日本野生説もあるが、ほとんどは中国原産である。ササは日本産のものが多くあり、地方変異も数多い。
タケ類の種は、世界で600種とも1,200種とも言われる。日本には150種、あるいは600種があるといわれる(いずれも学説によって異なる)[10]。 日本に生育するタケ類のうち、代表的なものを以下に挙げる。
竹笹類に寄生する菌類には、細菌類、藻菌類、古生菌類などの菌類がない点で、近縁のイネ科植物と異なる[10]。1961年頃の情報では、子嚢菌類が43科219属454種、 担子菌類が20科50属97種、不完全菌類が10科106属195種である[10]。
2024年時点で日本植物病名データベース(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)に集められているマダケ類病名一覧では、30種以上の名前が挙げられている[11]。
通常、罹患した植物は商品価値が下がるものであるが、特徴的な模様が出る場合は虎斑竹、彪紋竹、日向斑竹、涙斑竹、祖母斑竹、瓔珞斑竹、胡麻竹などと呼ばれ、正倉院に収蔵された御物や平安時代に書かれた延喜式にも斑竹の名があるように古来から価値が見いだされている[10]。
ある程度大きく育った竹から、水を通さない硬い節で複数に仕切られた稈(かん)と呼ばれる茎などが得られる[16]。伐採後に乾燥させた竹の稈は強靭であり、細工が容易で、木材に乏しい弾力性に富んでいる。そのため、和弓や釣竿など、ばね性の必要な製品の素材として古来広く利用されてきた。
竹竿は内部が空洞なので、管としての性質を強く持つ。つまり、しなやかで強い素材である。しかもそれを構成するのが細長い繊維細胞であり、これも管である。したがって、特に引っ張りには強い。しかし、横からの力には管が壊れる形での破壊が起こりやすい。また、荷重を支えるのには向かない。状況に応じ、そのまま、また、割って細い板状にして使用される。横からつぶしたものはロープのようにも使用される。さらに細い棒状にしたものは竹ひごと呼ばれる。木とは異なり竹を割り竹にするときは穂先から根元方向に割るとほぼ均等に割れる(俗に木元、竹うらという)[17]。
伐採したままの竹を青竹(実際には緑色)と呼ぶ。火で焙ったり(乾式)、苛性ソーダで煮沸したり(湿式)して油抜きをした晒し竹、ある程度炭化させた炭化竹、伐採後に数カ月から数年間自然に枯らしたもの、家屋の屋根裏で数十年間囲炉裏や竈の煙で燻された煤竹と、種々の素材が得られる。これらは弾力性、硬さ、耐久性などが異なり、利用目的によって使い分けられる。 青竹は容易に入手できるが、耐久性に問題があり、晒し竹や炭化竹に加工することでその問題点は改善する。煤竹は独特の色(煤竹色)をしており、硬く、耐久性に富むが、入手は困難である。
桿はほぼ円柱状で中空であり、軽量、丈夫でよくしなる。そのため釣り竿や棒高跳の竿などの特殊な使用例がある。
伐採年齢は4年以上のものが強度、収縮率、比重などから良いとされている[17]。また、伐採時期については、夏から初秋にかけての地下茎の成長期に貯蔵栄養分が糖として利用されるため、2月から8月(にっぱちと俗にいう)に伐採すると害虫の影響などで耐久期間が短く長期保存に向かなくなるといわれている[17]。
ある程度の長さに切り、途中の仕切りを突き抜けば、パイプができる。大きいものは直径10センチメートルくらいから細いものまである。また、これを縦に半分に切り、水を流すことにも用いられる。
竹を切らない、あるいは一つの節をそのままにした場合、密閉された容器となり、これを火中に投入すると派手な音を立てて破裂する。これが爆竹の由来である。
手に入りやすく、削る・曲げるなどの加工がしやすい。繊維の方向がはっきりしており、それに沿った方向には細かく割りやすい。節の部分で割れが止まるため、同質で同じ長さの棒状のものを量産しやすい。細く薄く削れば、その厚さ次第で適度な弾力の先端を得られる。さらに、無加工の状態でも比較的腐食しにくく保存が容易である。
細工や工芸によく使われ、大分県の別府竹細工や奈良県の高山茶筌など各地の伝統工芸品の材料としても多く用いられる。子供のおもちゃなどにもよく利用される。工芸品としては、伐採前の自然な変化や伐採後の経年変化により表面に様々な模様の入ったものが珍重される[22]。菌類による侵食を利用したものもある。
竹の内側にある薄紙と、竹を発酵させて得た繊維を漉いて作った紙を竹紙と呼ぶ。
他の植物と同様に、発酵させるとエタノールを得られ、バイオ燃料として利用できる。静岡大学では、超微粉末にする技術と、強力に糖化する微生物を探すなどで、糖化効率を従来の2%程度から75%に高めた。3年間でさらに効率を80%まで高め、1リットル当たり100円程度の生産コストを目指している。研究チームの試算では、国内には約9,300万トンの竹があり、年間330万トンまでなら採り続けても生態系への影響はない。これで燃料を作れば目標消費量の約10%を賄えるという。
また、エタノール化ではなく直接燃料にする場合は、カリウムと塩素の含有量が多く炉の傷みや有害ガスが発生しやすいために利用は限られていたが、近年では粉砕後に水に晒すことによりカリウムと塩素を抜いてからペレット化し、カリウム分が溶出した水も液肥として利用する技術なども開発されている[30]。
粉末にした竹(竹粉)は土壌改良に使われる。堆肥などとともに農地にすき込むことで、土中に空気の層ができて農作物の根の張りが良くなるほか、竹粉に付着している乳酸菌が病原菌や雑草を抑える効果がある[31]。
古代、紙の発明以前は中国および近隣の朝鮮・日本では、紙の代りに木簡および竹簡が広く使われた。しかし、日本では竹簡の使用例は少ない[32]。
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竹紋(たけもん)は、竹を図案化した家紋である。笹紋も含む。
『大要抄』に記された車文の「篠の丸(ささのまる)」が所見とされる。勧修寺家とその一門、関係する武家を通じて分布した。
図案は、竹の幹、葉を描いたもの、それに笠や雀、雪を添えることがある。雀を添えたものは多数図案があるがまとめて「竹に雀」と呼ばれる。ほかに筍を図案化したものもある。
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