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スーパーライセンス(Super Licence)は、国際自動車連盟(FIA)が発給するモータースポーツライセンスのクラスの一つ。競技運転者(ドライバー)としてフォーミュラ1(F1)に参戦するためにはこのスーパーライセンスを所持していることが必須条件。モータースポーツライセンスのトップライセンスである。
FIAのF1 Sporting Regulationによれば、スーパーライセンスには「ドライバー」「チーム」(Competitor)「オフィシャル」の3種類が存在するが、本記事ではその中でも特にドライバーライセンスについて解説する。
ドライバーがスーパーライセンスの発給を受けるための条件は、FIA国際スポーツ規則補則L項[1]の中で規定されており、2021年現在は以下の条件を満たすことが必要とされている。なお、書面としての「スーパーライセンス」はない。ライセンスは12ヶ月有効であり、下記の条件を満たしていない場合は更新にあたりF1委員会の審査が必要になる。条件を満たしているが発給を受けられなかった場合を考慮し、発給資格は3年間有効とする[2]。
※以下は2024年1月現在。
選手権 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
FIA F2選手権 | 40 | 40 | 40 | 30 | 20 | 10 | 8 | 6 | 4 | 3 |
インディカー・シリーズ | 40 | 30 | 20 | 10 | 8 | 6 | 4 | 3 | 2 | 1 |
FIA F3選手権 | 30 | 25 | 20 | 15 | 12 | 9 | 7 | 5 | 3 | 2 |
FIA フォーミュラE選手権 | 30 | 25 | 20 | 10 | 8 | 6 | 4 | 3 | 2 | 1 |
FIA WEC ハイパーカー | 30 | 24 | 20 | 16 | 12 | 10 | 8 | 6 | 4 | 2 |
スーパーフォーミュラ フォーミュラ リージョナル・ヨーロッパ |
25 | 20 | 15 | 10 | 7 | 5 | 3 | 2 | 1 | 0 |
FIA WEC LMP2 | 20 | 16 | 12 | 10 | 8 | 6 | 4 | 2 | 0 | 0 |
SUPER GT GT500 IMSA GTP |
20 | 16 | 12 | 10 | 7 | 5 | 3 | 2 | 1 | 0 |
フォーミュラ リージョナル (中東・アジア・アメリカ・ジャパン・オセアニア・インド) | 18 | 14 | 12 | 10 | 6 | 4 | 3 | 2 | 1 | 0 |
DTM FIA WTCR スーパーカーズ選手権 NASCARカップ・シリーズ インディNXT Wシリーズ ユーロフォーミュラ・オープン スーパーフォーミュラ・ライツ |
15 | 12 | 10 | 7 | 5 | 3 | 2 | 1 | 0 | 0 |
FIA F4選手権 FIA WEC LMGT3 FIA WEC LMGTE Pro |
12 | 10 | 7 | 5 | 3 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 |
ル・マン・シリーズ LMP2(ELMS・AsLMS・IMSA) FIA WEC LMGTE Am IMSA GTD Pro |
10 | 8 | 6 | 4 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
F3国内選手権 F1アカデミー USF・プロ2000 GB3選手権 NASCAR エクスフィニティ・シリーズ |
10 | 7 | 5 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
国際GT3シリーズ SUPER GT GT300 |
6 | 4 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
FIA 世界カート選手権 シニア | 4 | 3 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
FIA 大陸カート選手権 シニア FIA 世界カート選手権 ジュニア |
3 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
FIA 大陸カート選手権 ジュニア | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
FIAでは、F1の興行初日(通常は金曜日)のフリー走行でのみF1マシンのドライブが可能な限定ライセンスも発行している。発行に際して、2017年まではポイントシステムの適用がなかったが、2018年からは限定ライセンスについてもポイントシステムの対象となり、初回申請時は「過去3年にF2(旧GP2を含む)で6戦以上出走している、もしくはライセンスポイント25点以上」が必要となる。また2回目以降の申請では「過去3年以内にF2に1シーズン以上フル参戦している、もしくはライセンスポイント25点以上」が要求される[12]。
年 | 基本料 | 加算料 | 保険料 | 合計 |
---|---|---|---|---|
〜2007年 | 1,690ユーロ | 447ユーロ/ポイント | 2,615ユーロ | 4,305ユーロ+ポイント加算料 |
2008年 | 10,000ユーロ | 2,000ユーロ/ポイント | 2,615ユーロ | 12,615ユーロ+ポイント加算料 |
2009年 | 10,400ユーロ | 2,100ユーロ/ポイント | 2,720ユーロ | 13,120ユーロ+ポイント加算料 |
※加算料は前年に獲得したポイントが基準となる。
上記のように、前年の獲得ポイントが多いドライバー(好成績のドライバー)ほど年会費(加算料)も高くなるが、ライセンス発給のために必要な年会費が2008年より大幅に値上げされたことで、ドライバーから不満の声が上がっている[13]。2007年度ドライバーズチャンピオンのキミ・ライコネンを例にあげると、2007年(前年は65ポイント)の会費は33,360ユーロ(約530万円)なのに対し、2008年(前年は110ポイント獲得)は約23万ユーロ(約3,600万円)の会費をFIAに納めなくてはならない計算になる。しかも内訳の9割がポイント加算料で占めている。
FIA会長のマックス・モズレーは、当時「2000万ユーロ以上を稼ぐ人間にとって、25万ユーロのライセンス料は決して無謀な支出にはならない」と語り、値上げを正当なものだと主張したが[13]、一方でドライバー側の団体であるグランプリ・ドライバーズ・アソシエーション(GPDA)では、この値上げを不服として、同年のイギリスグランプリにおいて何らかのボイコット行動を起こすことを示唆したりもした[14](実際にはボイコットは行われなかった)。しかし2009年もさらに値上げが行われたことでGPDAからは強い不満が上がるようになったため、FIAではGPDAとの話し合いの上で2010年以降年会費を値下げする方向で見直すことを発表した[15]。
ちなみに、年会費は建前上ドライバーが自ら支払うことになっているが、実態としては、大抵チームが代わりに支払っている。また、これらの年会費は「FIAによるさらなる安全確保のための資金に充てる」とされているが、具体的な使途を明らかにしていないため、これも不満の声を上げる要因になっている。
スーパーライセンスの発給の是非は、最終的にFIAのF1委員会の判断で決定されるが、その意思決定プロセスは非公開であり不透明であることから、しばしばライセンスの発給を巡り問題が発生することがある。
過去にライセンス発給を巡って問題になった主な例としては以下のものがある。
2016年に導入されたライセンスポイント制に対し、ドライバーの過度の低年齢化を防ぐという意味で歓迎の声がある一方で[22]、FIA直轄のカテゴリーが必要以上に優遇されているとして、既存のジュニア・フォーミュラの主催者からは反発も出た[23]。これを受けて、FIA直轄でない選手権のポイントが増加し、対象となる選手権が追加されるなどの変更が認められた[24]。それでもなお、各国F3よりもFIA F4の方がポイントが高いなど、一部でカテゴリの格とポイントが逆転している部分が残っている。 そのため、「スーパーライセンスポイント40点以上=スーパーライセンスの発給承認(フリー走行限定ライセンスの場合はライセンスポイント25点以上)」というようなシステム[25]となったため、スーパーライセンスポイントの基準だけで判断するのは正当なのかと疑問視する声も少なくない[26][27][28]。
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