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2008年のイギリス映画 ウィキペディアから
『スラムドッグ$ミリオネア』(原題: Slumdog Millionaire)は、2008年のイギリス映画。監督:ダニー・ボイル。インドの外交官、ヴィカス・スワラップ[3]の小説『ぼくと1ルピーの神様』(日本刊・ランダムハウス講談社)の映画化作品。インド南部の大都市・ムンバイを舞台に、実在の人気テレビクイズ番組『コウン・バネーガー・カロールパティ』("Kaun Banega Crorepati"、イギリス発祥の世界的クイズ番組『フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア』のインド版。日本の『クイズ$ミリオネア』に相当)に出場したスラム育ちの青年が不正を疑われて潔白を主張する様子を通じ、インド社会の現実を描く。
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スラムドッグ$ミリオネア | |
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Slumdog Millionaire | |
監督 | ダニー・ボイル |
脚本 | サイモン・ビューフォイ |
原作 |
ヴィカス・スワラップ 『ぼくと1ルピーの神様』 |
製作 | クリスチャン・コルソン |
製作総指揮 |
テッサ・ロス ポール・スミス |
出演者 |
デーヴ・パテール マドゥル・ミッタル フリーダ・ピントー アニル・カプール イルファーン・カーン |
音楽 | A・R・ラフマーン |
撮影 | アンソニー・ドッド・マントル |
編集 | クリス・ディケンズ |
制作会社 |
セラドール・フィルムズ フィルム4 パテ |
配給 |
フォックス・サーチライト・ピクチャーズ/ワーナー・ブラザース パテ ギャガ・コミュニケーションズ |
公開 |
2008年11月12日(限定) 2008年12月26日(拡大) 2009年4月18日 |
上映時間 | 120分 |
製作国 |
イギリス アメリカ合衆国 |
言語 |
英語 ヒンディー語 |
製作費 | $15,000,000[1] |
興行収入 |
$378,410,542[1] 13.0億円[2] |
第33回トロント国際映画祭観客賞、第66回ゴールデングローブ賞作品賞(ドラマ部門)、第62回英国アカデミー賞作品賞受賞。第81回アカデミー賞では作品賞を含む8部門を受賞した。
映画は、以下の問題から始まる。
『コウン・バネーガー・カロールパティ』(以下、『ミリオネア』と略す)に出場した19歳の青年・ジャマールは、育ちが貧しく、ほとんど無学であるにもかかわらず、8つの難問クイズを突破して1000万ルピーの賞金を獲得し、翌日の2000万ルピーを懸けた最終問題の解答権を得るが、不正の疑いがかけられて、番組終了直後に詐欺罪で警察に連行され、警察署内で激しい拷問をともなう取り調べを受ける。「お前に何がわかる?」となじる警部に対し、ジャマールは「僕は答えを知っていたんだ」と訴える。警部は番組の録画ビデオを再生しながら、ジャマールを尋問していく。
(これ以降、現在=警察署、ジャマールによる少年時代の回想、クイズ番組の場面が時系列シャッフルで進行していく。)
ジャマールと兄のサリームはイスラム教徒の多く住むダーラーヴィー地区のスラムで生まれ育つ。ある日、ジャマールが宝物にしていたアミターブの直筆サイン入りのポストカードを、サリームが黙って映画館主に売り飛ばしてしまう。ジャマールはこのことを長く根に持つようになる。
国章の文字はヒンドゥー教の経典から取られたもので、イスラム教徒のジャマールにはなじみがなかった。ジャマールは3つの「ライフライン」アイテムのうち「オーディエンス(観客に解答をたずねる)」を用いてなんとか正解する。この映像を見た警部は「インド国民なら誰でも知っていることも知らないのだから、他の答えも不正があったはずだ」といぶかしがるが、ジャマールは「パーニープーリーが1皿いくらか知っていますか?」と当てこする。
ある日、兄弟の住むスラムをヒンドゥー教徒の過激派が襲撃し(ムンバイ暴動)、2人の唯一の肉親だった母親は目の前で殺されてしまう。兄弟は逃げる中、少年の姿をしたラーマの幻影を見る。同じようにスラムから逃げてきたラティカという孤児の少女と知り合い、かつて少し通った小学校で習った『三銃士』に自分たちをなぞらえ、行動をともにするようになる。
家を失った3人の前にママンという男が現れ、多くの子供たちとともに住む邸宅に招き、寝食の面倒を見るようになる。ママンの正体はギャングで、子供による物乞いの元締めであった。ギャングたちは同情を誘って稼ぎを多くするため、子供の目を酸で焼いて失明させることまで行っていた。『クリシュナ神の歌』を覚えさせられたジャマールは、目を焼かれるためにママンに呼び出されるが、隙を見てサリームやラティカとともに逃げ出す。兄弟は発車する長距離列車に飛び乗るが、ラティカは乗り遅れてママンに捕らえられる。
列車に住みついた兄弟は、食堂車から食べ物を盗んだり、物売りに雇われたりしながら数年かけて北へ移動し、タージ・マハルにたどり着く。そこでジャマールは観光ガイドや土産物の行商などで生計を立てるようになるが、サリームは地元の悪童たちと付き合い、盗みに明け暮れるようになる。金を貯めたジャマールはいやがるサリームを連れてムンバイに戻り、レストランで働きながらラティカを探し始める。
ジャマールは偶然、かつてともにママンのもとにいた盲目の物乞いの少年・アルヴィンドと再会する。アルヴィンドからラティカの居所を聞いたジャマールは、礼に観光客から手に入れた100ドル紙幣を手渡すが、かぎ慣れない匂いで偽札を疑ったアルヴィンドは受け取ろうとしない。ジャマールが「額の禿げ上がった長髪のおじいさんの描かれた札だ」と説明すると、アルヴィンドは「ベンジャミン・フランクリン。アメリカの100ドルだ」と安心する。
(話を聞いた警部が「では、1000ルピー札に描かれているのは?」とたずねるが、ルピーの高額紙幣を見たことがないジャマールは答えることができなかった。)
ラティカはママンのもとで「チェリー」という名のダンサーとして働いていた。ママンのアジトに忍び込んだ兄弟はラティカと再会し、逃がそうとするが、ママンと鉢合わせする。サリームはひそかに手に入れていたコルト社製の回転式拳銃を抜き、ママンを射殺する。ホテルの廃墟に隠れた3人だったが、増長したサリームがラティカを独占しようとジャマールに銃を突きつけ、廃墟から追い出す。それきりジャマールはサリームやラティカと長らく音信不通になる。
成長したジャマールはジュフのコールセンターでお茶くみのアルバイトに従事していた。コールセンターはイギリス国内向けの携帯電話プランの営業が主な業務で、広大なフロアはイギリスの通りや街の名にちなんで区画されていた。ある日、1人の『ミリオネア』ファンのオペレータが番組放送中に席を外し、その穴埋めを命じられる。ジャマールはその隙にデータベースから兄・サリームの電話番号を探り当てる。ビル街に一変したかつてのスラムの跡地で弟と再会したサリームは、ママン一味から報復されるのを防ぐために、長らくママンらと対立しているジャヴェドが率いる組織に入り、殺し屋となっていた。
サリームがラティカの行方を隠していると感じたジャマールは、サリームを尾行してジャヴェドの邸宅を探り当て、門番に「雇われた料理人だ」と偽り、中に入り込む。そこには囲われたラティカがいた。帰宅してきたジャヴェドは、テレビで『ミリオネア』が流れているのに気づくと「俺はもうミリオネア(大富豪)だ」とつぶやき、チャンネルをクリケット中継に変えた。ジャヴェドに出したサンドイッチが気に入られなかったジャマールはすぐに解雇され、邸宅を去ることになる。ジャマールはラティカに「毎日17時にVT駅で待つ。どこかへ逃げよう」と告げる。
ある日の夕方、ラティカが駅に現れるが、サリームらに連れ戻される。自身の無力を痛感したジャマールは、ラティカに希望を与えるため、『ミリオネア』に出場して賞金を得ることを決意する。
番組がCMに入り、ともにトイレに入った『ミリオネア』司会者のプレームは、「この国でスラムから大金を手にしたのは、これまでこの私だけだった」とジャマールをたたえつつ、くもった鏡に「B」と書いて立ち去る。
ジャマールは残り2つの「ライフライン」のうち「フィフティ・フィフティ」を使い、4択問題はBのリッキー・ポンティングとDのジャック・ホッブスの2択となる。プレームが自分を追い落とすために罠をかけていると直感したジャマールは、「D」と答え正解する。ここで放送時間がいっぱいとなり、プレームは「最終問題は翌日の放送で出題する」と告知して番組を締める。
ジャマールが不正を働いたと邪推したプレームは番組スタッフに命じて警察をテレビ局舎の出入り口に待機させ、出てきたジャマールを逮捕させる。
ジャマールは2日目の出演のため一時釈放され、パトカーに乗せられてテレビ局に入る。ジャマールの騒動はインド全土で大きく報道され、彼は時の人になっていた。インド各地の貧しい庶民たちが電気店や街頭テレビで『ミリオネア』の放送を見守る。ジャヴェドの邸宅でも彼以下ギャングたちが『ミリオネア』を見ていた。その隙にサリームがラティカに自動車の鍵と、自身の携帯電話を手渡す。ラティカはサリームに別れを告げ、邸宅を飛び出す。
ジャマールはドロップアウト(クイズに答えずに、前の問題までに獲得した賞金を受け取ること)を拒否し、最後のライフライン「テレフォン」を使う。唯一知っていた電話番号であるサリームの携帯電話にかけ、ラティカが出る。『三銃士』を読んだことがないラティカは答えることができなかった。ジャヴェドは、テレビからラティカの声が聞こえてきたために、彼女が逃げたことを知って怒り狂い、サリームを探す。浴室に待ち伏せしていたサリームは、飛び込んできたジャヴェドを射殺し、自身も手下たちから銃弾を浴びる。
ジャマールはAのアラミスを選択する。プレームに理由をたずねられると「何となくそう思った」と答える。最終問題に正解したジャマールは賞金を獲得する。
局舎を出たジャマールは、かつての約束のようにVT駅に向かう。ラティカもそこにいた。2人は抱き合い、口づけを交わした。
最後に冒頭の問題の答えが出て幕となる。
※括弧内は日本語吹替
(白石涼子)
他 M.I.A、Tanvi Shan、Alka Yagnik らが参加
この映画に出演した2人の子役ルビーナー・アリーとアズハルッディーン・イスマーイールの両親が「十分な出演料を受け取っていない」と発言[5][6]。両親によると2人の出演料はアズハルッディーンは年間1700ポンド(約24万円)、ルビーナーは年間500ポンド(約7万円)だという[5]。
これに対し製作側は「彼らの出演料は同地区の大人が受け取る平均年収の3倍」[5]としており、「彼らの教育費、生活費、医療費などをまかなうためのファンドもある」[6]と反論している。それに加え「高校卒業後にファンドとは別に10万ポンド(約1300万円)が支給される」[6][7][8]としている。
このような方法を取ったのは「ギャラの一括支払で起こりうる様々なリスクに配慮したため」[7]と説明しており、子役の報酬を周囲の大人に搾取させないためだとみられている[9]。
2009年4月19日、イギリスの大衆紙『ニュース・オブ・ザ・ワールド』は、ルビーナー・アリーの父親がアラブ人富豪に扮する記者に20万ポンド(約2900万円)で彼女の養子縁組を持ちかけたと報じた[10][11]。父親はこの疑惑を否定したが、別居中の母親が警察に訴えたため同日逮捕された[12]。しかし、人身売買を裏付ける証拠がなかったとして、23日、父親を起訴せず捜査は打ち切られた[13][14]。
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