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電子部品、受動素子 ウィキペディアから
コンデンサ[1]、コンデンサー[2](独: Kondensator、英: capacitor)は、電気(電荷)を蓄えたり、放出したりする電子部品である。蓄電器、キャパシター[2]とも呼ばれる。
種類 | 受動素子 |
---|---|
動作原理 | 誘電分極 |
発明 | エヴァルト・ゲオルク・フォン・クライスト |
電気用図記号 | |
コンデンサの特性を表す基本的な数値は、静電容量(キャパシタンス/英: capacitance)である。静電容量の値は、一般に国際単位系(SI)のファラド(記号: F)を用いて表される。コンデンサの機能はバッテリーと似ているが、コンデンサの静電容量はマイクロファラド(µF = 10−6F)やピコファラド(pF = 10−12F)のオーダーのものが多く、ごくわずかな量の電荷しか蓄えることしかできない。代わりに、応答速度が早いため、瞬間的な電流の変化(例えば、雷サージなど)に対する応答を制御する場合や、交流電流を変化させたい場合などに用いられる。ただし、電気二重層コンデンサのような、従来のコンデンサと比較すると桁違いに大きな静電容量をもつものも存在し、それらは二次電池として利用することが可能である。
その他の特性としては印加できる電圧(耐圧)が挙げられる。耐圧は用途に応じ、微小電力機器用の2.5ボルト程度のものから、高電圧発生用などに使われる10キロボルト程度のものなど、様々である。また、理想的な特性からどの程度外れているかを示す、等価回路における、直列の誘導性を示す値[注釈 1]と直列並列それぞれの抵抗値[注釈 2]などがある。
1745年10月に後ポメラニア出身のエヴァルト・ゲオルク・フォン・クライストは、手で持ったガラス瓶の中に満たされた水に高圧静電発電機を導線でつなぐと電荷が蓄えられる事を発見した[3]。クライストの手と瓶の中の水が導電体として働き、かつガラス瓶が誘電体として働いたのである。クライストは、発電機を外したあとに、導線に触ると激痛を伴う火花が起きることを見出した。彼はこのことを「フランス王国の二撃目は受けたくない」と手紙で述懐している[4]。3ヶ月後、オランダの物理学者ピーテル・ファン・ミュッセンブルークにより同様なコンデンサが発明され、クライストの物より早く発表されたことで、彼が勤務していたライデン大学に因んでライデン瓶と名付けられた。グダニスクのダニエル・グラートは電荷容量を増やすため、初めていくつかの瓶を並列に結合し"砲兵中隊"を作った。
ベンジャミン・フランクリンはライデン瓶の電荷を蓄える効果を増しているのが想定されていた手と水ではなく、ガラスである事を追試し証明した。彼はまた化学電池の組に対してバッテリーの言葉を当てはめた[5][6][7]。
このようなライデン瓶を板ガラスに対向させたより強力なコンデンサは、無線電気通信の発明により規格化された容量が要求され、また高周波への移行によりインダクタンスの低いコンデンサが必要になるまで、1900年頃まで専ら使われ続けた。コンデンサの小型化は金属箔の間に油を浸した紙のような柔軟な誘電体膜を挟み、それを巻いたり折りたたんだりして小さな外周器に入れたもの、すなわち油浸紙コンデンサの製造から始まった[要出典]。コンデンサの名は通常の容量球と比べ、より高い密度の電荷を蓄えられるという装置の性能から1782年にアレッサンドロ・ボルタが初めて凝集器の言葉を当てはめた論文を発表した事に由来する[8]。
まずは電磁気学に基づく理論的な観点から説明を行い、工学的(電気・電子工学)な観点からの解説や応用は後述する。
周囲と電気的に絶縁された導体に電圧を印加すると内部に電荷の偏りが生じる。この現象は静電誘導と呼ばれる。理想的な状況では重ね合わせの原理から印加する電圧と偏る電荷には比例関係がある。印加する電圧を V、偏る電荷を Q としたとき、この関係は
と表される。このときの比例係数 C は静電容量と呼ばれる。静電容量は導体の幾何学的な形状と導体の周囲の絶縁体により決まる。
電気的に絶縁された導体が近接していると、一方に正の電荷が、他方に負の電荷が生じて互いに引き合うので電荷が充電されやすくなり、静電容量が大きくなる。この性質を利用したものがコンデンサであり、コンデンサは誘電体によって電気的に絶縁された複数の電極や電極板の組み合わせによって構成される。
コンデンサのモデルとして、平行に近接した2つの平面を電極板とする平行板コンデンサがある。電極板の面積を A、電極板の間隔を d とすれば、静電容量が
で近似される[9]。 このときの比例係数 ε は電極板間を絶縁する誘電体の誘電率である。 この近似が成り立つには電極板の間隔 d が充分に小さい()という条件が必要である。あるいは電極板の面積 A が充分に大きい()と言い換えることもできる。
充電されたコンデンサが蓄える静電エネルギーは
で表される。つまり、容量1ファラドのコンデンサに10ボルトの電圧がかかっている場合、電力量は50ジュール(ワット秒)となる。したがって、この場合における定格出力50ワットの電気製品が1秒間動作することになる。(これは理論値であり、実際には電圧を安定させるための回路などが必要となるため、その分電力量が減ることとなる。
以下、工学的解説や応用を述べる。
直流の電流を通さないことからカップリングコンデンサに利用されたり、デカップリング用のコンデンサに利用される。その他、平滑回路や、共振回路、フィルタなどにも利用される。実際の電子回路では、同じく受動素子の一つである抵抗器やコイルとともに用いられることが多く、前者はR、後者はLと表現されることが多い。要求される周波数帯域、容量や精度、温度に対する容量変化、耐圧など回路の目的、用途、環境、コスト、大きさに合わせて各種の形状、材質の物が幅広く用いられる。低コスト化、小型化の要求の強い民生用小型機器では、チップ積層セラミックコンデンサが幅広く使われている。
バイパスコンデンサ(パスコン)としての用途が圧倒的に多い。他にわずかながら水晶発振器やタイミング回路に使われる。主に周波数特性がよいチップセラミックコンデンサが使われる。
アルミ電解コンデンサを中心として、セラミックコンデンサやタンタルコンデンサが使われる。
近年、後述の電気二重層コンデンサをはじめとした1F以上の大容量のものが開発され、蓄電装置として利用されることが多くなりつつある。たとえばノートパソコンの電源としての利用、ハイブリッドカーや電気自動車の始動用電源など。最近では電気自動車の走行用電源そのものとしても使用可能となってきている。
構造は単純化すると、誘電体(絶縁体)を介した、2枚の電気伝導体平板であり、これに(直流)電圧を加えると、電荷(電気エネルギー)が蓄えられる。
実際の製品では、以下に挙げられるものがある。
主にアナログ回路用であるが、高電圧を扱う回路にも使用される。
0.5pFから1µFが一般的である。近年は数百µFのチップ型セラミックコンデンサも現れている。 デジタル回路のパスコン(高誘電率系および半導体)、アナログ回路の温度補償用(低誘電率系)に用いられる。高周波特性はよい。チップ型など小型のものや大容量のものは内部電極を積層構造にしている。
高周波回路、高精度・安定性が要求される回路用。
電極表面に化学処理することで絶縁体あるいは半導体の薄膜を形成し、これを誘電体としたもの。非常に大きな容量 (0.1µF - 10万µF (100mF)) が得られるが、一部を除き極性を持ち、諸特性はかなり悪い。電源系や低周波系に使用される。耐圧や周波数に注意する必要がある。耐圧を守らなかったり極性を間違えたりすると、正常に動作しないばかりか発熱して煙が出たり、電解液が外部に漏れ出す場合がある。ひどい時には破裂する場合もある。破裂するとコンデンサーの破片が四方八方に飛び散り、非常に危険である[注釈 4]。一般に固体電解コンデンサと呼ばれるものは、電荷移動錯体や導電性高分子を用いた電子導電性固体を用いており、従来からある電解液を用いたコンデンサに対して、等価直列抵抗(ESR)が小さく、周波数特性に優れている為、CPU周辺など高周波系にも使用されているが、電解液タイプに比べて高価でかつ自己修復性が小さいという問題がある。
リード線方式の場合は、負(マイナス)極の上に黒い線が記載され、一般タイプの新品では負極のリード線が短く切られていることで判別する。画像の上側の黒いもの(アキシャル型)では、右側のリード線が負極で、下の青いもの(ラジアル型)では下側のリード線が負極である。アキシャル型の場合、負極のリード線がケースと接続されているが、ラジアル型は両極とも接続されていないため、電荷がある場合どちらとも電位差があり、ショートや感電に注意を要する。
電気二重層キャパシタ、ウルトラキャパシタ(主に米国で用いられる用語)、スーパーキャパシタ(日本電気の商標)、ゴールドキャパシタ(パナソニックの商標)、電気化学キャパシタ、あるいは単にキャパシタと称される。電解液-電極界面において電解液中のイオン及び電極中の電荷担体(電子またはホール)が互いに引き合う格好で整列する現象(電気二重層)を用いて蓄電するコンデンサ。イオンと電荷担体が互いに隔てられた部分(ナノオーダーの距離)が誘電体に相当する。また、電気二重層コンデンサの静電容量は理想的には電極の表面積に比例すると共に電極間の距離に反比例する。そのため、非常に大きい静電容量を実現することが可能である。
実用化されている電気二重層コンデンサでは、比表面積が極めて大きい活性炭を電極として用いている例が多く数F/cm3級の静電容量が得られている。なお、電気二重層は正負両極に生じるため、一つの電気二重層コンデンサは二つのコンデンサ(正・負極に生じた電気二重層)の直列接続に相当する。耐圧は電解液の分解電圧以下に制限されるため約1V(水系電解液の場合)、約3V(非水系電解液の場合)と非常に低く、複数個を直列接続することで必要な電圧を得ることが多いが、接続された個々のコンデンサの特性ばらつきによって電圧が完璧に均等に分配されることはない。そのため、あるコンデンサだけが過充電になることを防ぐための工夫が必要になる。単純な方法としては、各コンデンサに抵抗を並列接続させることがある。また、通常のコンデンサと比較して漏れ電流が非常に大きく、イオンが動くために周波数特性が悪いことには留意する必要がある。直流回路で用いられることが多い。
2021年現在、主に電子機器のメモリーや時計回路におけるバックアップ電源、電力貯蔵、コピー機の急速立ち上げ用電源や無停電電源装置などで用いられており、一部の路面電車でも採用されるなどしている[12]ほか、二次電池と異なり電気化学反応を従わないため、充放電回数の制限が無いこと、大電流の充放電に強く温度条件の厳しい環境下でも利用できるなどの利点を持つため、エネルギー密度をリチウムイオン電池と同等に出来れば、電気自動車やスマホの性能を飛躍的に高めることが可能とされる。
静電容量を加減することができるコンデンサのことをさし、軸を回転させる極板の対向面積や電極同士の距離を変えられるようにしたバリアブルコンデンサと各容量の固定コンデンサを切り換えスイッチにより断続的に変えられるようにした可変雲母コンデンサに大別される。
回転軸を回すことで静電容量を可変できるコンデンサ。送信機や受信機(ラジオ)などの同調回路などに使われる。ラジオの同調回路(周波数ダイアル)のようにもともと頻繁に回すことを目的に作られているものと、回路の定数の微調整用として、出荷前やメインテナンス等、調整するときしか回さない目的に作られたもの(トリマーバリコン、半固定可変コンデンサ)とがある。
この節の加筆が望まれています。 |
NECによって開発された分布定数型の素子で、回路基板(ボード)上の回路同士の干渉を抑え、高速・高周波回路の不安定動作を解消する低インピーダンス線路素子 (LILC : low impedance line structure component) と呼ばれるものである[13]。
多層基板を使わずに高速 CMOS LSI を使用するような無茶なことをするときに役立つ素子である。
電解コンデンサなどのような大型のものでは、本体に直接容量や耐圧が記載されているが、セラミックやフィルムコンデンサの場合、容量が xxy という形の3桁の数字を使った特有の表記(抵抗器のカラーコードを数字で置き換えた形)で記載されている場合がほとんどである(抵抗器に形状が似たものでは、カラーコードで表示している場合がある)。
xxyの意味は、xx × 10y pF(ピコファラド)である。
チップコンデンサの場合、極小な本体に容量の表記を印刷することが困難であるため、チップマウンターに装填するためのリールに印刷する型番に、容量の記載が含まれていることが多い。またその際、上記の3桁の数字の後に、アルファベット1文字で容量の許容誤差を記載することが多い [14] 。例えば「225K」と書かれていれば、22 ✕ 105 pF = 2200000 pF = 2.2 µF の、許容誤差 ±10% と読む。
容量の間隔については、抵抗器同様にE系列で、主にE3(10・22・47を基数とする倍数値)、E6(10・15・22・33・47・68を基数とする倍数値)で、まれにE12やE24が使用される。受動素子の標準数値表も参照。ただし1から10pFに限り、1pF間隔となっている。
定格電圧(耐圧)については、電圧を直接表示している場合と、数字とアルファベットを組み合わせた記号で表示している場合がある。記号と電圧の組み合わせは次の通り。
英字 数字 | A | B | C | D | E | F | G | H | J | K |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0 | 1 | 1.25 | 1.6 | 2 | 2.5 | 3.15 | 4 | 5 | 6.3 | 8 |
1 | 10 | 12.5 | 16 | 20 | 25 | 31.5 | 40 | 50 | 63 | 80 |
2 | 100 | 125 | 160 | 200 | 250 | 315 | 400 | 500 | 630 | 800 |
3 | 1,000 | 1,250 | 1,600 | 2,000 | 2,500 | 3,150 | 4,000 | 5,000 | 6,300 | 8,000 |
2J103と記載されていれば、
を表している。
2桁以下の場合は記載値がそのままpF単位を表す。
リード部品のセラミックコンデンサ等において電圧表示のないものは、耐圧50V程度のものが多い。一方、近年急速に増えている積層型セラミックコンデンサやチップ型フィルムコンデンサ等は、容量と大きさと耐圧がそれぞれトレードオフの関係にあることから、耐圧が明記されているものが殆どである。
これらのふるまいについて、容量性がある、と言ったりする。以下の項目のうち、プリント基板と電界効果トランジスタについては、寄生容量も参照されたい。
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