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ミステリの用語 ウィキペディアから
クローズド・サークル(closed circle)とは、ミステリ用語としては、何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品を指す。
過去の代表例から、「嵐の孤島もの」「吹雪の山荘もの」「陸の孤島もの」「客船もの」「列車もの」などの様に分類されることもある。
クローズド・サークルは密室の一種とされることも多いが、密室と非密室の境界を問題とする不可能犯罪ではなく、ドラマを室内に限定する密室劇である。
世界最初のクローズド・サークルをテーマにした著名ミステリ作品がどれなのかは明確になっていないが、森田崇はモーリス・ルブランの短編「ルパン逮捕される (L'Arrestation d'Arsène Lupin)」(1905年発表)が初であり、クローズド・サークルものを案出したとの説を述べている[1]。大西洋横断中の豪華客船を舞台としており、怪盗アルセーヌ・ルパンの初登場作品でもある。
早い時期の著名な長編は、1933年に出版されたエラリー・クイーンの『シャム双生児の秘密』、同じく1933年出版のフィリップ・マクドナルドの『生ける死者に眠りを(R.I.P.)』がクローズド・サークルミステリーとして挙げられる[2]。
アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』、綾辻行人の『十角館の殺人』は「伝説的なクローズド・サークルミステリー」と評される[3]。
古くはドロシー・セイヤーズが、1934年1月7日付「サンデー・タイムズ」紙の書評欄で、アガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』について、“Moreover, the problem is of the perfect "closed circle" type...“と記しているが、「クローズド・サークル」という言葉が頻繁に使われるようになったのは1990年代以降である。
有栖川有栖の『月光ゲーム』(1989年)の中で使われたのが普及のきっかけとされるが、有栖川自身は大学時代に読んだ『推理小説雑学事典』(中村勝彦・慶応大学推理小説同好会監修)で見たのが最初で、おそらく慶大推理研の造語だろうとしている[4]。
クローズド・サークルで行われる犯行は、その他の推理小説全般と同様、多くは殺人である。その場合は、特定の少人数だけ殺害する場合と、内部にいる全員を手にかけることを目的とする場合がある。
それ以外には窃盗事件なども好んで選ばれるテーマであり、逃走もままならない中で、どこに盗品を隠すのか?などが重要な眼目となる。
クローズド・サークルで発生する事件は多くの場合、計画的な犯行である。
多くの場合、クローズド・サークルの形成まで犯人の計画、あるいは予想によってなされたものである。犯人はなぜ「限られた容疑者の中に自分も含まれ、また犯行後逃走することもままならない状況下で事におよんだか?」もこうしたジャンルの重要な要素となる。
クローズド・サークルが予期せぬ形で形成されたために、犯人が犯行を思い立つというケースも少なくはない。その場合にも「その状況がどうして犯人にとって好都合であったのか?」が問われることになる。
計画的、又は衝動的に犯行におよんでしまった後、予期せずクローズド・サークルが形成されてしまう、というケースの場合、その後の犯人の行動が重要となり、多くの作品の場合それは「犯人の不可解な行動」としてあらわれることになる。
多くの場合こうしたクローズド・サークルをつくりだすのは犯人自身であるが、他者が別の思惑があってつくりだした状況を犯人が利用するケースもある。
「決まった日時まで迎えが来ないことになっている無人島に登場人物たちを誘い出す」などの方法もあるが、その場合、犯人としてまず疑われるのがそうしたツアー、イベントを企画した人物となってしまい、作者としては読者の推理をどう外すかが問われることにもなる。
犯人にとっても予想外に形成されてしまったクローズド・サークルである場合が多い。
「山火事に追い詰められた山荘」や「地震によって倒壊したビルの地下室」など、より深刻な状況下で、「自分の命も危険なその状況でなぜその犯行におよばなくてはいけなかったのか?」 、殺人事件であれば「そのままなら当然死ぬはずの人物をなぜあえて殺したのか?」を問う作品も存在する。
物理的にはなんら外界との往来、連絡は閉ざされていないのだが、登場人物たちの事情によってそれができないというようなクローズド・サークルも存在する。本来のクローズド・サークル作品へのパロディや、ユーモア・ミステリで用いられることが多い。
過剰な列挙を防ぐため、ここでは「記事ページがあるミステリー作品」のみを列挙する。
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