『十角館の殺人』(じゅっかくかんのさつじん[注 1] The Decagon House Murders)は、推理作家・綾辻行人のデビュー作品である長編推理小説。
1987年に出版され、「館シリーズ」の第1作となる。2022年12月時点で累計発行部数は152万部を突破している[1]。
日本のミステリー界に大きな影響を与え、新本格ブームを巻き起こしたとされる[2]。『週刊文春』が推理作家や推理小説の愛好者ら約500名のアンケートにより選出した「東西ミステリーベスト100」の2012年版国内編で、8位に選出されている[注 2]。2023年に『タイム』誌が選ぶ「史上最高のミステリー&スリラー本」オールタイム・ベスト100に選出されている[3]。
2024年3月に、Huluで実写映像化された[3]。
以下のあらすじについては、物語で語られる順番ではなく、時系列に沿って記載する。
前年のできごと
- 中村千織の死亡
- 1985年1月、研究会で開催された新年会の三次会で、急性アルコール中毒から心臓発作を誘発したことによって、中村千織が死亡する(漫画版では、1月の新年会クルージング中の海難事故での死亡に変更された)。
- 四重殺人事件
- 合宿の約半年前である1985年9月20日、当時島に住んでいた中村青司の自宅である通称「青屋敷」が全焼した。その焼け跡からは、中村青司と妻の中村和枝、さらに使用人である北村夫妻と思われる計4名が他殺体で発見された。他殺体のうち、中村和枝の左手首は切断されていて現場からは見つからなかった。
- 当日、島を訪れていた庭師の吉川誠一の遺体はなく行方不明であったことから、警察は「吉川が4人を殺害して逃亡したのではないか?」と結論付けて、この不可解な殺人事件は捜査終了となっていた。
推理小説研究会の合宿
- プロローグ
- 1986年3月26日、大分県K**大学・推理小説研究会の一行は、角島(つのじま)と呼ばれる無人の孤島を訪れた。彼らの目当ては、半年前に凄惨な四重殺人事件が発生して焼け落ちた「青屋敷跡」と、奇抜な十角形のデザインをした「十角館」と呼ばれる建物で、島に唯一残っている十角館で、彼らは1週間の合宿を過ごそうというのだ。
- 一方その頃、本土では、研究会や事件関係者に宛てて、かつて会員であった中村千織の事故死について告発する「怪文書」が送りつけられていた。怪文書を受け取った1人である江南孝明は、中村千織の唯一の肉親である中村紅次郎を訪ねる。そこで、紅次郎の大学時代の後輩である島田潔と出会った江南は、一緒に事件の真相を探ろうと調査を開始し、ミス研メンバーの守須恭一に話を聞く。
- 連続殺人の始まり
- 3日目の朝、オルツィが彼女の寝室で絞殺された上に、左手を切断されているところを発見される。部屋の扉には「第一の被害者」という札が掲げられていた。メンバー達は、「自分たちの中に犯人がいるのではないか?」と邪推して推理を始めるが、第三者の可能性も排除できなかった。
- さらに同日の昼には、全員でコーヒーを飲んでいる時にカーが毒殺されてしまう。その後、青屋敷跡の調査を行ったところ、地下室への階段にテグスが張られていたことや床に掃き清めたかのような痕跡があったことから、外部犯が潜んでいる可能性が濃厚となる。
- さらなる被害者
- 5日目の朝、化粧を済ませていたアガサが浴室で毒殺されているところを発見される。さらに、アガサ以前に被害にあったと考えられるルルウが、青屋敷跡前にある海岸で殴打されて亡くなっていた。
- 残された3人で過去の事件を推理していったところ、カーの毒殺事件には「1つだけ11角形のカップ」という目印が使われており、内部犯でも容易に犯行可能だったことが判明する。推理が続けられる中で、タバコを吸ったポウが毒殺される。
- 残されたエラリイとヴァンの2人は、犯人は中村千織の父親であり、この「十角館」を立てた建築家・中村青司であると推理する。そして、11角形のカップからヒントを得て「11番目の秘密部屋があるのではないか」と考えたエラリイは地下室を見つけだし、そこで白骨化した庭師の吉川と思われる死体を発見する。
事件の真相
- メンバー全員が死亡…?
- 翌日、「十角館が火事になりメンバー全員が死亡」という一報が、島田と江南の元に届く。島田の兄である捜査一課の島田修警部によると、一体を除いて死亡後に焼かれており、エラリイ1人のみが灯油をかぶって焼死していたことが判明する。
- はたして角島で何が起こり、誰によって殺人が行われたのか。その動機はどこにあったのか。残された最後の1人ヴァンはどうなったのか。そして半年前に起こった「青屋敷焼失事件」の真相はどういうものか。島田はすべてを解き明かすため、「真犯人と思われる者」の元へと向かう。
清原紘作画による漫画版が、『月刊アフタヌーン』(講談社)にて、2019年10月号から2022年6月号まで連載[4]。全31話。
コミカライズではなくコミックリメイクという扱いであり、設定やストーリーに多少のアレンジが加えられている。
原作者の綾辻は「原作のあるミステリマンガとしては画期的な傑作だろう、と思います。未読の方はぜひ! 原作を読んで気に入った人すべてに読んでほしい、と原作者が思うくらいの「コミックリメイク」です。ぜひぜひ。」と評価している[5] [6]。
概要 Huluオリジナル 十角館の殺人, ジャンル ...
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2024年3月22日よりHuluで独占配信[3]。主演はドラマ初主演となる奥智哉[13][14]。
2024年12月31日(30日深夜)から2025年1月4日(3日深夜)までの間[注 3]、地上波(関東ローカル)にて放送すると共にTVerと日テレTADAでも見逃し配信[注 4]を行う予定[15]。
エピソード
- 映像化の企画については、Hulu版以前にも何度か著者の綾辻の元に寄せられていたが、「どうやってこのトリックを実現させるんですか?」と質問しても、ちゃんとした答えが返ってきたことがなかったといい、映像化が実現することは無かった[19]。