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物を打ち付けたり潰したりする工具の総称 ウィキペディアから
槌(つち)とは、物を打ち付けたり、潰したりする工具の総称。英語からハンマー(hammer)とも。漢字では、打撃部分が木製のハンマーを槌、打撃部分が金属製のハンマーを鎚と書く。「かなづち」はもっぱら「鎚」の方を意味する[1]。
手で持つ柄の部分とそれよりは重い頭部からなる。使い方は、柄を持って振り、てこの原理と慣性で、柄もしくはその軸線上を支点とした慣性モーメントを与え、その頭部を対象物に叩きつけて力を加える。槌は、日本語の「つち」の他に、英語の「ハンマー」という言葉もよく使用される。
また大工や建築や機械工場・土木現場には、仕事の道具として金鎚や木槌などがある。それぞれ形状と用途が異なり、ゲンノウ(玄翁)、トンカチ、ナグリ(殴り)、ハンマー、カケヤ(掛矢)などさまざまな種類がある。板金加工ではさまざまな種類を使い分ける[2]。
鎚(ハンマー)は、歴史が記録に残される以前より長く存在している。おそらく、人間が発明した最初の工具の内のひとつであろう。岩の打撃力を増やすためにつるで岩を棒に結ぶというアイデアが、工具としてのハンマーの始まりである。ハンマーは必ずしも何か物を作ることのみに用いられた訳ではなく、狩猟や戦いにも使用された。ハンマーは、しだいに頭部に岩が固定された最初のシンプルなタイプから変化していく。頭部の材質が岩から金属に進化した最初のハンマーは、金属を加工する仕事で鍛冶屋によって使われた。鍛冶屋がハンマーと金床で暮らしをより便利にする品物を作ることにより、快適な社会を創り出したと言う人達もいるくらいである。
鋳物の釘を発明した古代ローマ人は、釘抜きハンマーを使用していた。この工具は、釘を抜くときに柄に過大な力がかかって柄が外れることがしばしばあった。1840年にアメリカ・コネチカット州の鍛冶屋が「先細りになった釘抜きの頭部が柄のほうに向かって曲がっている」釘抜きハンマーを作った。現在の形状のネイルハンマーである。いまでは多くの部品を加工する時、手作業で各部を製造する鍛冶屋作業に代わり、それらを大量生産することができる機械が開発され、ハンマーは手作業専用の工具として使用されるようになった。
史上初の槌は、ボウリングのピンに似た形状で穀物をたたくのに使用されたが、寿命は短かった。その後柄を付けるようになり、頭部の材料に堅い木を付けるようになり寿命が向上した。18世紀には、木枠の継手を留めるのに大木槌が使われた[3][4]。
単なる工具にとどまらず、強さと活力を力強く表現するシンボルとされることもある[5]。
金鎚(かなづち)は、頭部若しくは全体が金属製の鎚。代表的な用途は釘打ちである。用途により多くの種類があり個別に名前が付いている場合もある。頭部の材質は炭素工具鋼が多いが銅・銅ベリリウム合金・鉛・ステンレスなど各種存在する。
なお別称のとんかちの名は、この金鎚で釘打ちする際に出る音の擬音語に由来している[6][7](釘の頭を打っている間はカチカチ、部材に当たるようになるとトントンに変わる)。
その構造や材質などが原因で、水没しやすい工具の一つであり、泳げない(水泳が苦手な)人間のことを本品になぞらえることがある。
木槌(きづち)(木ハンマ、マリット、Wooden mallet)は、頭部が木製のもの。対象物に傷をつけない目的で使用される。建築用に用いられるやや大振りなものは一般に掛矢(かけや)と呼ばれ、枘(ほぞ)や柱などの木材を打ち込む際に使われる(大型ハンマーとの違いは材質)。また、解体工事でも、土建重機が普及するまで在来木造家屋程度なら掛矢で打ち壊した。
機械工場で使用する場合は、フライス盤・中ぐり盤・平削り盤などに取付ける被削材に傷を付けないで軽い打撃力を与える場合に使用する。板金加工においても使われている[2]。
頭部の柄を入れる穴が一方向のテーパとなっており、手元側から先へ向けて柄を打ち込み、摩擦力で留める。この点は、頭部に木の柄を差し込んだ後、くさびを打って割り広げて留める金鎚とは異なる。
『日本書紀』巻七「景行天皇紀」と『豊後国風土記』には、木槌がかつて武器として使われていたことを示唆する記述がある。景行天皇十二年十月の条として、熊襲親征の途上現在の大分県別府市のあたりへ進駐した景行天皇軍が、巨大石窟に立てこもって天皇に従わない土蜘蛛らを皆殺しするくだりがそれで、このとき天皇軍の精鋭が武器として使ったのが付近にあった海石榴で作った槌だったという。
弁慶の七つ道具にも大槌が含まれており(加えて大鋸とまさかりも含む)、立木を刈り倒して地面に杭を打ち柵や塀を築く築城ではもちろん、逆に敵側が築いた門扉や柵などを破壊する工兵器材として用いられ、半ば応急的に武器として振るわれることもあったと想像できる。
その他の木槌の伝統的な用途としては、何らかの会場に一堂に集う一群の者たちに対して、その代表者が喚起を促したり、静粛を求めたり、集会の開始や終了を宣言するために叩く小槌があげられる。具体例をあげるなら、参議院では参議院議長が本会議開始の合図として使用する木槌、オークション会場で主催者が競りの終了を宣言するために叩く小槌、また日本の法廷では使われない[10][11]が、裁判長が出廷者などに不規則な発言を慎むよう求めたり、開閉廷宣言をするために叩く小槌が知られている。
頭部がプラスチック製のもの(プラハン)とゴム製のもの(ゴムハン)。叩く対象物に傷が付きにくいため、部品の嵌め合わせや取り外しに使われることが多い。
いわゆる金鎚は叩く部分の太い円柱に対して、柄の部分の細い円柱がその側面から出て、両方の円柱の軸は垂直になる。これに対して、叩く部分の底面から柄が伸びており、両者の軸が同一直線に乗るものを横槌という。単に槌と言えばこれを指したこともある。木製で、藁を叩いて繊維をほぐしたりするのに用いた[12]。通常の鎚に比べ、支点から打点(作用点)までの距離が短くなるため打撃力は弱い反面、コントロール性で優る。ツチノコが槌に似る、というのもこれである。
土木用具として蛸(タコ)と呼ばれる大型の横槌がある。丸太を切り出した槌頭を取り巻くように、4本の長柄(2本の場合もある)が付いており、複数人で持って地面に打ちつけて土を締め固める作業に使用する。路盤整備のほか版築の造営など過去には広く使用された。現在ではほとんど機械化されているが、土俵の設営や維持補修でその姿を見ることができる。
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