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イスラム教における飲酒(イスラムきょうにおけるいんしゅ)の項目では、イスラム教徒と酒の関係について記述する。
イスラム教において飲酒は、クルアーンに飲酒を禁じる記述がある等、一般に禁止(ハラーム)とされている。現在のイスラム教国では、多くの国で飲酒が禁止されており、それらの国々では酒の醸造や販売も当然禁止されている。
但し、ウマル・ハイヤームの「ルバイヤート」などの詩歌では酒屋や酒場もしばしば登場しており、飲酒は宗教上は禁止でも歴史的には必ずしも遵守されていなかったことも伺われる。また、イスラム教において酒が禁じられているのは現世においてであり、天国には酒の流れる川があり、悪酔いの心配もなく自由に飲酒することができるとされている。
イスラム神秘主義では、酒は神の偉大さを讃える比喩として重要である。神秘主義詩等では酒への称賛が詠まれているが、それらは酒への賛美ではなく、真の意味は神への称賛だとされる。
イスラム法では飲酒を明確に禁止している。ただし、飲酒の禁止に至るまでには以下の経緯があり、酒に関して計4節がアッラーによって下されたとされる[1]。
日本においては実際処罰の対象がないことなどから、信仰の弱いイスラム教徒の飲酒も冠婚葬祭などみられることがあるが厳格なイスラム教徒は飲酒しない。[要出典]
クルアーンに記されている酒らしき飲み物を表す語句には「真白」、「強い飲み物」、「ハムル(ワイン)」があるが、酒の定義に関してイスラム法学者のあいだで古くから議論がある[2]。例えば、クルアーン成立後に開発された蒸留酒アラックはクルアーンで禁じられたハムルなのか、果汁が自然発酵して酒になった場合廃棄すべきか、などの疑問である。スンナ派4法学派のうち、オスマン帝国で支配的だったハナフィー派はもっとも酒に関して寛容な立場をとった[2]。
イスラム文学における飲酒とのかかわりも様々である。
アブー・ヌワースは、禁酒がイスラム教において新説であると主張したり、禁酒を唱える宗教指導者たちの頂点に立つカリフが飲酒をしていることを暴露するなどして、自身の飲酒が合法(ハラール)であると強弁した。
ウマル・ハイヤームは「ルバイヤート」において、天国や地獄などのイスラム教の説く教義に対する不信感をしばしば露わにし、それらの対極にある現世での飲酒を讃えた。
神秘主義詩においては、酒は神の隠喩であり、酒への称賛を通して神やイスラームへの称賛が行われた。
現在ではイスラム原理主義の勢力の及ばないトルコや欧州(アルバニアやボスニア)、インド、中央アジアなどでムスリムの公然とした飲酒文化が存続している。特に中央アジアの遊牧民にとっては馬乳酒は生活に欠かせないお酒となっている。とはいえ公式行事での飲酒は避けることが多く、日本を訪問したイスラム圏の元首や王族などが皇居で催される宮中晩餐会や午餐会で乾杯を行う際は、通常用いられるシャンパンに替えて同色のりんごジュースやジンジャーエールなどで代用することもしばしばあるという。アルコールを許容するかどうかについては個人差がかなりある[3]。
アフガニスタンでも公式に飲酒が禁止されているが、歴史的にゾロアスター教や仏教が隆盛であったことから、飲酒は盛んであったと思われる。
パキスタンではバングラデシュと同様、イスラム教徒の飲酒が禁止されている。 なお、外国人向けの酒類が少量製造されているが、トルコなどと比較すると出荷量は極端に少ない。イスラマバードにおいては、外国人向きに飲酒許可書も発行してくれる。また非イスラム教徒向きに豚肉を取り扱っている店舗もみられる。
マレーシアではイスラム教徒の飲酒は禁止されており、発覚した場合は鞭打ち刑などの執行例がある。 しかし、多民族国家であるマレーシアでは、非イスラム教徒の場合は飲酒に限らず、豚肉食なども正式に認められている。
イラン・イスラーム共和国では公式には飲酒は禁止されている。しかし、イラン革命以前は禁止されておらず、また現在でも実際は多くの国民がひそかに飲酒を楽しんでいる。歴史的に見てもイラン(ペルシア)では飲酒が盛んであり、酒をうたった多くの神秘主義詩があるほか、世俗的立場から飲酒の享楽をうたった詩人(ウマル・ハイヤームなど)もいる。
飲酒は全面禁止である。
国民の9割がムスリムであるインドネシアであるが、酒の販売は法律で認められている。多くの国民には飲酒の習慣がないが、ムスリム以外の少数民族の中には、独自の酒の文化もある。ビンタンなど、酒造企業もある。また、ムスリムの中でも戒律をさほど重視しない者もおり、経済成長や、日本や欧米の食文化が流入していることも相まって、ムスリムでも飲酒を楽しむ者が増えつつある[4]。
また非イスラム教徒向きに、豚肉を取り扱っている場合もある。
ただし、シャリーアに基づく自治を認められているアチェ州は例外であり、酒の販売は禁じられている。シャリーアは元来ムスリムのみが対象であったため、ムスリム以外が酒を販売することは許されていたが、2015年以降はシャリーアがムスリム以外にも適用されるようになったため、キリスト教徒が酒を販売したとして、鞭打ちに処される事例もある[5]。
国民の99%がイスラム教徒であるが、世俗化の影響もあって飲酒が非常に盛ん。一方で豚肉食は依然としてタブーである。
トルコ国内で生産されるアルコール飲料としてはトルコワイン(シャラプ)、エフェスなどのビール(ビーラ)、ラクが有名。ボザも消費されている。
飲酒は原則禁止だが、外国人の利用が多い一部の高級ホテルでは、レストラン・バーなどでの酒の提供が認められている。また外国人向けに酒類の購入免許も発行している[6]。
2022 FIFAワールドカップの際は、スポンサーの一社にアンハイザー・ブッシュ・インベブがいる関係で、例外措置として一部の会場でバドワイザーの販売が行われた[7]。
工業や消毒におけるアルコールの使用は飲酒行為と見做されず、認可されることが多い。21世紀以降は各国の認証機関もこの立場を取っている[8]。
しかし、非イスラム教圏を含む一部地域では「ムスリムはアルコールの使用が全て禁止」という認識が未だ残っており、現場の理解もまちまちである[8]。逆に、認証制度が出来たことによってアルコールを過剰意識してしまい、病院の消毒用アルコールを嫌がるケースも確認されている[9]。
2009年のサウジアラビアではアルコールを使用したバイオ燃料の使用に反対するシャイフが登場した[10]。
イスラム圏で開催されるスポーツイベントでは、通常行われる表彰式でのシャンパンファイトを自粛する、もしくは別の飲料で代用することが多い。例えばフォーミュラ1(F1)の場合は、シャンパンファイトにバラ水(ローズウォーター)を代用として用いている。
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