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穀類の粉やデンプンに水と塩などを加えた生地を細く長く成形した食品 ウィキペディアから
麺(めん、Noodle)とは、穀類の粉(小麦粉、蕎麦粉、米粉や豆[1]など)やデンプンに水と塩などを加えた生地を細く長く成形した食品。
麺または麺類は穀物などの粉を練って作る加工食品の一種であり、原料としては小麦粉、蕎麦粉、米粉、片栗粉、タピオカなどの穀物粉が主体となるが、細長い形状をした加工食品であれば原料によらず「麺」と名付けられて供される場合がある[2]。穀物を主原料とする麺は主食とされる場合が多い。様々な調味料や具材、副菜とともに食されるが、麺の生地にビタミンやミネラル、食物繊維などを練り込んで栄養バランスを確保する製品も開発されている[3]。
麺という字は中華圏の「麺(繁体字:麵、簡体字:面)」(拼音: )に由来し、小麦粉そのもの、または小麦粉を練って作った食品を指していた[4]。日本に伝来したのは奈良時代頃と考えられており、当時は「唐菓子」と呼ばれて仏教儀式などに用いられた[4]。
また、英語では小麦粉に水を加えて調製したものをドウ(dough)といい、これを応用した料理は薄く伸ばして餡などを包んだ料理(ダンプリング、dumpling)と、切る、伸ばす、ちぎる、穴や型から押し出すなどの方法で成形した料理(ヌードル、noodle)に大別される[5]。日本語の「麺」は後者に相当するものを指す[5]。
日本においては製造工程や製法などにより様々に分類されて呼称されるが、大別すると生めん類、乾めん類、即席めん類、マカロニ類(スパゲティ類)、冷凍めん類の5つに分けられる[4]。
麺の主たる原料である小麦は東地中海沿岸(イラン西部、イラク東部、トルコ南部および東部)がその起源とされているが[11]、寒冷地から熱帯地方まで広範囲で栽培が可能だったこと、水と混ぜることでグルテンが生成され、粘り気と弾力性に富んだ性質が多様な食品への加工に適していたこと、という大きな二つの理由により世界的な普及を見せた[12]。最初に栽培が行われるようになったのはメソポタミアで、紀元前9000年~7000年頃と考えられている[13]。そのまま食すことに適さない小麦は、栽培当初は粥として食されていたと考えられているが、食感などを求めて小麦粉を練って生地を作ってパン(無発酵パン・発酵パン)として食す方法や、練った生地をちぎってすいとんのように食す方法が広まると、様々な形状への加工が行われるようになり、その過程で細長く形づくられたものが麺にあたると考えられている[14]が、諸説あり定かではない。
中国大陸に小麦が伝わったのは前漢(紀元前1世紀前後)時代に西方との交易路が開けてからであると言われているが、他の穀物を使った麺が地中海地域で小麦粉のものに変えられた可能性も考えられる。現在までに発見された最も古い麺類の遺物は、中国青海省民和回族トゥ族自治県の喇家遺跡で発見された。これはおよそ4000年前のものであり、麺は小麦粉ではなく粟で作られていた。 現在カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンなど中央アジアで広く食されているラグマンはラーメンの語源とも言われているが、シルクロードを伝播し中国大陸に広まった際に鹹湖(塩水湖)の水を使用してラグマンを作ったのが中華麺の始まりとも言われ、現代においても製麺工程で使用される塩基性塩をかん水と呼ぶのもこの名残からとされている[15]。
他に、栽培小麦発祥の古代メソポタミアから遊牧民によって餃子の形(アフガニスタンのオシャク、新疆ウイグル自治区のジュワワ)で伝わり、華北で皮が分かれて麺條(生地を細長く伸ばしたもの)が生まれたとするものもある[16]。
一方でヨーロッパで広まったデュラム小麦からはパスタが作られるようになるが、イタリアのチェルヴェーテリにあるエトルリア人の遺跡からおよそ2400年前の製麺器具が発見されている他、古代ローマ時代の文献の中でラガーナと呼ばれる焼いて食べるパスタについての記述が見つかっていることなどから古くから食文化として麺を食す習慣が広まっていたと考えられている[17]。しかし4世紀頃のゲルマン民族の侵攻により食肉文化が広く浸透してパスタなどの食文化は衰退し、再び登場するのは13世紀末のフラ・サリンベネの『年代記』であった[18]。
後漢の『説文解字』には「麺」の本字である「麪(ミェン)」は麦の粉とある[19]。唐の『広韻』も西晋の束晳の『麪賦』を引いて重羅の麺は埃のように細かく雪のように白い[20]と記し、「麵」は同上としている。「麵」は「麪」の音を表す部品「丏」を同音の「面」に置き換えた異体字である。餅も日本の餅とは違い、穀粉の生地をいう。『説文解字』に「餅(ビン)」は小麦をこねた食べ物とある[21]。加熱法で蒸餅、焼餅、油餅、湯餅に分類された。北魏の『斉民要術』には水引という、水中で餅を延ばして麺を作る方法の記述がある。唐時代に2年三毛作などにより小麦が大量に収穫できるようになり、宋 (王朝)時代には南北の食文化の複合がおきて現代の麺料理の原型が誕生した。宋・元時代の『居家必用事類全集』には14種類の麺料理の記述がある[22]。
現代の中華人民共和国および中華圏でも、「麺(簡体字:面)」(ミェン)は小麦粉を指し、「麺食」と言えば、粉食全般を指す。これには、餃子(ぎょうざ)や中華まんなど饅頭や点心も含んでいる。例えば、パンは「麺包」(ミェンパオ)であるが、ラーメンやうどんのような日本語で麺と呼ぶ長細い形状の食品は、「麺条」(繁体字:(麵條、簡体字:面条。ミェンティアオ)と呼称する。一方で中国語では、蕎麦、ビーフンなど小麦粉以外を使った物は本来「麺」として扱われず、米粉をこねて細長く加工したライスヌードルや、澱粉を使う春雨などは「粉」(フェン)と呼ばれ、区別される。
遣唐使が唐菓子と果餅を持ち帰ったことが、日本での麺と菓子の始まりとされる。平安時代に天皇の勅使に「はくたく(餺飥)」という平たい麺類が振舞われたという記録がある[23]。現在でははくたくうどんとも呼ばれ餺飥#語源(ほうとう)のルーツである。
鎌倉時代から室町時代にかけては、留学僧によって宋の麺料理が伝来し、現代のそば、うどん、そうめん、冷麦のもととなった。 江戸時代までにこれらの麺料理は大衆料理として親しまれるようになっていった。明治時代に入り内外の往来が活発化するにつれ、うどん、そば、そうめん、冷麦といった伝統的な麺類のほか、中国の麺料理から派生したラーメン、ヨーロッパのパスタ類も一般化し、現代では様々な麺食品が愛好されている。それぞれの麺料理に関しても、にしんそば、讃岐うどん、あるいはたらこスパゲッティをはじめとする独特の派生料理が登場している。また、油で揚げて保存性、加工性を持たせたインスタントラーメンが開発されて以来、うどん、そば、焼きそばについてもインスタント食品としての商品開発が進み、国内のみならず世界各国で一大市場を築いている。
イタリアにおいては「パスタ・アリメンターレ」などと称され、年間319万トンもの生産が行われ、1人あたり年間30キログラムの消費がなされる国民食とも呼べる加工食品である[24]。ギリシャから伝播した小麦(パン)とオリーブは紀元前には広く浸透し、古代ローマ時代には既にパスタが存在していたとされているが、ゲルマン民族の侵攻に伴うローマ帝国の滅亡とともに農業や食文化も破壊され、パスタは歴史の表舞台から姿を消してしまうこととなる[25]。13世紀から14世紀に入るとサリンベネの『年代記』や北イタリアを中心とした様々な地方のレシピ集などに少しずつパスタと思われる料理の料理法などが登場するようになり、祝祭や記念日などに食されるようになったと考えられている[26]。都市国家として各地方が独特の文化を育んでいったイタリアは食文化も気候や風土によって色濃い特徴が出るようになると、16世紀半ばから17世紀にかけてジェノヴァ、ナポリ、パレルモ、サヴォナ、ローマなどの都市で相次いでパスタギルドが形成され、品質や規格、製造方法、価格、販路などが独自に規定され、都市ごとの独特の文化が醸成され、今日のイタリアパスタの多様性を生み出した[27]。
19世紀末の統一国家の成立後、こうした「地方料理」であった様々なパスタを丹念に収集・分類したペッレグリーノ・アルトゥージは1891年に『イタリア料理大全』を上梓し、イタリア料理としてのパスタを確立させた[28]。
麺は主とする原材料に左右されるものの、基本的にデンプン、タンパク質で構成されており、これらの成分の性質の違いが麺の食感や粘弾性に強く寄与する。
機械使用の有無により、手打ち(風)めん、手延べめん、機械めんに分類される[4]。
製法上においては、生地を引っ張り線状に細く伸ばす方法(手延べ麺)、麺棒で薄く伸ばした生地を切って線状にする方法(手打ち麺)、小穴の開いたシリンダーから押し出す方法などに分類される[5]。さらに詳しく、ロール製の機械や麺棒により麺帯を作成し、細い麺を切り出す方式、型抜き等により所定寸法に成形する方式、紐状に撚って引き延ばす方式、圧力等を加えることによりダイスから麺生地を押し出す方式に分類されることもあり、製法により形状や食感などが異なる[4][35]。
成形方法ごとの具体的な麺の種別例は以下の通り。
JISでの分類について以下に示す[4]。
分類名 | 製造工程概要 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
生めん類 | 原材料の混合 | 複合 | 圧延 | 切出し | ||||||||
乾めん類 | 原材料の混合 | 複合 | 圧延 | 切出し | 乾燥 | 裁断 | 包装 | |||||
フリーズドライめん類 | 原材料の混合 | 複合 | 圧延 | 切出し | ゆで | 水洗冷却 | 凍結 | 乾燥 | 包装 | |||
包装めん類 | 原材料の混合 | 複合 | 圧延 | 切出し | ゆで | 水洗冷却 | 殺菌処理 | 外装 | ||||
冷凍めん類 | 原材料の混合 | 複合 | 圧延 | 切出し | ゆで | 水洗冷却 | 冷凍 | 包装 | ||||
即席めん類 | 原材料の混合 | 複合 | 圧延 | 切出し | ゆで | 蒸煮 | 調味付 | 型詰 | 加熱乾燥または油熱処理 | 包装 | ||
蒸しめん類 | 原材料の混合 | 複合 | 圧延 | 切出し | 蒸煮 | 水洗冷却 | 油塗布 | 包装 | ||||
ゆでスパ類 | 原材料の混合 | 複合 | 圧延 | 切出し | 脱気 | 扁平押出 | 圧延 | 切出し | ゆで | 水洗冷却 | 殺菌処理 | 包装 |
ゆでスパ類 | 原材料の混合 | 複合 | 圧延 | 切出し | 脱気 | 線状押出 | 乾燥 | 裁断 | 包装 | |||
手打ちうどん類 | 原材料の混合 | 扁平圧延 | 包丁切り | ゆで | ||||||||
手延べうどん・素麺類 | 原材料の混合 | 紐状圧伸 | 乾燥 | 裁断 | 包装 | |||||||
冷麺類 | 原材料の混合 | 線状押出 | ゆで | 水洗冷却 | ||||||||
日本においては1953年に日本工業規格(JIS)にて切刃番手による分類法が規定され、生地の幅30 mmに対しての麺の本数で示され、4 - 6本が平めん(きしめん)、8 - 16本がうどん、18 - 24本がひやむぎ・蕎麦・中華麺、26 - 30本が素麺などと規定されていたが、2011年に廃止となった[4][37]。
主たる成分 | 名称・大分類 | 名称・小分類 | 主な国や地域 | 備考 |
---|---|---|---|---|
小麦粉 | うどん | 讃岐うどん | 日本・香川県 | |
五島うどん | 日本・長崎県 | |||
稲庭うどん | 日本・秋田県 | |||
伊勢うどん | 日本・三重県 | |||
博多うどん | 日本・福岡県 | |||
氷見うどん | 日本・富山県 | |||
きしめん | 日本・愛知県 | |||
ほうとう | 日本・山梨県 | |||
ひもかわ | 日本・群馬県 | |||
一本うどん | 日本・京都府 | |||
耳うどん | 日本・栃木県 | |||
だんご | 日本・大分県 | だんご汁 | ||
ひやむぎ | 日本 | |||
素麺 | 節麺 | 日本 | ||
沖縄そば | 日本・沖縄県 | |||
中華麺 | 板麵 | 中国 | ||
ビャンビャン麺 | 中国・陝西省 | |||
刀削麺 | 中国・山西省 | |||
炸醤麺(ジャージャー麺) | 東アジア | |||
烙麺 | 中国・浙江省 | |||
ホッケン・ミー | シンガポール | |||
ロングパスタ | スパゲティ | イタリア | ||
スパゲティーニ | イタリア | |||
フェデリーニ | イタリア | |||
カペッリーニ | イタリア | |||
タリアテッレ | イタリア | |||
ブカティーニ | イタリア | |||
ソフトスパゲッティ式めん | 日本 | |||
ラグマン | 中央アジア | |||
シュペッツレ | ドイツ・シュヴァーベン | |||
大麦粉 | もちむぎ麺 | 日本・兵庫県 | ||
片栗粉(じゃがいも) | 春雨 | 日本 | [注 1] | |
冷麺 | 朝鮮半島 | [注 2] | ||
ミエン | ベトナム | |||
マロニー | 日本 | [注 3] | ||
キビ粉 | きびめん | 日本 | ||
葛粉 | 葛切り | 日本 | ||
アワ粉 | 鉄絲麺 | 中国 | ||
粟麺 | 日本 | |||
米粉 | ライスヌードル | ビーフン | 東アジア | |
フォー | ベトナム | 切り麺 | ||
ブン | ベトナム | 押し出し麺 | ||
ナンジ― | ベトナム | |||
クイティアオ | タイ | 粿条 | ||
バンティアオ | タイ | 粄條 | ||
米線 | 中国・雲南省 | |||
餌絲 | 中国 | もち米とうるち米 | ||
イデアッパ | スリランカ | |||
こんにゃく粉 | 糸こんにゃく(しらたき) | 日本 | ||
缶詰麺 | 日本 | |||
低カロリー麺 | 日本 | |||
サツマイモ粉 | 六兵衛 | 日本・長崎県 | [注 4] | |
地瓜麺 | 台湾 | |||
サトイモ粉 | 芋頭麺 | 日本 | ||
蕎麦粉 | 蕎麦(蕎麦切り) | 十割蕎麦 | 日本 | |
二八蕎麦 | 日本 | |||
更科蕎麦 | 日本 | |||
田舎蕎麦 | 日本 | |||
藪蕎麦 | 日本 | |||
蕎麺 | 中国・四川省 | |||
ピッツォッケリ | イタリア | |||
大豆粉 | 黒豆麺 | 日本 | ||
豆腐麺 | 日本 | |||
韃靼蕎麦粉 | 韃靼蕎麦 | 日本 | ||
とうもろこし粉 | 酸湯子 | 中国 | ||
ヒエ粉 | ひえめん | 日本 | [注 5] | |
モロコシ粉 | 紅麺 | 中国 | ||
ヤマノイモ粉 | 薯蕷麺 | 日本 | [注 6] | |
緑豆粉 | 太平燕 |
| ||
豆箕麺 | 中国 | |||
涼粉 | 中国 | |||
トチノミ | 橡麺(栃麺) | 日本 | [注 7] | |
テングサ | ところてん | 日本 | ||
海藻 | 海藻麺 | 日本 | [注 8] | |
タピオカ | バンカン | ベトナム | ||
すり身 | 魚うどん | 日本・宮崎県 | ||
魚そうめん | 日本・京都府など |
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