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『あ・うん』は、1980年3月9日から3月30日までNHKで放送された向田邦子脚本のテレビドラマ[1]。テレビドラマとして続編が制作され、1981年5月17日から6月14日まで放送された。 向田は大人の恋の物語としてこのドラマを続ける意向であったが、1981年8月に飛行機事故で急逝したため中断した。
向田自身により、同名で小説化されている。向田の唯一の長編小説であり、1981年に文藝春秋から刊行された。
昭和初期の山の手を舞台とした、製薬会社のサラリーマンの水田仙吉と親友の実業家門倉修造、門倉に思われる仙吉の妻たみ、仙吉夫婦の一人娘さと子、門倉の愛を得られぬ妻の君子を中心とした、暗い昭和の支那事変前夜の庶民の暮らしを描いている[1]。
タイトルの「あ・うん」は、仙吉の父初太郎がこの2人をさして「神社を守っている狛犬の阿(あ)と吽(うん)だ」と評したことが作品の中で示されている。
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1980年3月9日から3月30日にかけて、NHK総合『ドラマ人間模様 あ・うん』として全4話が放映された。
1981年5月17日から6月14日にかけて、NHK総合『ドラマ人間模様 続あ・うん』として全5話が放映された。
出典「テレビ視聴率季報(関東地区)」ビデオリサーチ。
2000年1月1日に『向田邦子新春ドラマ あ・うん』として放送。
1989年11月3日に東宝系にて公開。カラー、ビスタビジョンサイズ。監督は降旗康男。主演は高倉健。富司純子(本作出演にあたり改名)や板東英二、宮本信子、富田靖子、真木蔵人らが脇を固め上品で感動的で温かい作品に仕上がっている[独自研究?]。NHKドラマの第2シリーズまでを一つにまとめたストーリーになっている。東宝が1989年7月~1990年6月までに『冬物語』『マイフェニックス』『ガンヘッド』など、共同も含めて自社製作(東宝映画)した6本(前期より1本減)のうちの1本[5]。地上波のテレビ初放送は、フジテレビ系列で当時放映されていた『ゴールデン洋画劇場』で1992年1月11日に放映された。
新聞に「神風の覇業遂に成る」という見出しが躍る1937年(昭和12年)春。中小企業の社長・門倉修造が水田一家を迎えるための準備に忙しい。水田仙吉の娘・さと子は「だって、門倉さんはお母さんのこと好きだから」という。妻・たみは心の中を覗かれたようで否定する。水田が3年半ぶりに東京に帰り、一家ぐるみの付き合いが始まる。水田はつましいサラリーマンで性格も地味。門倉は軍需景気で羽振りがよく、妻・君子を女で泣かせてきた。二人は20数年来の「戦友」だった。
さと子は、君子の紹介で帝大生・石川義彦と見合いをした。二人は石川に狛犬の「阿吽」みたいだといわれる。夜学しか出ていない仙吉は身分不相応だと見合い話を断わる。しかし、2人の付き合いは隠れて続き、さと子が肺炎になると、石川は堀口大学訳の『ヴエルレエヌ詩集』を渡す。
仙吉の松山時代の部下の使い込みが発覚し、出世に響くと聞かされた門倉は、自社が倒産寸前にも関わらず、仙吉に5000圓を用立ててやる。隠れて石川とデートを重ねていたさと子は「修善寺」と書いていなくなり、捜しに行った温泉では水田夫婦が駆落ちに間違えられる。生真面目な仙吉は門倉に紹介された神楽坂の芸者・まり奴に入れあげる。門倉はまり奴を匿ったが、誤解から君子や仙吉を傷つける状況に。義彦が特高に捕まり、説得してくれと頼まれ、門倉は「みすみす実らないと分かっていても人は惚れるんだよ」という。その後、門倉はたみに惹かれていく自分に歯止めをかけようと、料亭で仙吉に喧嘩を売り、「顔つきが卑しくなったな」と水田家と絶縁する。さと子は「みんな本当のことを言わないで生きている」、「巷に雨の降るごとく」というのに対して、門倉は「わが心にも涙ふる」[6]と答える。
仙吉はジャワ支店長として転勤することが決まり、門倉は最後の別れを言いに水田家を訪れた。仙吉の「入れるな」を制止して、たみが呼び止めたのち、仙吉自ら中に入れる。義彦も召集令状を受け取り、別れを告げに来る。門倉はさと子に雪の中を去る義彦を追わせ、水田家で久しぶりに三人で酒をくみ交わす。「さと子ちゃんは今夜一晩が一生だな」とつぶやき、たみは「門倉さんの行く場所がなくなっちゃう」と言う。
ほか
門倉修造役の高倉健が最初に決まり[7]、奥さん役に宮本信子が決まった[7]。次に水田たみ役を誰にやってもらおうかと監督の降旗康男が考え、降旗はNHKのテレビドラマの配役、水田仙吉 (フランキー堺)、門倉修造(杉浦直樹)、水田たみ(吉村実子)が皆いい人に描かれ、主人公3人が大変仲が良くて、向田邦子が描きたかった世界とは違うのではないかと思っていた[7][8][9]。降旗は「美人のヒロインは2人の男に思われて当然と思っている一面があるし、彼女の旦那は"俺が妻と親友・門倉を裏で操っているんだ"と思っている。各々が相反する思いを抱きながら関係を保っているのが人間なんだと思ったんです。その関係性が戦時の中で崩されていくのは、どういうことだったのかを描きたいと思った」[9]「"戦友"とは肩を組むだけじゃない。汚いものも含んでいる。でも、何かあったときには繋がる関係なのでは?」と考え、二番煎じ的なものはやりたくなかったが、それなら出来ると考えた[8]。それで水田を板東英二、水田たみを富司純子なら、少し違う世界が描けるのではないかと考えた[7]。降旗が特に固執したのが板東英二の起用[8]。降旗は「『俺はあいつ(門倉)を手玉に取っているんだ』という、どこかに嫌味のある人でないとダメだと考え、それは板東さんじゃないと表現できないと思ったんです。周囲からはずいぶん反対されました」と述べている[8]。
富司純子が女優として復帰すれば1972年に四代目尾上菊之助(現・七代目尾上菊五郎)と結婚引退して以来、17年ぶりの映画女優復帰となるため、大きな話題を呼ぶことは間違いない[7]。さっそく市古聖智、進藤淳一両プロデューサーと降旗の3人で六本木プリンスホテルで富司に会い、出演交渉を行うと富司は出演を承諾したが、条件があると市古・進藤両プロデューサーだけ残し、「絶対お父さん(俊藤浩滋)と岡田茂東映社長のところには、そちらから挨拶に行かないで下さい。もし挨拶が必要なら、私の方でやります。この作品は私が選んだものですので、あなた方が挨拶に行ったら私は出ません」とクギを刺された[7]。1972年に結婚した際、俊藤からは「二度と映画に戻ってこないという決心がなければ結婚してはいかん」と言われ、「映画はやめる。映画には戻りません」と約束し[10]、女優引退を断固反対した岡田には「仕事と家庭を両立させる自信はとてもない。どうか許してほしい」と頭を下げて、女優引退を承諾させた過去があるからだった[11]。富司はお世話になった方や、ファンを裏切る形で、女優を引退することになったため、女優としての復帰には随分迷ったが、子どもたちから「お母さんは子離れできないね」と言われてショックを受け、何をしようかと考えたら「自分には女優しかない」と考えていたら、本作とNHKの『詩城の旅びと』から同時にオファーがあり、藤純子として応援してくれたファンを許してもらうため、藤純子の名前は宝石箱に入れ、新たに富司純子として決意のリ・スタートをした[12]。高倉健に富司の出演を知らせたら、ビックリしていたという[7]。
撮影は1989年夏[13]。水田の家族が住む家はメインの道路から奥へ入った突き当りだが、道路側から家、家側から道路のカットしか映さず、横は全く映らないためセットと見られ、門倉の会社も同じカット、後半のおでん屋、神楽坂設定の坂道などがセットと見られる。ただ45分くらいのところで板東と芸者まり奴(山口美江)が絡む神楽坂下設定の場面は大きな橋(牛込橋?)の上でセットには見えず。また数秒しか映らないが兵隊の帰還を祝うシーンで背後に東京駅らしき建物が映り、よく出来ている。
高倉やスタッフが「温泉で撮影しよう」と要望し[13]、静岡県伊豆市修善寺温泉「新井旅館」とその周辺でロケが行われた[13]。『アサヒグラフ』1989年9月8日号の高倉のグラビアは、このロケ中に時間を取って天城トンネルに行って撮影したもの[13]。
高倉は今回の映画の中で一番気に入っているセリフは「人間は大切なことは言わない」と話していたという[13]。
配収5億円[4]。『AVジャーナル』1990年1月号には「アダルトを動員したが興行はいまひとつ」と[4]、『映画年鑑』には「降旗・高倉コンビでそれなりの味を出したが、興行的には成功するまでに至らなかった」と書かれている[5]。
『朝日新聞』読書欄の「重松清さんと読む百年読書会」2009年6月7号の回でこの作品がとりあげられたが、男性読者からは「仙吉と門倉の関係が不自然」という意見が多く、女性読者からは2人の友情を肯定的にとらえる意見が多かった。
東宝ビデオより1990年6月1日にビデオが発売されている[4]。114分、価格14,800円[4]。DVDも何度か発売されている[14]。
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