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F-100 スーパーセイバー(North American F-100 Super Sabre )は、アメリカ合衆国のノースアメリカンが開発し、アメリカ空軍などで運用された戦闘機。
F-100 スーパーセイバー
世界初の実用超音速戦闘機で、愛称はF-86を継いだかたちとなる「スーパーセイバー(Super Sabre)」。また非公式ではあるが、形式番号の100すなわち「ハンドレッド (Hundred)」にちなんで「ハン (Hun)」とも呼ばれた。
アメリカ空軍で1954年から1982年まで使われた世界初の実用超音速ジェット戦闘機である。愛称からもわかるようにF-86 セイバーに続く制空戦闘機として開発されたが、実際の運用面においては戦闘爆撃機としての運用が多い機体であった。
F-86の後継となる超音速戦闘機の開発は1949年2月に開始された。開発当初は主翼後退角がF-86の35度から45度に変更されることから「セイバー45」という名称だった[2]。空軍は更なる改良を求めたため、ノースアメリカン社は新設計のNA-180案を提案し、これが採用された。1951年11月にアメリカ空軍とノースアメリカン社との間で試作機YF-100A・2機と量産機F-100A・203機を製造する契約がむすばれた[2]。最初の試作機YF-100Aは1953年5月25日にXJ57-P-7ターボジェットエンジンを搭載して初飛行し、水平飛行で音速を突破した。同年10月29日には速度の世界記録 1,215 km/hを作った。なお、当初搭載エンジンにはJ40も候補に挙がっていたが、このエンジンは失敗作で、採用した同時代の機体は全て開発遅延ないし開発中止に追い込まれており、J57を選定したことは本機にとって幸運であった。
ただし、最初の超音速戦闘機ゆえの限界もあり、水平飛行での音速突破は機外搭載物のないクリーン状態時に限られ、わずかでも機外搭載物があると水平飛行での音速突破は不可能であった。そのためF-101など、この後登場した多くのアメリカ戦闘機は、空対空ミサイルの機内搭載方式を採用しているが、一時期の事で終わり、その後に登場する多くの戦闘機は、機外搭載物があっても音速突破が可能になった。
機首にインテークを持ち、やや高めの低翼配置となった主翼は水平尾翼よりも若干上の位置に配置されている。この配置により、T字尾翼を採用したF-101やF-104で問題となったピッチアップのような悪癖が無く[要出典]、後年の戦闘機設計の範となった。固定武装として機首下面に20mm機関砲4門を装備。空中給油能力は当初保持していなかったが、F-100Cからは受油プローブが増設された。改良によって対地攻撃能力が強化されていき、決定版となったF-100Dはアビオニクスの更新などにより本格的な戦闘爆撃機に仕上がった。このF-100Dの改良型であるF-100Eは計画のみに終わり、最終型となったのは複座練習機型F-100Fであった。
構造材として、従来のアルミニウム合金よりも多くの面で優れているチタニウム合金を採用したのも本機の特色である。1953年〜54年にかけてのアメリカ合衆国のチタン生産量の80%が本機に使われたという。
ノースアメリカンでは発展型のF-107Aも試作されたが、こちらは採用には至らなかった。
F-100は、出現当初は初の超音速戦闘機故に、従来機に比べ高価で複雑な機体であり、さらに続く超音速戦闘機が続々と登場したため陳腐化が早く採用国は多くない。アメリカ合衆国以外ではトルコ、フランス、デンマーク、中華民国(台湾)で使用されたのみだった。
初期型には原因不明の空中分解事故が相次ぎ、1954年10月12日にはノースアメリカン社チーフテストパイロットのジョージ・ウェルチによる急降下試験中に空中分解し墜落、ウェルチは死亡した。原因はピッチとヨーの合成力が尾翼の許容範囲を超えて起こるロール・カップリング現象で、高速で急降下中に急激な引き起こしを行うと機首が右に振られ操縦不能に陥ってしまうのである。改善のためアメリカ空軍は同年11月から翌年2月まで飛行停止措置を行い、垂直尾翼面積の27%拡大や主翼の延長などの改修を行った。
しかしその後も事故は発生し続け、ベトナム戦争でも多くの機体が目標攻撃後の引き起こし時に事故で失われた。1967年10月21日にはテキサス州ローリン空軍基地でメリル・A・マックピーク大尉がサンダーバーズの一員として飛行していた際、6.5Gの引き起こし中に主翼が上に折れ曲がり、機体構造の中心部分である中央翼ボックスが破損して燃料漏れと火災を引き起こし墜落、マックピーク大尉は緊急脱出するという事故が発生した。これによりサンダーバーズ機は飛行停止となり、作戦部隊でも機動を4G以下に制限する処置が取られた。残骸を調査した結果、主降着装置の取り付け位置内側にあるボルト穴から40本ほどの疲労亀裂が発見されたため、暫定的な処置としてボルト穴に沿って細長い金属片を付加するという応急処置が行われた後、主翼ボックスを再設計し作り直すという対策が巨額を投じてアメリカ空軍の保有機全機に適用された[3]。
アメリカ空軍では、運用期間中合わせて889機のF-100が事故で失われており、391名(内パイロット324名)が死亡している[4]。
1959年6月30日には、米軍占領下にあった沖縄県でF-100Dが墜落し、小学生11名を含む17名が死亡、重軽傷者270名を出す惨事となっている(宮森小学校米軍機墜落事故)。
1961年12月7日には、同じく米軍占領下にあった沖縄県嘉手納基地を離陸した米軍のF-100Dのエンジンが離陸直後に故障し、操縦不能に陥った。パイロットは脱出したものの、無人となった機体は炎をあげながら、うるま市具志川の川崎地区に墜落し、周囲の住宅が全焼、墜落した機体が周囲に散乱した。この事故で墜落現場にいた2人が即死、小学生を含む6人が負傷した[5][6]。
出典: Quest for Performance[7]
諸元
性能
武装
型名 | 番号 | 機体写真 | 所在地 | 所有者 | 公開状況 | 状態 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
YF-100A-NA | 52-5755 180-2 |
アメリカ カリフォルニア州 | 空軍飛行試験博物館 | 公開 | 静態展示 | 博物館の所蔵品だが、エドワーズ空軍基地の西門前に展示されている。 | |
F-100A-1-NA | 52-5759 192-4 |
アメリカ テキサス州 | アメリカ空軍航空兵遺産博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100A-1-NA | 52-5761 192-6 |
アメリカ コネティカット州 | ニューイングランド航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100A-1-NA | 52-5762 192-7 |
アメリカ ミシガン州 | グランドヘイヴン記念エアパーク | 公開 | 静態展示 | 22576の番号とサンダーバーズの模様が塗装されている。 | |
F-100A-10-NA | 53-1533 192-28 |
アメリカ サウスダコタ州 | サウスダコタ航空宇宙博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100A-10-NA | 53-1550 192-45 |
台湾 桃園市 | 桃園空軍基地 | 非公開 | 保管中 | かつて航空科学館に展示されていた。航空科学館の閉館に伴い、新しい博物館の建設まで空軍基地の滑走路東側の空き地に他の元展示機と置かれている。 | |
F-100A-15-NA | 53-1571 192-66 |
台湾 新北市 | 淡江大学淡水キャンパス | 公開 | 静態展示 | 工学院棟西側に展示されている。 | |
F-100A-15-NA | 53-1589 192-84 |
台湾 台北市 | 国立台湾大学 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100A-20-NA | 53-1655 192-150 |
台湾 新竹市 | 新竹空軍基地 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100C-1-NA | 53-1709 214-1 |
アメリカ カリフォルニア州 | キャッスル航空博物館 | 公開 | 静態展示 | F-100Cの初号機。F-100D-50-NH 55-2879の塗装がされている。 | |
F-100C-1-NA JF-100C-1-NA |
53-1712 214-4 |
アメリカ インディアナ州 | グリソム航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100C-5-NA | 54-1784 217-45 |
アメリカ イリノイ州 | プレイリー航空博物館 | 公開 | 静態展示 | サンダーバーズの塗装がされている。 | |
F-100C-5-NA | 54-1786 FE248 (MASDC) 217-47 |
アメリカ カリフォルニア州 | マーチフィールド航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100C-25-NA | 54-1986 217-227 |
アメリカ フロリダ州 | 空軍兵装博物館 | 公開 | 静態展示 | 名誉勲章受章者であるジョージ・エヴァレット・デイの乗機であったF-100C-20-NA 54-1954号機の塗装がされている。 | |
F-100C-25-NA | 54-2091 217-352 |
アメリカ カリフォルニア州 | ヤンクス航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-5-NA | 54-2151 223-31 |
アメリカ テキサス州 | シェパード空軍基地 | 公開 | 静態展示 | 空軍基地敷地内のピッツェンバーガージム(Pitsenberger Fittness Gim)の隣にある。 | |
F-100D-10-NA | 54-2157 42157 (ALA) 223-37 |
イギリス タイン・ウィア州 | ノースイースト陸海空博物館群 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-10-NA | 54-2163 42163 (ALA) 223-43 |
イギリス ダンフリース・ギャロウェイ州 | ダンフリース・ギャロウェイ航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-10-NA | 54-2165 42165 (ALA) 223-45 |
イギリス ケンブリッジシャー州 | ダックスフォード帝国戦争博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-10-NA | 54-2174 42174 (ALA) 223-54 |
イギリス ウォリックシャー州 | ミッドランド航空博物館 | 公開 | 静態展示 | 国立アメリカ空軍博物館からの貸与品。 | |
F-100D-10-NA | 54-2183 223-63 |
デンマーク 中央ユラン地域 | デンマーク飛行博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-10-NA | 54-2196 42196 (ALA) 223-76 |
アメリカ サフォーク州 | ノーフォーク・サフォーク航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-15-NA | 54-2223 42223 (ALA) 223-103 |
イギリス ノッティンガムシャー州 | ニューアーク航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-15-NA | 54-2239 42239 (ALA) 223-119 |
フランス オート=ガロンヌ県 | 古代翼トゥールーズ博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-15-NA | 54-2265 42265 (ALA) 223-145 |
オランダ ユトレヒト州 | 国立軍事博物館 | 公開 | 静態展示 | F-100C-20-NA 54-1871号機の塗装がされている。 | |
F-100D-15-NA | 54-2281 223-161 |
アメリカ アリゾナ州 | ハリー・ボンソール・シニア公園 | 公開 | 静態展示 | グレンデイル市の公園に展示されている。 | |
F-100D-15-NA | 54-2299 223-179 |
アメリカ カリフォルニア州 | ジョー・デイヴィーズ遺産航空公園 | 公開 | 静態展示 | 国立アメリカ空軍博物館からの貸与品。 | |
F-100D-35-NH | 55-2736 52736 (ALA) 224-3 |
フランス セーヌ=サン=ドニ県 | 航空宇宙博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-20-NA | 55-3503 223-185 |
アメリカ コロラド州 | プエブロ・ワイスブロッド航空機博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-30-NA | 55-3754 223-436 |
アメリカ オハイオ州 | 国立アメリカ空軍博物館 | 公開 | 静態展示 | 実際にサンダーバーズに所属して曲技飛行を行った機体。 | |
F-100D-50-NH | 55-2888 224-155 |
アメリカ カリフォルニア州 | パームスプリングス航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-65-NA | 56-2995 235-93 |
アメリカ ジョージア州 | ミュージアム・オヴ・エイヴィエーション | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-70-NA | 56-3025 235-123 |
アメリカ ミシガン州 | セルフリッジ軍事航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-70-NA | 56-3081 235-179 |
アメリカ オハイオ州 | MAPS航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-70-NA QF-100D-70-NA |
56-3141 FE478 (MASDC) 235-239 |
アメリカ カリフォルニア州 | プレインズ・オヴ・フェイム航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-90-NA | 56-3288 FE281 (MASDC) 235-360 |
アメリカ カリフォルニア州 | カリフォルニア航空宇宙博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-85-NH | 56-3417 245-67 |
アメリカ コロラド州 | ロッキー山脈上翼航空宇宙博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100D-85-NH | 56-3434 245-84 |
アメリカ フロリダ州 | ヴァリアント航空軍団株式会社ウォーバード博物館 | 公開 | 修復中 | ||
F-100D-85-NH | 56-3440 245-90 |
アメリカ ヴァージニア州 | スティーヴン・F・ウドヴァー=ヘイジー・センター | 公開 | 静態展示 | ||
F-100F-10-NA | 56-3832 243-108 |
アメリカ オレゴン州 | エヴァーグリーン航空宇宙博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100F-10-NA | 56-3837 FE607 (MASDC) FE631 (MASDC) 243-113 |
アメリカ オハイオ州 | 国立アメリカ空軍博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100F-10-NA | 56-3842 GT-842 (RDAF) 243-118 |
アメリカ アリゾナ州 | モハーヴィ航空宇宙港 | 公開 | 保管中 | ||
F-100F-10-NA | 56-3844 243-120 |
アメリカ マサチューセッツ州 | コーリングス財団 | 公開 | 飛行可能 | 実際にサンダーバーズに所属して曲技飛行を行った機体。 | |
F-100F-10-NA QF-100F-10-NA |
56-3880 FE257 (MASDC) FE639 (MASDC) 243-156 |
アメリカ アリゾナ州 | デイヴィス=モンサン空軍基地セレブリティ・ロウ | 非公開 | 保管中 | ピマ航空宇宙博物館のツアーに参加することでのみ見学できる。 | |
F-100F-10-NA QF-100F-10-NA |
56-3899 FE630 (MASDC) 243-175 |
アメリカ メリーランド州 | グレン・L・マーティン・メリーランド航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100F-10-NA | 56-3904 FE356 (MASDC) 243-180 |
アメリカ アーカンソー州 | 航空士官候補生博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100F-10-NA QF-100F-10-NA |
56-3905 FE379 (MASDC) 243-181 |
アメリカ メリーランド州 | グレン・L・マーティン・メリーランド航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100F-15-NA | 56-3929 FE381 (MASDC) 243-205 |
アメリカ テキサス州 | フェイエット地域航空センター | 公開 | 静態展示 | ||
F-100F-15-NA | 56-3944 243-220 |
ドイツ ラインラント=プファルツ州 | ピーター・ユニォア航空機展示場 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100F-15-NA | 56-3948 243-224 |
アメリカ インディアナ州 | アメリカン・ホライズンズ株式会社(American Horizons Ltd. Inc.) | 非公開 | 飛行可能 | ||
F-100F-15-NA | 56-3982 FE374 (MASDC) 243-258 |
アメリカ テキサス州 | ハンガー25航空博物館 | 公開 | 静態展示 | ||
F-100F-15-NA | 56-3996 GT-996 (RDAF) 243-272 |
アメリカ アリゾナ州 | モハーヴィ航空宇宙港 | 公開 | 保管中 | ||
F-100F-20-NA | 58-1232 255-28 |
アメリカ ハワイ州 | 真珠湾航空博物館 | 公開 | 静態展示 | 旧塗装 | |
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