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神道、神社において神に奉仕し祭儀や社務を行う者 ウィキペディアから
神職(しんしょく)とは、神道、神社において神に奉仕し祭儀や社務を行う者のことである。
神主(かんぬし)は本来、神社における神職の長を指していたが、現在では神職と同じ意味で用いられる。神官(しんかん)は、国家の官吏として祭祀を司る職業のことで、第二次世界大戦前は伊勢神宮の「神宮司庁」の祠職のみが呼ばれた。日本国憲法施行以後、神道は国家管理から離れた為、神官は存在しない。
江戸時代までは物忌(伊勢神宮、鹿島神宮)、忌子(賀茂神社)などの名称で女性の職掌も存在し、他の職官でも女性の神職は存在した。しかし、儒教思想に影響を受けた明治政府の宗教政策により、女性神職は存在しなくなった。その後、第二次世界大戦後の1946年(昭和21年)に男女同権思想と、神社の後継者問題(主に出征した神職の戦死、長期未帰還など)の面から、再び女性神職が認められるようになっている[1]。
日本の神社は、教義の面からは、
に大別される。前者は1946年まで内務省の神祇院の管轄下にあった神道の神社。後者は幕末から明治期にかけて明治天皇の勅許により成立した神道系の宗教である。 これらは組織系列として、
に大別される。
神社本庁は、内務省外局の神祇院を前身とし、1945年12月にGHQの発出した「神道指令」により1946年に政府組織から分離して改組、1宗教法人として再発足した。神社神道に属する約8万社のうち、7万9千社を包括する。
神社の大部分をしめる「神社本庁の包括下にある神社」の神職になるためには、神社本庁が認定する資格「階位」を有することが必須の条件である。
「神社本庁の包括下にある神社」は、階位の保有者のなかから神職を採用してゆく。
「神社本庁の包括下にある神社」の神職を目指す者は、「階位」の取得を目指す必要がある。
「神社本庁庁の包括下にない神社」および教派神道の神社は、それぞれ独自に「神職の資格」を定めることが可能であるはずであるが、実際には要員を神社本庁の神職養成課程設置機関(→後述)で訓練させ、「階位」を取得させていることが多い。
1946年以降の「階位」は、神社本庁が認定を行う民間の資格であり、「浄階・明階・正階・権正階・直階」の5種がある。
「階位」の認定を受ける方法は
1,2は「神社本庁の包括下に無い神社」や「教派神道に属する神社・教会等」の子弟を含む一般にも開かれた方法、3,4は神社本庁包括下の神職の後継者で「祀職・家職を継承するために緊急に資格を必要とする者」という限定がある。
名称 | 対象 | 年限 | 授与される階位 | 備考 |
---|---|---|---|---|
予科 | 中学卒業 | 1年 | 直階授与 | |
普通課程I類 | 高等学校卒業またはそれと同等の学力を有する者 | 1年 | 権正階授与 | |
普通課程II類 | 高等学校卒業またはそれと同等の学力を有する者 | 2年 | 正階授与 | |
専修課程 | 以下のいずれか 普通課程II類修了者・正階保有者・短期大学卒業以上 |
2年 | 明階検定合格・正階授与 | |
高等課程 | 高等学校卒業 | 4年 | 明階検定合格・正階授与 | 大学(国学院・皇学館)の学部で「神職課程」として履修可能 |
専攻課程I類 | 大学卒業者 | 1年 | 明階検定合格・正階授与 | 大学(国学院・皇学館)に設置 |
専攻課程II類 | 大学卒業者 | 2年 | 明階授与 | 大学院(国学院・皇学館)の修士課程に設置 |
明階総合課程 |
|
6ヶ月 | 明階授与 | 大学(国学院・皇学館)に設置 |
※専修課程・高等課程・専攻課程I類を修了し、「明階検定合格・正階」の資格を得た者は、さらに、神宮・神社・神社本庁・神社庁の職員(神職・巫女・事務員を問わない)として2年以上在職し、神社本庁研修規程に基づく必要な研修を受講した後、各都道府県神社庁を通して「明階」を申請することができる。
名称 | 設置課程(学校固有の学部・学科・専攻名) | 所在 | 設立年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
國學院大学 |
|
東京都渋谷区 | 1920 | |
皇學館大学 |
|
三重県伊勢市 | (1882)1962 | |
名称 | 設置課程 | 所在 | 設置年 | 備考 |
---|---|---|---|---|
志波彦神社・鹽竈神社神職養成所 |
|
宮城県塩竈市 | (1943)1946 | |
出羽三山神社神職養成所 |
|
山形県鶴岡市 | (1883)1962 | |
神宮研修所 |
|
三重県伊勢市 | (1952)1969 | 男子のみ募集 |
熱田神宮学院 |
|
愛知県名古屋市熱田区 | 1950 | |
京都國學院 |
|
京都市上京区 | (1885)1955 | |
大社國學館 |
|
島根県出雲市 | (1938)1956 | |
大阪國學院※※ |
|
大阪市中央区 | 通信教育機関 | |
※大社國學館の別科は予科に相当。本科・選科は普通課程II類に相当し、受験資格は本科が高卒(高卒相当)、選科は直階保有者。
※※大阪國学院は高等学校卒業以上を受験資格とし、1年次に直階、2年次に権正階の授与を受けることができる。
神社本庁では、「階位検定及び授与に関する規程」により、以下の5つの階位区分がある。明階までは所定の研修を受けることにより昇進が可能である。なお、階位の名称は神道で徳目とする「浄明正直」(浄く明く正しく直く)から取られたものである。
神社本庁では、「神職身分に関する規程」により、特級、一級、二級上、二級、三級、四級という身分の区分がある。
身分の選考は経歴・神社界に対する功績をもとに行われる。「神社本庁統理、神宮大宮司は特級」、「神宮少宮司は一級」、「神宮禰宜、別表神社の宮司および権宮司は二級上または二級(三級以上・正階以上)」という基準があるが、昇級は基本的に各都道府県神社庁支部への貢献度、神職としての評価、実績による。推薦は支部毎となるため、神職の少ない支部に於いては多い支部と比べ昇級が早まる傾向にある。なお、出雲大社の「教統は一級」である[2]。
また、現在は神社本庁の包括下にある神社の神職であっても、以前は神社本庁の包括下にない神社(単立神社)の神職であった場合、神社本庁と友好的な関係にある単立神社(靖国神社や伏見稲荷大社など)を除いて、単立神社での経歴や功績は身分の選考には加味されない。
徳望衆に秀で人格見識共に勝れ多年奉仕神社の県営に神徳の発揚に力をいたし老齢に達する迄神社界の先覚として終始一貫斯道の為に貢献し功績抜群なる者(表彰規程第2条第3号)に対し授与される功績状を授与された者に対し、長老の敬称を贈ることとなっている(長老に関する規程)。
神社本庁では正装・礼装・常装の服制を定め、上記の身分別に規定がある。(女子神職は別に規定あり)
祭典において神職の役割は、その祭典を主宰する斎主(宮司)と、神饌を供える・玉串を手渡す・祭具を運ぶといった補佐をする祭員(禰宜など)に分けられ、原則として、同じ祭典に奉祀する者は同じ装束を着用する。
これは、社殿が広く祭場の場所が充分に取れる場合は差し障りないが、正装は威儀を正すという性質上、装束が大振りで活動的ではないかため、社殿の小さな神社では、複数人の神職が正装を着用して祭典を行うと、他人の装束や祭具に引っかけてしまったりと祭典に支障をきたす場合がある。このため、斎主は正規の服制に倣っても、斎主以外は状況に応じて常装で行う場合も多い。また、さらに小規模な神社では斎主1人で祭典を行うことも多く、この場合、1人で全ての役割をしなければならないため、大祭・中祭であっても常装で行う場合もある。
正装(衣冠)は「大祭(例祭、新嘗祭、祈年祭、神社造営等に関わる臨時祭など)」、「天皇、三后、皇太子または皇太孫御参拝」の場合に着用する。
また、神社において由緒ある祭典を行う上、特に必要あるときは、宮司に限り、神社本庁統理の承認を受けて、その当日一等級上位の正装を着用することができる。
礼装は「中祭(歳旦祭、元始祭、紀元祭、天長祭など)」で着用する。また、正装の代わりに礼装を着用することも認められている。
斎服といい、身分に拘らず、白袍(無紋)、白差袴(無紋)、冠(遠紋)。出雲国造は白袍、白差袴、冠黒羅繁紋垂纓、懸緒紙捻紫色[3]。
常装は「小祭(月次祭、旬祭など)」、「恒例式(遥拝式、大祓式など)」で着用する。
狩衣、奴袴(色目は正服に準ずる)、烏帽子。出雲国造は小豆色差袴(剣唐花菱)、立烏帽子懸緒懸緒紫打紐。笏または中啓を用いる[3]。
狩衣の色目・紋様は禁色を除いてまったく自由である(後述の忌色は別)。禁色とは高貴な人が着る色目で、神社本庁では天皇の御服である黄櫨染、皇太子が着用する黄丹の2色が禁色に指定されている[4]。
狩衣は、「雑祭(各種祈願祭や地鎮祭などの出張祭典、神前結婚式など)」の際にも着用する。なお、大祓式などの特に清浄を必要とする場合には、身分に拘らず無紋の白い狩衣である浄衣を着用する。
また、神葬祭・神前結婚式の装束は以下のとおりである。
この他、その神社特有の故実がある場合は、その故実に従った服制を定めることができたり、祭典内容や神職身分によって、束帯、直衣、明衣、布衣、格衣、直垂などを用いる場合もある。
神社内での役職順位を職階という。神社の規模や由緒によって異なるが、一般的には、「宮司」(ぐうじ)・「禰宜」(ねぎ)・「権禰宜」(ごんねぎ)が置かれている。原則として宮司・禰宜は各神社に1名ずつである。別表神社の一部では、宮司の下に「権宮司」(ごんぐうじ)や複数の禰宜を置いている。簡単にいえば、宮司は神社の代表者、権宮司は副代表者、禰宜は宮司の補佐役、権禰宜は一般職員である。神宮は特別で、「祭主」・「大宮司」・「少宮司」・「禰宜」・「権禰宜」・「宮掌」・「出仕」・「出仕前」を置いている[5]。
この他、臨時職である「宮司代務者」、権禰宜以下の神職である「宮掌」(くじょう)・「主典」(しゅてん)・「典仕」(てんじ)、神職見習いである「出仕」(しゅっし)・学生である「出仕前」(しゅつじさき)・「実習生」・「研修生」などがある。
神職以外には、事務職として「参事」・「録事」・「主事」、「主事補」、宗教職として「教導司」・「教学司」、その他専門職として「伶人」・「技監」・「技師」・「庭師」・「衛士」・「守衛」などを置いている神社もある。また、「巫女」や「舞女」などは神職に含まれない。
また、神社本庁の包括に属する神社の宮司あるいは宮司代務者である以上、神社の大きさに関係なく、宗教法人であれば代表役員として、立場は対等である。例えば、別表神社の宮司も、地方の小さな神社の宮司も、影響の有無は区別して代表役員としての地位は同じである。なお、職階と階位は別物であり、職階が上の方が神職としての地位は上である。例えば、明階の禰宜や権禰宜よりも、正階または権正階の宮司の方が上である。
神社本庁の宗教法人としての規則である「宗教法人「神社本庁」庁規」第78条では「宮司をもって代表役員とし、宮司代務者をもって代表役員の代務者とする」。同庁規第90条第1項により、「宮司及び宮司代務者の進退は代表役員以外の役員の具申により、統理が行ふ。但し、統理が必要と認めたときに、代表役員以外の責任役員の同意を得て、進退を行ふことができる」。第91条では「権宮司の進退は、役員の同意を得て宮司が具申して、統理が行ふ」。「禰宜以下の進退は、宮司の具申により、統理が行ふ」こととされている。また、神社本庁の「役職員進退に関する規程」では宮司、別表神社の権宮司の任免は「統理が行い」、その他の神職は「統理の指揮を受けて都道府県神社庁長が行う」こととされている。
伊勢神宮では、宗教法人としての規則である「神宮規則」により、祭主は「勅旨を奉じて定め」(神宮規則第30条第1項後段)、神宮大宮司の任免は「神宮崇敬者総代の同意を得て、神宮責任役員〔神宮少宮司及び責任総代〔崇敬者総代のうちから崇敬者総代会において選出した者を代表役員が委嘱する〕〕が連署の上、勅裁を仰ぐ」(神宮規則第32条)、神宮少宮司の任免は「神宮崇敬者総代の同意を得て神宮大宮司が行う」(神宮規則第33条)、その他の神職の任免は「大宮司が行う」(神宮規則第34条)こととされている。
以下に列記した神社はあくまでも、在籍する神職職員が院友もしくは館友のどちらかに偏っている別表神社であり、実際には、出身校に拘らずに職員を採用している神社の方が多い[6]。
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