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春香伝(しゅんこうでん、チュニャンヂョン)は、李氏朝鮮時代の説話で、妓生の娘と両班の息子の身分を越えた恋愛を描いた物語。
18世紀頃、民族音楽的語り物であるパンソリの演目「春香歌」として広まるとともに、小説化も行われた。韓国では現在も人気のある作品であり、映画化も何度か行われている。
南原府使の息子・李夢龍(イ・モンニョン)と、妓生(キーセン)である月梅(ウォルメ)の娘・成春香(ソン・チュニャン)は、広寒楼で出会い、愛を育む。しかし、父の任期が終わり、夢龍は都に帰ることになる。夢龍と春香は再会を誓い合う。新たに赴任した卞(ピョン)府使は、春香の美貌を聞きつけて我が物としようとするが、春香は夢龍への貞節を守ることを主張して従わない。激怒した卞府使は春香を拷問し投獄する。いっぽう夢龍は科挙に合格して官吏となり、暗行御史として南原に潜入した。夢龍は卞府使の悪事を暴いて彼を罰し、春香を救出する。二人は末永く幸せに暮らした。
中国の唐時代から続く「才子佳人小説」の系譜に属する。口伝によって伝承されて来たものが、18世紀李朝19代王粛宗から22代王正祖の頃に物語として成立していたと見られる。19世紀純祖の代に申在孝がパンソリ「春香歌」として脚色して広く演じられ、当時の詩人の申緯、玉山張之琬、趙在三などが観劇について書いている。また『烈女春香守節歌』『春香伝』『水山広寒楼記』『南原古詞』など、多数の小説が著され、基本的なあらすじは共通ながら、漢文によるもの、ハングルによるもの、英語訳のものなどがあり、文体も説話体や韻文体があり、性的描写が濃厚なものなど、異本によってさまざまな形がある。春香の行動も、儒教的な貞節を強調するものから身分を越えた愛とするものまで多様な解釈が可能なバリエーションを持っている。
近代に入ると舞台化も行われ、映画化も十数回はされている。現代の韓国でも人気のある作品で、古典文学である一方で、パロディ化したドラマなども制作されており、その大衆的な知名度と人気は、日本の忠臣蔵に喩えられることがある。
半井桃水『鶏林情話 春香伝』(1882年に大阪毎日新聞に連載、全20回)が日本語訳の嚆矢とされるが、かなり日本風に脚色が加えられている[1]。
『全州土版烈女春香守節歌』を底本にした小説版が岩波文庫より、申在孝によるパンソリを筆録した「春香歌」が東洋文庫より刊行されている。
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