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技術士 森林部門(ぎじゅつし しんりんぶもん)とは、技術士の技術部門の中で森林の産業・林業に係る部門。そして森林部門には林業・林産、森林土木、森林環境の3つの選択科目が定められている。
2000年代から想定を超える災害が多い現状では、より高いレベルの環境整備/森林整備が必要であるため、林業の高度な専門知識を持つ技術士は非常に需要が高く、官公庁や自治体、国土交通省に登録している事業者などに対し、技術コンサルティングを行っている者が活動するために建設コンサルタントとして認められるには、技術士の資格を持つ常勤の技術管理者を配置しておくことが望ましく、森林部門の技術士が必要となるが、森林部門の受験者の多くは選択科目が森林土木の分野に偏っていることが知られる。これは後述の公的活用の影響を受けているものと考えられている。建設業法においては建設業の土木工事一式業やコンクリート工事業などの登録では、選択科目が森林土木である技術士のみが認められ、造園工事業では森林土木もしくは林業のみとなっている状況があり、「森林土木」を選択科目として資格取得した場合、工事業などで必須の、技術管理者になることが可能であるし、建設コンサルタント登録も含め、森林土木は林道や保安林の整備など土木工事/公共事業に関する内容が多くなっており、公共事業として国や市町村といった公的機関から森林整備の業務を受注する場合など定めがあるため、こうした事業需要が多くを占めており、これは建設関係の部門だけでなく、環境など他の部門でも多かれ少なかれこうした建設工事に代表される公共事業関連業務の受注に関連した需要となっているからである。建設業界で建設業では建築と土木、造園という分類がされているが、特に土木においては開発における樹木調査や緑化改善、森林施業や砂防など、建設部門の技術士のみならず森林土木の知識や技術が必要な場面が非常に多い。
逆に少なかったのは林産の分野で、以前、森林部門の選択科目は、林業、森林土木、林産、森林環境の4つであった。これらの科目は5年ごとに見直しを行うとされており、相対的に受験申込者数の比率の少ない科目は統廃合の対象となる。例年森林部門は20部門の各科目で、全申込者数で0.1%にも満たない科目は統合か内容変更に、0.05%に満たない科目は廃止の対象となる[3]が、森林部門の中では林産科目の受験者はあまり多くなく、廃止の恐れがあった。有志の木材研究者が関連業界団体や学会に働きかけて受験斡旋を行うこととなった。日本木材学会では、2013年より地域木材産業研究会にて、技術士試験の情報提供と選択科目「林産」での受験奨励を行う。結果同科目の受験者・技術士が増加。日本木材学会が文部科学省に「選択科目『林産』の維持・存続に関する要望書」を提出した ことで廃止ではなく統合という形に落ち着くことになった。この活動を受けて2016年からは、産学官連携推進委員会の下に技術士小委員会が設置され、林産科目の受験者を維持・増強すること、林産分野を専門とする技術士の活用を図ることを方針に掲げ活動している[4]。ただし近年は林産関係の技術者の受験者数減少が続き、再び問題となってきている。 [5]。また統合により、「森林計画及び森林管理、造林、林業生産その他の森林・林業に関する項目」(林業)と「木質材料・木質構造、林産化学、木質バイオマス、特用林産その他林産に関する事項」(林産)の双方が同じ科目の中で出題されることになり、現在の制度よりも幅広い知識が試験で求められることになった。林業・林産科目では生産業としての現状の林業が持つ課題を解決していく能力があるかが問われ、出題によっては木材関連工場の監督者になったと仮想し、どのように工場を運用するかといった問題に答案にまとめるなどの能力を問うものもあり、日頃からの林業・林産業に関する情報収集や問題整理と共に、新旧の技術知識の習得とその応用力が求められているといえる。
第二次試験の目的が「複合的なエンジニアリング問題を技術的に解決することが求められる技術者が、問題の本質を明確にして調査・分析することによってその解決策を導出し遂行できる能力を確認すること」(技術士分科会による)とあることから、第二次試験の必須科目と選択科目の特徴として、解答者の考えを述べる問題が多いことが挙げられている。したがって森林部門でも第二次試験は、実務経験を経た人が森林科学全般の知識はもちろんのこと、解答者の実務経験をもとにした回答が求められている内容となっているのであるが、森林科学全般の問題傾向については、水井・杉浦・井上らが(2022)技術士(森林部門)を高度専門資格であるととらえ、試験内容を整理し分析し、大学の教育内容へとどの程度反映されているのか、高度専門家の育成を目的とした場合の大学教育に求められている森林科学分野の内容について考察を試みている。
対象とした技術士試験の分析には、森林科学を網羅している「森林・林業実務必携」(東京農工大学農学部 森林・林業実務必携編集委員会)の目次と、日本森林学会大会における発表部門をもとに、問題の内容の分類と整理を行い、出題傾向の把握を行っている(実務必携は 26 章:1章 森林生態 / 2章 森林土壌 / 3章 林木育種 / 4章 育林 / 5章 特用林産 / 6章 森林保護 / 7章 野生鳥獣管理 / 8章 森林水文 / 9章 山地災害と流域保全 / 10章 測量 / 11章 森林計測 / 12章 生産システム / 13章 基盤整備 / 14章 林業機械 / 15章 林産業と木材流通 / 16章 森林経理・森林評価 / 17章 森林法律 / 18章 森林政策 / 19章 森林風致と環境緑化 / 20章 造園 / 21章 木材の性質 / 22章 木材加工 / 23章 木材の改質と塗装・接着 / 24章 木質資源材料 / 25章 木材の保存 / 26章 木材の化学的利用 で、学会部門は 14 部門:No.1 林政 / No.2 風致・観光 / No.3 教育 / No.4 経営 / No.5 造林 / No.6 遺伝・育種 / No.7 生理 / No.8 植物生態 / No.9 立地 / No.10 防災・水文 / No.11 利用 / No.12 動物・昆虫 / No.13 微生物 / No.14 特用林産)で構成されている。技術士試験の問題の分類と整理は、原則として一つの問題に対して、実務必携の 1 章ないしは学会部門の 1 部門の分野の内容から出題されているものとしている。)。
本研究の結果から、技術士(森林部門)の試験問題では確かに森林科学全般から問題が出題されており、その中でも砂防と森林利用学、林政学、造林学、森林の生態学に関する分野の問題が毎年多く出題されていることを明らかにしている。この分析によって第一次試験の専門科目、第二次試験の必須科目と選択科目の 3 科目に似たような出題傾向があったため、問題の出題形式や問題数は異なっていても、重視すべき内容は 3 科目で変わらないためであるとしている。
実務必携の「9章 山地防災と流域保全」と「13 章 基盤整備」や学会部門の「No.10 防災・水文」と「No.11 利用」など、砂防と利用に関する問題が特に多く出題されていた理由としては、技術士(森林部門)が求められる場として、治山事業、林道事業、土木事業、建設事業などが多いことが推察される。
また、林政に関する問題も多く出題されていることから、森林の法律や制度に関する知識はもちろんのこと、森林・林業の時事に関する知識も求められているといえるとし、造林や生態に関する問題は、森林の多面的機能を維持・発揮させるためには健全な森林生態系の在り方に加え、その上に成り立つ森林の生育の知識が求められているからだと考察している。必須科目では実務必携の「3 章 林木育種」と学会部門の「No.6 育種・遺伝」部門や近年新設された「No.3 教育」を除いた全部門から問題が出題されていた。つまり、必須科目では林産分野を含む森林科学の知識が広範囲にわたって求められていると考察。林産分野に関する試験内容は、第一次試験、第二次試験ともに実務必携の「21 章 木材の性質」に関する問題の出題数が最も多いが、実務必携の林産に関する 6項目すべてから問題が出題されていたことから、林産分野の知識も広範囲にわたって求められているとしている。
以上のことから、技術士(森林部門)に求められる専門知識は、林産分野を含む森林科学全般の知識であることが明らかにしている。その上で、砂防や利用、林政などを中心とした分野が技術士(森林部門)を育成するために必要な学問分野とみており、技術士(森林部門)の養成目的であれば、第一次試験が 4 年制理工系大学程度の内容であることも踏まえ、大学教育においては林産分野を含む森林科学全般を網羅しうる学問体系を構成する必要を示している。
1969年に、林業部門技術士の中で治山、林道を選択した技術士試験合格者の有志らがが発起人となって林業土木部門技術士会が発足する。当時治山、林道は選択科目は「林業」の中に含まれていた。1971年に林業土木部門技術士会を発展的に解消し林業部門全体を包括する林業部門技術士会として誕生する。2003年には(社)日本技術士会が「林業部会」を「森林部会」と改称したのに伴い、林業部門技術士会を森林部門技術士会に名称変更を行う[7]。
公的活用としては技術士全部門が該当する労働契約期間の特例の専門的知識等を有する労働者(労働基準法にて)、中小企業・ベンチャー総合支援事業派遣専門家として登録される専門家 (中小企業支援法にて) 、東京都1種公害防止管理者(『都民の健康と安全を確保する環境に関する条例』にて、東京都1種公害防止管理者講習会修了者)や、公的資格取得上の免除等では消防設備士(甲種・乙種)甲種受験資格を認定、労働安全コンサルタント筆記試験一部免除、労働衛生コンサルタント受験資格認定、作業環境測定士(第1種・第2種) 受験資格認定、弁理士筆記試験(論文式)一部免除などがあるが、森林部門取得者の場合はほかに以下のものがある[8]。
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