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宇宙政治学(うちゅうせいじがく、英語:politics of outer space)とは、宇宙法や宇宙基本法といった宇宙空間の諸条約、宇宙開発における国際協調と競争、地球外知性との接触による仮想の政治的影響などを研究する学問。また、宇宙の商業利用や月の資源の採掘、小惑星の鉱業などが地球に与える経済的影響をよりよく理解する国際経済学の研究にも根差している。
宇宙条約は、国際的な宇宙法の基礎となる条約である。1967年1月27日にアメリカ合衆国、イギリス、ソビエト連邦の3ヵ国における署名に始まり、同年10月10日に発効した。2020年時点では110ヵ国が条約を批准、23ヵ国が署名している[1]。中華民国は1971年の国連総会にて、“CHINA”の議席を中華人民共和国へ移すことを定めたアルバニア決議よりも前にこの条約を批准していた[2]。
宇宙条約の主なポイントは、核兵器の宇宙への設置を禁じ、月をはじめとするすべての天体の利用を平和目的に限定し、すべての国が宇宙を自由に探査・利用できるが、いかなる国も宇宙空間や天体の主権を主張してはならないことを定めている点などである。この条約は宇宙での軍事活動や宇宙軍、軍事化を禁止してはいないが、宇宙空間に大量破壊兵器を設置することはその例外となっている[3][4]。 宇宙条約は主に非軍備条約であり、月面や小惑星での採掘といった新しい宇宙活動には限定的で曖昧な規制を課している[5][6][7]。
月協定(月条約とも)[8][9]は、その周囲の軌道を含むすべての天体の司法管轄を加盟国に移す多国間条約である。したがって、すべての活動は国連憲章を含む国際法に準拠することになる。
しかし1979年の制定以来、有人宇宙飛行に従事している国やその計画を有する国(アメリカや欧州宇宙機関の大多数の加盟国、ロシア、中国、日本など)が批准していないため、国際法上の関連性はほとんどない[10]。2020年時点でもわずか18ヵ国が批准するのみに留まっている[11]。
ポストディテクション・ポリシー(PDP)またはポストディテクション・プロトコルは、政府やその他の組織が地球外文明から確認された信号を「検出、分析、検証、発表、そして対応」するために従うことを計画している一連の構造化された規則や基準、ガイドライン、または行動のことである[12]。PDPを正式かつ公式に導入した政府機関は存在しないが、科学者や非政府組織は、発見時において利用するための首尾一貫した行動計画を策定するために重要な作業を行っている。その中で最も有名なものが、国際宇宙法研究所の協力を受けて国際宇宙航行アカデミーが作成した「地球外知的財産の発覚後の活動に関する原則宣言(Declaration of Principles Concerning Activities Following the Detection of Extraterrestrial Intelligence)」である[13]。PDPの理論は別個の研究分野を構成しているが、SETI(地球外知的生命体探査)、アクティブSETI(地球外知的生命体へのメッセージ)、地球外知的生物との交信(地球外知的生命体との通信)の分野からの引用が多い。
科学者のZbigniew Paprotnyによれば、PDPの策定は、地球社会が地球外生命発見のニュースを受け入れる準備ができていること、そのニュースがどのように公表されるのか、そして信号のメッセージの理解度、という3つの要因により導かれるとされる[14]。これら3つの大まかな領域とその関連要素が、PDPを取り巻く内容と言説の大部分を占める。
アルテミス合意は、2020年に署名された宇宙空間の探査や利用についての諸原則を定めたものであり、日本・アメリカ・カナダ・イギリス・イタリア・オーストラリア・ルクセンブルク・アラブ首長国連邦が署名し[15]、その後にウクライナ・韓国・ニュージーランド・ブラジルも加わった[16]。アメリカが予定している有人月面探査のためのアルテミス計画を意識して作られたこの合意は、宇宙条約などを遵守したうえでの新たな指針として、科学情報の共有や以前の宇宙船の着陸地といった宇宙遺産(outer space heritage)の保存などを掲げている[17]。
国際宇宙ステーションの政治問題は、超大国同士の対立や国際条約、資金調達などの影響を受けてきた。当初の要因は冷戦であったが、近年ではアメリカによる中国への不信感がその主因となっている。国際宇宙ステーション(ISS)には様々な国籍の乗組員がおり、彼らの時間や機器の使用は参加国間の諸条約によって管理されている。
ISSの組み立ては1998年に始まり[18]、同年1月28日には宇宙ステーション政府間協定(the Space Station Intergovernmental Agreement, IGA)が署名された。これは、モジュールの所有権や参加国によるISSの使用、およびその再供給に関する責任を規定するものである。署名国は、アメリカやロシア、日本、カナダのほか、欧州宇宙機関(ESA)に加盟する11ヵ国(ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス)であった[19][20]。2010年、ESAはプログラムに参加していないヨーロッパ諸国に対し、3年間の試験期間中に同機関へのアクセスを許可すると発表した[21]。
2011年にスペースシャトルの運用が終了すると、以降はソユーズのみによるISSとの往来が続いたが、2014年のロシアによるクリミアの併合を受けて欧米諸国の対露関係が冷え込み、NASAもロシアからの依存脱却を目指し始めた[22]。悪化する外交関係とは対照的に、その後も米露の宇宙空間における協力体制は続いたが、2020年にはスペースXのドラゴン2が有人飛行を果たした[23]。
宇宙地政学(astropolitics)は地政学にその起源を有し、最も広い意味での宇宙に適用される理論である。これは政治学の一分野としての安全保障学や国際関係論の観点から研究される。地表の監視やサイバー戦争のための人工衛星の軍事利用と同様に、外交における宇宙開発の役割も含む。特に重要な点は、外宇宙からの地球に対する軍事的脅威の防止にある[24] 。
宇宙計画に際する国際協力は新たな宇宙機関の設立をもたらし、2005年までに官民合わせて35の機関が存在した[25]。
2022年3月17日、日本は宇宙作戦群を防衛大臣直轄の部隊として航空自衛隊府中基地に新設をした。 周辺国政府は衛星を攻撃または通信妨害をする兵器を開発している。[26]
物理的特性を元にすると、宇宙地政学では宇宙空間を以下の4つの領域に分けられる[27]。
地政学の開祖でありランドパワーを提唱したハルフォード・マッキンダーは、「東欧を支配する者はハートランドを制し、ハートランドを支配する者は世界島を制し、世界島を支配する者は世界を制する」と述べたが[29]、ドールマンは資源が豊富な太陽空間をこのハートランドに喩え、そこを確保するための東ヨーロッパに相当するのは、宇宙空間への出入口を管理するのみならず常時飛び交う衛星からの情報が地表での戦闘をも有利にしうる地球周辺の空間となることから、そこが宇宙地政学上の最重要領域であると主張した。
シーパワーの概念を生み出したアルフレッド・セイヤー・マハンは、「広大な公有地」に見える海洋にも一定の「使い古された通路」があると述べたが[30]、重力のために宇宙空間にもそうしたルートが存在し、海上交通路におけるチョークポイントがそうであるように、宇宙空間にも特定の場所をコントロールすれば他国の軍事行動や貿易を支配できる複数のチョークポイントや通商路が存在する、とドールマンは主張する。以下のチョークポイントはエネルギー資源の存在が疑われる領域付近にあることが多いため、資源へ到達する際の中継点ともなりうる。[31]
また、エリノア・スローンは宇宙空間におけるチョークポイントの定義について、ヴァン・アレン帯を避けるルートやホーマン遷移軌道、ロケットの打ち上げ施設などといった「交通量が多くて限定的なアクセスをもつ場所」としている。これに加え、打ち上げ施設に適した地域として、地球の自転によりその東側が海に面した海岸付近や赤道付近、居住者がいない広大な土地などを挙げ、そうした条件や各地に衛星との通信基地を多く有する国などが「スペースパワー」として優位になると述べている。[32]
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