ジオパーク: geopark)とは、地球科学的な価値を持つ遺産(大地の遺産、ジオヘリテイジ、: geoheritage)を保全し、教育ツーリズムに活用しながら、持続可能な開発を進める地域認定プログラムである。ジオパークは、地球大地を意味するジオ(Geo)と公園を意味するパーク(Park)とを組み合わせた言葉である[広報 1]。中国では、中国の制度で登録されている「地質公園」がユネスコ世界ジオパークに認定されているため、中国においては、ユネスコ世界ジオパークは世界地質公園と訳されている。日本においては、ジオパークを地質公園とは訳していない。これは,日本語で地質公園とすると、ジオパークの制度を正しく表現しないためである[1]。日本ではそのままジオパークの語を用いるとともに、意味を説明する際には「大地の公園」と表現している[広報 1]

概要

活動

ジオパークの活動は以下の3つに要約される[2]

  1. 保全(conservation) - 大地の遺産を保全する。
  2. 教育(education) - 大地の遺産を教育に役立てる。
  3. ジオツーリズム(geotourism) - 大地の遺産を楽しむジオツーリズムを推進し、地域の経済を持続的な形で活性化する。

認定

地域が「ジオパーク」と名乗るには、ジオパークネットワークに加盟するための審査および認定を受ける必要がある。また、4年に1回、現地審査を含む再認定審査があり、加盟認定が取り消される場合もある。

世界ジオパークネットワークGGN)の審査を受けて同ネットワークへの加盟を認定されているジオパークを、ユネスコ世界ジオパークと称する。これは国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の正式事業である。なお、日本にあるユネスコ世界ジオパークは、日本ジオパーク(後述)でなければ申請を受け付けないという日本ジオパーク委員会の取り決めがあるため、みな日本ジオパークである。日本ジオパークは、日本ジオパーク委員会(JGC)の推薦を受けると、世界ジオパークネットワーク(GGN)への加盟申請を行うことができる。日本にあるユネスコ世界ジオパークは、世界・日本それぞれの再審査・再認定を4年に1回受ける。

国や地域のレベルで認定されたジオパークも存在する。日本の場合、日本ジオパークネットワークJGN)に加盟している地域を日本ジオパークと称する。詳細は後述する。

沿革

ジオパーク教育・学習

ジオパーク教育は、持続可能な社会や地球のあり方を考え、行動するための教育[4]であり、ユネスコや文部科学省環境省が重視する持続可能な開発のための教育(Education for sustainable development: ESD)の考え方と一致する[5]

世界ジオパーク

アジア

日本

日本にある世界ジオパークは、以下の通りである[6]

大韓民国

中華人民共和国

マレーシア

台湾

ユネスコの世界ジオパークには正式に登録されないが、文化資産保存法により「台湾地質公園(Taiwan Geopark)」として下記の地質公園が制定されている[13][14]

  • 野柳地質公園
  • 龍崎牛埔悪地地質公園
  • 東部海岸富岡地質公園
  • 利吉悪地地質公園
  • 澎湖海洋地質公園
  • 草漯沙丘地質公園
  • 草嶺地質公園
  • 馬祖地質公園

欧州

ギリシャ

ハンガリー/スロバキア

世界各国のジオパーク

日本ジオパーク

日本ジオパークは、日本ジオパーク委員会(JGC)により日本ジオパークネットワーク(JGN)への加盟を認定されたジオパークである。2022年1月現在、46地域が加盟[15]。なお、日本の世界ジオパークはすべて日本ジオパークとしても認定されている。以下、世界ジオパークは太字で記す。

日本ジオパーク功労者表彰

日本ジオパークネットワークは、日本におけるジオパーク活動に対して大きな貢献をした個人または団体に対して表彰を行っている。

糸魚川のジオパーク運動

国際的なジオパークの活動とは別に、1991年より新潟県糸魚川市ではジオパークという語を用いた活動が行われていた[広報 15][広報 16][21]。糸魚川市は、糸魚川静岡構造線フォッサマグナという日本列島の形成に関わる重要な地質構造ヒスイなど貴重な鉱物や多様な岩石地層が産出する地域であることから、1987年に市がまとめた「フォッサマグナと地域開発構想」に基づいて、1990年には人工的に糸魚川静岡構造線を露出させたフォッサマグナパークを設置した[広報 15][広報 16][21]。さらに博物館の建設準備と市内の地質見学地のガイドマップや解説板の整備が進められる中、1994年に新設されるフォッサマグナミュージアムと調和のとれる名称として、それまでの地質見学地に代わってジオパークという名称が1991年に博物館の学芸員によって造語され[要出典]、使い始められた[広報 15][広報 16][21]。ジオパークという言葉を世界で最初に使い始めたのは糸魚川市である。中央博物館としてのフォッサマグナミュージアムと、野外博物館としてのジオパークの保全や利用の促進と、それらを通じた地域の振興が進められてきたが、これは2004年に始まる国際的なジオパーク活動とは独立に発想され進められてきたものであり、地質学に特化した博物館施設とフィールドミュージアムの総称として使われていた。 2008年に世界ジオパークネットワークに加盟し、独自のジオパークという名称の使用を止め、国際的なジオパークへと転換した。

中華人民共和国のジオパーク

中華人民共和国では、国家レベルのジオパークを「中国国家地質公園(中国国家地质公园)」として国土資源部が制定している。1989年に制定プログラムが開始、2000年8月に正式に申請と評価のしくみを導入し、2001年3月に第一次国家地質公園を11ヶ所制定した[22]。現時点で、ユネスコ世界ジオパーク31ヶ所(香港を含む)とは別に、中国本土に138の中国国家地質公園を承認している。


参考文献

  • 特集 この夏おすすめのジオパーク」『RikaTan(理科の探検)』第4巻第7号、文一総合出版、2010年7月、4-40頁。
  • 尾池和夫ほか『日本のジオパーク』ナカニシヤ出版、2011年。ISBN 978-4-7795-0500-3
  • 高木秀雄『三陸にジオパークを:未来のいのちを守るために』早稲田大学出版部〈早稲田大学ブックレット 「震災後」に考える〉、2012年。ISBN 978-4-657-12303-9

脚注

関連項目

外部リンク

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