Remove ads
日本の漫画家 ウィキペディアから
今日 マチ子(きょう マチこ)は、日本の漫画家、イラストレーター[1][2]。
東京都出身。東京藝術大学、セツ・モードセミナー卒。在学中よりライター兼イラストレーターとして活動。2004年より自身のブログではじめた1ページ漫画シリーズ『センネン画報』が口コミで評判となり人気を得る。漫画作品に『みかこさん』『cocoon』『アノネ、』『いちご戦争』など多数。思春期の少年少女を主題とする、青を基調とした透明感のあるカラー作品が特徴的で、装画などイラストレーションの仕事も多数手がけている。
コロナ禍の日常を描いた『#Stayhome』シリーズは2022年1月に『報道ステーション』で特集されるなどで注目され[3]、2023年4月から6月まで「町田市民文学館ことばらんど」にて展示が行われた[4]。
女子学院中学校・高等学校、東京藝術大学美術学部およびセツ・モードセミナー卒業。美大進学を考え始めたのは中学3年生のときで[6]、美大受験のため高校在学中に御茶ノ水美術予備校の基礎科に通う。予備校での同級生に、後に漫画家となる近藤聡乃、映画監督となる松本佳奈がおり、3人でよく遊んでいた[7]。また高校ではマンドリンギター部と軽音部に所属しており、マンドリンギター部の1年先輩に高校生ミュージシャンとして活躍していた柴原聡子(ロケット・オア・チリトリ)がいた[8]。
東京藝術大学では現代アートを扱う先端芸術表現科に一期生で入り、この科で同人誌の制作・出版や自費流通の方法のプレゼンなどをしていた[9]。
大学2年目から実家通いとなり通学時間が長くなったことをきっかけに、電車内でできることとして1ページのミニコミフリーペーパー『Juicy Fruits』の発行を同人作家として開始(2000年10月)。「ガーリー」をテーマにしたA5判片面印刷のモノクロ新聞で、ほぼ3日に1号を発行、3人の名前を使い分けていたが実際には取材・執筆・イラストすべて一人でこなしていた[7]。紙面内容については90年代中期の『Olive』や、同じ女子学院の卒業生でそのころに初単行本を出していた辛酸なめ子の影響があるという[10][11]。当初は知人に配るというかたちで配布していたが、辛酸なめ子に会いに行った際、自費出版を扱う書店タコシェの店員と知り合い、2001年初頭からは10号ずつまとめてカラーの表紙をつけたものを店頭に置いてもらうようになった[12]。
これらと平行して、在学中よりライター兼イラストレーターとして活動を開始。なお在学中には都築響一のもとに短期間インターンにも行っており、取材や記事執筆の姿勢に関し影響を受けたという[6]。卒業直後は辛酸なめ子の紹介でみくに出版のアルバイトなどをしていたが、ここでイラストを描けるということから漫画の執筆を頼まれ、はじめてコマを割って受験漫画「実録!中学受験」を描く(みくに出版『進学レーダー』2003年夏・冬号初出。後年5編をまとめて『セキララ中学受験』として出版)[12]。この作品が漫画家としての実質上のデビュー作となった[13]。
大学卒業前後の2004年、200号を迎えた『Juicy Fruits』を休刊。入れ替わりで同年7月28日、知ったばかりのブログを開設し、このブログで1ページ漫画『センネン画報』の掲載を始める。『センネン画報』は当初はナンセンスギャグ中心のモノクロ漫画であったが、萩原朔太郎・宮沢賢治などの近代詩を読み返したことをきっかけに作風に変化。一度モノローグが増えた後で言葉自体がいらなくなり、思春期の少年少女を中心に据えたサイレント作品となった[14](叙情性やエロスに関しては、小学生のころから好きだった寺山修司が源流としてあるという[9][15])。この変化と平行して、コピックの着彩による、青を基調とした透明感のある画風を確立、また文房具や包装紙といった身近な物を作品の中で暗喩的に用いる独特の手法を開拓する[13]。
『センネン画報』は口コミで人気が拡がっていったことから次第に知られるようになり[13]、2006年および2007年と2年連続で文化庁メディア芸術祭において審査委員特別推薦作品に入選。2008年には太田出版より、書き下ろし漫画を加えた選集版として『センネン画報』を出版、2010年にはオールカラーで第2巻が刊行された。前者には森見登美彦、後者には松本隆による推薦コメントが帯に付されている。どちらもTBSの『王様のブランチ』の書籍紹介コーナーでも紹介され、第2巻が紹介された際には作者インタビューの模様も放送された。
『センネン画報』はその名の通り1000枚を目標に始められたが、この目標が2007年7月7日に達成された後も続けられ、今日マチ子のライフワーク的な作品となっている[13]。2012年4月からは少女と戦争をテーマにした新たなシリーズ「いちご戦争」の掲載が開始され、2014年7月に作品集として刊行。翌年に第44回日本漫画家協会賞大賞を受賞した。
2018年5月、出版から10年経過することを記念して、オールカラーの増補改良版『センネン画報 +10 years』の刊行が発表されている。[16]
この間の2005年ころ、みくに出版の編集者から人づてに講談社『モーニング』の編集者を紹介され持ち込みを行い[17]、この編集者の指導で以後毎週、既存の漫画作品を模写した絵を見せに行くようになる[18]。その後この編集者から紹介され、『Ns'あおい』を連載していたこしのりょうのアシスタントを半年間経験、ここで漫画制作の基本的なノウハウを学んだ[19]。この期間にまとまったページ数の漫画も描き、『モーニング』主催のちばてつや賞のほか『アフタヌーン』『りぼん』『アックス』などさまざまな雑誌へ投稿していたが、成果は得られなかった[18]。他方でフジテレビのサイトで『七夕委員』、三井住友銀行のサイトで『ミドリさん』を連載するなど、漫画誌以外では漫画の仕事が入っていた[20]。
その後前述のように『センネン画報』が書籍化され、これを『モーニング』の編集者にも送ったところ、『センネン画報』のような路線でネームを切るように指示される。こうして生まれたのが『モーニング』の公式サイトなどで連載された、無口な女子高生を主人公とした青春ものの作品『みかこさん』であった[21]。『みかこさん』は、毎回4ページのカラーコミックで、路線や手法は『センネン画報』を引き継ぎながらも、主要人物二人(のち4人)の心の動きやすれ違いを追いながら『センネン画報』にはないストーリー性を持った作品となっている。連載は2009年1月から2013年10月まで続き、単行本は全7巻で刊行、巻数としてはこれまでの今日作品のなかで最長の作品である[22]。
『みかこさん』開始後の2009年5月より、『エレガンスイブ』にて『cocoon』の連載を開始(2010年7月まで)。この作品は沖縄出身の担当編集のアイディアから始まった、ひめゆり学徒隊をモチーフとした戦争漫画である。男の兵隊は繭のかたちでいっさい顔が描かれないなど、現地取材を経ながらも少女の世界を裏のテーマに据えた独特な解釈がほどこされており、それまでの日常を扱った作品から「戦争」という非日常へ題材を広げる転機となった[23]。『cocoon』は2010年、文化庁メディア芸術祭にて審査委員会推薦作品に入選、2013年には藤田貴大率いる劇団『マームとジプシー』によって舞台化されている。
なお『マームとジプシー』に関してはすでにこの前年7月、共作による舞台『マームと誰かさん 今日マチ子さんとジプシー』が上演されており、このときに作られた物語をもとに共作漫画『mina-mo-no-gram』が制作されている。この作品は『マームとジプシー』の舞台の特徴である、象徴的な場面を調子を変えながら繰り返すリフレインの手法を取り入れた一風変わった作品となっている[24]。
2011年4月からは、戦争ものの第2弾として『アンネの日記』をモチーフにした『アノネ、』を『エレガンスイブ』に連載(2013年6月まで)。人名などを日本風に翻案したうえでアンネ(花子)とその家族が死に追いやられるまでの過程を追いつつ、アンネとヒトラーとの架空の邂逅をイメージの世界において描きだした[25]。『アノネ、』は第17回文化庁メディア審査委員会推薦作品に選出[26]。このほかにも東日本大震災を背景として描かれた『みつあみの神様』、『かことみらい』、『U』などのSF色のある作品など、多数の漫画誌における連載で様々な試みが行われている。2014年には『みつあみの神様』などの作品によって手塚治虫文化賞新生賞を受賞した。
2015年には長崎原爆をテーマにした『ぱらいそ』を発売。また、お菓子をモチーフに戦争を手帖に描いた『いちご戦争』は日本漫画家協会賞大賞「カーツーン部門」を受賞。同年夏には『マームとジプシー』によって『cocoon』が再演、2022年には3度目となる再々演が行われた。[27]
2023年6月27日、2025年夏にNHKにて『cocoon』がアニメ化されることが発表。元スタジオジブリの舘野仁美がアニメーションプロデューサーを、アニメーション制作はササユリが担当する。[28]
※単行本出版順
書籍装画
挿絵
その他
『cocoon』:2025年NHKによってアニメ化が決定。
『cocoon』:2015年、劇団『マームとジプシー』によって舞台化。2015年、2022年に再演。
『みつあみの神様』:プロダクションI.G制作、板津匡覧の初監督作品。第49回ワールドフェスト・ヒューストン国際映画祭にてクラシック・セル・アニメーション部門のプラチナ賞(最優秀賞)をはじめ、数々の賞を受賞[35][36]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.