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コンピュータの画面上に表示された物の場所を指し示して選択するための装置 ウィキペディアから
マウス(英: mouse)とは、コンピュータの操作全般に用いられる入力機器の一つであり、画面上に表示された物の場所を指し示して選択するための装置(ポインティングデバイス)[1]の一種である。キーボードとともに広く使われる。
本体を手に持って机などの平面上を移動させ、接触式ないしは非接触式のセンサで移動を検知し、2次元の縦横それぞれの移動をコンピュータへ伝える(加速度センサにより3次元の移動を感知する3Dマウスといったようなものや、絶対座標を指示するタイプのものもあるが、一般的ではない)。
マウスという呼称は、形状がネズミに似ていたことから名付けられた。
マイクロソフトが製作した試作品(本体は白色)は左右のボタン(緑色)を耳に、電線(黒色)を尾に見立ててマウスと呼んでいた。だが量産前に電線は指先側に、本体はベージュ色に変更されている。これは、ひじの下にコードが隠れる形になり、マウスを手前に引いた時にコードを予期せずに踏んでしまい、使用に不便を感じたからである。現在のマウスはメーカーによらず、もっぱら指先側に電線(コード)が付いている。
2.4GHz無線通信が一般解放されてからは、(Bluetoothなどの)無線によるコードレスマウス(ワイヤレスマウス、無線マウス)も普及している。
英語の複数形は生物のネズミと同じ mice とすることが多いが mouses とすることもある。
ワークステーションをはじめ、1980-90年代以降はパーソナルコンピュータのグラフィック性能も強化され、GUIが一般的になると、GUIにおける標準のポインティングデバイスとして普及した。家庭用ゲーム機では、スーパーファミコンなどにも存在し、近年はUSBインターフェースにより市販品を使用可能だが、商品の性質上ゲームパッドや周辺機器での操作しか想定されていないこともあり、対応ゲームはそう多くなく、マウスを必須とするようなゲームは家庭用ゲーム機にはほとんどない。
一般的にマウスの形状は、手全体をマウスに覆い被せるようにして持つこと(いわゆる「かぶせ持ち」)を前提としてデザインされる。人によっては手を前に出し、爪を立てるような持ち方(いわゆる「つめたて持ち」)や、手のひらを当てずに指先だけで持つ(いわゆる「つまみ持ち」)例も見られる[2]。
オペレーティングシステムによっては、マウスの移動速度が速い場合や加速度が大きい場合に、ポインタをマウスの移動距離よりも大きく移動させる機能がある。これによって、ポインタの座標とマウスの実際の位置とは対応しなくなるが、より「動かす」感覚に近くポインタを移動できると感じるユーザーもいる。この場合、マウスはポインティングデバイスではなく、『ポインタを移動させるデバイス』として捉えられていると言えよう。また、マウス位置とポインタ座標が対応している方が、正確にポイントしやすいと感じるユーザーもいる。
マウスのボタンは、Macintoshでは1つまたは4つ、PC/AT互換機では2つから5つ、UNIXマシンでは3つのボタンがついていることが多い。このボタンを押すことをクリック、ボタンを押しっぱなしにすることをプレス、またプレスしながらマウスを動かすことをドラッグという。そうしてドラッグしたものからボタンを離すことをドロップという。ドラッグとドロップでドラッグアンドドロップ(しばしばD&DあるいはDnDと略される)ということがある。
Windows向けの場合、Windowsの標準では左ボタンはクリック(項目選択・決定)やドラッグ、右ボタンはコンテキストメニューの表示に主に使われる。1999年に発売されたマイクロソフトのIntelliMouse Explorerにはサイドボタンと呼ばれる2つのボタンが側面に搭載され[3]、それ以降は1つまたは2つのサイドボタンを備える高機能なマウスも普及している。サイドボタンは通常ウェブブラウザ・Windows Explorer等の「戻る」「進む」機能に割り当てられるが、マウスのベンダーから提供されるドライバユーティリティを使用すれば好みの機能にカスタマイズできる場合がある。ゲーム向けの高級機種として、より多くのボタンを備えた製品もある。
ボタンだけでは充分な快適性が得られないとして、ホイール(車輪)やトラックボールが表面に付いているものもある(後に詳述)。また、特定のディジタイザ上のみで使用可能なマウス型デバイスといったものも存在する(ワコム製タブレットなど)。
1960年代にダグラス・エンゲルバートが作ったマウスはXとYの直交した2個の円板がある方式だったが、1970年代には、内蔵したボールの一部が底面に露出しているボール式が開発され主流となった。ボール式では、マウスの内部でボールに小さな縦方向と横方向の円板ないし円筒が接しており、その回転で縦横の移動を検出する。ボールのころがり(モーメント)による独特の操作感があるが、機械的な構造上ある程度の滑りは避けられず、またボールが机上の埃を巻き込んでしまい内部に蓄積するなどで定期的な分解清掃といったメンテナンスが必要なため、メンテナンスフリーの光学式(次節)が発表されてからはそちらが主流となった。
また、小中学校にパソコンが導入されて以降は生徒がマウスのボールを外して使用不能にしてしまうといういたずらが多発したため、その対策として光学式に置き換える学校もあった。また、補修用にボール単体での販売も行われていた。当初普及したマウスのボールは金属製そのままだったため、使用していると錆びると言う事態になったのである。そのため補修用ではゴムでコーティングしたボールが販売されている。
LEDなどの光源と光学センサーにより、移動を検出するマウス。1980年代から存在する方式であるが、当初は専用のマウスパッドを必要とした上に高額であったため、ワークステーションやCADといった業務用途での使用が主であった。マウスパッドが不要なタイプが普及したのは、1999年にマイクロソフトがIntelliMouse Explorerを発売して以降である[3]。通常は、赤色LEDで可視光を底面に照射し、カメラセンサーでその動きを検出することで動作する。カメラセンサーの搭載によりマウスパッドが不要となったが、透明なガラス板や光沢面などの上では全く動作が検出できなかったり、不安定だったりする場合がある。FPSゲーム等で安定性や応答速度を求める層向けに、光学式マウスと相性の良いマウスパッドが市販されている。
光学式マウスの一種であるが、赤色LEDの代わりに、波長の長い赤外線LEDを使用している。発光を目で確認することはできないが、赤外線対応のカメラを使うと発光しているのがわかる。動作検出精度は赤色LEDの光学式とほぼ同等であるが、発光せず消費電力も少ないため赤色LED式からの置き換えが進んでいる。
2004年9月、ロジテック(ロジクール)が赤外線レーザーを使用したマウス(レーザーマウス)を発表した[4]。精度が高く、光学式マウスが苦手としていた光沢面でも動作検出が可能となっている。数年後には比較的安価に販売されるようになったが、リフトオフディスタンス(マウスを持ち上げても反応する距離)が長く、光学式の性能が大幅に向上したため、あまり普及しなかった。2020年現在では一部の高級機に使われるにとどまっている。
2008年9月、マイクロソフトが青色LEDを使ったBlueTrackマウスを発表した[5]。青色光は赤色光と比べて波長が短く拡散率が高いため、わずかなホコリや凹凸を検出することができる。動作検出精度が高く、かつリフトオフディスタンス(マウスを持ち上げても反応する距離)が短い。詳細についてはBlueTrackを参照。ちなみに青色LEDを使用したマウスはこれより以前にも存在し、2000年12月発売のCMS-OP/UP(センチュリー)、2003年11月発売のM-BGUP2RLBU(エレコム)等がある。
2009年8月、ロジクールが暗視野顕微鏡の技術を応用した「Darkfieldレーザーセンサー」を搭載したマウスを発表した[6]。動作検出精度は非常に高く、従来の方式では動作しなかった透明なガラス板などの上でも動作が可能になっている。エレコムが2011年12月に発表したマウスに搭載された「Track on Glass(ULTIMATE)レーザーセンサー」も同様の技術[7]。
マウスにおけるホイールは、ポインタ移動とクリック・ドラッグによる操作だけでは煩雑な処理を補助するために設けられた機構である。標準的な2ボタンマウスの場合は、通例左ボタンと右ボタンの間に保持され、人さし指、または中指による前後方向の回転移動を行う。1996年にマイクロソフトが発売したIntelliMouseで初めて多くの消費者に認知され(KYE(Geniusブランド)の「EasyScroll」が先行製品である)同社がWindows 95やOffice 97などを対応させ普及に弾みをつけた[8]。
ホイールは一次元縦方向の回転量を検出し、それを何らかの操作の移動量と結びつける。マウスのポインタ移動と異なり、マウス自体は移動しない。また原理上、動作はいくらでも続けられる。
ホイールを下に押して、クリック操作ができるものも多い。多くの場合、それはホイール状態をロックしてポインタ移動と同期するか、または回転のメタファーから状態のトグルを表す操作に対応する。いずれにせよ、ホイールは比較的クリックしにくい構造であり、通常は頻繁に利用する動作が割り当てられることはない。
ワークステーションでは、ホイールマウス誕生以前から3ボタンマウスが一般的であったが、ホイールマウスがワークステーションやPC-Unixでも使われるようになった後は、ホイールのクリックに、従来の中ボタンの操作を当てるようになった。このためPC用でも、元がワークステーション用だったりするようなCAD等のソフトでは、元々のワークステーション用の中ボタンの機能をホイール押下に割り当てていることがある。ペースト操作用として多用される場合があるが、ホイールの押下の検出には多用されない前提のスイッチが使われていることがあり、劣化が早いことがある。 一般のユーザーにおいては、ブラウザやワープロなどのソフトにおいて画面に入りきらない情報をウインドウ内でスクロールするために用いることが圧倒的に多く、そのためホイール操作は画面スクロールと同期される場合がほとんどである。これはプログラミングあるいはデバイスドライバの設定により挙動を変更できる。
中クリックあるいはホイールクリックへのアサインは、タブブラウザが普及してからは新しいタブを開く・タブを閉じるなどの挙動が定着した。その延長上でWindows 7のタスクバーでは、タスクスイッチを中クリック/ホイールクリックすると、そのアプリケーションの新しいウィンドウあるいはタブが開く。
コントロールキーを押しながらホイールを回すと、ウィンドウ内の表示倍率を拡大/縮小する挙動が一般的である。Internet Explorerなど一部のアプリケーションでは、シフトキーを押しながら回すと履歴の戻る・進むの機能が行われる。
ホイールボタンの定着の弊害として、ホイールマウスで代用が可能であることから、従来のワークステーション用マウスと同様の3ボタンマウスの流通が減少し、ホイールマウスを「3ボタンマウス」と称すようになったため、入手などの際に従来型3ボタンマウスを指名することが難しくなった、ということが挙げられる。あくまでも「代用」であって、ドラッグ操作のしづらさや、前述のようにスイッチの耐久性の問題がある。
トラックパッドなどでは、ホイールの機構を持たずそのままではスクロール操作ができずに不便になってしまう。そこで、ホイールを持たずに同等の機能を提供するデバイスもある。
マイクロソフトが最初に製作したマウスは、専用基板でIBM-PC用にマイクロソフトから販売された。日本国内ではPC-9801用に専用基板(スロット1つ使用、マウス部分はコードやコネクタ含めてIBM-PC用と同じ)でNECから販売された。
一時期はRS-232Cへのインタフェースを内蔵したシリアルマウスが販売されていた。
その後のPC/AT互換機ではPS/2の販売以降はPS/2コネクタ、MacintoshではApple Desktop Bus (ADB) 端子が長く使われていたが、2000年代に緩やかにUSB接続に置き換わった。2015年現在、PS/2方式は安価なマイコンなどUSB機能を持たないような機器用や、特殊目的などでわずかに残っている。有線接続はコードの扱いがわずらわしいが、接続の確実性や、紛失や充電などの問題が無い、バッテリーを内蔵しないのでマウス自体が軽量という利点もあり広く使われている。
無線接続の場合はレシーバーをUSB端子に接続し、レシーバーとマウスを電波で通信するタイプが安価で主流である。Bluetooth接続の製品も、特にUSB端子の数やスペースの都合上ネットブックやタブレット端末向けに徐々に普及しつつある。無線マウスは電源として乾電池を必要とするか、充電池を内蔵する。
ポーリングレートは高頻度化が進んでいる。PS/2接続のマウスにおいては40Hzが標準であり[10]、PS2Rateなどのソフトウェアを使うことで200Hzまで上げることが可能であった[11]。USB接続のマウスにおいては元々125Hzが多かったものの、240Hzのゲーミングモニターの普及と共に500Hzや1000Hzのゲーミングマウスも普及していき、更には4000Hzや8000Hz(Razer Viper 8KHz[12]など)のゲーミングマウスまで登場するようになった。
この節の加筆が望まれています。 |
ダグラス・エンゲルバートが1960年代に開発し、1968年12月9日に、「すべてのデモの母」として知られるデモを実施したoN-Line System (NLS) で開発されたものが現在のマウスの始祖とされている。12月9日は「IT25・50」シンポジウム実行委員会によって、『マウスの誕生日』として記念日に制定されている。
マウスの特許は、雇用主のSRIが保有していたため、エンゲルバートはロイヤルティを受け取ることはなかった。この特許は、マウスがパーソナルコンピュータで広く使用されるようになる前に失効している[14]。マウスの発明は、人間の知性を増強するというエンゲルバートのはるかに大きなプロジェクトのほんの一部にすぎなかった[15][16]。
エンゲルバートによる原形はX軸とY軸それぞれの円板が床と接触するもので、1970年代にはボール式マウスが開発された。類似した装置としてはトラックボールが同様に1960年代には存在している。
50年後、カリフォルニア州マウンテンビュー市にあるコンピュータ歴史博物館で開催されたエンゲルバートの栄光を称えるシンポジウムにて、エンゲルバートの娘クリスティーナが「彼は、我々の時代が持つ唯一最大の実存的な課題は、問題をまとめて解決する能力の曲線を引き上げることだと考えた」と発言している[17]。
マウスの移動距離の単位にミッキー (mickey) がある。ミッキーの定義は、「1ミッキー=マウスの1/100インチ(0.254ミリメートル)分移動させた距離」であり、名前の由来は、ミッキーマウスからであるという説がある[18][19]。
マウスの移動距離とマウスカーソルの移動距離の比を、ミッキー比といい、これは、グラフィカルユーザインタフェース (GUI) の操作におけるマウスの感度の指標となる[20]。以前はミッキー比として、ミッキー/ドット比(マウス1ミッキーの移動に対しカーソルが何ドット移動するか)が使われていたが[18]、現在は、DPI(マウス1インチの移動に対しカーソルが何ドット移動するか)が広く使われている[21]。
過去に製造、販売していた企業
ノートパソコンにはタッチパッドやポインティング・スティックといったマウスを代替可能なデバイスがキーボードの付近に内蔵されている。慣れが必要でマウスほど快適な操作ができない場合が多いため、別途マウスを接続するユーザーは多い。標準でマウスが同梱されていることもある。ノートPCと一緒に持ち運ぶための小型・軽量マウスがモバイルマウスなどの名称で販売されている。
キーボードは最も一般的な入力ユーザーインタフェースだが、アプリケーションやOSには多くのキーボードショートカットが用いられ、マウスに手を伸ばさなくてもキーボードだけで作業が完結できる場合もある。またカーソルキーでマウスポインタを動かせたり、マウスボタン入力を矢印キーで再現できるユーティリティソフトウェアも存在する。
製図・イラストなど精細な再現性が必要な作業に使用される。専門的なデバイスとみなされ、マウスほど大量には普及していない。
2010年前後に急速な普及を始めたスマートフォンやタブレット型コンピュータ等では、タッチパネルにより画面を直接タッチ操作するのが事実上の標準となった。
タッチパネルはマウスより直感性に優れた操作が可能である一方細かい操作は不得意であるため、タッチ対応ディスプレイを備えたパソコンでは、タッチとマウスのどちらでも操作が可能である。Windowsは次第にタッチ操作への対応を進め、特にWindows 8ではタッチ操作に最適化したModern UIを搭載したが、タッチパネルとマウスのUIの統合には無理が生じ、Windows 8.1ではオーソドックスなスタートメニューが復活している。
マウスにタッチパネルライクな操作性を融合する試みもある。AppleのMagic Mouseや、それに類似したマイクロソフトのTOUCH MOUSE[22]、ロジクールのタッチマウス M600[23]などの製品では、ボタンやホイールを排除して表面にタッチセンサーを搭載し、クリックなどのボタンの操作をエミュレートするだけでなく、スワイプなどのタッチ操作独特のジェスチャーも利用可能である。
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