チベタン・マスティフ (英語:Tibetan Mastiff) は、チベット高原を原産地とする超大型。その名が示すように俗にチベット犬とも呼ばれる希少種である。中国語では「藏獒」(Zàng áo) あるいは「西藏獒犬」(Xīzàng áoquàn) となり、「東方神犬」の異名もある[1]チベット語ではདོ་ཁྱི།(ドーキー)と呼ばれている。

概要 原産地, 特徴 ...
チベタン・マスティフ
チベタン・マスティフ
原産地 中国チベット高原
特徴
外被 長いダブルコート
毛色 単色の黒、黒、黄褐色、さまざまな色合いの赤(淡い金色から濃い赤)および青みがかった灰色(薄い黒)、多くの場合白のマーキング
寿命 10-16 年
イヌ (Canis lupus familiaris)
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特徴

体高66cm、体重64~82kg。主人への忠誠心が強く、外敵に対しては勇敢に戦う犬種である。そのため番犬、護衛犬、猟犬に優れている[2]

本種の外見上、特に首周りの毛の特徴から「獅子型」と「虎型」にタイプが分けられる。なお「獅子型」はさらに毛の長い「大獅子頭型」と短い「小獅子頭型」に分けられる。毛の色からは、主に黒色、赤毛、金黒、灰、白、黄から構成されており、尾の毛は長く巻いているため、中国ではその部位をキクの花に例えられている。

本種の疾患としては、大型犬特有の股関節形成不全になりやすいことが挙げられている。

歴史

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ジュゼッペ・カスティリオーネによる絵

古くからチベット高原牧畜民牧羊犬や番犬として飼育し、世界の大型犬、特にモロシア犬(モロサス・タイプ)の原種の一つと見られている。

モンゴル帝国の初代皇帝であるチンギス・ハーンは3万匹のチベタン・マスティフ軍団を引き連れて西征したと言われる。またマルコ・ポーロの『世界の記述』(いわゆる『東方見聞録』)で「ロバのように高く、ライオンのように力強い声。凶暴で大胆」と記述されている生物は、チベタン・マスティフを指していると考えられている。中央アジアに遠征したアレクサンドロス大王によってギリシャに、さらにそこからローマに伝わり、ヨーロッパマスティフの祖先となったとされる。

19世紀初めにチベットではほとんど絶滅したが、イギリスでは国王のジョージ4世が2頭所有し、ヴィクトリア女王にも献上されていた。

中国では国家第二類保護動物に指定されている。2006年には中国公安部警察犬の輸入依存対策としてチベタン・マスティフの採用を発表した[3]

現況

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首周りの毛色に注意

2010年頃から、中国での価格は1匹10万元(約130万円)から1000万元(約1億6000万円)もする高額な犬種となっており、主に富裕層の間で人気化し、2014年には史上最高額の1200万元(2億円)まで暴騰して世界一高価な犬と呼ばれた[4][5]。特に「大獅子頭型」という首の周りの毛が雄のライオンのように見えるもの(右画参照)が好まれる傾向がある。北京周辺にいくつもの飼育場があるとされていた。しかし、2013年頃から、価格の暴落、躾の失敗による事件の多発、そして富裕層の没落が相まって人気は失墜しており、2016年には数百元でも買い手がつかない状況になっている[6]

2013年8月には、中国河南省漯河市にある「人民公園」内の動物園で、チベタン・マスティフをライオンと偽って展示していた事件が発覚した[7]

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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