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日本の小説 ウィキペディアから
「ジョゼと虎と魚たち」(ジョゼととらとさかなたち)は、田辺聖子の短編恋愛小説、及び本作を表題作とする短編集。『月刊カドカワ』1984年6月号に発表、角川書店より1985年3月27日刊行の同名短編集に収録された。足が悪いためにほとんど外出をしたことがないジョゼと、大学生・恒夫との純愛を描くラブストーリー。
ジョゼと虎と魚たち | ||
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著者 | 田辺聖子 | |
発行日 | 1985年3月27日 | |
発行元 | 角川書店 | |
ジャンル | 短編小説集 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 四六判 | |
ページ数 | 228 | |
公式サイト | www.kadokawa.co.jp | |
コード |
ISBN 978-4-04-872409-8 ISBN 978-4-04-131418-0(文庫判) | |
ウィキポータル 文学 | ||
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2003年に実写映画化され、2020年には韓国で実写映画がリメイクされた。また、同じ2020年には原作小説から新しく脚色した劇場アニメ版が公開された。劇場アニメ版は同タイトルでコミカライズ、および再ノベライズ化されているメディアミックス作品。
下肢麻痺の山村クミ子はジョゼと名乗り、生活保護を受ける祖母と二人暮らし。祖母はジョゼを人前に出すのを嫌がり、夜しか外出させない。ある夜、祖母が離れたすきに何者かがジョゼの車椅子を坂道に突き飛ばす。車椅子を止めたのは大学生の恒夫だった。それをきっかけに恒夫はジョゼの家に顔を出すようになる。ジョゼは恒夫を「管理人」と呼び、高飛車な態度で身の回りの世話をさせる。恒夫は就職活動のためジョゼの家から足が遠のく。市役所に就職が決まり、久しぶりにジョゼを訪ねると、家は他人が住んでおり、ジョゼは祖母を亡くして引っ越したという。
引っ越したアパートを探し当てるとやつれたジョゼが杖をついて出てくる。ジョゼは引っ越しのため家財道具を売り払い、二階に住む「お乳房(ちち)さわらしてくれたら何でも用したる」という中年男性に悩まされていた。心配した恒夫が「痩せて、しなびとる」と口にすると、ジョゼは激昂し出ていけと叫ぶが、恒夫が帰ろうとすると引き留め、すがりつく。その夜、二人は結ばれる。
翌日、恒夫は車を借りて、車椅子を積み込み、ジョゼとドライブする。ジョゼは動物園に行きたいとせがみ、車椅子で虎の檻の前に行く。虎の咆哮に怯えるジョゼは恒夫にすがりつき「一ばん怖いものを見たかったんや。好きな男の人が出来たときに」という。
ジョゼと恒夫は「新婚旅行」という名目で九州の海底水族館に行く。ジョゼはホテルの対応に悪態をつきながら、水族館の海底トンネルを堪能する。夜中に目を覚ましたジョゼは、自分も恒夫も魚になった、死んだんやな、と思う。それから恒夫はジョゼと籍も入れず親にも知らせない結婚生活を続けている。ジョゼはゆっくり料理を作り、洗濯をして、一年に一遍二人旅に出る。ジョゼは「アタイたちは死んだモンになってる」と思う。ジョゼにとって完全な幸福は死と同義だった。
作品の舞台は明示されていないが、登場人物は大阪弁を話す。
『ジョゼと虎と魚たち』と題し、表題作を含む短編9篇を収録し角川書店より1985年3月27日に刊行された。
犬童一心監督が映画化。2003年12月13日にシネクイント他全国順次公開。PG12指定。
主演の妻夫木聡と池脇千鶴、江口のりこのベッドシーンが話題になる。
第27回モントリオール世界映画祭、第39回シカゴ国際映画祭、第16回東京国際映画祭などに正式出品。
恒夫は、雀荘でアルバイトをしている大学生。最近、卓上で話題になっているのは近所に出没する婆さんのこと。その老婆は乳母車を押しているが、乳母車に乗せているものがわからないというのだ。恒夫はある日、偶然老婆に遭遇し、乳母車に乗っているのが少女であることを知る。それが、ジョゼとの出逢いだった。足の不自由なジョゼは外の世界をほとんど知らなかったが、恒夫と出会ったことで様々な経験をする。恒夫はジョゼのことを愛していたものの、障がいのある人間と向き合う責任、ジョゼを抱えきれない自分への弱さから涙を流す。
2020年12月10日に韓国でキム・ジョングァン監督による実写映画のリメイク版『ジョゼ』(조제, Josée)が公開された。恒夫に当たる人物はイ・ヨンソク(이영석)という名である。(一方、ジョゼの本名は明かされていない。)
主演はハン・ジミンとナム・ジュヒョク[2]。ワーナー・ブラザース・コリア配給[3]。日本ではキノシネマにより配給され、原題と同様『ジョゼと虎と魚たち』として2021年10月29日に公開[4]。劇場公開に先行し、「シネマ映画.com」にて10月22日から24日まで配信形式で公開された[5]。
ジョゼと虎と魚たち | |
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Josee, the Tiger and the Fish | |
監督 | タムラコータロー |
脚本 | 桑村さや香 |
原作 | 田辺聖子 |
出演者 |
中川大志 清原果耶 宮本侑芽 興津和幸 Lynn 松寺千恵美 盛山晋太郎(見取り図) リリー(見取り図) |
音楽 | Evan Call |
主題歌 | Eve「蒼のワルツ」 |
編集 | 坂本久美子 |
制作会社 | ボンズ |
製作会社 | 『ジョゼと虎と魚たち』製作委員会 |
配給 |
松竹 KADOKAWA |
公開 |
2020年12月25日 2021年1月20日[6] 2021年3月31日 2021年4月8日 2021年4月22日 2021年4月29日 2021年5月13日 2021年5月19日 2021年6月10日 2021年6月16日 2021年6月18日 2021年7月3日 2021年7月12日[7] 2021年8月11日 2021年8月20日 2021年9月10日 2021年9月27日 2021年9月30日 2021年11月4日 2021年11月18日 2021年11月30日 |
上映時間 | 98分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
タムラコータロー監督により映画化された、長編アニメーション作品。2020年12月25日、全国150館で公開。略称は「ジョゼ虎」[8]。
実写映画版のリメイクではなく、短編である原作小説を基に制作された。先行作品とは結末含め、全く違うアプローチで脚色されている。
主演は中川大志と清原果耶[9]。主題歌と挿入歌はともにEveが担当[10]。脚本はアニメーション作品初参加の桑村さや香。絵コンテは監督のタムラコータローが一人で手掛けた。制作はボンズ。同社においてTVシリーズと関連のない独立した劇場作品は2作目であり、初の全編シネスコ作品となった。
当初は2020年夏に公開予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、同年12月25日に延期されている[11][12][13]。
2020年の第25回釜山国際映画祭にて、クロージング(閉幕)作品として10月30日にワールドプレミア上映が行われた[14]。同映画祭で日本作がクロージングに選出されたのは、庵野秀明総監督の「ヱヴァンゲリオン新劇場版:序」以来実に13年振り[15]。また、同年の第33回東京国際映画祭にて特別招待作品として11月7日にジャパンプレミア上映が行われた[16]。
2020年12月25日に封切りされ、土日2日間(12月26日~12月27日)の全国映画動員ランキングでは初登場9位[17]。
2021年1月20日より、台湾を皮切りに世界各国での一般上映が始まり、台湾では同日公開の全作品中首位、韓国では劇場数336館と日本よりも大規模で公開される。吹き替えは10言語(英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・カタルーニャ語・イタリア語・ロシア語・ウクライナ語・中国語・韓国語)に及んだ。またロシアでは「Ее заветное желание (彼女の親愛なる願い)」、ウクライナでは「Її завітна мрія(彼女の大切な夢)」として、作品タイトルがローカライズされている。
2021年のアヌシー国際アニメーション映画祭では6月14日にオープニング(開幕)作品として上映。同時に長編コンペティションにも選出された[18]。日本では公開期間中、2度に渡り緊急事態宣言がなされたが、2021年7月まで公開された。公開終了後もドリパスにてファンの投票によりリクエスト1位を獲得。同年8月22日に大阪で、8月28日に東京で、それぞれ再上映された。
2021年8月25日、DVD&Blu-ray発売。同時に各種サイトで有料動画配信が開始された。Amazonプライムでは新着ランキング2位、翌年1月には売れ筋ランキング1位を記録。
2021年12月6日、アメリカ映画芸術科学アカデミー発表によると、第94回アカデミー賞長編アニメーション部門にエントリーしている[19]。
2021年12月26日、WOWOWにてテレビ初放送。初めて日本語字幕がつけられた。
2022年、国際交流基金が世界各地で開催している日本映画祭「Japanese Film Festival」の上映作品に選ばれた。
2022年2月11日より、日本唯一のユニバーサルシアターシネマ・チュプキ・タバタによって音声ガイドとバリアフリー字幕付き上映が行われた。
2023年3月30日より、ロシア60都市において150館を超える規模でリバイバルされている。
海洋生物学を専攻する大学生の恒夫は、ある夜のバイト帰りに坂道を猛スピードで下ってくる車椅子の女性、ジョゼを助ける。坂道の上から降りてきたジョゼの祖母曰く、散歩中に目を離した隙に、誰かが車椅子を坂道に向かって押したのだという。アルバイトとしてジョゼの相手をするように依頼された恒夫は留学費用のためにその依頼を承諾するが、ジョゼの可愛らしい容姿とは裏腹な高飛車な言動に閉口してしまう。一度はアルバイトを辞めようとしたものの、ジョゼに言われるがままに様々な場所へと外出に付き合わされるうちに距離を縮めていく。しかし、ジョゼの祖母の死を切っ掛けに、2人の関係に決定的な変化が生じ始める。
本作にはキービジュアルが3種存在し、それぞれにキャッチコピーがつけられている。
主題歌および挿入歌は、シンガーソングライターのEveが本作のために書きおろした。Eveにとって初めての映画作品参加となる。レーベルはTOY'S FACTORY。
劇伴はEvan Callが担当。全編フィルムスコアリングで作曲された[21]。Evan callの方針により、あえて金管を外し、木管と弦を中心とした楽器編成となっている。読み聞かせのシーンで使われた楽曲「The Mermaid and the Shiny Wing」は、展開が多い上に5分強あるにも関わらず1日で作曲された。収録はハンガリーのブダペストでリモートによって行われている。2020年12月23日にオリジナルサウンドトラックが発売。ブックレットにはEvan Callとタムラコータロー監督の対談が掲載されている。楽曲は本編使用順に収録。未公開特別パイロット映像につく楽曲は本編では使用されておらず未収録となっている。また、アニメ配信会社Anime Limitedによると、イギリスでサントラのレコード盤がリリース予定[26]。
アニメ映画版のキャラクター原案を手掛けた絵本奈央が自ら本作をコミカライズ。『ダ・ヴィンチ』2020年2月号よりから11月号まで連載された[27][28]。単行本は上下巻で刊行。連載時に描かれていなかったエピローグが追加されている。また、電子書籍版には「描き下ろしイラスト&キャラクター設定資料」が収録されている。
映画公開10日前の2020年12月15日に、百瀬しのぶによる小説版『アニメ映画 ジョゼと虎と魚たち』が角川つばさ文庫より刊行された[29]。挿絵はあきづきりょうが担当。映画に登場しない場面も書かれている。Amazonランキングでは角川つばさ文庫のカテゴリでベストセラー1位を記録した。
劇中に登場する絵本「にんぎょとかがやきのつばさ」は、限定版Blu-rayにブックレットとして封入された。また、2022年2月3日、ギャラリーOGU MAG+にて松田奈那子による「ジョゼが描いた世界」展が開かれ、ジョゼが部屋に飾っていた絵とともに絵本の原画が展示された[30]。
2021年1月9日発売の月刊ニュータイプ2月号(KADOKAWA)には、アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」を特集した24ページの別冊付録が同梱[31]。監督のタムラコータローと画面設計および作画監督・原画の川元利浩による対談や、コンセプトデザインを手がけるloundraw、キャラクター原案とコミカライズを手がける絵本奈央、キャラクターデザインおよび総作画監督を手がける飯塚晴子、劇中画を手がける松田奈那子らへのインタビューが多数の資料とともに収録された。この別冊は本作パンフレットと同サイズで作られており、映画パンフレットはコンセプト寄り、別冊付録はアートワーク寄りといった内容の住み分けがなされている。
2020年11月5日より、法務省とのタイアップ企画として成年年齢引下げ告知のポスターが作成され学校などで掲出された[32]。
2020年11月11日より、エースコックとのタイアップ企画として応援キャンペーンが実施され、オリジナルクリアファイルが作られた[33]。劇中で恒夫が食べるラーメンは同社の「スーパーカップMAXしょうゆラーメン」。
2020年11月27日より、本編で登場したなんばパークスとのタイアップ企画が実施された。コラボビジュアルが描き下ろされ、なんばパークス2Fキャニオンストリート柱巻き広告を皮切りに、南海電車の各駅やなんばパークスでポスター掲出、フリーペーパー「Natts」表紙などを飾った[34]。
2020年12月1日より、マクセル アクアパーク品川×T·ジョイPRINCE品川による全国公開記念タイアップキャンペーンが実施された。期間中はT·ジョイPRINCE品川のロビーにジョゼの夢見た世界を再現したとされるオリジナルコラボ水槽が展示され、アクアパーク品川のアトラクション「ドルフィンパーティー(メリーゴーラウンド)」では本作の劇伴が使用された[35]。また、2021年1月11日にはアクアパーク品川内の「ワンダーチューブ(海中トンネル)」にて出演キャスト(宮本侑芽、興津和幸、Lynn)によるYouTube特番が生配信された。
2020年12月7日より、Osaka Metro とのタイアップ企画が実施された[36]。劇中で Osaka Metro Group の施設等が描かれたことにちなみ、新たに描き起こしたイラスト(全2種)のタイアップポスターを駅や車内に掲出。また、新規カットを含むオリジナルタイアップ動画[注 2]が作られ、YouTube「Osaka Metro公式チャンネル」などで公開[37]。オリジナル1日乗車券の発売等も行われた。また、同年発行のお出かけ情報誌「Osaka Metroさんぽ。」年末年始号に『 Osaka Metro で行くアニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」沿線MAP』を掲載し、劇中本編で登場する Osaka Metro 沿線のスポットが紹介された。
2020年12月11日より、本作の主題歌・挿入歌を担当したEveの展開するキャラクターZINGAI[注 3]とタイアップ。ジョゼとZINGAIのコラボ版権が描き下ろされ、グッズが当たるムビチケ購入キャンペーンが実施された[38]。ちなみに映画のオープニングにはEveを模した人物が一瞬だけ登場する。
2020年12月18日より、ディッパーダンとのタイアップ企画として“しあわせクレープ”キャンペーンが実施された。劇中でジョゼと恒夫が食べるクレープは同社の「イチゴミルフィーユ(ジョゼ)」「ソーセージサラダ(恒夫)」であり、キャンペーン中はクレープの包装紙が劇中のものと同デザインで提供された[39]。
ジャーナリストの佐々木俊尚は自身のtwitterで「田辺聖子の原作が1984年、池脇千鶴主演の映画化が2003年。いずれもそれぞれの時代に合わせた傑作だったんだけど、2020年のアニメ化もまさに今の時代の『分断の先』を求める心に突き動かされてて素晴らしかった」と評した。
アニメ評論家の藤津亮太は、自身の2020年アニメーション映画ベスト3に選出。本作のポイントを「視線の高さ(の違い)」と捉え、ジョゼの立場(視線)を恒夫が理解するために「厳しい試練を与えて、正面から問いかける」と述べ、「ロマンチシズムと社会性が絶妙に融合したアニメならでは」の作品と評した[40]。藤津は毎月講師を務める朝日カルチャーセンターの講座「アニメを読む」でも本作を取り上げている。
社会学者であり映画評論家の宮台真司は、本作の重要なモチーフとして“together”を挙げた。「最初は敵対関係にあった相手が“together”でいることで、なくてはならない相手になる。嫌いだった相手を理由がわからないけど好きになっちゃう。何度見ても素敵です」と述べ、「自発的ではない外的条件から“together”であり続けることで、本人が予想もしなかった感情が湧き上がる」「王道が直ちに昨今の人と社会への批判になっています」と評した[41]。
また、米映画批評家のクリス・スタックマンは自身のYouTubeチャンネルで「Really Really Good(素晴らしい作品)」として本作を紹介。「ジョゼのキャラクターの描き方が非常に丁寧。ジョゼを嫌な性格の子に描くこともできたが単純にそうはせず、自立した女性を描いており、さらに青年と出会うことによって彼女の世界が広がるという部分がよかった」「よくあるアニメの恋愛映画に留まらず、周りからは認められなくてもクリエイティブに行動することによって、自身の可能性を広げる描き方が素晴らしかった」と評した[42]。
エストニアの日本アニメ映画祭にて、北岡在エストニア日本国大使は自分が障害者の親であることを紹介した上で「この映画は、障害者と、それを助ける健常者がどのように距離を取るべきかを教えてくれる。助け過ぎてもだめ、しかし助けなければならない。試行錯誤で適切な距離を見付ける過程が、この映画では生き生きと描かれている。そして障害者が、その行動が制約されているが故に、一層自由に願望や夢を膨らませている様も、生き生きと描かれている」と述べた[43]。
劇場版「Gのレコンギスタ」のコメンタリー動画にて、デスクの大橋圭一が監督の富野由悠季に本作を見せたところ「俺にこれを撮れってのか」「次回作はこうしろってことなんだなって受け取った」と言われたと述べた。大橋は「そういうつもりはなかった」としつつも「富野さんのそういう(メロドラマに特化した)作品を見てみたい人もいるのでは」と結んでいる[44]。
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