『クレクレタコラ』は、東宝企画(東宝)製作の特撮テレビ番組[1]。
1973年10月1日から1974年9月28日まで、毎週月 - 土曜日の午後6時55分から7時までに、フジテレビ系列にて放映された。全260話。
タコの怪獣「タコラ」と、不思議な森に住む奇妙な住人たちが繰り広げるスラップスティック・コメディ[1][2]。
現在の基準として見ると、児童向けとしては暴力的な表現が目立つ。スイカ割りと騙され囚われたチョンボにタコラが日本刀で顔面を切りつけたり、数々の盗みの罪により一方的な裁判で死刑判決を受けたタコラが逆上して暴力で裁判を転覆させたり、精神異常を装ったタコラがチョンボと共謀して怪獣たちから食べ物などを巻き上げたりと、社会風刺的かつアナーキーでブラックな展開のエピソードも多い。ラストは騒動を起こしたタコラやチョンボがひどい目に遭うという寓話仕立てとなっているが、物語に収拾がつかずに終わることも多い[1]。
不思議な森に住むタコ怪獣タコラは木の家に住み、その上から望遠鏡を覗いて欲しいものを見つけると、それを何とかして入手しようとする。場合によっては極めて暴力的な手段を用いるが、多くの場合企みは失敗し、手痛い報復を受けて終わる。
- タコラ
- 主人公。公害によって怪獣化し陸に上がったフテクサレタコ[1][3]。変身タコラの術で何にでも変身することができる[2]。例え些細なものであろうが欲しいと思えば、どんな手を使っても手に入れようとするが、最後は取られた相手から強烈な仕返しをされることが多い。
- タコラのモデルは、企画・原案を手掛けた磯野理の息子であるという。磯野は子供が頻繁に物をねだるところから、タコラの性格のヒントを得たとのこと[4][3]。
- 造型を手掛けた村瀬継蔵は、削り出しで丸く仕上げる頭部の加工が難しかったと述懐している[5]。
- 2016年に『戦国パズル!!あにまる大合戦』のコラボキャラとして登場した[6]。
- チョンボ
- ラッカセイの実のような姿の黄色い怪獣。気のいいタコラの相棒で[2]、タコラの策略の足を引っ張ったり、逆に引っかき回されたりと、いつも「チョンボ」な役回り。体型に似合わずでんぐり返りが得意。モンロと組んでタコラを糾弾したこともある。
- モンロ
- ピンク色のセイウチ風の怪獣。森の住人のヒロインで[2]、森の人気者。いつも「ウッフン」とお色気を振り回している。タコラも惚れており気を向けさせようとするが、その非常識ぶりに呆れて大抵は振られている。それどころか時としてデブラと共同でタコラを懲らしめるなど、森の中では良識派でもある。
- トリオ怪獣
- 常に3匹で行動しているタコラのライバルたち。森の住人の中では一番グロテスクな風貌。
- イカリー
- トリオの中ではリーダー的存在。短気でいつも怒っている怪獣だが[2]、案外人が良いところもある。
- ヘララ
- 笑い上戸の憎めない怪獣[2]。泣く時も笑い泣き。
- シクシク
- 泣き虫怪獣[2]。笑う時も泣き笑い。
- デブラ
- 太ったタヌキの怪獣[7]。森の警察官で[1][2]、医者[1]、牧師など、公的・権威的な職種一般を受け持つ。だがタコラたちの傍若無人な振る舞いには対処し切れていない一方で、冤罪で森の住人を無理矢理逮捕したり、トリオ怪獣やビラゴンと組んでタコラとチョンボを懲らしめる行動もしばしば見受けられる。
- ビラゴン
- 竜の怪獣[7][1]。力持ちだが間が抜けている。タコラとチョンボにとっては最大のライバル[2]。
- トロロ
- タコラの天敵[1]。姿を消すことのできるクラゲのようなお化け。頭にスプリンクラーがあり、タコラに酢を頭からかける酢ダコ作戦を得意とする[2]。
声の出演
- タコラ、チョンボ、モンロ - 太田淑子
- イカリー、ヘララ、シクシク、デブラ、ビラゴン、ナレーション[4] - 阪脩
(出典)ちくま文庫『最終回にほえろ!傑作編』 272頁
レコードは東宝レコードから発売。
- 主題歌:「クレクレタコラ」
- 挿入歌:「不思議な不思議な森の中」
当時の1時間枠ドラマの制作費が1週800万円[14]だった時代に、1週120万円[注釈 2]の低予算で制作した1週6話放映の5分枠帯番組。残業なしで1日3話の撮影をしなければ採算が合わない制作環境で、成城の東宝撮影所の大ステージの中央に森のセットを植え込み、背景を変えながら四方から撮影するなどの手法を取り、全話の制作には約3ヶ月を要している。東宝企画のプロデューサーだった磯野理は、撮影終了後のスタッフに酒を振る舞って士気を鼓舞。通常の平均視聴率が5%だったフジテレビの18:55 - 19:00枠を最終的には13.5%に跳ね上げた。テレビ放映中にも主題歌レコードが売れたおかげで、鶴川五六の筆名で主題歌を作詞した磯野にも印税(新人の作詞料は1曲3円で、レコード両面の作詞で1枚につき6円の印税)が入り、初年度は約3万8,000枚以上の売上で22万8,000円、翌年はテレビ放映印税を含めて100万円近い印税収入を得るほどの商業的成功を収めた[15]。
磯野は、アニメーション作品が続いたフジテレビの18:55 - 19:00枠で「5分番組でも、着ぐるみは動きが緩慢だから駄目!」と言われながらも、チャールズ・チャップリンのサイレント映画をヒントに「撮影時にはフィルムの回転を遅らせて、正規回転映写で放映すれば軽快な動きになるはずだ!」という発想から企画を開始し、当時は3歳と5歳だった息子たちの日常的な行動から本作品の単純明快な設定やキャラクターデザインなども思いついて、企画書を作成[注釈 3]。広告代理店の読売広告社やフジテレビ担当者からの「テレビ番組は、撮影前に音楽が完成していなければ駄目。5分番組なら、主題歌のワンフレーズで、どんな番組かを子供たちに分からせないといけない」という意見で、制作リスクを抑えるために自ら作詞をして、当時の超売れっ子だった菊池俊輔に作曲を依頼し、菊池から「ド素人はおっかない」と詞の内容を笑われるも、楽しい曲が完成。1日に最低10話の脚本を書かないと制作準備が間に合わない状況下で、磯野は自宅の隣近所の子供たちの日常的な仕草や欲しがる物も観察しながら、脚本家たちとアイデア会議を行い、本作品の様々なストーリーも作り上げていった[16]。
キャラクターデザインは東宝美術スタッフの村瀬継雄が担当[5]。主要キャラクターの造型は、村瀬の弟である村瀬継蔵が率いるツエニーが手掛けた[5]。
脚本家の1人である柏原寛司は、本作品が脚本家デビュー作であり[17][18]、当時は日本大学芸術学部の3年生であった[17]。柏原は、デビューが東宝であったから、その後も同社とのつながりが深かったと語っている[17]。後年、柏原は『ゴジラvsスペースゴジラ』(1994年)を執筆した際に、スペースゴジラを本作品のビラゴンのような細くて邪悪な姿と想定していた[18]。
『ゴジラ』(1984年版)で造型部に参加していた樋口真嗣は、同作品撮影後の倉庫整理でモンロやデブラなど本作品のスーツのいくつかも処分したと証言している[19]。
- 幼稚園 1973年10月号 - 1974年3月号連載作画:太田じろう
- 小学一年生 1973年11月号 - 1974年3月号連載 作画:野間吐史
- 小学二年生 1974年1月号 - 3月号連載 作画:たんじみちお
- 『おはよう!こどもショー』でおねえさんが関谷ますみ時代に再放送したことがあり、(おねえさん)「せーの、」(子供たち)「タコラァ!!」と叫んでから始まった。なおサブタイトルは子供向けにアレンジされた(例:第149話の「昆虫採集の巻」は「こんちゅうさいしゅう」に)。なお、同番組をネットしていた広島テレビ放送では、フジテレビ系とのクロスネット局だった時代に本番組の本放送もネット受けしていた。
- 2000年にファミリー劇場で再放送が行われ、後にDVD未収録となる第223話「男タコラよどこへ行くの巻」、第252話「恋の本命誰でしょうの巻」、第255話「さまようジャングルの巻」を含む全260話が放送された[20][21][22]。第220話「気違い真似して気が触れたの巻」については音声が大幅にカットされた状態での放送となった[23]。
- 1995年に東宝映像事業部から38本を抜粋したレーザーディスクが発売された[24]。品番 TLL2238[25]
- 1997年にソニー・ミュージックエンタテインメントからVHS「クレクレタコラ ~よりぬきスペシャル~」全3巻が発売された。
- 2002年にパイオニアLDCから4枚組のDVD-BOXが初回限定生産で発売された(ASIN B00006S25D)。前々年のファミリー劇場放送時には全260話が揃った状態で放送されていたが、このDVD-BOXでは「フィルムが現存しない」という理由で3話分が未収録となり、合計257話の収録となった。映像特典として『クレクレタコラができるまで』(8mmフィルムで撮影した、着ぐるみの製作過程・撮影所までの運搬やリハーサル風景など)が収録。
- 2016年12月14日に東宝より全5巻のDVD「クレクレタコラ コンプリート・コレクション」が発売。これまで未収録となっていた、第223話、第252話、第255話が収録された。
- この発売を記念し、YouTubeのクレクレタコラのチャンネルにて全260話のうちの26話をよりぬきで公式配信が行われた。12月2日より各話1週間の限定配信となる。
- DVD発売に関連してクレクレタコラの着ぐるみが再製作され、販促PRを終えた後も特撮やサブカルに関連するイベントなどで出演するようになった。2018年にはゆるキャラグランプリの企業・その他部門にエントリーし、3,907票を集めて108位となった[26]。
注釈
1話につき20万円で、フジテレビに納品した257話の総額は5,140万円。
書籍『東宝特撮全怪獣図鑑』では、キャラクター設定などに当時人気であった『ムーミン』の影響があったものと推測している[2]。
出典
ゴジラ大百科 1993, p. 171, 構成・執筆 早川優「ゴジラ映画を100倍楽しくする 東宝怪獣映画カルト・コラム 50 愉快な東宝怪獣、クレクレタコラ」
村瀬継蔵 2015, pp. 268–269, 「村瀬継蔵インタビュー 村瀬継蔵 造形人生」
「声優100人に聞きました'95 龍田直樹」『ザ・声優1995』メディアックス、1994年12月10日、93頁。
磯野理 著『東宝見聞録 1960年代の映画撮影現場』306頁
『秋田魁新報』1974年10月7日付 - 10月12日付朝刊、テレビ欄。
『北國新聞』1974年7月29日付 - 8月3日付各朝刊、テレビ欄。
『信濃毎日新聞』1974年1月21日付 - 1月26日付朝刊、テレビ欄。
『中国新聞』1974年4月17日付朝刊、テレビ欄。
磯野理 著『東宝見聞録 1960年代の映画撮影現場』 アスペクト、2011年11月2日初版、307 - 308頁
磯野理 著『東宝見聞録 1960年代の映画撮影現場』305 - 307頁
- ミニ番組
- これがキャイ〜ンだろ!? - 本作品のパロディとして「クレクレウドラ」というコントコーナーがあった。
- 篠原ともえ - シングル「クルクル ミラクル」のc/wで本作品の主題歌をカバーした。
- ゼネラルプロダクツ - タコラのフィギュアを出したガレージキットメーカー。また、タコラとチョンボを雑誌広告のイラストに出していた。
- 千里眼シリーズ - 舎利弗浩輔という登場人物が本作品のDVDを全巻持っているという設定。
- マツコ&有吉の怒り新党 - 2013年7月17日放送分で、「新・3大クレクレタコラのやりすぎな展開」と題し、毒入りかき氷を作ったタコラとチョンボが「氷漬け」「ダイナマイト」「虫眼鏡焼き」の各刑罰に処せられた「氷タコラはいかがの巻」(第230話)、タコラがヘララから奪った鋸で何でも切りまくり、しまいにはチョンボの策略により自分の足まで切った「タコラの植木屋の巻」(第212話)、デブラのリンゴ欲しさにチョンボを矢で攻撃しまくる「タコリアムテルの巻」(第245話)を放送。
- それいけ!電エース - 第11話「オレオレイカラ」で、オレオレ詐欺を働く「オレオレイカラ」が登場した。この回のみナレーションが七五調であった。
さらに見る フジテレビ系 月-土帯18:55枠, 前番組 ...
フジテレビ系 月-土帯18:55枠 |
前番組 |
番組名 |
次番組 |
|
クレクレタコラ
|
|
閉じる