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『あっかんべェ一休』(あっかんべェいっきゅう)は、坂口尚による日本の漫画作品。室町時代の禅僧・一休宗純を主人公とする。月刊アフタヌーン(講談社)1993年7月号[1]から1996年1月号まで[2]連載され、単行本全4巻が刊行された。
生きる意味、仏の道、人の道を問う一休の苦悩や生活を物語の大きな流れとしながら、美の道を求める世阿弥とそのパトロンである足利将軍家の興亡を折に触れて(しかし一休とはほとんど交差することなく)挿入するなど、室町から戦国時代へと向かう時代風景を重層的に描写している。
『石の花』『VERSION』より続く長編3部作[3]の集大成であり、また坂口が最終話脱稿直後の1995年末に死去したため、本作品が遺作となった[4]。1996年には、日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した[5]。
後小松天皇の落胤である千菊丸は、南朝の残党という嫌疑から逃れるため、京都の安国寺に預けられる。やがて周建(しゅうけん)と名付けられ得度し、持ち前の利発さを生かしながら勉学に励むが、見聞を広めるにつれて五山叢林の腐敗に義憤を感じ、安国寺を出る。一方、世阿弥は足利義満の興味が自分の芸から離れていくことを感じていた。
清貧の道を行く謙翁宗為に弟子入りした周建は、宗純(そうじゅん)と名付けられ、清き心を得ようと努力する。しかし謙翁は死の床で「清いものをと望んだとき、お前の心の中には汚れたものが生まれている。差別を生むのはお前の心自身だ」という警句を宗純に与える。師を失った宗純は絶望し自害を試みるが、一命を取り留める。
やがて宗純は堅田の禅興庵を訪ね、華叟宗曇に弟子入りする。宗純は華叟から与えられた公案『洞山三頓の棒』を解き、一休(いっきゅう)の道号を受ける。兄弟子の養叟宗頤は激しく嫉妬するが、一休はとりあわず、さらに思索を深める。闇夜にカラスが鳴く声を聞いた一休は大悟するが、華叟が与えようとした印可証を「紙切れに過ぎない」と辞退する。このころ、足利義持は実弟の義嗣を殺害し、将軍の座についていたが、実権は僧・満済に握られていた。世阿弥は一時の人気にとらわれることなく、息子の観世元雅とともに真の美を求めようともがくが、音阿弥の華やかな芸に心奪われる足利義教によって、佐渡島に配流されてしまう。
やがて一休は禅興庵を離れる。旅芸人の春夜叉に恋焦がれ、あらわになる自我と対話を続けながら、下克上の風が吹き始めた世俗の中へと身を投じる道を選ぶ。飲酒・女犯など破戒の限りを尽くす一休は次第に民衆の共感を得、やがて堺の町で集雲庵を結ぶ。一方、養叟は死の間際の華叟より印可を受け、大徳寺再興の資金を集めるべく、同じく堺に陽春庵を建立する。
有名になった一休はついに父である後小松帝と再会する。落胤としての威光を期待する大徳寺の僧たちに乞われて、一休は山内の如意庵に住むことになるが、わずか10日間で寺を去る。大徳寺住持となった養叟は再び一休と対峙し、凡人を救うために偶像が必要であると力説する。仏教界の栄華を極めたはずの養叟は、しかし空虚な人生を嘆きながら没した。音阿弥は自らの芸に酔いしれるが、そのもとに金春禅竹が現れ、義父・世阿弥が時空を超えて美の境地を見たことを示唆する。
一休は盲目の旅芸人・森女と出会い、事実上の伴侶として晩年をともにする。天地万物と自らが一体であることを確信し、それでもなお「自分が生きる」ことにこだわりながら、一休は世を去るのだった。
主要登場人物の多くは、室町時代に実在したとされる人物である。
連載中および連載終了後には、アフタヌーンの発行元である講談社から単行本化され出版されていた[6][7][1][2]。その後絶版で入手困難となっていた[8]が、2024年にKADOKAWAの青騎士コミックスレーベルより復刻および電子書籍化された。
日本国外においては、グレナから1996年にフランス語版が出版されたが、その後海外出版のライセンスが失効し絶版となっていた[11]。2023年からRevivalレーベルで順次復刊されている[12]。
台湾では東立出版社から繁体字版全4巻が刊行された。このほか、ドイツ、スペイン、イタリア、香港でも各国語版が出版された[11]。
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