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日本の総合的な学習の時間(そうごうてきながくしゅうのじかん)は、児童、生徒が自発的に横断的・総合的な課題学習を行う時間である。学習指導要領が適用される学校のすべて(小学校、中学校、高等学校[注釈 1]、中等教育学校、特別支援学校)で2000年(平成12年)から段階的に始められた。
総合的な学習の時間とは、教育課程の時間種別を表す用語であり、各学校における総合的な学習の時間の名称は、各学校が独自に定めている。
なお、高等学校で職業教育を主とする専門学科では、必履修の課題研究で総合的な学習の時間の履修と同様の成果が期待できる場合、課題研究の時間で総合的学習の時間の一部もしくは全部を代替できる。
この時間は、国際化や情報化をはじめとする社会の変化をふまえ、子供の自ら学び自ら考える力などの全人的な生きる力の育成をめざし、教科などの枠を越えた横断的・総合的な学習を行うために生まれ、ゆとり教育と密接な関連性を持っている。
特徴は、体験学習や問題解決学習の重視、学校・家庭・地域の連携を掲げていることである。内容は、国際理解、情報、環境、福祉・健康などが学習指導要領で例示されている。
一方でこの授業は基礎知識を軽視しているため、学力低下に繋がるとの批判もあり、現在は授業時数が削減されている。
総合的な学習の時間の趣旨とねらいは、小学校の場合、小学校学習指導要領に次の通り定められている。そのほかの学校もだいたいこれと同様の趣旨とねらいが掲げられている。
学校での展開方法として、学年単位で活動する方法や、学年の枠によらない「縦割り」のグループで活動する方法(いわば講座制)がある。
「総合的な学習の時間」を行うにあたっての、課題を述べる。
京都府京都市のある研究開発学校[どこ?]では、日本における全国的な実施に先駆けて総合的な学習を吟味してきたが、週3時間の総合的な学習の時間を最大限に有効活用するために、個性的な取り組みをしている。各学年における総合(総合科学)的な学習内容と、第3学年から第6学年まで一貫した生涯に生かせる学習内容の双方を、それぞれ「A」と「B」に分けて次のように設ける形をとっている。
総合的な学習の時間は小学校第3学年から始まるが、この研究指定校では、第1学年、第2学年の生活科の単元を第3学年以上の学年の学習と系統立てて取り組みを進めている。特にB領域の英語に到達するまでの前段階として、近くに住む留学生からのボランティアを招いて、その国に伝わる遊びを教えてもらったり、給食時に歓談したりしながら人と人との交流を行っている。コミュニケーション力の育成は言葉よりも行動といわれる。地域から学校への評議も活発であり、地域住民による教育支援団体の設立が行われるなど、教育が地域交流を円滑にする機動力になっており好ましい例である。
以上とは別の京都府京都市の学校[どこ?]では、もともと総合的な学習の時間が始まる前から教科外の時間において取り組んできた、人権を考える学習などを総合的な学習の時間におきかえている。かつては、授業時間のやりくりに苦労があったが、総合的な学習の時間として確保されてからは、教育活動を行いやすくなった。人権教育、国際理解教育、性教育などを学校独自に年間10校時の教育課程を組んで行っている。視覚的な資料を使って導入を試み、最終的には教員の考えを参考にして、子供自身が人間としてあるべき姿を模索していくことが望ましい。
性教育の分野は子供が帰宅後、その日の学習を元に保護者と色々なことを話すことが期待されるが、分野的に未開発であり、低学年から生殖を生物学的に教えることなどについて保護者から驚きの声があがることもあり、十分に普及していない。性教育分野の学習目標は、子供たちが自分がどれだけ大切に育てられてきたか(一例として、子供たちの家庭事情に十分配慮した上で、子供に対して保護者に話してもらうなど)、そして自分が将来保護者になることを想定して男女がいたわりを持って家庭を築き、生活を構築することができるような社会の一員となることの大切さが分かることである。
生徒の祖母のほとんどが海女をしており[4]、カキの養殖が盛んな地域にある鳥羽市立鏡浦中学校では、1999年(平成11年)からカキの養殖体験を始めたが、2001年(平成13年)から総合的な学習の時間(THE KAGAMIURAと称する)を利用するようになった[5]。これにより漁業体験・干物やカキ料理作り・カキ販売など活動の幅が広がり、2010年(平成22年)には年間を通してさまざまな実習・調査活動を組み込んだ[4]。同年からは地元の漁師が行っている生浦湾のアマモ場の保存・再生事業に、環境教育と絡めて積極的に関わり始めた[6][7]。この活動には、学校の近くにある海の博物館との連携も重要な役割を果たしている[4]。
2011年(平成23年)2月17日に、「アマモ場の再生を目指して-漁業者と参加中学生の交流」が海の博物館で開かれ、参加した[6][8]。この会には、的矢湾で同じくアマモ場再生を行っている志摩市立的矢中学校や漁業関係者、三重大学生物資源学部の教授ら約120名が参加し、地域間・世代間を越えた交流が行われたほか、鏡浦中学校の生徒が調査結果を大人の前で発表した[6][8]。
各教科では、予め学習指導要領に学習目標や学習内容が定められているため、扱える教材の範囲には限界がある。例えば、人類文化を知るために世界の多様な文化遺産について触れようとしても、授業内で扱えるのは一部のみである。総合的な学習の時間では、各学校が学習目標や学習内容を定めるため、学習者の実態に応じた教材を扱うことが可能であり、学習者は各教科で学習したことをさらに探求できる。
総合的な学習の時間における学習内容に停滞が見られることがある。
総合的な学習の時間で多様な内容を扱うことは、高度な学習に対する指導力の不足、各領域の趣旨に対する理解不足、学習目標の設定に対する意見の違いなどが運営する教員にあり難しい。また、総合的な学習の時間が持つ特徴は、教科の時間とは異なる概念の特別な時間であること、さまざまな教育活動で学んだことを総合的に生かすこと、主体的な活動が行われるよう学習者の興味・関心に応じた内容とすることなどがある。このため、教員には高度な技量が必要とされ、また学習者も十分な指導が必要とされている。そのため、学習内容を簡素化することで教員の負担を減らしてその分を学習者へのきめ細かい充実した学習指導に充てようとする考え方もあるが、内容を簡単にし過ぎると学習者を飽きさせ、総合的な学習の時間の魅力をなくしてしまう恐れもある。
総合的な学習の時間を行う上で、教員の自己探求力と高度な技術を培う自己研修は常に必要である。高度な教材研究と社会における課題を探る力は、教員自身が積極的に研修や社会見学などに参加することから生じるともいわれている。
一定数の保護者[誰?]は、子供の学力が低下した原因は教育を行う学校にあると主張している。このような立場からは、総合的な学習の時間にも批判的な意見が唱えられ、総合的な学習の時間の方向性を考える上での混乱も生じている。端的に言うならば、総合的な学習の時間は教科学力の向上には寄与しないので廃止すべきであるというのがこうした立場の代表的な主張である。
一方、こうした主張への反論として、教科学力にしか興味を示さない(テストの点数の多寡にしか興味が無い)風潮が強まっている昨今、総合的な学習の時間が担うべき役割は増しているという意見もある。
総合的な学習の時間が具体的にどのような効果を上げるのかという問題には、以下のような議論がある。総合的な学習に肯定的な意見は、「総合的な学習において教科で学んだことを発展させた内容を学ぶ」「総合的な学習の時間で概要を学んだ後に各教科で詳しく学ぶ」などの形態によって、さまざまな活動を有機的に結びつけることが可能である。また、「課題学習では、個人の力と集団内の総合的なフィードバックがあり、学習の意義を非常に高め合うことができる」「子供の学力は、今後の各教員や保護者の取り組み次第で上昇する余地があり、総合的な学習の時間は、教員や保護者が子供に必要なものを考える上での意義がある」という意見もある。
一方、総合的な学習に批判的な立場からは、「教科学力は客観的評価が可能であるのに対し、総合的な学習の効果は測定不可能である。単なるお遊びの時間ではないか」「学校・教員の違いによる効果の幅が大きすぎる」というような意見が提出されている[誰によって?]。
2020年度から実施する予定である学習指導要領では、アクティブ・ラーニングという学習方法の取入れが検討されている[9]。この教育方法は、「何ができるようになるか」という点に注目して教育する方法であり、従来の「何を教えるか」という教育方法とは異なる教育方法となっている。この教育方法は総合的な学習の時間に近い考えであるため、総合的な学習の時間を強化する形で導入される可能性が指摘されている[10]。
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