Loading AI tools
ウィキペディアから
井上 勇(いのうえ いさむ、1901年4月30日 - 1985年2月6日)は、日本の翻訳家、ジャーナリスト。
広島県生まれ。 1923年(大正12年)、東京外国語学校(現在の東京外国語大学)仏語部卒業。 東京帝国大学文科選科に入るが中退。 1926年に東京外国語学校英語部選科を卒業、報知新聞に入社。 特派員として渡米するが1927年に退社し、サンフランシスコの日本新聞の記者となる。 その後パリに渡りソルボンヌ大学で学ぶ。 再び米国に戻り、ロサンゼルスの日米新聞編集長を務め、加州毎日新聞の創設に参画。 サンフランシスコの北米朝日新聞編集長を務めた後、1933年に帰国。 外務省を経て、1936年3月に同盟通信社(以下、同盟)へ入社。
1936年、同盟が海外支局制を敷くと外信部員からパリ支局長に任命された。 この際に外務省は大臣よりフランス大使へ「同盟通信社員ノ指導ニ関スル件」という文書を送り、そこには同盟通信員は外務省の下請け機関であること、在外公館の依属に基づき特殊諜報事務に従事することとされ、現地新聞論説の内容を本省に報告する電報は同盟へ委託して料金の安い「特情電報」を同盟本社に打電するとした。 1940年6月、フランスがナチス・ドイツに降伏すると、フランスの政権が置かれたヴィシーに支局が開設された。 1941年1月8日、伏見丸で帰国。 前ヴィシー支局長の井上は横浜で「日本ニュース」のインタビューを受け「もはや昔のパリではない」と語った。 日本軍の南部仏印進駐後の1941年10月、サイゴン支局情報主任に任命された。 サイゴン支局長には福田一が任命された。 11月末にサイゴンに到着したが、すぐに太平洋戦争の日本軍布告と日本大使府の声明のフランス語翻訳を命じられた。 また米国の短波放送により真珠湾攻撃の第一報を傍受した。 1942年3月中旬、2月17日に昭南と改称されたシンガポールの支局長として着任。 翌年に海外局(局長・松本重治)の欧米部長(海外部を改称)として本社に戻った。 古野伊之助は陸奥イアン陽之助(陸奥宗光の孫)を海外部長より降格させ、敗戦まで陸奥は軽井沢で休養した。 1944年には海外局次長の加藤万寿男は古野より思想が悪いとして戦時調査室に転出させられた。
欧米部は同盟で一、二の多数を擁する部であり、整理、翻訳、コピーリード、傍受、仏語、西語、英文サービス、英文メール・サービスの班により編成された。 陸奥部長時代と井上部長時代とでは欧米部(海外部)の様子は明らかに変わったとされる。 1943年、米国で教育を受けた藤井龍樹の『昭南創世記』では欧米部に多くの日系二世がいることに触れ、「第二世は早く日本人になれ」とした跋を寄せている。 また『新聞総覧』(1943)では「南方における新聞の性格」とする文章で南方における新聞事業の目的は聖戦の目的理解に注がれ、一般的に知能程度の低い原住民の啓発も重要としている。 1944年8月、海外局は企画、情報、外信、欧米、大陸、華文の六部に編成された。 1945年3月、海外局(長谷川才次)の次長に任命された。 大屋久寿雄と図りラジオ・トウキョウを通じてザカライアス放送に対して「同盟通信のイノウエイサム」として放送をした。 1945年9月15日、報道局次長兼社会部長に任命された。 時事通信社発足時に取締役に就任。 総務局長、編集局長、出版局長を歴任。 1950年から約2年間、ニューヨーク特派員を務め、1956年に定年退職した。
その傍ら、少なくとも1920年代初頭には翻訳を始める。 初期(1950年代前半まで)の訳書は英文学よりも仏文学が中心であった。 経歴の中期と言うべき、50年代後半から60年代前半の約10年間は、年平均10冊以上という極めて速いペースで訳書を刊行した。 上記した代表的な翻訳(主に英語圏の古典ミステリ、SF)はこの時期になされたものである。 1972年を最後に5年間翻訳をしておらず、1977年に復活するが、最後の仕事は1978年のものである。
英文和訳および仏文和訳を専門とし、フィクションを中心に多くの(約300冊の)訳書がある。 うち、最も大きな割合を占めるのは、東京創元社から出版された推理小説(ミステリー)の大家の古典作品で、エラリー・クイーン、モーリス・ルブラン、S・S・ヴァン=ダイン、F・W・クロフツなどがある。
SFにおける翻訳では、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』(創元版)が有名。 その他にネビル・シュート『渚にて』、ジョン・ウィンダム『トリフィド時代』、ハル・クレメント『20億の針』などがある。
著書も数冊あり、ほぼ全てがフランス関係のノンフィクションである。(→#著書)
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.