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ベトナムに伝わる郷土料理 ウィキペディアから
ベトナム料理(ベトナムりょうり)は、ベトナムで形成され、食べられている料理。中国文化や植民地統治時代のフランス文化などの影響を受けており、米食を基本とするアジア料理である。
古来ベトナムは中国文化の影響を強く受けてきたため、ベトナム料理にも中華料理の影響が色濃く現れている。また、19世紀から20世紀にかけてフランスの植民地統治を受け、他のインドシナ半島の国々同様、フランスの食文化の影響も大きく、バゲットやコーヒー、プリンなどが日常の食生活の中に定着している。食のタブーは、「魚の王」として信仰される鯨を除き存在せず、多彩な食材を扱う。
ベトナム料理の一般的な特徴として、隣接する中国広西チワン族自治区や広東省、福建省、あるいはカンボジアやタイ王国の食文化とも通ずるが、小魚を塩漬けにして発酵させた魚醤(ヌクマム、Nước mắm)などの発酵調味料を使うこと、基本的に中国の華南同様に米食文化であり、麺類や春巻の皮なども小麦ではなく米から作ることなどを挙げられる。調理方法も炒める、蒸す、煮るなど中華料理と共通する手法が多いが、魚は、日本料理やカンボジア料理のように直火で焼く場合があるのが中華料理とは異なる。
また、料理の付け合せなどに紅白膾、生野菜類のほか、コリアンダー(ラウムイ、rau mùi[1])、ドクダミ、タイバジル(フンクエ、húng quế)、タデ科のベトナムコリアンダー(ラウラム、rau răm)などの香草類をふんだんに用いる。なおこのような香草類は別皿で供され、好みでトッピングする事が多い。
ベトナム料理によく使われる調味料としては、上述のヌクマムのほかに、シュリンプペーストであるマムトム(Mắm tôm)、魚を発酵させたマムカー(mắm cá)とそれに果物や砂糖を加えたマムネム(Mắm nêm)、甘味噌あるいは甜麺醤にあたるトゥオン(Tương)、ピーナッツ味噌ダレのトゥオンダウ(Tương đậu)、大豆醤油のヌクトゥオン(Nước tương)、塩(Muối)、生の唐辛子(Ớt)、酢漬けの唐辛子(Dấm ớt)、ライム(Chanh)、タマリンドのたれ(Mắm me)、ニンニク入りのチリソース(Tương ớt)、コショウ(hạt tiêu)、味の素などの化学調味料(Mì chính, bột ngọt)を挙げることができる[2][3][4]。
ベトナムの塩は日干しの海水塩が多く単体でも味わいが深いが、コショウや小エビの粉末と混ぜたものとして、Muối ớt Tôm(エビ唐辛子塩)、Muối tiêu chanh(ライム塩コショウ)といった複合調味料も市販されている。醤油類はシーザウ(Xì dầu:豉油)と総称することもある。
肉類としては、豚肉、牛肉、鶏肉、鴨肉のほか、ヤギ肉、スッポンもよく食べられる。他に、日本では馴染みが薄い食材に、孵化前のアヒル卵、ネズミ肉、犬肉、ヘビ肉、ジャコウネコなども市場で売られており[5]、屋台などで食べられる。ハノイ周辺ではバリケンも家禽として飼育される[6]。
海岸線が長いため、海水魚やエビ、カニ(ノコギリガザミなど)、イカ、貝類も食材として一般的である。また、紅河デルタやメコンデルタを中心とした地域ではライギョやナマズ目の淡水魚、テナガエビなどの淡水エビも食用に用いられている。ブラックタイガーやバナメイエビも国内・国外消費のために大量に養殖されている。
ベトナムは南北に長い国であり、地方によって気候や食習慣が異なるため、食材や味付けなどにも地域ごとの差がある。ベトナムを大きく北部(ハノイなど)、中部(フエなど)及び南部(ホーチミン市など)の3つの地域に分けて見てみる。
食べかす(骨など)を床に吐くことも普通に行われ[7]、食べ残すこともマナー違反ではない。会食の支払いに関しては、誘った側が支払うことが一般的である[8]。
多人数での食事では大皿で料理が供され、親しい仲ではない場合でも(例えば長距離バスの同乗者同士などでも)取り箸などは用いずにそのまま直箸で食すことが多い(コロナ禍で、取り箸を使う習慣も生まれている)。酒類などはひとつのグラスで回し飲みされることがあり、断りなしに席を外して逃れることはマナー違反となる[9]。スープ類や米飯は大きなボウルで供され、女性が各人の椀によそうのが一般的である。
庶民向けの屋台店は基本的に1種類の料理のみを供することが多いため、持ち込みも自由に行うことができる。雑貨屋で買った缶ビールなどを持ち込む場合、頼めばグラスや氷などは無料あるいは安価で提供される。
食器には主に箸とスプーン(もしくはレンゲ)が併せて供せられ、フォークも用意されていることが多い。食卓にあるちり紙は使用前にこれらを拭くためにも用いられる。ベトナムの箸は日本と違い長さがあり、27cm程度の木製の角箸が一般的である。また後述の通り、インディカ米や更にそれを砕いたものが主食に使われることが多く、汁物がある場合は汁掛け飯にすることが多い(これもマナー違反にはならない)ために、飯料理でもスプーンと箸が併用される傾向が高い。都市部によくある、スチロールパックでテイクアウトする飯料理などでは、使い捨てまたはリサイクルのプラスチック製スプーンのみが付属する。
麺料理を食べる際は、音を立てて啜ること、器に直接口をつけること、丼や皿を持ち上げることがマナー違反であるため、箸とレンゲで食され、スープを飲み干す場合でもレンゲを用いる[7][9]。粥はスプーンもしくはレンゲのみで食される。
ヌクマム、ライム、醤油、チリソース、胡椒が常備される事が多い。またヌクマム・砂糖・ライムの絞り汁(または酢)・刻み唐辛子・にんにくを合わせたヌオックチャム[4]が小皿で用意される事が多い。小皿調味料としては料理に合わせて他に前述のトゥオンや、マムトムなどの魚介発酵調味料、ライム添えの塩胡椒なども提供される[3]。また、庶民むけの食堂では、必要に応じて丸のままの生唐辛子が提供され、スプーンと小皿を使い、客が自分で刻んで調味に、あるいは丸かじりで用いることもある。
食後には爪楊枝で歯間掃除をすることが普通であり、それに対する羞恥心はほとんどなく、女性でも気兼ねなく爪楊枝を使う[7]。ベトナムの爪楊枝は日本のそれを半分に裂いたほどの細さである。
食堂でウエットティッシュが供される場合、ほとんどは有料であるため、使用しなかった場合は会計時にアピールが必要である。
ベトナム料理でポピュラーなメニューとしては、以下のようなものがある。
ベトナムの麺類は基本的にライスヌードルである。そのほか、小麦粉麺の「ミー」(Mì)や春雨「ミエン」(Miến)も食べられる[10]。ライスヌードルは麺料理として食べるだけでなく、春巻や饅頭(後述のバインバオ)の具にするなど活用される。ほとんどの場合において、乾麺でなく生麺が調理に使用される。また多くの店でパクチーやバナナの蕾などの香草やもやしを始めとした生野菜・ハーブ類が別皿で供され、自由に乗せて食べることができる。
日本と同様に、米飯(コム:Cơm)とおかず、汁物が食卓に並ぶが、朝食は前述のフォーであることが多く[15]、お粥も人気がある。ご飯と汁物は、初めは別に食べていても、最終的に汁かけ飯とすることが多く、これはマナー違反にはならない。なお、ベトナム米は非常に有名であり、ベトナムの米輸出規模は世界でも有数である[16][17]。飯物を提供するもっとも気軽な食堂である Cơm bình dân(コムビンザン)は、直訳すれば「平民飯」であり、日本の大衆食堂にあたる。
また、予め巻いてあるものだけでなく、焼肉やしゃぶしゃぶなどをその場で各種野菜、ハーブ、ライスヌードルなどと一緒にお好みで巻いて食べる文化もある。
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