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『ダーク・タワー』(The Dark Tower)は、スティーヴン・キングの長編小説。全7部構成(シリーズではなく、長編の分冊ということになっている)。英国幻想文学大賞を受賞した。キング自身がライフワークと称する作品で、70年代より執筆を開始し、1982年から2004年まで全7巻を刊行、完結まで約30年を要した。アメリカの西部開拓時代を思わせる荒廃した世界(中間世界)を舞台に、「最後のガンスリンガー」であるローランドと仲間たちの壮大な旅を描く。
黒衣の男は飄然と荒野の彼方に逃げ去り、ガンスリンガーはその後を追った。
荒廃し、なにもかもが変転していく世界を舞台に、「最後のガンスリンガー」であるローランドが暗黒の塔を探索するという物語。「暗黒の塔」は、存在するすべての世界と宇宙を中心でつなぎとめていると言われ、この「塔」が倒壊しかけていることがこの世界の荒廃の原因である。ローランドの目的はこの「塔」を見つけて修復することであった。途中、様々な人物と出会い、時に旅の仲間を得ながら探索を続けるローランドだが、様々な困難が彼ら「カ・テット」(カ=運命によって結束した仲間)にふりかかることになる。
『ダーク・タワー』(とその系列にある作品中)には登場人物たちの背後にある2つの勢力の対立が描かれている箇所も多い。その背後にある力は、ここでは<純白>の勢力(善)と<深紅の王>の勢力(悪)の対立となっている。
<純白>は、ローランドの先祖、アーサー・エルド王(円卓の騎士などで知られるアーサー王)の古くからの勢力である。
そして、そのどちらにも加担し得る力として<カ>(ちからではなくか)が登場している。この<カ>の定義は非常に難しいが、いわゆる“ロースピーチ語”での「運命」という語がもっともよく当てはまる。または「個人の<カ>」という使い方をする場合、「個人の運命」だけでなく「個人の意志」をも表すようだ。<カ>の語源には諸説あるが、もっとも有力なのはヒンドゥー教のカルマ(業)である。「運命」には善悪は関係しない。したがってこの<カ>は、善悪に関係なく働くといわれる。実は、この<カ>の源は動物の形をとる守護者のひとり、亀である。亀は12の守護者の中で最高の格のものとされ、<ギャン>とも呼ばれる。
ギャンと暗黒の塔を支える魔法の力(ビーム)は、万物の原初の創造の源(プリム)から誕生した。宇宙はこのギャンによって創られたとされる。ここで重要なのは、塔がいくつもの世界・宇宙を一点で結んだ事である。が、長い時間の中でプリムが衰退し、暗黒の塔とビームだけが残った。魔法の時代の終焉である。
次にやってきたテクノロジーの時代では、<偉大なるいにしえの人々>が、全世界・宇宙を支配しようとした。宇宙と世界が無限にあることを彼らは見つけてしまったのである。当然暗黒の塔に手を出してビームを機械に置き換え、永久的であった魔法を損ねてしまった。世界と世界を結ぶ(機械の)ドアを造ったのも彼らである。最終的には疫病、核、生物兵器により彼らは自滅していった。ただし人々は、それらの行いに対しての償いとして12のサイボーグの守護者の偶像を造った(12という数字は、6本の細長いビームが塔を中心に放射状に配置されていて、その端を守護することによる)。それから数千年がたち、ローランド・デスチェインらの騎士とガンスリンガーの時代が来るのである。 ローランドの時代、ビームはすでに衰えており、深紅の王という強大な存在が暗黒の塔を倒壊させようとしていた。そのため、ローランドは自身の先祖であるアーサー・エルド(アーサー王)の末裔として、暗黒の塔をめざすことになる。この過程で、それぞれ別の年代のニューヨークにいたジェイク、エディ、スザンナを、世界の間をつなぐ(魔法の)ドアから引き入れたのである。このことが実は、まだ力を失っていない<ギャン>=<カ>の意志であった。それ故にこの一団は、<カ>によって結束した人々=<カ・テット>と呼ばれるのである。
深紅の王は塔を倒すため、『シャイニング』や『キャリー』などで登場した超能力を持つ子供をあらゆる世界から集め、その力を増幅してビームの破壊に用いている[1]。また黒衣の男をはじめとする自分の部下を様々な世界に派遣し、塔を守る<純白>の勢力を衰えさせる工作を行った。これらの攻撃によって塔は狂い始め、キング作品の多くで深紅の王の勢力が拡大していった。<純白>の勢力は時にそれに抗い、打ち勝ってきたが、全ての原因である暗黒の塔の存在を知る者は極めて少なく、完全なる勝利はローランドとその<カ・テット>に委ねられている。
塔を守るためにはそれを支えるビームを守らなければならない。物語が始まった時点で3本あったビームだが、1本は旅の途中で折れてしまった。中間世界を通るもの、ニューヨークのある世界を通るものの2本を、彼らは救わなければならなくなる。 [2]
物語を進行させる一つの要素はキャラクター造形である。ローランドの仲間となるジェイク、エディ、スザンナ、オイらを初め、途中通過する<タル>や<河の交差点>、<ラド>、<カーラ>、メイン州やニューヨーク、<雷鳴>などの人々、そしてウォルターら悪役は皆それぞれに個性的である。旅の途中にはかれらが互いにくりひろげる人間ドラマが多くあり、それら一つ一つの過程があって初めて長大な旅を続けられるのである。
さらに物語の流れから、物語全体は大きく1から4部と5から7部に分けられる。前者はローランドによる<カ・テット>形成を主とした部分であり、後者は彼らが塔とその世界を救おうと戦い、仲間の死と<カ・テット>の崩壊を経ながらもなお塔をめざす、<カ・テット>の塔への旅の部分である。
キングは、まだ大学生であった1970年ごろから構想を温めており、ロバート・ブラウニングの詩『童子ローランド、暗黒の塔に至る』Childe Roland to the Dark Tower Cameを読んだことが、構想を得たきっかけである。また、『ザ・スタンド』同様、J・R・R・トールキンの『指輪物語』にも影響を受けている。
1970年代から断続的に書き進められたが、完成させるまでに30年ほどかかっている。最後の3部は、第4部が出版されてからかなり間を置いて執筆・出版された。この3部がこれほど早く執筆された(2001年から2003年)理由についてキング自身は、自分が死んでから、ダーク・タワーを「未完の部類に入れたくなかった」[3]と言っている。1999年に交通事故にあい、死への恐怖が生まれたことで完成させることを決意したらしい。ただ、この3部のプロットがある程度決まっていたことは、『不眠症』など事故前の作品に伏線があることから推測できるだろう。
日本語訳は、当初角川書店から池央耿の訳で第1、2部が、風間賢二の訳で第3、4部が刊行されたが、アメリカで出版が滞ったために中断された。その後、2003年になってアメリカで続巻の出版が始まり、新潮文庫より風間の単独訳で2005年から刊行され直した。この新潮文庫版の第1部『ガンスリンガー』の日本語訳は、流麗な文体で知られている池央耿の旧訳を参考にしている。ただし、キング自身が全巻を書き終えたのちに、矛盾を取りのぞく目的で『ガンスリンガー』を一部改訂したため、全く同じ物を改訳したというわけではない。第1部は執筆当初の文章をそのまま生かした独特の文体である。また、新潮文庫版では、原書の愛蔵版に付されている挿絵が収録されている。カバーについては、すべてスティーブ・ストーン(Steve Stone)の手によるものだが、第5部以降は日本限定である。
2017年には角川文庫版が刊行。これは新潮文庫版を加筆・修正し、2012年に刊行された「鍵穴を吹き抜ける風」(第4部と第5部の間の位置する)を追加している。劇中に出てくる絵本 Charlie the Choo-Choo も2016年にアメリカで刊行されたため、日本語訳が角川から刊行された。
マーベル・コミック社によって2007年からコミック化されている。2007年から2010年までは、小説の第1部以前の話を描いている。2011年以降は、キングの小説を第1部から漫画化している。
ダークタワー | |
---|---|
The Dark Tower | |
監督 | ニコライ・アーセル |
脚本 |
アキヴァ・ゴールズマン ジェフ・ピンクナー アナス・トマス・イェンセン ニコライ・アーセル |
原作 |
スティーヴン・キング 『The Dark Tower』 |
製作 |
アキヴァ・ゴールズマン ロン・ハワード エリカ・ハギンズ |
製作総指揮 |
G・マック・ブラウン ジェフ・ピンクナー |
出演者 |
イドリス・エルバ マシュー・マコノヒー トム・テイラー クローディア・キム フラン・クランツ アビー・リー キャサリン・ウィニック ジャッキー・アール・ヘイリー |
音楽 | トム・ホルケンボルフ |
撮影 | ラスムス・ヴィデベック |
編集 |
アラン・エドワード・ベル ダン・ジマーマン |
製作会社 |
MRC イマジン・エンターテインメント ウィード・ロード・ピクチャーズ |
配給 |
コロンビア ピクチャーズ SPE |
公開 |
2017年8月4日 2018年1月27日 |
上映時間 | 95分[4] |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | $60,000,000[5] |
興行収入 |
$113,231,078[5] $50,701,325[5] 1.5億円[6] |
2007年頃からJ・J・エイブラムスやロン・ハワードにより映画化が検討されていたが、実現には至らなかった。最終的に『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』の脚本で知られるニコライ・アーセルによって映画化され[7]、アメリカでは2017年8月4日に公開。日本では『ダークタワー』の邦題で2018年1月27日公開[8]。
※括弧内は日本語吹替[9]。
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