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アメリカ合衆国の行政府を代表する第2位の官職 ウィキペディアから
アメリカ合衆国副大統領(アメリカがっしゅうこくふくだいとうりょう、英語:Vice President of the United States of America、略称:VPOTUS、通称:VP、Veep)は、アメリカ合衆国の行政府を代表する第2位の官職である。4年ごとに実施される大統領選挙によって、アメリカ合衆国大統領と共に選出される。なお歴代の副大統領は、以下の「#歴代副大統領一覧」を参照のこと。現職は2021年1月20日より第49代のカマラ・ハリス(民主党)が在任している(2020年アメリカ合衆国大統領選挙による選出)。
アメリカ合衆国 副大統領 Vice President of the United States of America | |
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副大統領章 | |
副大統領旗 | |
組織 | 行政府 |
呼称 | Mr. / Madam Vice President(通常時) The Honorable(儀礼時) His / Her Excellency(外交時) |
所属機関 | 大統領顧問団(内閣) |
庁舎 | オブザーバトリー・サークル1番地 |
所在地 | コロンビア特別区(ワシントンD.C.) |
任命 | 間接選挙(新任) 大統領(補欠) |
任期 | 4年 |
根拠法令 | アメリカ合衆国憲法 |
創設 | 1789年4月20日 |
初代 | ジョン・アダムズ |
継承 | 第1位 |
略称 | VPOTUS |
通称 | VP、Veep |
俸給 | 年額235,100ドル |
ウェブサイト | www.whitehouse.gov |
アメリカ合衆国大統領が死亡・辞任・免職などにより欠けた場合は、副大統領が大統領に昇格する(アメリカ合衆国憲法修正25条第1節)。
事故・病気などにより大統領が一時的に職務遂行不能になった場合は、副大統領が臨時に大統領権限を代行する。副大統領による代行がなされた実際の事例は、大統領が手術や検査で麻酔処置を受けるに際して明示的に権限を一時委譲したケースのみである。憲法修正第25条第3節の規定では、大統領による反対申し立てがあった時点で大統領が職権を回復する。同条第4節では、一応の意思表示には支障が無い大統領が精神的な責任能力を失ったような場合を想定し、副大統領と閣僚の過半数が申し立て議会両院それぞれで3分の2の多数による承認議決があれば、大統領による反対申し立てがあった場合でも副大統領が大統領権限を代行することを規定する。
大統領の名代として儀式に参列したり、外交上の接受や表敬訪問を行ったりする職務も大統領から都度委ねられる。
副大統領は上院議長(じょういんぎちょう、President of the Senate)を兼務し、可否同数の場合のみ均衡を破る1票(議長決裁票、Tie Breaking Votes)を投じる。議院規則により、議論に参加することはできない[注釈 1]。
旧来は実際に上院本会議の議事を主宰していたが、今日では議事を主宰することは稀である。現代では通常の議事進行を上院仮議長代行が行う。
1960年代初頭までは日常的に上院本会議の議事進行を司っていた。副大統領に上院議員出身の者が圧倒的に多い一因もここにある。しかし第二次世界大戦終盤から冷戦中にかけての重要な時期に、ハリー・トルーマン、リンドン・ジョンソン、ジェラルド・フォードが次々に大統領に昇格するという事態が起こると、以後の副大統領にはもっぱら大統領の「スペア」としての存在が求められるようになり、その結果ホワイトハウスに出入りして閣議に出席することの方が日常的となり、上院本会議の議事進行を行うことは稀となった。
国家的な儀式としての重要性の高い議長職務は今日でも副大統領自身が務める。大統領の一般教書演説などが行なわれる上下両院合同会議では、下院議長と共に共同議長として下院本会議場議長席に立つ。また大統領選挙の選挙人投票結果は各州より上院議長としての副大統領に送付され、両院合同会議で副大統領自身の議事進行により集計・認証する。この際副大統領自身が大統領候補もしくは副大統領候補であっても、それを理由として任務を上院仮議長等に委ねることは無く、自らの得票数と当落を最終的に認証する立場になることも多い。上院の改選・補欠選挙、あるいは補欠選挙まで務める議員の任命が行われた際、議長として本会議で議員の着任を宣言し就任宣誓を取り仕切ることも副大統領が自ら行う。
副大統領職は創設以来長らくは閑職であり、初代副大統領のジョン・アダムズは「人類が発明した最も無意味な職務」("the most insignificant office that ever the invention of man")だと、夫人への書簡で嘆いたほどであった[1]。政府の政策への関与は小さく、ハリー・S・トルーマン副大統領は第二次世界大戦末期、フランクリン・ルーズベルト大統領死去による昇格時に初めて自国の原爆開発プロジェクトの存在を知らされたほどだった。大統領補佐官たちのオフィスがホワイトハウスのウエストウイングにある大統領執務室と同棟に設けられているのに対し、副大統領府がウエストウイングから小道を挟んだ別棟のアイゼンハワー行政府ビルに設けられているのは象徴的である。
しかし近年では、行政権の肥大化によって過重になった大統領の職責を分担していく傾向にある。1993年、ビル・クリントン政権の副大統領に就任したアル・ゴアは通信政策や環境政策などを担当した。2001年にジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領に就任したディック・チェイニーは当初より将来における大統領選への不出馬と実務担当を公言してホワイトハウス入りし、オフィスもウエストウイング内に構えた。2017年、ドナルド・トランプ政権の副大統領に就任したマイク・ペンスも、ウエストウイングに執務室を持っていた。
とりわけ2021年に就任したカマラ・ハリスの場合、大統領のジョー・バイデンが就任当時既に78歳と高齢で体力的に不安があるため、副大統領であるハリスの役目が従来よりも極めて重要視されていると言われる。バイデンは高齢のために1期だけで引退する可能性が高いと予想されているため、その後継者候補という意味でもハリスは従来の副大統領とは別格の存在と見なされ、国民の注目を集めている。
公邸オブザーバトリー・サークル1番地は1974年よりアメリカ海軍天文台内に設けられた。
4年ごとの大統領選挙の年は、年明けから各州で予備選挙や党員集会が行われ、春過ぎ頃には大統領候補指名を獲得するために必要な全国党大会代議員の過半数または大多数を得た候補が明らかになってくる。大統領候補指名の獲得が確実になると、その候補は夏の全国党大会に先立って「ランニングメイト」(Running Mate、伴走候補とも)と呼ばれる副大統領候補の内定者を発表する。このように、大統領候補指名が確定した者が副大統領指名候補の人選を行うが、形式上は党大会が正副の大統領指名候補者を決定する[注釈 2]。
こうして大統領選は本番を迎えるが、副大統領候補となった者は多くの場合、知名度で大統領候補に大きく引けを取るので、選挙戦の前半は文字通り大統領の伴走者として二人三脚で各地を転戦し、顔と名前を売ることに努めることとなる。
大統領選挙は形式の上では間接選挙であるため、11月第1月曜日の翌日の一般投票日に有権者が票を投じるのは、それぞれ特定の「大統領候補と副大統領候補のペア」への投票をあらかじめ誓約している選挙人団に対してである[注釈 3]。したがって大統領候補と副大統領候補の一般投票での得票は同数とみなされ、大統領候補が当選すれば、その副大統領候補も当選者となる。
制定当初のアメリカ合衆国憲法では各選挙人は2票を投じ、最多得票の候補が大統領、得票数2位の候補が副大統領となる規定であった。しかしこれは政党単位で争われる選挙にはなじまないため、1804年6月発効の憲法修正第12条で、大統領候補と副大統領候補に対する別個の投票を行う制度に改められた。選挙人による投票で過半数を得た候補がない場合、副大統領は副大統領候補の高得票者2名から上院で選出される。選挙に当選した副大統領候補は次期副大統領(vice president-elect)と呼ばれる。
このように固有の職務を担う複数の候補が組み合わせとして単一投票の候補者となっていることを「チケット」(ticket)という。通常、副大統領候補には大統領候補と支持基盤、政策、キャラクターなどが異なる人物が選ばれ、大統領候補の弱点を補完することになる。大統領候補と副大統領候補が夢の組み合わせのような場合には、これを特に「ドリームチケット」という[注釈 4]。再選出馬の場合は現職副大統領が引き続き指名されることが一般的であるが、フランクリン・ルーズベルトのように別の者を指名することもある。またジョージ・マクガヴァンのように、一旦指名された伴走副大統領候補を交代させた例もある。
副大統領が大統領昇格・死亡・辞任・免職などにより欠けた場合は、大統領の指名と上下両院の過半数の承認をもって、新副大統領が就任する[注釈 5]。2度の例があり、いずれも共和党所属の大統領が、民主党支配の両院の同意を得て、中道寄りの共和党員を副大統領に指名した事例である。
アメリカ合衆国憲法修正第12条は副大統領に大統領と同様の資格を求めており、生まれながらにしてのアメリカ合衆国市民であり、通算14年以上アメリカ合衆国に居住する、35歳以上の者に副大統領としての資格がある。
またアメリカ合衆国憲法修正第22条は大統領の3選を禁止しているが、大統領を2期務めた者がその後副大統領になることができるかどうかについては、憲法に規定がない。
一般に憲法学者は、修正22条が禁じているのは「大統領に3回以上選ばれること」であって「大統領職を3期以上務めること」ではないので、大統領を2期務めた者がその後副大統領になり、さらにその後大統領に昇格してもう1期務めることは憲法上は可能だとしている。
2000年アメリカ合衆国大統領選挙では、共和党のジョージ・W・ブッシュ候補相手に苦戦が予想されていた民主党のアル・ゴア候補に対して、伴走候補に退任を控えたクリントン大統領を推す案が取り沙汰された。冷めやらぬクリントン人気をもってすれば勝利確実のドリームチケットと期待する向きも多かったが、脱クリントン色を願うゴア候補はこれに乗らず、結局副大統領候補にはジョー・リーバーマン上院議員を指名、獲得票数ではブッシュを上回ったものの、選挙制度の関係で敗退している。
大統領が死亡や辞任などで欠けて副大統領が大統領に昇格した場合、前大統領の任期が残り2年以内であれば、その後の大統領選挙に2度挑戦できる。つまりアメリカ合衆国大統領は最高で10年出来ることになる。ただしアメリカ合衆国憲法修正第22条によりこの制度が導入された後に、8年を超えて大統領を務めた者はいない。
アメリカ合衆国憲法修正第12条で、選挙人はいずれかの1票を自分とは別の州の住民に投じなければならないと規定されているため、正副大統領候補の州籍が一致していると、当選は不可能ではないしてもハンデキャップを負うことになる。2000年の大統領選挙では、共和党の正副大統領候補の州籍がともにテキサス州であったため、同党副大統領候補のディック・チェイニーが、以前住んでいたワイオミング州に有権者登録と運転免許登録を移したことがある。この選挙では両候補ともテキサス州から得票している。
大統領職同様、キリスト教プロテスタントの白人(広義のWASP)男性が選出されることがほとんどである。
2008年大統領選挙では、ローマ・カトリックの白人男性であるジョー・バイデンが当選し、2009年1月20日から2017年1月20日まで務めた(バイデンはその後、2020年の大統領選挙に出馬し当選、2021年1月20日より第46代アメリカ合衆国大統領を務める)。
プロテスタント白人男性以外の2大政党指名候補としては、以下が挙げられる。
なお、カマラ・ハリスは2020年の大統領選挙でジョー・バイデンの副大統領候補となり当選、2021年1月20日より第49代アメリカ合衆国副大統領を務める。女性、アジア系、アフリカ系のいずれの点でも、史上初の副大統領である。
現職大統領が再選を目指す大統領選挙で副大統領候補を差し替えたことは過去に6例を数えるが、そのうちの5例までが事実上の更迭となっている[注釈 8]。
いずれも在任2期8年を務めあげている。
2021年4月現在、存命のアメリカ合衆国副大統領経験者は、以下の5名。
副大統領は退任後も、儀礼上は副大統領の接遇を受け「ミスター・ヴァイス・プレジデント(Mr. Vice President)」と呼ばれる。
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