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キク科アザミ属およびそれに類する植物の総称 ウィキペディアから
アザミ(薊[1])は、キク科アザミ属 (Cirsium) 及びそれに類する植物の総称である。標準和名を単にアザミとする種はない[2]。別名トゲクサ(刺草)[3]、アザミナ[3]。名前の由来は、「浅む」〈傷つける、驚きあきれる意〉がもとで、花を折ろうとするととげに刺されて驚くからという説がある。スコットランドの国花。アザミの根は、山牛蒡(やまごぼう)として漬け物に用いられている。
平地から高山まで広く分布する[1]。日当たりのよい空き地、道端、野原、草原などにふつうに生える[1]。山地の渓流の縁や、砂れき地や海岸などにも出るものもある[4][3]。
多年草、まれに一年草や二年草もある[4]。若いときには根出葉があり、次第に背が高くなり茎葉を持つが、最後まで根出葉の残る種もある。葉は互生し、羽状に複雑な深い切れ込みがあるものが多い[1][3]。また、多くは葉縁や総苞に鋭いトゲがあり[2][4]、さわるととても痛いものが多い。触れれば痛い草の代表である。
花期は春咲きのものと秋咲きのものがある[4]。春咲きはノアザミが代表的で、その他は初夏から秋にかけて紅紫色の球状の花を咲かせる種が多い[3]。花は球状から筒状で[4]、茎先に多数の管状花(筒状花)が集まった頭状花序(頭花)がつき[1]、多くのキクのように周囲に花びら状の舌状花が並ばない。花からは雄蘂や雌蘂が棒状に突き出し、これも針山のような景色となる。花色は赤紫色や紫色がほとんどで、まれに白色もある[2]。総苞と総苞片には種による相違がある[1]。種子には長い冠毛がある。
世界に250種以上があり、北半球に広く分布する。地方変異が非常に多く、日本でも70種以上あるとされるが[2]、現在も新種が見つかることがある。種類を見分けるのは容易ではなく[2]、さらに種間の雑種もあるので分類が難しい場合もある。
以下の種は比較的分布が広いものである。日本には、もっともふつうに見られるノアザミ、本州中部以北に生えるナンブアザミ、関東から近畿地方にかけて分布するタイアザミなど多くの種がある[1]。
ごく分布の限られたものも多い。
南方島嶼には以下の種がある。
根が冬越しする他に、綿毛(冠毛)の着いた果実が風で飛散して増える。受粉は昆虫による虫媒花である。
スコットランドでは、13世紀にデンマークと戦争をした際、デンマーク軍の兵士がそのトゲに刺されて退却し勝利を得たことから、「国を救った花」として国花になっている[6][7]。花言葉は「独立」「報復」「厳格」「触れないで」。ロレーヌ公国を象徴する花となっている。
食用とする部位は、主には花蕾が出る前の若い茎葉で[1][2]、花や根も利用できる[4]。採取時期は春(4 - 6月ごろ)が適期で、トゲがあるため手袋とナイフが必要で、やわらかな茎葉を採取する[1][3]。花は初夏から初秋(6 - 9月ごろ)、根は一年中採取できる[4]。
ノアザミ、サワアザミ、ヤチアザミなどの新芽・若葉・若い茎は山菜として食べられる[3]。例えばノアザミは若い茎葉を、サワアザミは春の太い芽立ちを根本近くから摘んで食べる[2]。その他のアザミ類でも、スジが固かったり、香りが少なかったりはしても、芽先だけ摘んでくれば食べることは出来る[2]。強い灰汁があるため茹でて、よく水にさらしたあとに、油でいためてから煮物にしたり、おひたし、和え物、酢の物、バター炒め、生で天ぷらなどにして食べられる[1][2]。やわらかな茎の部分は葉を欠き落として皮を剥き、天ぷら、汁の実、煮付け、油炒めなどにする[1]。トゲは、煮たり揚げたりすることでやわらかくなり、気にならなくなる[4][3]。茹でて色の変わらないものは苦味が少なく香りもよいが、黒変するものは苦味が強いため、何度か水替えしながら長い時間水にさらす[3]。
根はゴボウのように食べることができ、根を刻んでから水につけて灰汁を抜き、きんぴらや粕漬け、味噌漬物などにする[2][4]。根が食べられるアザミ類は、モリアザミやフジアザミ、ハマアザミである[3]。「山ごぼう」や「菊ごぼう」などといわれることもあり、味噌漬けなどの加工品として山間部の観光地・温泉地などで販売される「山ごぼう」は多くの場合、栽培されたモリアザミの根である[2][4][注 1]。
古代では、育毛剤。近代では、頭痛、ペスト、潰瘍の痛み、めまい、黄疸の治療薬と考えられた[9]。
とげがあり、繁殖力もあり、一部の種は強くはないが毒があるため、あまり歓迎されない[10][11]。
なお、繊維加工分野では、毛布などの起毛に植物の実を使う通称アザミ起毛(薊起毛)と呼ばれている手法があるが、厳密にはキク科のアザミの実ではなくマツムシソウ科のチーゼルの実が使われている(チーゼル加工)[12][13]。
アザミ属の植物とよく似ていたり、名前に「アザミ」が付いたりするが、アザミ属の植物でない物もある(ヒレアザミ、キツネアザミ、ミヤコアザミ、マツカサアザミ、ルリタマアザミなど)。また、トウヒレン属やヒゴタイ属もよく似た花を咲かせる。ゴボウも花はよく似ている。「チョウセンアザミ」の和名を持つアーティチョークはアザミ属ではなく、チョウセンアザミ属である[注 2]。
モリアザミの根は食用になり、「ヤマゴボウ」とよばれることがある[14]。しかし、学術上の種名、ヤマゴボウとヨウシュヤマゴボウはいずれもキク科ではなく、モリアザミなどのアザミとは類縁関係の遠いヤマゴボウ科であり、薬用にはなるが、食用になるどころか有毒植物であり、混同して誤食しないよう注意を要する[14]。
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