ユー・リアリー・ガット・ミー

キンクスのシングル ウィキペディアから

ユー・リアリー・ガット・ミー」(You Really Got Me)は、ロックバンド、キンクスの楽曲。レイ・デイヴィス作。1964年の8月にシングルが発売され、全英ナンバー1に輝いた。この曲のヒットでバンドはブレイクを果たし、アメリカのチャート7位を記録し、ブリティッシュ・インヴェイジョンの代表的バンドのひとつとしての地位を確立した。その後、この曲はデビュー・アルバム『キンクス』に収録された。

概要 「ユー・リアリー・ガット・ミー」, キンクス の シングル ...
「ユー・リアリー・ガット・ミー」
キンクスシングル
初出アルバム『キンクス
B面 それでいいのさ
リリース
録音 1964年7月
イギリス ロンドン
IBCスタジオ
ジャンル ロック
時間
レーベル パイ
リプリーズ
作詞・作曲 レイ・デイヴィス
プロデュース シェル・タルミー
キンクス シングル 年表
ユー・スティル・ウォント・ミー
(1964年)
ユー・リアリー・ガット・ミー
(1964年)
オール・オブ・ザ・ナイト
(1964年)
ミュージックビデオ
「You Really Got Me」 - YouTube
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「ユー・リアリー・ガット・ミー」はパワーコードによって成立しているヒット曲の嚆矢であり[1]、後のロックンロール(特にヘヴィメタル)のミュージシャン達に非常に大きな影響を与えた。アメリカの音楽学者Robert Walserは、この曲を「ヘヴィメタルを発明した作品」だといい[1]オールミュージックのDenise Sullivanも「『ユー・リアリー・ガット・ミー』は、ハードロックヘヴィメタルにとって理想の曲であり続ける」と記している[2]

ローリング・ストーン(Rolling Stone)』誌が選んだ「オールタイム・グレイテスト・ソング500」と「オールタイム・グレイテスト・ギター・ソングス100」に於いて、それぞれ80位[3]と4位[4]にランクイン。

歴史

要約
視点

「ユー・リアリー・ガット・ミー」は1964年の夏に録音されたが、この形に落ち着くまで様々なスタイルで演奏され試行錯誤が繰り返された。当時のキンクスは、それまでに出した2枚のシングルがチャート入りせず、ヒットを望む所属レコード会社のパイから大変なプレッシャーを受けていた。特にレイ・デイヴィスは、マネージャーやレコード会社に対して、画期的なサウンドとスタイルを作り出すために必要な時間と費用の提供を粘り強く働きかけていた。この曲を作るための作業を通じて、レイ・デイヴィスはバンドのリーダー、そして中心的なソングライターとしての実質を備えていった。レイ・デイヴィスは同曲について、レッドベリーやビッグ・ビル・ブル-ンジーらのブルース・ミュージシャンにささげた曲であると、後に回想している[5]

後のロックに大きな影響を与えたギターのディストーションサウンドは、ギタリストのデイヴ・デイヴィスギターアンプについているスピーカー振動板を剃刀で切り裂き、ピンで突き刺したことによって得られたものである[2]。このアンプは、デイヴィスが近所の楽器屋で購入したエルピコ社製のアンプの名前からとって"リトル・グリーン"の愛称で呼ばれていた。

レイ・デイヴィスによれば、この曲の特徴的なリフはキングスメンの曲「ルイ・ルイ」を弾いているときに思いついたのだという。歪ませたギターでリフを弾く手法は、「オール・オブ・ザ・ナイト」「ウェイティング・フォー・ユー」「セット・ミー・フリー」などといった、その後のキンクスの楽曲でも使い続けられている。ザ・フーピート・タウンゼントは、ザ・フーの最初のシングル「アイ・キャント・エクスプレイン」は、当時のキンクスのサウンドに意図的に似せたものだと話している(ザ・フーも、シェル・タルミーのプロデュースを受けていた)。

この曲のギター・ソロについては長年論議を呼び、演奏しているのがキンクスのリードギタリストであるデイヴ・デイヴィスではなく、当時セッションプレイヤーだったジミー・ペイジだったのではないかという噂がある。この曲に熱中する多くの人々が主張してきたように、ギターソロはデイヴ・デイヴィス本人(当時17歳だった)が実際に演奏したものだと言われている。しかしそれでも、「ギターソロはジミー・ペイジによるもの」という噂は何十年にも亘り、広まり続けてきた[6]。 実際のところ、ペイジはキンクスのプロデューサーであるシェル・タルミーに雇われ、キンクスのファースト・アルバム『キンクス』の中の一部の曲にリズムギタリストとして参加していた。しかし、ペイジの参加したセッションは「ユー・リアリー・ガット・ミー」のセッションから「数週間後に行なわれている」のである。ペイジは常に、この曲のギターソロを演奏したというエピソードを否定している。1977年のインタビューでは、「俺は『ユー・リアリー・ガット・ミー』では演奏していないよ。そんな噂は彼(レイ・デイヴィス)を怒らせる」と語っている。

「ユー・リアリー・ガット・ミー」のレコーディングには、何人かのセッションプレイヤーが参加している。ピアノは、ディープ・パープルジョン・ロード[7]か、アーサー・グリーンスレイドによるものである[8]。またレイ・デイヴィスは、自分のリズムパートをダブリング録音するために「Vic」というセッションギタリストが参加していたが、彼はペイジとは別人だったとインタビューで応えている。ドラムのパートは、プロデューサーのシェル・タルミーの指示により、キンクスのメンバーであるミック・エイヴォリーではなく、セッションドラマーのボビー・グレアムが叩いている。グレアムは初期キンクスのレコーディングでメインのドラムパートを演奏し続けた。面白いことに、ジョン・ロードもシェル・タルミーも「ユー・リアリー・ガット・ミー」のセッションにジミー・ペイジが参加していたと主張している。タルミーによればペイジはリズムギター[9]、ロードによればギターソロを担当したという[10]

キンクスは、30年以上にわたる活動の中、様々なスタイルの音楽を発表してきたが、コンサートではいつも「ユー・リアリー・ガット・ミー」が演奏されてきた。レイ・デイヴィスとデイヴ・デイヴィスも、ソロ名義でのコンサートで(大抵は締めくくりの曲として)この曲を演奏しつづけている。

カバー版

要約
視点
13thフロア・エレベーターズ、1966年

13thフロア・エレベーターズが1966年にカバーしている。[11]アルバム『The Psychedelic Sounds of the 13th Floor Elevators』の2003年再発盤にライブ・バージョンを収録。

モット・ザ・フープル、1969年

モット・ザ・フープルのデビュー・アルバムにインストゥルメンタル・バージョンを収録。[11]

801、1976年

ロキシー・ミュージックフィル・マンザネラブライアン・イーノらが結成したスーパーグループ801のデビュー・アルバム『801 ライヴ』にカバー・バージョンを収録。[11]

ロバート・パーマー、1978年

ロバート・パーマーの1978年のソロアルバム『ダブル・ファン』にカバー・バージョンを収録。アルバムはビルボードのトップ50にランクインしている。[11]

ヴァン・ヘイレン、1978年
概要 「ユー・リアリー・ガット・ミー」, ヴァン・ヘイレン の シングル ...
「ユー・リアリー・ガット・ミー」
ヴァン・ヘイレンシングル
初出アルバム『炎の導火線
B面 アトミック・パンク
リリース
録音 1977年9月 - 10月
ジャンル ハードロックヘヴィメタル
時間
レーベル ワーナー・ブラザース・レコード
作詞・作曲 レイ・デイヴィス
プロデュース テッド・テンプルマン
ヴァン・ヘイレン シングル 年表
ユー・リアリー・ガット・ミー
(1978年)
悪魔のハイウェイ
(1978年)
ミュージックビデオ
「You Really Got Me」 - YouTube
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アメリカハードロックバンド ヴァン・ヘイレンが1978年のデビュー・アルバム『炎の導火線』に収録したバージョン[11]は、この曲のカバーのなかでは恐らく最も有名なものだろう。この曲はラジオ上でヒットし、14年前のキンクスのときと同様、バンドの好調な滑り出しを後押しした。[12]ラジオのオンエアでは、アルバムでこの曲の直前に収録されているインストゥルメンタル「暗闇の爆撃」と一緒に流されることが多かった。[13]

オインゴ・ボインゴ、1981年

アメリカニュー・ウェイヴ・バンド、オインゴ・ボインゴによる1981年のカバー・バージョンはオリジナル版からずいぶんかけ離れており、ディーヴォが行なったようなカバーのスタイルと近いものがある。デビュー・アルバムの『オンリー・ア・ラッド』に収録。[11]

スライ&ザ・ファミリー・ストーン、1983年

スライ&ザ・ファミリー・ストーンが、最後のスタジオ・アルバム『エイント・バット・ザ・ワン・ウェイ』にてカバー。[11]

メタリカ、2009年

マディソン・スクエア・ガーデンで行なわれたロックの殿堂25周年記念コンサートにて、メタリカのステージにレイ・デイヴィスがゲスト出演、「オール・オブ・ザ・ナイト」と共にセッションした。

チャート成績

ビルボードの集計。

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シングル チャート 順位
1964年 ユー・リアリー・ガット・ミー by キンクス Pop Singles 7位
1978年 ユー・リアリー・ガット・ミー by ヴァン・ヘイレン Pop Singles 36位
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脚注

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