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ステアリングダンパー(英語:Steering Damper)とは、乗り物の操舵装置に発生する振動や、不安定な運動を減衰するために設計された制振装置である。
自動車やオートバイをはじめとする、車輪の付いた輸送機器の操向輪には、何らかのきっかけで振動が発生する。多くの場合はすぐに収束するが、しばしばステアリング機構の固有振動数と一致して共振を起こす場合がある[1][2] 。こうした現象はオートバイでは転倒や事故につながる恐れがあるため、好ましくない現象として扱われ、ふらつき(wobble)、シミー(shimmy)、ジャダー(judder)、英語圏では特にオートバイでの現象についてタンクスラッパー(tank-slapper)[3]などと呼ばれる。
ステアリング機構の固有振動数は、ステアリング軸周りの慣性モーメントや車両の走行速度、キャスター角をはじめとするステアリングジオメトリなどに依存するが、今日の市販車の多くは、想定される速度域での共振が起こらないようにバランスをとって設計されている場合が多い。しかし、スーパースポーツに分類される車種やレース用の車両は、鋭敏な操舵特性のステアリングジオメトリで設計され、車両全体のバランスで共振を抑える代わりにステアリングダンパーを装備して振動を減衰している物もある。
また、ステアリングダンパーは、レース中などに頻繁に発生するウイリーで前輪が着地する際のキックバックを緩和するためにも用いられる。同様に、モトクロスなどのオフロードレースで路面の起伏から受けるキックバックや、ジャンプで着地する際のキックバックを緩和するのにも用いられる。
サイドカーにおいては、単車として設計されたオートバイに側車を取り付けると、ステアリングジオメトリーがサイドカーとしての利用に最適化されていないためにシミーが発生する場合があり、シミー現象の抑制にステアリングダンパーが有効であるとされている。
一方で、ステアリングダンパーはステアリング機構の動作に対して抵抗を付加する物であるから、極端な場合は低速走行時などで必要な素早いステアリング操作を妨げてしまう。エクストリームスポーツやドリフト、トライアルなど、素早く緻密なステアリングの操作を求められる競技では、工場出荷状態で装着されている場合でも取り外されることがある。
多くのオートバイでは、ステアリングダンパーはトップブリッジ(en:Motorcycle_fork#Triple_tree)とフレームの間に取り付けられる。今日のステアリングダンパーには大きく分けて油圧式と摩擦式の二つの形式が存在する。
ステアリングダンパーは四輪の自動車でも用いられる例がある。ジープをはじめとするオフロード車にはカムレバー方式のステアリングリンケージを採用するものも多く、路面の起伏によるハンドルへのキックバックが起こりやすかったため、リニアダンパー型のステアリングダンパーが純正装着されていた[8]。この機構はライセンス生産品の三菱・ジープにおいても受け継がれた。また、今日でもジープ・チェロキーシリーズを始めとする多くのオフロード4WD車に、アフターマーケットパーツとして用意されている。
オートバイの場合と同様に、ステアリングダンパーの効果を強くしすぎると、素早いステアリング操作の妨げになる場合がある。
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