WebKit

AppleのHTMLレンダリングエンジン ウィキペディアから

WebKit(ウェブキット)は、Appleが中心となって開発しているオープンソースHTMLレンダリングエンジン群の総称である。HTMLCSSJavaScriptSVGMathMLなどを解釈する。

WebKitは、元々AppleのmacOSに搭載されるSafariレンダリングエンジンとして、LinuxBSDといった、Unix系用のレンダリングエンジンであるKHTMLフォークして開発された。現在はその他の多くのプラットフォームに移植されている。

ライセンス

WebKitのWebCoreおよびJavaScriptCoreライブラリはGNU Lesser General Public License (LGPL) 、その他の部分は修正BSDライセンスで利用可能である[3]

歴史

要約
視点

WebKitは元々、macOSのウェブブラウザ "Safari" のレンダリングエンジンとして使用するため、LinuxやBSDといったUnix系用のブラウザ "Konqueror" のKHTMLソフトウェア・ライブラリを基にAppleによって作成され、現在までに、Apple、KDE、ノキア、Google、Torch Mobileなどによって改良が加えられた。

起源

LinuxやBSDなどのUnix系用ブラウザとして、1998年KDEプロジェクトHTMLレンダリングエンジン "KHTML" と KDE のJavaScriptエンジン (KJS) が開発された。その後、Appleが2002年にそれらをフォークしてWebKitを開発した。

WebKitはKHTMLをもとにしたHTMLパーザかつレンダラであるWebCoreと、KJSを基にしたJavaScriptエンジンであるJavaScriptCoreを下位ライブラリとして含む。

当初、KHTMLとKJSは、Mozillaプロジェクトによって同じくオープンソースで開発が進められていたGeckoエンジンの基本方針である高いWeb標準への準拠と競合しないよう、Internet Explorerとの高い互換を目指し開発が行われていた。

その後、WebKitでは両ライブラリともパフォーマンス向上やWebサイトの表示の改善、Web標準へのさらなる準拠のために、基となったKDEの実装からかなりの修正が加えられている。

開発・オープンソース化

Mac OS X v10.3以降に搭載されているmacOS標準のウェブブラウザ、Safariの基礎を成している。プログラマはわずかな作業でその機能を外部アプリケーションから利用できる。Objective-CからWebKitのAPIにアクセスすることでWebサーバとの通信、Webページの取得および表示、外部プラグインの利用などを扱うことができる。

2005年6月7日、Safariの開発者Dave Hyattは自身のブログ上でAppleがWebKitをオープンソース化し(それまではWebCoreとJavaScriptCoreのみがオープンソースであった)、CVSBugzillaへのアクセスを公開することを発表した[4]。これに関してはBertrand SerletがAppleのWWDC 2005にて初めて公式発表を行っている。また、2006年1月10日にCVSからSubversionに移行した。

2007年初めにはアニメーションなどを含む新たなCSS拡張の実装に着手した[5]。これらの拡張は標準化のため2009年にW3Cにワーキングドラフトとして提出された[6]

2007年11月には、HTML5のメディア機能のサポートを達成したことが発表された[7]。このHTML5に部分対応したWebKitでは、組み込み動画のネイティブ描画とスクリプトコントロールが可能である。

2008年3月26日、WebKit r31356(最初のスコア100はr31342)が、世界で最初に公開されたAcid3ウェブ標準準拠の指標の一つ)に合格したレンダリングエンジンとなった[8]。2008年9月25日、スムーズなアニメーションを含め、Acid3を完全にパスしたと発表された[9]

WebKit2

2010年4月8日分離プロセスモデルを採用したWebKit2[10]の開発が発表された[11]。WebKit2の採用例としては、AppleやTizenなどがある。WebKit2ではWebKitから大幅にAPIの仕様が変更されており、互換性が失われている。そのため「WebKit2」という新たな名称を採用し、従来のWebKitとは区別できるようにしている。

2011年7月21日にAppleがWebKit2エンジンであるSafari5.1を公開した[12]iOS向けのSafariでは、iOS 8よりWebKit2が採用された[13]

Blinkとの分裂

2013年4月3日、AppleとGoogleが開発方針をめぐって対立したことや、Chromiumを搭載した時期からWebKitエンジン自体が複雑化したことで開発の遅滞が問題視された。このことからGoogleはWebKitをBlinkにフォークさせる事を発表した。直前にChromiumへの参加という形でWebKit採用を発表していたOperaも、それに伴いBlink採用を表明する形となった。翌日の4月4日、AppleはV8の排除、JavaScriptCore以外の使用の排除、Skiaの排除、GoogleのビルドシステムGYPの排除などの計画を表明し[14]、WebKitはGoogleが直接使うエンジンではなくなった。しかし、Linux向けビルドも用意され、依然としてOSSでありSafari専用という訳ではない[15][16]

移植

当初macOSのために開発されたため、WebKitを使用したウェブブラウザはmacOS専用のものが多かったが、Google Chrome (同系統のChromiumも同様。ただしそれらは2013年4月以降はWebKitから分岐されたBlinkを使用) など、LinuxやWindows向けウェブブラウザにもWebKitを採用したものが出てきている。Apple自身もWindows版のSafariの開発にも用いている。最近ではWebKitはデスクトップにとどまらず、モバイルプラットフォームでも活用されている。

  • ノキアは、自社のSymbian OS上のインターフェース環境S60 3rd Editionのブラウザ用に、WebKitをS60に移植した (S60 WebKit)[17]
  • アドビは、FlashFlex、HTML、JavaScript、Ajaxの技術を用いて、高度なインターネットアプリケーションを構築するクロスプラットフォームランタイムであるAIR(コードネームApollo)において、HTMLやJavaScriptを処理するエンジンとしてWebKitを採用している[18]。また、Adobe Dreamweaver CS4での採用が発表された[19]
  • Googleは、Google ChromeAndroid標準ブラウザ(4.3以前)、携帯電話プラットフォームAndroidで採用している[20]
  • WebKit/GTK+は、GTK+(現・GTK)向けのポート。様々なWebブラウザやメールクライアント等で利用されている[21]
  • Windows向けのウェブブラウザであるLunascapeは、バージョン5.0αから、WebKitを選択可能なエンジンの一つとして搭載。
  • Iris Browserは、Torch MobileによるWebKitをベースにした、QTとQtopia、Windows Mobile向けブラウザ。1.0.5PreviewよりWindows Mobile 5もサポートされた[22]
  • Opera Softwareは、自社の独自路線を変更し、Webkitの採用を決めたことを発表していた[23]。ただし、前述の通りその後Blinkへ移行している。

コンポーネント

要約
視点

WebCore

WebCoreは、WebKitプロジェクトにより開発された、HTMLおよびSVGのレイアウト、レンダリング、Document Object Model (DOM) ライブラリである。WebCoreの完全なソースコードLGPLで公開されている。WebKitフレームワークはWebCoreおよびJavaScriptCoreをラップし、C++ベースのWebCoreレンダリングエンジンおよびJavaScriptCoreスクリプトエンジンにObjective-C application programming interface (API) を提供することにより、Cocoa APIベースのアプリケーションから容易に参照することを可能にしている。より最近のバージョンはクロスプラットフォームのC++プラットフォーム抽象化を含んでおり、また様々なportは追加APIを提供している。

JavaScriptCore

JavaScriptCoreは、WebKitの実装にJavaScriptエンジンを提供するフレームワークであり、またmacOSのその他の場面で使用される同様のスクリプティングを提供する[24][25]。JavaScriptCoreはKDE's JavaScript engine (KJS) ライブラリおよびPerl Compatible Regular Expressions (PCRE) 正規表現ライブラリに由来している。KJSおよびPCREからフォークされてから、JavaScriptCoreは多くの新機能について改良がなされ、パフォーマンスも大幅に向上している[26]

2008年6月2日、発表時点で従来より1.6倍の高速化を果たした、新たなJavaScriptCoreとしてバイトコードインタプリタVM[27]のSquirrelFishが発表された[28]。また、9月18日には、SquirrelFishよりおよそ2倍の高速化を果たしたSquirrelFish Extreme (SFX) が発表された[29]

Drosera

DroseraはWebKitのナイトリービルドに含まれていたJavaScriptデバッガーである[30][31]。Droseraの名は食虫植物(つまりバグを食べる)のモウセンゴケ属の学名から付けられた。DroseraはWeb Inspectorに含まれるデバッギング機能によって置き換えられている[32]

SunSpider

SunSpiderは、現在および近い将来に想定されるJavaScriptの使用(画面描画、暗号化、テキスト操作など)に関連するタスクのJavaScriptパフォーマンスを測定する目的で作られたベンチマークスイートである[33] The suite further attempts to be balanced and statistically sound.[34]

SunSpiderはAppleのWebKitチームによって2007年12月にリリースされた[35]。SunSpiderは広く受け入れられ[36]、他のブラウザーの開発者もブラウザー間のJavaScriptパフォーマンスを比較するため使用している[37]

WebKitを使用するソフトウェア

ウェブブラウザ

WebKit2

  • macOSおよびiOS向け

開発終了

Chromiumベース

その他のソフトウェア

  • macOSおよびWindows向け
  • macOS向け
    • メール - macOS付属のソフトウェア
    • Dashboard - macOS付属のソフトウェア環境
  • モバイル向け
    • Android - Googleの提唱する携帯電話用プラットフォーム
    • iOS - 内包され、SafariやMail等で利用されている
    • HP webOS - HPのAccess Linux Platform (ALP) をベースとした携帯電話用プラットフォーム
  • ChromeOS

バージョンの対応関係

Google Chrome は 28以降 Blink に移行したが、下記表は Blink を含まず、WebKit の対応表。

さらに見る Safari, Mobile Safari ...
WebKit Safari Mobile Safari Google Chrome Android
Browser
Chrome for
Android
3DS New 3DS Wii U PS3 PS4 Vita
525 3.1, 3.2 3.1 0.4
528 4.0 1 1.5, 1.6  
530 4.0 - 4.0.2 2 2.0, 2.1
531 4.0.3 - 4.0.5 4.0.4 4.10 - 1.00 - 1.81
532 4.0.5 3, 4
533 4.1, 5.0 5.0.2 5 2.2, 2.3
534 5.1 5.1 6 - 12 3.0 - 4.2 2.0.0-2J - 9.5.0-22J 2.1.0J - 3.1.0J
535 13 - 18 16 - 18 9.5.0-23J -
536 6.0 6.0 19, 20 8.1.0-0J - 4.0.0J - 1.00 - 1.76 2.00 - 3.20
537 7.0 7.0 21 - 27 4.3 25 - 27 2.00 - 3.30 -
閉じる

脚注

関連項目

外部リンク

Loading related searches...

Wikiwand - on

Seamless Wikipedia browsing. On steroids.