Loading AI tools
アメリカ合衆国大統領が使用する専用の航空機 ウィキペディアから
VC-25は、ボーイング747-200Bをもとに一部設計変更して新造されたアメリカ合衆国大統領の専用機。正式な愛称はないが、通称「空飛ぶホワイトハウス」や「エアフォースワン」と呼ばれる[1]。ボーイングでの機種名は、747-2G4Bとなる(「G4」が、アメリカ合衆国連邦政府発注モデルを表すカスタマーコード)。
VC-25は以前使用されていた大統領専用機VC-137(ボーイング707-320Cの改造機)の後継機として1986年に完成、1987年に初飛行したが[2]、核爆発によって発生する電磁パルス(EMP)対策の追加仕様変更によって納期が遅れ、1990年に引き渡された。初めて使用した大統領はジョージ・H・W・ブッシュである。
この機はメリーランド州アンドルーズ空軍基地に駐屯するアメリカ空軍第89空輸航空団の所属であり、パイロットをはじめとする搭乗員は軍医も含め基本的にすべてアメリカ空軍の軍人である。パイロットの訓練は747の運用実績があるアトラス航空が受託している。
ベース機体が旅客機として世界的なベストセラーのボーイング747であるため、世界中の主要空港で整備や部品調達が可能で、毎日のように整備・点検が行われる。たとえ年に一回も搭乗しなかった場合でも、154日(約5か月)に一度は徹底的な整備・検査を行う。
VC-25は2機存在し、それぞれの機体記号は82-8000(テールナンバーは28000)、92-9000(テールナンバーは29000)である。82-8000が大統領の搭乗機として優先的に使用され、92-9000は82-8000が整備中の際の予備機、または副大統領や閣僚の搭乗機として使用される。大統領と副大統領が別の機体に乗るのは、もし1機に墜落などのトラブルが起こった場合でも国家の運営に影響が出ないようにするためである。海外訪問時は搭乗機を特定されないように、またトラブルに備え2機一組で飛ぶ。
「エアフォースワン」という名称は、正確にはアメリカ大統領が米空軍機に搭乗したときに用いられるコールサインである。副大統領が搭乗する時のコールサインは「エアフォースツー」だが、映画『ホワイトハウス・ダウン』の中では「エアフォースワン」とコールされていた。大統領が搭乗しないフェリー移動の場合、VC-25のコールサインは、テールナンバーにちなみ「SAM28000」、「SAM29000」が使用される、なお「SAM」は「Special Air Mission」(特別任務)の略[3][4]
VC-25の基本的飛行性能は747-200Bと同様だが、内装にはかなりの変更が施され、様々な貨物を載せていることから、定員は国際線用民間機で350人以上(JAL・ANA国内線機材で500人程)のところ、70席程度としている。
ジョージ・W・ブッシュ大統領任期末期の2008年に入り、内装や機能が後述のテレビ番組を通じて公表される様になったが、安全保障上の問題から、全ては情報公開されておらず、国家機密の部分も多い。以下に747-200Bからの主な変更点を挙げる。
大統領が国外訪問する際には、事前に空軍の人間やシークレットサービスの人間が空港の調査をする。空軍の人間は到着時の機体の位置などを事前に決めたり、補給する燃料のチェックをする。燃料は異物を混入される可能性があるため、指定業者から発注し、他の航空機の燃料とは別に保管する。燃料は保管する前に異物が混入されていないか抜き打ちチェックをされ、それをクリアしてから保管される。保管されるタンクの蓋には開封防止のタグをかけておき、もし使用するまでの間にそのタグが1か所でも取られていたら燃料は使われない。
シークレットサービスや空軍の先遣隊は空港の設備で基準に達していない物がないかをチェックし、改善が必要なら空軍機を利用して取り寄せる。また大統領専用リムジン「ビースト」や警備に必要な銃火器なども事前に訪問地に空軍機で送られ、場合によってはヘリコプターも空輸される。
主に羽田空港に着陸する。東貨物地区横にあるVIP専用スポットに駐機(タラップ車は民間から借用)し、特にスケジュールが切迫していない限り、大統領が降機すると横田基地にフェリー(回送)して待機する。トランプ政権時代は他の連邦政府高官達も常に横田基地から出入域し問題になった(公用旅券さえも不要で、法的にアメリカから一歩も出ていない扱い)。
羽田では大統領が離日するまで第1・第2・第3ターミナル(旧・国際線ターミナル)の屋外展望デッキも閉鎖される他、ターミナル内や連絡駅(京急・東京モノレール共)構内、周辺鉄道路線のゴミ箱・コインロッカーも使用が停止される(2010年横浜でのAPEC首脳会議では、首都圏全路線のゴミ箱・コインロッカー、みなとみらい線など一部路線では自動販売機の稼働も禁止された)。
VC-25の耐用年数は30年といわれており、2017年にその年を迎えた。耐用年数を超えるとパーツの取得が困難になり整備コストも上昇するため、2021年までに後継機を導入することが計画されていた[11]。
アメリカ空軍が発表した概要によると、選定条件は「大陸間の飛行が可能な4発機」とされ、これに該当する旅客機は当時、ボーイング747-8とエアバスA380の2機種で選考の結果、2015年1月28日にボーイング747-8を後継機に選定した[12]。
機材決定後は内装・システム等の詳細を詰めて、2016年1月29日に次期エアフォース・ワンの購入プログラムで、ボーイングとリスク低減活動の契約を締結し[13]、2016年7月15日に大統領専用機として適切な設計、改修、試験を行う契約を締結したと発表[14]。
なお、購入機数はVC-25より1機多い3機体制で2018年に一号機目の空軍引き渡し、その後アメリカ空軍がテスト運用・実証した上で2023年から大統領専用機として運用する計画[15]。運用は2024年に始まる予定であった[16]が、コロナ禍で遅れていた製造工程がさらに遅れ2026年まで遅れる可能性が出てきた[17]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.