Temu

中国のPDDホールディングスが運営するオンラインマーケットプレイス ウィキペディアから

Temu(テム[1][2])は、中華人民共和国PDDホールディングス(拼多多/ピンドゥオドゥオ)が中国国外向けに運営するオンラインマーケットプレイス[3]で、アパレル化粧品家電家具雑貨などを廉価販売する[3]アフィリエイト、ソーシャルメディアを通じて宣伝を行っており、新規ユーザーの勧誘に成功した一部のユーザーに無料で商品を提供している[4]

概要 URL, タイプ ...
Temu
URL www.temu.com
タイプ 電子商取引
設立 2022年7月 (2年前) (2022-07)
運営者 PDDホールディングス
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Temuはアプリのマルウェア感染[5]、個人情報保護[6]、製品の安全性[7]新疆ウイグル自治区の人権に関わる問題が指摘されており[8]、アメリカモンタナ州グレッグ・ジャンフォルテ英語版知事(共和党)は、TikTokテレグラムWeChat、Temuを州内で禁止する法案を2023年5月に署名した[9]

「Temu」の発音や表記については「ティームー」など、若干の揺れがある[10][11][12]

Temuが安い理由

Temuは低価格を維持するには、余分なコストをかけないようにしなければならない。その最たるものが固定費であり、地代家賃や水道光熱費、人件費といった毎月のコストが発生する実店舗だといえる。Temuは、ショールームを含む実店舗を一切持たないオンライン販売で、そうした固定費を削減している[13]

Temuがなぜ安いかという理由のもうひとつには、中間業者を媒介しないメーカーからの直接仕入れという仕組みがある[14]

卸売業者のような中間業者は、消費者であるエンドユーザーに商品を販売するのではなく、メーカーから仕入れて販売会社などに流通させる役割を担う。そういった業者を経由すると、利益確保の関係でどうしても顧客に販売する際の最終的な価格が上がりやすい。

中間業者を媒介しないメリットには、中間業者への手数料といったコストの削減に加えて、商品の流通が迅速になることや在庫管理の効率化といったものがある。このことが、最終的な商品の低価格維持に加えて、Temuの利益率の向上や市場での競争力強化につながっている。

事業地域

2022年9月1日にアメリカで事業を開始[15]し、2023年2月14日のスーパーボウルで多量に広告して23日までにスマートフォンアプリが4000万回ダウンロード[15]される。

2023年2月にカナダ[16]、3月にオーストラリアニュージーランド[17]、4月21日にイギリス、23日にドイツオランダイタリアフランススペイン[18]、7月11日に日本[19]、それぞれでサービスを開始する。

Temuはすでに世界90カ国・地域以上で展開されている。2025年に日本国内の販売事業者を自社のオンラインマーケットプレイスに招致するプログラム「Local-to-Local」を開始した。現地販売者から現地消費者へ商品を届けるこのビジネスモデルはすでに、米国、フランスなどの市場で導入されている[20]

諸問題

要約
視点

苦情

イギリスのタイム誌の記者によると、Temuは荷物の未配達やカスタマーサービスで悪評を立て始めている[4]。注文の不着や商品の間違いに加えて、身に覚えのない請求が届くことがあるとされる[4]

TechCrunchの記者はTemuの広告キャンペーンに関して「これらの広告はTemuのインストール数を増やす効果があるようだ。しかし、アプリのレビューを調べてみると、Wishのような詐欺的な商品リスト、破損・遅延配送、誤注文、カスタマーサービスの欠如など、似たような苦情が見つかる」と論じている[21]

Temuは製品の品質の低さを指摘されており、これはセラーが期限切れまたは古くなった商品を配送していることに起因する[22]。ほかにも虚偽の製品広告が指摘されている[4]

2024年3月、ベビーセンター英語版はTemuのレビューを行い、リコール対象となった製品、偽造品の疑いが強い製品、米国の安全基準を満たしていなかったり、窒息などの事故のおそれがある製品が見つかったと発表した[7]

2024年5月、消費者団体の欧州消費者機構は、トレーサビリティ要件、アルゴリズムの透明性と説明責任に関するEU DSA法英語版違反を主張して、欧州委員会に対してTemuを告訴した[6]

知的財産権

Temuでは知的財産権を侵害した製品がたびたび販売されているとされる[23]。デザイン盗用の事例も報告されている[24]

個人情報保護

ポリティコは「Appleは、Temuが同社のプライバシー規則要件に違反し、ユーザーのデータ利用についてミスリードを行ったと述べた」と報道した[25]

2023年にイリノイ州ニューヨーク州でTemuに対して集団訴訟が起こされた。これはTemuの利用者アカウントから収集された個人データの取り扱いに関するものである[26]

2024年2月、韓国の個人情報保護委員会は、Temuや他のECプラットフォームに対するユーザーデータの取り扱いに関する調査を開始した[27]

労働問題

Temuは過酷な労働文化や、996工作制を推進しているとして批判を受けている[28]。従業員の死亡事件も発生しており、同社の労働文化との関係が指摘されている[28]

2024年、フィナンシャル・タイムズウォール・ストリート・ジャーナルは、Temuの親会社であるPDDホールディングスが、同業他社に転職した元従業員に対して監視や訴訟を行っていると報じた[29][30]

マルウェア汚染

2023年5月、Temuの中国国内版である拼多多がGoogle Playから一時停止されたことを受け、アメリカ中経済安全保障調査委員会はTemuでの個人データの安全リスクについて懸念を表明した。これはGoogle Play Store以外のバージョンにマルウェアが含まれていたことが判明したためである[31][32][33]。拼多多はマルウェア削除のためのアップデートをリリースして2日後に、マルウェア開発に携わったエンジニアとプロダクトマネージャーのチームを解散した。CNNの情報筋によると、チームの大部分はTemuに異動し、各部門で働いているが、一部のエンジニアは拼多多に残留しているとされる[34]

2023年5月17日、モンタナ州知事グレッグ・ジャンフォルテは、TikTokWeChatTelegramを含むByteDance関連アプリとともに、州政府機関内でのTemuの使用を禁止した[35][36]

新疆ウイグル自治区の人権問題

2023年6月、連邦議会の「米国と中国共産党との間の戦略的競争特別委員会」は、Temuがウイグル強制労働防止法を遵守するための「有意義なコンプライアンスプログラムの建前すら」維持していないとの声明を発表した。同法は、強制労働で作られた商品をプラットフォームから排除することを目的としている[37][38][39][40]。 委員会の報告書はTemuへの厳しい評価を下し、Temuのサプライチェーン内には「強制労働による汚染のリスクが非常に高い」としている[40]

不適切な広告

2023年、英国広告基準局英語版(ASA)はTemuの広告の一部を禁止した。これにはビキニを着た少女が「かなり大人」なポーズをしたり、「股間の輪郭」を強調したジョックストラップ、裾が切り取られた「下着のように見える」サイクリングシャツや、モデルの顔が省略されたドレスの写真などを含む。Temuは、少女の写真は同社の方針に違反しており、今後は掲載しないと公表したが、モデルの顔を公開しないのは女性を性的対象化する意図はなく、他の小売業者も同様の写真を掲載していると述べ、ASAの調査結果に一部異議を訴えた[41]

公式サイトと偽るサイトの存在

2024年、Temuの公式サイトと偽るサイトが確認されている。いわゆる偽サイトというものだが、悪意のある第三者からのSNSを通じたDMを経由して偽サイトに飛ばされるケースが考えられる。現状公式サイトの確認方法として最も有効だと考えられるのがURLの確認である。クレジットカードなどの情報を盗まれる可能性がある[42]

Sheinとの訴訟

2022年12月、Temuは自社商品の宣伝のためにインフルエンサーに競合企業のSheinについての「虚偽で欺瞞的な発言をさせる」ように促したとして、Sheinから訴訟を起こされた。その後、Temuは2023年7月にSheinを告訴し、Temuと協力していると思われる衣料品メーカーに対し、Sheinが「脅迫、侵害に関する虚偽の主張、根拠のない懲罰的罰金を科す試み」を行ったと主張した[43]

脚注

外部リンク

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