スパ・フランコルシャン
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シルキュイ・ド・スパ=フランコルシャン(Circuit de Spa-Francorchamps)は、ベルギーのワロン地域リエージュ州にあるサーキットである。スパとフランコルシャンにまたがっていることから、この名称が名付けられている。現行のF1開催コースとしては7.004kmと図抜けて長い。他のサーキットは多くが全長5km前後、長くても6km程度である。
2018年の空撮より | |
所在地 | ベルギー リエージュ州 スパ フランコルシャン |
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標準時 | GMT +1 (DST: GMT +2) |
座標 | 北緯50度26分14秒 東経5度58分17秒 |
オープン | 1921年8月 |
主なイベント | F1 ベルギーグランプリ WEC スパ6時間レース スパ24時間レース ELMS, DTM |
現在のコース (2007– ) | |
コース長 | 7.004 km (4.352 mi) |
コーナー数 | 19 |
レコードタイム | 1:41.252 ( ルイス・ハミルトン, メルセデス, 2020) |
改修後のコース (2004–2006) | |
コース長 | 6.976 km (4.335 mi) |
コーナー数 | 19 |
レコードタイム | 1:45.108 ( キミ・ライコネン, マクラーレン・メルセデス, 2004) |
近代のコース (1981–2003) | |
コース長 | 6.968 km (4.330 mi) |
コーナー数 | 19 |
レコードタイム | 1:47.176 ( ミハエル・シューマッハ, スクーデリア・フェラーリ, 2002) |
旧コース (1947–1978) | |
コース長 | 14.1 km (8.761 mi) |
コーナー数 | 21 |
レコードタイム | 3:13.4 ( アンリ・ペスカロロ, マトラ, 1973 WSC) |
戦前のコース (1921–1939) | |
コース長 | 14.9 km (9.31 mi) |
コーナー数 | 25 |
レコードタイム | 5:04.1 ( ヘルマン・ラング, ダイムラー・ベンツ, 1937) |
リエージュ州都リエージュの南東30km、ドイツとの国境に近いアルデンヌの森に位置する。高低差104m[1]という激しいアップダウンの間に難易度の高い高速コーナーが連続しており、コースに対し高い評価を与えるドライバーは多い。
1924年に第1回の24時間グランプリ(現在のスパ・フランコルシャン24時間レース)が開催される。1925年にヨーロッパグランプリを初開催。F1ベルギーGPや世界耐久選手権(WEC)スパ・フランコルシャン6時間レースを始めとする各種の大きなイベントが開催される。1990年まで2輪のロードレース世界選手権 (WGP)ベルギーGPも開催された。
レースが開催されるようになった当時は全長14km以上ある長い公道コースだったが、スピードが出過ぎるために開催を中止しコースを改修。公道区間の一部(スタブロー - ラ・スルス - レ・コーム間)を残し、レース専用区間(レ・コーム - スタブロー間)でつなぐ形として、1978年に現在のコースの原型が造られた。その後常にレースが開催できるように公道部分にバイパスが作られ、2003年に完全なレース専用のクローズドサーキットとなった[2]。
1985年には再舗装工事の遅れにより路面が剥がれ、ドライバーの訴えによりベルギーGP開催が延期されるという騒動があった[3]。
2003年にはEU圏のたばこ広告禁止によりF1が開催中止となったが、2004年には復活を果たし、その際にバスストップシケインが改修された。2006年はピットレーン周辺の問題からF1が開催されなかったが、バスストップシケインとピットレーン施設を改修した2007年に再開された。
2008年のグランプリウィークには、同年他界したベルギー出身のレーサーで自動車ジャーナリスト、ポール・フレールの功績を称えてスタブロー(仏: Stavelot)がポール・フレール(仏: Paul Frère)コーナーと改名され、コース脇に記念碑が建てられた。
2022年、FIM世界耐久選手権開催の為、8000万ユーロを費やし改修工事を実施。グラベルトラップの追加やランオフエリアの拡大、ラディオンの横に新たなグランドスタンドが新設された[4][5]。
新ピット施設前の短いホームストレートを過ぎると、すぐに訪れるのが鋭角な右ヘアピンコーナーのラ・スルス (仏: La Source)。コントロールラインからの距離が短い上に急減速するため、決勝スタート直後に度々ここで接触事故が起こる。以前はコーナーの立ち上がりのアウト側に縁石があったが、ナイジェル・マンセルがさらにその外側を走るラインを見つけた。その後ほとんどのドライバーが彼のラインをトレースするようになったためその縁石は取り除かれたが、2007年の改修により再び縁石が設けられ、コースをはみ出して大回りすることはタイムロスにしかならないようになった。それでもスタート直後の接触を避けるため敢えてはみ出すケースも見られたが、2022年のコース改修で安全性確保の為この部分はアスファルト舗装からグラベルトラップに変更となりはみ出しは不可能となった。
ラ・スルスを過ぎると、旧ピット施設前の坂を駆け下りる(スパ24時間レースでは旧ピットも使用し、坂の途中にスタートラインが置かれる[6]。ゴールは通常のフィニッシュライン)。下り坂の終点の左コーナーのオー・ルージュ (仏: Eau Rouge) へ飛び込むと急な登り坂に転じ、続くラディオン (仏: Raidillon) を右、左と小刻みに切り返す。300km/h近いスピードで駆け抜けるこのセクションでは、地面方向へ強い縦Gがのしかかる。ドライバー視点からは壁のように見えるといい、現在世界中に存在するサーキットの中で、最も度胸が試されるコーナーのひとつと言われている。1985年には世界耐久選手権 (WEC) のスパ1000kmで、ステファン・ベロフがコンクリートウォールに激突して死亡。1994年はサンマリノグランプリにおけるアイルトン・セナのイモラでの事故死などF1の安全性が問われ、オー・ルージュがシケインに変更されたが不評だったため、翌年からランオフエリアを広げることで元の形に戻された。2006年にF1のエンジンが2.4リッターV8になってからは、アクセル踏み切りでクリアできるようになり難易度が下がった[7][8]。なお、オー・ルージュとはコーナーの下を流れる川の名で、フランス語で「赤き水」を意味する。日本の温泉地にも時折見られるもので、川の水に鉄分を多く含み、赤く見えることに関係している。1994年のベルギーGPからオー・ルージュの外側のパドックに通じるトンネルの入口に同年のサンマリノGPで他界したアイルトン・セナの記念碑が建てられている。
また、2019年のF2ベルギーGPにて、ラディオン立ち上がりでアンソワーヌ・ユベールが死亡するなど、近年モータースポーツ史上に残る凄惨な事故が発生した。これを受け、安全のために2022年までにグラベルを設置する改修工事が計画されている。
オー・ルージュの出口にある左コーナー、ラディオンを越えると、上り坂のケメル・ストレート (仏: Kemmel) に入る。長いストレートである事と、オー・ルージュの抜け方によって最高速度が大きく変わる事から、オーバーテイクが頻繁に行われる。2000年、ここでミカ・ハッキネンが周回遅れのリカルド・ゾンタを挟んでミハエル・シューマッハをオーバーテイクしたことがある。このシーンは各メディアで「20世紀最高のオーバーテイク」と言われるほどスリリングで驚異的なものであった。
ストレートエンドのレ・コーム (仏: Les Combes) - マルメディ(仏: Malmedy)付近がコースの最高標高地点となり、これを越えると下りの中高速コーナー区間が続く。ヘアピンコーナーのリバージュ(仏: Rivage)を回り込み、2連高速コーナーのプーオン (仏: Pouhon) 、S字コーナーのレ・ファーニュ (仏: Les Fagnes) を流れるように通過し、ポール・フレール (仏: Paul Frère) で減速する。
左にカーブした全開区間の後に超高速左コーナーのブランシモン (仏: Blanchimont) が待っている。ここはヨーロッパのサーキットの中で最も通過速度が高く、オー・ルージュと並んで度胸の試されるコーナーである。鈴鹿サーキットの130R同様、ここをスロットル全開で抜けられるマシンセッティングになっていなければ、スパで良いラップタイムは作れない。1992年にリジェのエリック・コマスがフリー走行中に大クラッシュした他、2001年にはルチアーノ・ブルティとエディ・アーバインがここで接触し高速でタイヤバリアに激突、赤旗中断となる事故が起こった。
ブランシモンを抜けると、最終セクションのバスストップ・シケイン(英: Bus Stop chicane)で急減速する。ポール・フレールからここまで全開で走行してくるため、ここもオーバーテイクポイントとなる。かつてはバス停のように、本線から別れてまた合流するような形状の連続シケインだったが、エスケープロードとピット入口が重なって危険なため、2004年にコース内側を造成してエントリー部分が改修された。しかし、ブレーキング勝負がしにくくなったことから、2007年以降はストレートを延長し、最後にタイトなシケインを置く形に再変更された。このシケインを抜けると、ラ・スルスへ続く短いホームストレートに出る。
コース全長が長いため、F1ベルギーGPではフィニッシュ後にウィニングランを行わず、ラ・スルス先のピット出口からピットレーンを逆走してパルクフェルメにマシンを駐車する。
このようにテクニカルなコーナーの連続でサーキットが構成されており、マシン性能が優劣を決めやすい通常の高速サーキットとは一線を画した、ドライバーの実力を問うドライバーズサーキットとして世界に名を馳せている。
サーキットが山の中にあることや、コース長が長いことから、天候が目まぐるしく変わったり、雨の降っている地点と降っていない地点が混在することがある。この天候はスパ・ウェザーと呼ばれ、レース展開を左右する要素のひとつでもある。
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