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日本の法律 ウィキペディアから
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(こうねんれいしゃとうのこようのあんていとうにかんするほうりつ)は、日本の法律である。通称高年齢者雇用安定法(こうねんれいしゃこようあんていほう)。1971年(昭和46年)5月25日、「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」として制定され、1986年(昭和61年)4月30日、「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(昭和61年4月30日法律第43号)に基づき現題名に改称され、同年10月1日に施行された。定年制を直接規制対象とする法令としてはこれが最初のものである。
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 | |
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日本の法令 | |
通称・略称 | 高年齢者雇用安定法 |
法令番号 | 昭和46年法律第68号 |
種類 | 労働法 |
効力 | 現行法 |
成立 | 1971年5月19日 |
公布 | 1971年5月25日 |
施行 | 1971年10月1日 |
主な内容 | 高年齢者等の雇用の安定、シルバー人材センター等について |
関連法令 | 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、職業安定法 |
制定時題名 | 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法 |
条文リンク | 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 - e-Gov法令検索 |
この法律は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、もって高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする(第1条)。
高年齢者等は、その職業生活の全期間を通じて、その意欲及び能力に応じ、雇用の機会その他の多様な就業の機会が確保され、職業生活の充実が図られるように配慮されるものとする。労働者は、高齢期における職業生活の充実のため、自ら進んで、高齢期における職業生活の設計を行い、その設計に基づき、その能力の開発及び向上並びにその健康の保持及び増進に努めるものとする(第3条)。
この法律において「高年齢者」とは、厚生労働省令で定める年齢(55歳)以上の者をいう(第2条1項、施行規則第1条)。また、この法律において「高年齢者等」とは、高年齢者及び次に掲げる者で高年齢者に該当しないものをいう(第2条2項、施行規則第2条~3条)。
この法律において「特定地域」とは、中高年齢者である失業者が就職することが著しく困難である地域として厚生労働大臣が指定する地域をいう(第2条3項)。特定地域の指定は、公共職業安定所の管轄区域を単位として、雇用保険法第25条1項に規定する広域職業紹介活動に係る地域であって、次の各号に該当するものについて行うものとする。厚生労働大臣は、中高年齢者である失業者が多数発生することが見込まれ、次の各号に該当することとなると認められる地域その他次の各号の地域に準ずる地域であって必要があると認めるものについても、特定地域の指定を行なうことができる(施行規則第4条)。
国及び地方公共団体は、事業主、労働者その他の関係者の自主的な努力を尊重しつつその実情に応じてこれらの者に対し必要な援助等を行うとともに、高年齢者等の再就職の促進のために必要な職業紹介、職業訓練等の体制の整備を行う等、高年齢者等の意欲及び能力に応じた雇用の機会その他の多様な就業の機会の確保等を図るために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めるものとする(第5条)。
厚生労働大臣は、高年齢者等の職業の安定に関する施策の基本となるべき方針(高年齢者等職業安定対策基本方針)を策定するものとする。厚生労働大臣は、高年齢者等職業安定対策基本方針を定めるに当たっては、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するとともに、労働政策審議会の意見を聴かなければならず、また高年齢者等職業安定対策基本方針を定めたときは、遅滞なく、その概要を公表しなければならない。高年齢者等職業安定対策基本方針に定める事項は、次のとおりとする(第6条)。現在、平成25年度から平成31年度までの7年間を対象期間とする高年齢者等職業安定対策基本方針(平成24年11月9日厚生労働省告示第559号、最終改正平成31年3月20日厚生労働省告示第74号)が告示されている[注釈 1]。
事業主は、その雇用する高年齢者について職業能力の開発及び向上並びに作業施設の改善その他の諸条件の整備を行い、並びにその雇用する高年齢者等について再就職の援助等を行うことにより、その意欲及び能力に応じてその者のための雇用の機会の確保等が図られるよう努めるものとする。また事業主は、その雇用する労働者が高齢期においてその意欲及び能力に応じて就業することにより職業生活の充実を図ることができるようにするため、その高齢期における職業生活の設計について必要な援助を行うよう努めるものとする(第4条)。
国は、高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るため、高年齢者等職業安定対策基本方針に従い、事業主、労働者その他の関係者に対し、次に掲げる措置その他の援助等の措置を講ずることができ、この事務の全部又は一部を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に行わせるものとする(第49条)。
機構は、毎年10月を「高年齢者雇用支援月間」と定め、年齢にかかわりなく活躍できる社会の実現に向けて、高年齢者雇用についての関心と一層の理解を図るため、厚生労働省、関係機関と協力して、事業主をはじめ、広く国民に対して、様々な啓発活動を展開している。
事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には、当該定年は、60歳を下回ることができない。ただし、当該事業主が雇用する労働者のうち、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務に従事している労働者については、この限りでない(第8条)。1998年(平成10年)の改正法施行により、それまでの努力義務から義務へと格上げされた。「高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務」とは、鉱業法第4条に規定する事業における坑内作業の業務とする(施行規則第4条の2)。
定年(65歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(高年齢者雇用確保措置)のいずれかを講じなければならない(第9条1項)。2006年(平成18年)4月の改正法施行により、それまでの努力義務から義務へと格上げされた。当分の間、60歳以上の労働者が生じない企業であっても、措置は必要である。厚生労働大臣は、事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用(心身の故障のため業務の遂行に堪えない者等の継続雇用制度における取扱いを含む。)に関する指針を定めるものとされ(第9条3項)、現在、高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(平成24年11月9日厚生労働省告示第560号)が告示されている。厚生労働大臣(都道府県労働局長に権限委任)は、この規定に違反している事業主に対し、必要な指導及び助言をすることができ、指導又は助言をした場合において、その事業主がなおこの規定に違反していると認めるときは、当該事業主に対し、高年齢者雇用確保措置を講ずべきことを勧告することができ、勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる(第10条1~3項)。
定年(65歳以上70歳未満のものに限る)の定めをしている事業主又は継続雇用制度(高年齢者を70歳以上まで引き続いて雇用する制度を除く)を導入している事業主は、その雇用する高年齢者について、次に掲げる措置を講ずることにより、65歳から70歳までの安定した雇用を確保するよう努めなければならない(第10条の2第1項、2項)。2021年4月の改正法施行により、70歳までの就業確保が事業主の努力義務となった。厚生労働大臣は、これらの措置及び創業支援等措置(高年齢者就業確保措置)の実施及び運用(心身の故障のため業務の遂行に堪えない者等の65歳以上継続雇用制度及び創業支援等措置における取扱いを含む。)に関する指針を定めるものとし(第10条の2第4項)、現在高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針(令和2年10月30日厚生労働省告示第351号)が告示されている。厚生労働大臣(都道府県労働局長に権限委任)は、基本方針に照らして、高年齢者の65歳から70歳までの安定した雇用の確保その他就業機会の確保のため必要があると認めるときは、事業主に対し、高年齢者就業確保措置の実施について必要な指導及び助言をすることができ、指導又は助言をした場合において、高年齢者就業確保措置の実施に関する状況が改善していないと認めるときは、当該事業主に対し、高年齢者就業確保措置の実施に関する計画の作成を勧告することができる(第10条の3第1項、2項)。
事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、高年齢者雇用確保措置等を推進するため、作業施設の改善その他の諸条件の整備を図るための業務を担当する者(高年齢者雇用推進者)を選任するように努めなければならない(第11条)。事業主は、この業務を遂行するために必要な知識及び経験を有していると認められる者のうちから当該業務を担当する者を高年齢者雇用推進者として選任するものとする(施行規則第5条)。
国は、高年齢者等の再就職の促進等を図るため、高年齢者等に係る職業指導、職業紹介、職業訓練その他の措置が効果的に関連して実施されるように配慮するものとする(第12条)。公共職業安定所は、高年齢者等の再就職の促進等を図るため、高年齢者等の雇用の機会が確保されるように求人の開拓等を行うとともに、高年齢者等に係る求人及び求職に関する情報を収集し、並びに高年齢者等である求職者及び事業主に対して提供するように努めるものとする(第13条)。公共職業安定所は、高年齢者等にその能力に適合する職業を紹介するため必要があるときは、求人者に対して、年齢その他の求人の条件について指導するものとし、公共職業安定所は、高年齢者等を雇用し、又は雇用しようとする者に対して、雇入れ、配置、作業の設備又は環境等高年齢者等の雇用に関する技術的事項について、必要な助言その他の援助を行うことができる(第14条)。
事業主は、その雇用する高年齢者等が解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く。)その他これに類するものとして厚生労働省令で定める理由(継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めた場合における当該基準に該当しなかったことその他事業主の都合。以下「解雇等」という。)により離職する場合において、当該高年齢者等が再就職を希望するときは、求人の開拓その他当該高年齢者等の再就職の援助に関し必要な措置(再就職援助措置)を講ずるように努めなければならない。公共職業安定所は、この規定により事業主が講ずべき再就職援助措置について、当該事業主の求めに応じて、必要な助言その他の援助を行うものとする。ただし以下の高年齢者等は除く(第15条、施行規則第6条)。
事業主は、同一の事業所において、一月以内の期間に、その雇用する高年齢者等のうち5人以上の者が解雇等により離職する場合には、多数離職届(様式第一号)を当該届出に係る離職が生ずる日の一月前までに当該事業所の所在地を管轄する公共職業安定所長に提出することによって行わなければならない(第16条、施行規則第6条の2)。
事業主は、解雇等により離職することとなつている高年齢者等が希望するときは、その円滑な再就職を促進するため、以下の事項(解雇等の理由を除く。)及び事業主が講ずる再就職援助措置を明らかにする書面(求職活動支援書)を作成し、当該高年齢者等に交付しなければならない。事業主は、求職活動支援書を作成する前に、離職することとなっている高年齢離職予定者に共通して講じようとする再就職援助措置の内容について、当該求職活動支援書に係る事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合の、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴くものとする(第17条1項、施行規則第6条の3)。
求職活動支援書を作成した事業主は、その雇用する者のうちから再就職援助担当者を選任し、その者に、当該求職活動支援書に基づいて、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所と協力して、当該求職活動支援書に係る高年齢者等の再就職の援助に関する業務を行わせるものとする。事業主は、再就職援助担当者に、その業務の遂行に係る基本的な事項について、求職活動支援書に係る事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合の、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴いてその業務を行うようにさせるものとする。再就職援助担当者の業務は、次のとおりとする(第17条2項、施行規則第6条の4)。
事業主は、労働者の募集及び採用をする場合において、やむを得ない理由により一定の年齢(65歳以下のものに限る。)を下回ることを条件とするときは、求職者に対し、労働者の募集及び採用の用に供する書面又は電磁的記録に併せて記載又は記録する方法により、当該理由を示さなければならない(第20条1項、施行規則第6条の5)。厚生労働大臣(都道府県労働局長に権限委任)は、この理由の提示の有無又は当該理由の内容に関して必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる(第20条2項)。
事業主は、毎年、6月1日現在における定年及び継続雇用制度の状況その他高年齢者の雇用に関する状況を7月15日までに、高年齢者雇用状況報告書により、その主たる事務所の所在地を管轄する公共職業安定所長を経由して厚生労働大臣に報告しなければならない(第52条、施行規則第33条)。
この法律は、船員職業安定法第6条1項に規定する船員については、適用しない。第6条、第2章、第3章第2節、第49条及び第52条の規定は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない(第7条)。
公共職業安定所(ハローワーク)へ出す求人では、正当な理由を示して年齢制限したり、年齢不問と書かれていても希望の年齢をあらかじめ出すことがあり、必ずしも年齢による雇用機会の平等化には結びついていない。
また、ハローワークへ出す求人で、例えば年齢不問・連絡不要で事前郵送と書かれていて紹介状と履歴書を郵送したものの、企業側にとっては希望外の年齢の求職者が応募したため、書類選考で不採用とした上、改めて紙メディアで求人広告をし、「○○歳未満」と書いて、暗に年齢制限を行うケースもある。
2012年8月29日、60歳などで定年を迎えた社員のうち、希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入を企業に義務付ける改正高年齢者雇用安定法が成立。2013年4月から施行される[1]。この改正案について、労働組合が「希望者全員の雇用」を求めたのに対し、経済界は「他の社員の給与を減らすか、若年層の採用を減らすかという選択を迫られかねない」として、反発を強めていた[2]。定年者の再雇用拡大に伴って、非正規社員の削減を検討している企業は3割に上る[3]。
改正法が2021年4月施行。改正前は(1)定年の廃止、(2)定年の延長、(3)定年後にふたたび雇う、など継続雇用の3つのいずれかをえらび従業員に65歳までの就業機会をつくるよう企業に義務づけていたが、これを70歳まで延長し、(4)別会社への再就職、(5)フリーランス契約への資金提供、(6)起業の後押し、(7)社会貢献活動への参加支援、をもえらべるようにして7つの選択肢のいずれかで70歳までの就業機会を確保するよう企業に努力義務を課すが、多くの企業が契約社員などでの再雇用をえらぶとみられている。
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