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労働者と使用者との間で締結される、書面による協定 ウィキペディアから
労使協定(ろうしきょうてい)とは、労働者と使用者との間で締結される、書面による協定のことである。法文上の語ではなく、下記の要件を満たす協定のことを一般に「労使協定」と呼ぶ(法文上は「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定」)。
労使協定は、事業場単位で締結される[1](労働協約のように産業別や企業単位で締結することはできない)。労使協定を締結することで、労働基準法、育児介護休業法、高年齢者雇用安定法等で定められた所定の事項について、法定義務の免除や免罰の効果を発生させる。ただし、労使協定には、労働協約・就業規則のように、労働契約を規律する効力(規範的効力)はないので、労使協定を締結してもそれだけでは労働契約上の権利義務は生じない(昭和63年1月1日基発1号)。したがって労使協定締結とあわせて労働協約・就業規則等でそれぞれの定めが必要となる。
使用者に相対する労働者側の代表(いわゆる「過半数代表」)は、以下の者がなる。
これは「企業における労働者代表に与えられる保護及び便宜に関する条約」(ILO135号条約、日本は未批准)に倣った規定である。
「過半数」の算定にあたって分母となる「労働者」には、労働基準法第9条でいう「労働者」であれば、たとえ協定が適用されない管理監督者、出向労働者(時間については受入、賃金については支払労働者)、送り出し派遣労働者、パートやアルバイト、さらには時間外労働が制限される年少者等(昭和46年1月18日基収6206号)、協定の有効期間満了前に契約期間が終了する労働者(昭和36年1月6日基収6619号)をも含むが、解雇係争中の労働者(労働基準法に違反しないと認められる場合。昭和24年1月26日基収267号)、受入れ派遣労働者は含まない。
過半数代表の要件は協定の成立要件であって、存続要件ではないと解される。したがって、いったん有効に締結した過半数代表がその後過半数割れを起こしたり、異動で管理監督者になったとしてもその協定は有効のままである。
使用者は、労働者の過半数を代表する者であること及びなろうとしたこと、労働者の過半数を代表する者として正当な行為をしたことなどを理由として労働条件(解雇、賃金の減額、降格等)について不利益な取扱いをすることは禁止される(労働基準法施行規則第6条の2第3項)[2]。使用者は、過半数代表者が労使協定に関する事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならない(同第6条の2第4項)。
現行法では、事業場に労働者の過半数を組織する労働組合が存在する場合には、当然にその労働組合が過半数代表となる。ここでいう「労働組合」は、労働組合法第2条でいう「労働組合」であり、その要件を満たすものでなければならない。
過半数組合は協定の締結等をめぐって、当然に団体交渉を要求することができ、使用者がこれを拒否すれば不当労働行為となる(労働組合法第7条)。また団体交渉の成果たる労使協定が文書化され、労使双方が署名もしくは記名押印した場合、その協定は労働協約としての効力も持つ(労働組合法第14条)。この場合、労使協定としての効力は当該組合員でない者に対しても当然に及ぶ。
過半数組織組合との締結において、誰が組合側締結当事者となるかは組合自治に属し、会社が干渉することは許されない。
事業場に労働者の過半数を組織する労働組合が存在しない場合には、労働者の過半数を代表する者を選出しなければならない。代表者として認められる要件は、以下2つである(労働基準法施行規則第6条の2第1項、昭和63年1月1日基発1号)。
過半数代表者としての選出が適正になされていない場合、その者には過半数代表者としての権限は認められない(裁判例として、東京高判平成9年11月17日。従業員親睦会の代表者が過半数代表者として締結した労使協定を無効と判断した)。
過半数代表の役割は、労使協定の締結のみならず、使用者が取ろうとする措置に対して従業員を代表して意見を述べることや、労使が共同して委員会を設置する場合にその労働者側委員を指名又は推薦すること等もある。法令に規定されている主なものは以下の通り。
労働基準法に基づいて締結した労使協定について、使用者は、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付すること等の方法によって、労働者に周知させなければならない(労働基準法第106条1項、規則第52条の2)。要旨のみの周知では足りず、その全部を周知させる必要がある。
太字は、所轄労働基準監督署長への届出が必要な労使協定である。届出は事業場単位で行うのが原則であるが、一の使用者の下に複数の事業所が存在し本社の人事部門で統一的な人事・労務管理をしているときには「本社と事業場の協定の主要な内容が同一であること」「届出をする部数の協定が提出されていること」を条件に本社での一括届出が認められている(平成15年2月15日基発0215002号)。
なお労使協定の効力発生要件は三六協定を除き「締結」であり、届出を怠ったとしてもそのことによる法違反としての刑事罰はあるものの、民事的には有効である。
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