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運転台撤去車(うんてんだいてっきょしゃ)とは、必要がなくなった運転台(乗務員室)を撤去した鉄道車両である。
気動車より電車、日本国有鉄道(国鉄)・JRより私鉄、関東私鉄より関西私鉄、ローカル線より大都市近郊路線、郊外輸送形鉄道よりインターアーバン(都市間連絡鉄道)、クロスシート車などの特急形車両よりロングシート車などの通勤形車両、新しい車両より古い車両に比較的多く見られる。これはかつて今ほど編成の固定化が行われていなかった時代、製造されるほとんどの車両が先頭車で、中間車は(鉄道事業者や路線によっては)少数しか製造されなかったが、大都市圏の路線において編成両数が年々長大化・固定化し、先頭車の必要数が製造当初より少なくなったことが理由である。このため製造年次が新しくなるにつれ長編成化が進み、当初から中間車を多めに考慮しているので、以前と比べ運転台撤去車は減少傾向にある。
先頭車を中間に組み込む時の対応としては、「毎日運用のたびに異なる編成同士の増解結を行う」事業者と、「一度編成替えをすると先頭車が閉じ込められたまま当分出てこない」事業者に大別され、後者は運転台撤去車の発生する確率が高い。特に阪急電鉄や京阪電気鉄道は代表例であり、1960年代までに製造された形式の大半に運転台撤去車が存在し、車両史を語る上で欠かせなくなっている。
また新車を増備する際に制御電動車(運転台もモーターもある車両)を中心に製造し、前世代の車両は古くなるとモーターや運転台を撤去して付随中間車となる手法も存在し、東京メトロ銀座線(当時は帝都高速度交通営団)や京王井の頭線の旧性能車両では、比較的後世までこの手法が見られた。
乗務員室を使って業務を行う乗務員(運転士・車掌)にはあまり関係ない存在だが、撤去工事など車両のメンテナンスを行う車両部にとっては、乗務員より気にすべき部分の一つである。
運転台の撤去基準やその方法は、国土交通省や車両メーカーが規定しているものでなく、各鉄道事業者が自由に行う工事のため(小田急1000形電車ワイドドア編成などのように、車両メーカーの手によって施工されるケースも存在する)、さまざまな形態や種類が存在する。ここでは比較的よく見られるパターンを以下に挙げる。各形式の詳細については、形式別のリンクから各説明を参照。
西武351系電車(サハ1311)の撤去運転台は当初1だったが、更新時に3の仕様となった。ただし採用した窓のパーツが年度により微妙に異なるため、撤去部の窓だけはアルミサッシとなった。運転台撤去のみ微妙に窓が異なるケースは、東武8000系電車などにも見られる。
阪急は後述の920系を除き、初代阪急1000系列までは1の仕様だったが、冷房装置搭載時に2の仕様となり、2000系以降は2が使われている。
近畿日本鉄道で6800系から8800系まで一貫して採用された、ほぼ同一の車体デザイン(丸屋根車)では、先頭車がd1D2D2D2D1・中間車が2D2D2D2D1の窓配置(「d」は乗務員扉、「D」は客用扉、数字は客室側窓の数をそれぞれ示す)をとっていたが(厳密には各形式でそれなりに違いがある。詳細は近畿日本鉄道の車両形式を参照)、運転台撤去車には「2の仕様で11D2D2D2D1」「3の仕様で独立窓を組み込む11D2D2D2D1」「3の仕様で二連窓を組み込む2D2D2D2D1」の3パターンが存在する。
ステンレス車体は普通鋼車体より各種パーツの再加工が困難であり、外観に先頭車のデザインがそのまま残るケースが多い。
中間車の貫通路や幌に広幅を採用するケースはよく見られるが、先頭車の正面貫通路は広幅にすることが困難であり、狭幅となる。こうした貫通式先頭車が運転台撤去車となる場合、貫通路には撤去前の寸法を活かした狭幅が採用され、製造当初から広幅貫通路を採用する中間車と幅が合わないケースが存在した。この場合は広幅側にアダプター(板)を付け、幅を狭幅側にあわせる処置がとられる。逆に運転台撤去車と未撤去車が連結すればどちらも同じ幅となるため、問題はなかった。後述の「完璧な運転台撤去車」とケースが重なる形式もあり、東武7800系電車、阪急920系電車などに見られる。
撤去された運転台が中途半端であることは前述したが、跡が残らないほど完全な運転台撤去車も存在する。わずかな違いとしては微妙に寸法や形状が異なるだけで、あらかじめその車両が運転台撤去車であると知っておかねば気づかない程である。国鉄モハ30形→モハ10形、国鉄モハ63形→モハ72形、京成3000形・3050形・3100形(いずれも初代)、東武8000系電車、京王2700系・2010系、小田急4000形電車 (初代)の一部、阪神3601・3701形電車→7601・7701形、大阪市交通局10系電車の1716号車と1717号車、阪急5100系電車5128Fの5779-5770号車など。
運転台は必ずしも全て撤去する必要はなく、車庫や工場での入換のために運転台機能は残すが、営業線上で必要な機能のみを撤去するケースが存在する。厳密には運転台撤去車ではないが、運転台から不要な機能を撤去するという概念は部分的に共通している。
都市部で運用されていた車両が支線やローカル私鉄に転出すると、必要とされる編成両数が一気に短くなり、先頭車がより多く必要となる場合がある。この時に当初から中間車として製造された車両に運転台を増設するより、運転台撤去車を利用して運転台を復活させる方が容易であるため、こうした改造を施された車両も一部に存在する。主な例としては以下の車両が挙げられる。
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