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北朝鮮の市 ウィキペディアから
羅先特別市(ラソンとくべつし)は朝鮮民主主義人民共和国北東部に位置する特別市。
略称: 라선,ラソン | |
位置 | |
---|---|
各種表記 | |
チョソングル: | 라선특별시 |
漢字: | 羅先特別市 |
日本語読み仮名: | らせんとくべつし |
片仮名転写: | ラソントゥクピョルシ |
ローマ字転写 (RR): | Raseon Teukbyeolsi |
ローマ字転写 (MR): | Rasŏn T'ŭkpyŏlsi |
統計(2008年) | |
面積: | 746 km2 |
総人口: | 196,954 人 |
人口密度: | 264 人/km2 |
行政 | |
国: | 朝鮮民主主義人民共和国 |
下位行政区画: | 20洞、12里 |
ISO 3166-2: | KP-13 |
羅先はかつて羅津・先鋒(旧称・雄基)と並称されていた2つの地域からなる。海外資本に開かれた特区「羅先経済貿易地帯」を擁する。
日本海に面する港湾都市。市域の東北では豆満江が日本海に注ぐ豆満江デルタ地帯となっている。豆満江(中国名:図們江)の対岸は中華人民共和国吉林省延辺朝鮮族自治州東端の琿春市、ロシア連邦沿海地方のハサンである。
羅津港は昔から天然の良港であり、毎年夏には多数の中国人が観光に訪れる。沿岸一帯の西藩浦、東藩浦、晩浦などのラグーン群は渡り鳥の保護区として2018年にラムサール条約登録地となった[1][2]。
雄基地区には新石器時代の貝塚があり、日本統治時代に調査が行われている。古代には高句麗・渤海国の地であった。女真族との抗争の末、15世紀前半に朝鮮王朝の支配下に入った。
日本統治時代、羅津(ラジン、らしん/라진)と雄基(ウンギ、ゆうき/웅기)という2つの町があり、もともと咸鏡北道慶興郡に属していた。これらの町は、日本からの船も入り工業都市ともなっていた清津市の近くにあたり、羅津は漁村、雄基は国境を守る部隊の駐屯するそこそこの大きさの港町だった。
1932年に満州国が建国されると、この地は日満間の連絡ルートとして脚光を浴びることとなる。当時、日満間のルートは以下の1,2が使われていたが、3が想定されるようになった。
咸鏡北道北部は東部満州には一番の近道であるほか、沿海州のソ連軍(赤軍)からの防衛など軍事作戦のために重要な地域であると見なされ、開発が進められた。満洲に最も近く良港である羅津には、海陸を連絡する大規模港湾・羅津港が新たに建設され、日本式の地名も設置された。朝鮮総督府鉄道路線の満鉄への委託や、私鉄の買収により、満州(延吉や牡丹江)へ連絡する建設中の鉄道と既存の鉄道が結びつけられた。境港・敦賀・新潟などから清津~羅津~雄基の定期船が運航され、ここから多くの日本人が満州東部へ渡った。
1945年8月8日、ソ連軍の対日参戦とともに羅津・雄基は空襲を受け、12日にソ連軍が最初に上陸した。北朝鮮の「正史」ではソ連軍ではなく、8月12日に金日成率いる朝鮮人民革命軍が羅津や雄基などに上陸したことになっている。朝鮮民主主義人民共和国の成立後、北辺に位置するこの地域はソ連や中国との貿易でややにぎわう程度だった。1980年代はじめに、朝鮮人民革命軍の最初の上陸地であることを記念して、雄基は先鋒(ソンボン)と改名された。
1980年代末から、市場経済化の進むロシア極東(沿海地方)、同じく市場経済化が進むが港湾のない中国東北部(港湾都市の大連などがある遼寧省は除く)、そして北朝鮮の3ヶ国が接する場所として注目を集め、この3ヶ国が共有する豆満江デルタとその周辺を北東アジアの玄関となる国際貿易地帯にする計画が浮上した。
1990年代はじめ、中国の提案を受け[3][4]、国連開発計画の主導で進められる豆満江地域開発計画の一環として「羅津・先鋒経済貿易地帯」が発足して羅津 - 先鋒直轄市が咸鏡北道から独立し、政治的・思想的に問題のないエリート階層がこの地に転入して例外的に市場経済化の実験が行われていた。2000年8月に羅津-先鋒の地名が「羅先」に改称され、現在に至る。
経済特区という特殊な地域であるため、行政的な位置づけの変化が激しい。2005年1月、再び咸鏡北道に編入され、特級市となったと報道されたが[5]、2006年9月には中央政府の直轄市として統治されていると韓国側では観測している[6]。2010年1月4日の最高人民会議常任委員会の政令により特別市に位置づけられた[7]。
2011年、中国軍が羅先に進駐していることが報道された[8][9]が、3日後に公式に否定された[10]。
この節の出典[11]
1990年7月に中国長春市で開かれた国際会議での吉林省副秘書長・丁士晟の提案を受け[3][4]、1991年10月24日、国連開発計画は、この地域(琿春・ポシェト・羅津)の開発に300億ドルを投資し、20年間にわたってこの河川の下流に「第二の香港、シンガポール、ロッテルダム」を建設するという豆満江(図們江)地域開発計画を発表し、この地域ににわかに注目が集まった。
1991年10月5日に金日成は生涯最後の外遊で中国を訪れた際に鄧小平から経済特区による改革開放を迫られ[13]、1991年12月28日に北朝鮮政務院の決定により、621km2の「羅津・先鋒自由経済貿易地帯」(FETZ)が設定される。1993年3月には「羅津・先鋒自由経済貿易区開発計画」によって地域が拡張される。1998年には地帯の名称が「羅津・先鋒経済貿易地帯」となる。
計画は1993年~94年の北朝鮮核問題や96年の飢饉など不安定な政治要因により曲折を経てきた。始動直後の1991~92年ごろには、投資額が10~20億ドルになるとの見方もあったが、実際の海外からの投資総額は、2000年までの時点で3500万ドルにすぎない。この地区の舗装された道路は一車線で、中国と結ぶ橋は、日本統治時代のまま手つかずで残されていた。経済特区は20年近く休止状態におかれ、国内市場向けの中国製品を買いつけに北朝鮮の人々が集まるだけの巨大市場と化した。北朝鮮国民がこの地区を訪れるには特別な許可証が必要である。一時は裕福な中国人向けのカジノが運営されたが、横領した公金を役人が賭博につぎ込んだ事件が発覚して、中国側の要請により閉鎖された。2010年ごろになると、ロシア、中国の企業が港湾施設を使うようになった。ロシアは極東の主要港であるウラジオストクの負担軽減という点で、羅津港に大きな利用価値を認めている。中国にとっては、何千キロも南にある中国内の港へ遅い陸上交通機関で製品を運ばなければならなかった中朝国境地帯の企業にとっては、北朝鮮の港から製品を輸出できるなら、そのほうが安上がりである[14]。
金日成は14回、金正日総書記は11回も現地視察をした。羅津港は波が静かで水深があり、冬でも凍結しない。羅先市の面積は890平方キロメートル、そのうち経済特区は470平方キロメートルである。2015年時点で、約150社の外国企業と約30社の合弁・合作企業がある。進出企業は、中国がもっとも多く、ロシア・米国・日本・香港・オーストラリア・イタリアなどの国もあった。日本は7社で、ホテル業・食堂とサービス業・建材業などに参加していた。羅先市内の道路標識には中国語も表記されている。羅津港と羅先市北端の元汀(ウォンジョン)までの約50キロメートルを結ぶ道路は中国が建設し、そこから中国の琿春へとつながっている[15]。
現在は中華人民共和国へ60年間に渡る租借権が付与されているとの情報もある[16]。中華人民共和国が羅津港の使用権を北朝鮮より獲得している[17]。中国は国際貿易港としての利用できるよう、物流ターミナル開発を進めていた。また2010年の報道では、北朝鮮はロシアにも50年の使用権を付与したとされる[18]。
2010年12月、中国による羅津港の利用が開始された。吉林省延辺朝鮮族自治州琿春市で採掘した石炭を、羅津港から日本海を経由して上海への輸送が初めてのものとなった[19]。以前は陸路を経て渤海沿岸に出てから黄海を経るルートしかなく、高い輸送コストがネックとなっていた[19]。
2011年、中国軍が進駐したとの報道が一部でなされた[9][8]。
2012年8月、中国企業のコンソーシアムが羅津港の第1埠頭から第3埠頭まで全て開発して50年間租借して新たに第4・第5・第6埠頭の3基を建設するという羅先経済貿易地帯の事実上の接収を北朝鮮と合意し[20][21]、中国商務部部長の陳徳銘と朝鮮労働党行政部長の張成沢がこの計画を担当した[22]。
2013年12月12日、北朝鮮の金正恩政権は張成沢を死刑に処した。朝鮮中央通信によると、朝鮮民主主義人民共和国国家安全保衛部の特別軍事裁判では張の罪状の一つとして「羅先経済貿易地帯の土地を50年の期限で外国に売ってしまう売国行為」を挙げ、羅先特別市の租借は張の意向であり、なおかつ「売国」であるとの認識を示した[23]。
羅津から北東方14kmの地点にある。
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