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巨視的に同じ条件下にある、力学的に同じ系を無数に集めた仮想的な集団 ウィキペディアから
統計集団(とうけいしゅうだん、英: statistical ensemble)とは、統計力学における基本的な概念の一つで、巨視的に同じ条件下にある力学的に同じ系を無数に集めた仮想的な集団である[1]。統計的(とうけいてき)アンサンブル、確率集団(かくりつしゅうだん)、ギブズ集団、あるいは単にアンサンブルとも呼ばれる。 巨視的には同じ条件下にあっても、力学系が取り得る力学的な状態は一つに定まらない。無数に集めた系の内である状態を取っている系の割合を、系がその状態を取る確率であると考える。この確率で重み付けした加重平均をアンサンブル平均と呼ぶ。
統計力学 | ||||||||||||
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熱力学 · 気体分子運動論 | ||||||||||||
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ボルツマンらによる気体分子運動論の立場では、理想気体を多数の分子の集まりであると考える。多数の分子が衝突を繰り返して、個々の分子の力学状態が確率的に現れるものと見なされる(分子的混沌)。当時はまだ分子の存在が確証されていなかったため批判を受けた。 これに対して1878年にウィラード・ギブズによって導入された統計集団の立場では、力学系全体の力学状態が確率的に現れるものと見なされる[1]。この立場では必ずしも分子の存在を仮定する必要がない。今日では統計集団の考え方が統計力学の主流となった。 気体分子運動論の立場では N-粒子系の状態は μ-空間に分布する N 個の点の集まりとして表される。一方、統計集団の立場では同じ N-粒子系の状態がΓ-空間の一つの点として表される。
ある熱力学的性質を示す系(巨視的には1つの状態にある)は、微視的に見る(それを構成する分子などに着目する)と非常に沢山の状態を含む。すべての微視的状態が同じ確率で出てくることを等確率の原理と呼び、これが平衡状態の統計力学の基礎となる。
巨視的状態の中にどのような微視的状態が含まれるかを具体的に示したのが分配関数(状態和ともいう)である。これからアンサンブル全体の平均として、巨視的な熱力学量が導かれる。
古典的に記述される力学系の状態は位相空間(Γ-空間)上の点として表される[2]。したがって古典系のアンサンブルは Γ-空間に分布する点の集まりとして表される[2]。その統計的性質は Γ-空間上における確率測度から導かれる。Γ-空間の領域Aが領域Bより大きな測度をもつならば、アンサンブルからランダムに選んだ系は、微視的には領域Bよりも領域Aに属している可能性が高い。力学系のミクロな性質を記述するハミルトン関数やその他の物理量と、アンサンブルに課したマクロな条件により確率測度の形が決められる。確率測度の正規化因子はアンサンブルの分配関数と呼ばれる。物理学的には分配関数によってその系の熱力学的性質が導かれる。測度が時間に依らないならば、アンサンブルは静的であるといわれる。
巨視的な制約条件が異なれば、アンサンブルも異なり、それに特定の統計的性質がある。次のようなものが代表的である:
これらのアンサンブルの分配関数はそれぞれ次のように表され、これにより適切な確率測度が指定される:
分子の状態に相関がない分子的混沌状態を仮定すれば、十分長い時間スケールに対して、系の時間発展に伴って可能な総ての微視的状態をとると考えられ、これはエルゴード仮説と呼ばれる[3]。エルゴード仮設により、同一の力学系を無数に集めたアンサンブルは、1つの力学系を繰り返し観測することと同等であると考えることができる[3][4]。
エルゴード仮説が等確率の原理を根拠付けると考えられており、統計力学を基礎付けるとされてきたが[3]、今日では統計力学の基礎付けとしては的を外しているという主張も専門家によってなされている[5][6][7]。