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アカデミー賞 ウィキペディアから
第96回アカデミー賞は、映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が主催する賞であり、2023年の映画を対象とし、2024年3月10日にカリフォルニア州ロサンゼルス市ハリウッドのドルビー・シアターで授賞式が行われた[1]。コメディ俳優のジミー・キンメルが第89回、第90回、第95回に続き4度目の授賞式司会を務める[2][3]。この回からダイバーシティとインクルージョンを向上させるためのルールが導入される[4]。
ノミネートは2024年1月23日に発表され、『オッペンハイマー』が最多の13部門、『哀れなるものたち』が11部門、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が10部門とつづいた[5][6][7][8][9]。
『オッペンハイマー』は作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞を含む最多7部門を受賞し[10][11]、その他、『哀れなるものたち』が主演女優賞を含む4部門、『関心領域』が国際長編映画賞を含む2部門を受賞した。また、日本からは『君たちはどう生きるか』が長編アニメーション映画賞[12][13]、『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞をそれぞれ受賞した[14][15][16]。
日付 | イベント |
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2024年1月23日 | 候補発表 |
2024年2月12日 | ノミニーズ・ランチョン |
2024年2月22日 | 最終投票開始 |
2024年2月12日 | アカデミー科学技術賞 授賞式 |
2024年2月27日 | 最終投票終了 |
2024年3月10日 | 第96回アカデミー賞授賞式 |
第96回アカデミー賞のノミネートは2024年1月23日5時30分PST(13時30分UTC、22時30分JST)にサミュエル・ゴールドウィン・シアターにてザジー・ビーツとジャック・クエイドが発表した[1][8][9][17][18]。
社会現象となった「バーベンハイマー」は合計で21部門(『バービー』は8部門(うち2部門は歌曲賞のダブルノミネート)、『オッペンハイマー』は13部門。そのうち、2作ともにノミネートされたのは6部門)にノミネートし、8部門(『バービー』が歌曲賞、『オッペンハイマー』が7部門)受賞した[19]。
作品賞では、史上初めて女性監督による作品が同時に3つノミネートされた(ジュスティーヌ・トリエ監督の『落下の解剖学』、グレタ・ガーウィグ監督の『バービー』[注釈 1]、セリーヌ・ソン監督の『パスト ライブス/再会』)。女性監督による作品が作品賞にノミネートされるのは5年連続のことである[21]。また、史上初めて外国語作品が同時に2つ作品賞にノミネートされた(フランス語の『落下の解剖学』とドイツ語の『関心領域』[注釈 2])[22]。
演技部門ではLGBTQ+のキャラクターを演じた俳優が7人(アネット・ベニング、スターリング・K・ブラウン、ブラッドリー・クーパー、コールマン・ドミンゴ、ジョディ・フォスター、ザンドラ・ヒュラー、エマ・ストーン)ノミネートされ、過去最多の数を記録した。7人のうち、ドミンゴとフォスターは自身がLGBTQ+であることを公言しており、またリリー・グラッドストーンはノンバイナリー、あるいはトゥー・スピリットの考えを持っているといわれる[23][24]。
『マエストロ: その音楽と愛と』の製作に携わったスティーヴン・スピルバーグは自身の保持している作品賞の歴代最多ノミネート数の記録を13回に更新した[25]。また、『アリー/ スター誕生』に続いて同作で脚本、監督、主演を務めたクーパーは自身の監督作で2度以上の主演男優賞へのノミネートを果たした4人目の男優となった[注釈 3][27]。
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』で主演女優賞にノミネートされたグラッドストーンはアカデミー賞にノミネートされた初のネイティブ・アメリカンの女優となった[28]。同作で監督賞にノミネートされたマーティン・スコセッシはスピルバーグが保持していた9回の記録を抜いて、現在存命の人物では歴代最多の監督賞ノミネート数である10回を記録した[注釈 4][29]。また、スコセッシは歴代最高齢となる81歳での監督賞ノミネートを果たした[注釈 5][30]。同作で助演男優賞にノミネートされたロバート・デ・ニーロは、アカデミー賞への初ノミネートから直近のノミネートまでの期間が歴代で最長の49年を記録した[注釈 6][31]。同作で編集賞にノミネートされたセルマ・スクーンメイカーは同部門の歴代最多ノミネート数である9回を記録した[32]。
『哀れなるものたち』で制作、主演を務めたストーンは『ノマドランド』のフランシス・マクドーマンドに続いて、同じ作品で作品賞と主演女優賞にノミネートされた2人目の女優となった[33]。
『カラーパープル』で助演女優賞にノミネートされたダニエル・ブルックスは1985年の映画版に出演したオプラ・ウィンフリーに続き、同作でソフィア・ジョンソン役を演じてノミネートされた2人目の女優となった[34]。
今回、エミリー・ブラント、ブルックス、ブラウン、ドミンゴ、アメリカ・フェレーラ、グラッドストーン、ヒュラー、キリアン・マーフィー、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、ジェフリー・ライトらは初の演技部門、ジョナサン・グレイザーとトリエは初の監督賞と脚本部門へのノミネートを果たした[35][36][37]。グレイザーは作品賞、脚色賞、国際長編映画賞の3部門にノミネートされた初のイギリス人となり、トリエは監督賞にノミネートされた8人目の女性となった[38][39]。
サミー・バーチ、アルチュール・アラリ、デヴィッド・ヘミングソン、コード・ジェファーソン、アレックス・メチャニク、ソンらは初の脚本部門へのノミネートを果たした[40][41][42][43]。ソンは脚本賞にノミネートされた初のアジア人女性となった[23]。
作品賞には『バービー』でマーゴット・ロビーとトム・アカーリーが、『オッペンハイマー』でクリストファー・ノーランとエマ・トーマスが、脚色賞には『バービー』でグレタ・ガーウィグとノア・バームバックが、脚本賞には『落下の解剖学』でトリエとアラリが、『メイ・ディセンバー ゆれる真実』でバーチとメチャニクが、短編アニメ映画賞には『Ninety-Five Senses』でジャレッド・ヘスとジェルーシャ・ヘスがそれぞれ夫婦でノミネートされた[40]。
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』で作曲賞にノミネートされたジョン・ウィリアムズは自身の保持している、アカデミー賞における歴代最高齢でのノミネートの記録を91歳に、現在存命の人物では歴代最多のノミネート数の記録を54回に更新した[注釈 7][44]。
録音賞と視覚効果賞にノミネートされた『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』と視覚効果賞にノミネートされた『ゴジラ-1.0』はそれぞれ「ミッション:インポッシブル」シリーズと「ゴジラ」シリーズで初めてアカデミー賞にノミネートされた作品となり、『ゴジラ-1.0』は受賞を果たした[45][46]。また、『ゴジラ-1.0』は日本映画として初の視覚効果賞のノミネート・受賞となった[47][48]。日本映画・アジア映画が受賞した実績はないほか、山崎貴は監督として『2001年宇宙の旅』のスタンリー・キューブリック以来となる視覚効果賞を受賞する歴史上二人目の快挙となった[49] 。また、『ゴジラ-1.0』以外の全4作品は製作にジョージ・ルーカスが立ち上げたインダストリアル・ライト&マジック(ILM)が関わっているため、ILMが関与していない同作品が受賞するかでも注目された[50][51]。
ノミネートの発表後、『バービー』のグレタ・ガーウィグとマーゴット・ロビーがそれぞれ監督賞と主演女優賞にノミネートされなかったことで、多くの批評家やジャーナリストから批判の声が上がり、同作のストーリーと比較する意見も挙がった[52][53][54]。同作で助演男優賞と自身が歌った楽曲「I'm Just Ken」が歌曲賞にノミネートされたライアン・ゴズリングは「ケンはバービーなしでは存在せず、『バービー』はグレタ・ガーウィグとマーゴット・ロビーなしでは存在しません。二人は、新たな歴史を作り、世界的に愛されたこの映画の責任者なのです」「二人の非凡な才能と根性がなければ、この映画の誰も評価されることはかなわなかったでしょう。二人がそれぞれの部門でノミネートされなかったことは、『がっかりしている』という言葉でも控えめといえるでしょう」という声明を発表した[55]。
『君たちはどう生きるか』の宮崎駿監督は長編アニメ賞を2度受賞した初のアジア人監督であり、83歳で長編アニメ賞を受賞した最高齢の監督となった[56]。
『バービー』で歌曲賞を受賞したビリー・アイリッシュとフィニアス・オコネルは第94回以来の受賞となり、史上最年少(それぞれ22歳と26歳)で2度のオスカー受賞者となった[57]。
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は10部門にノミネートされながらも無冠に終わり、『ギャング・オブ・ニューヨーク』、『アイリッシュマン』につづき、スコセッシにとっては10部門にノミネートされながら無冠で終わった3作目の作品となった[58]。
受賞者は各項目最上段に太字でダブルダガー () 付きのものである。
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第87回と第88回にノミネートされた演技部門の対象者が全員白人だったことが物議を醸し、識者から「白すぎるオスカー」と批判され、一部の俳優も授賞式の出席をボイコットしたことなどを受けて、今回より作品賞の多様性ルールが義務化された[59][60]。2020年6月、アカデミーはイニシアチブ「Academy Aperture 2025」のもと、同部門で競うために映画が満たすべき「表現とインクルージョンの基準」を制定した[61][62]。第94回と第95回(2021年と2022年に公開された作品)では映画製作者はデータとしてのみ「アカデミー・インクルージョン・スタンダード」という書類の提出を求められた[63]。4つの一般的な基準(「スクリーンにおける描写、テーマとストーリー」、「製作チームとリーダーシップ」、「業界へのアクセスと雇用機会」、「マーケティング/パブリシティ」)があり、作品が作品賞にノミネートされるにはその基準のうち2つを満たす必要がある[61]。
2020年にVoxのアリッサ・ウィルキンソンは基準について「より包括的な表現を促進する基準とより包括的な雇用を促進する基準と基本的に2つの大きなバケツに分かれている。」と説明した[63]。 この基準は過小評価されている人種および民族、女性、LGBTQ+の人々、および認知障害または身体障害を持つ人々に雇用の機会を増やすことを目的としている[61]。
ノミネート発表時、作品賞にノミネートされた作品は北米の興行収入は合計で10億9,000万ドルを稼いだ[64]。『バービー』はノミネート作品の中で最も高い6億3,600万ドル、『オッペンハイマー』は3億2,700万ドルを稼ぎ、バーベンハイマー現象を構成するこの2作品がノミネート前に作品賞にノミネートされた作品の累積興行収入の88%を占めていた[65]。また、『オッペンハイマー』は『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』につづく最も高い興行収入を記録した作品賞受賞作となり、全世界で10億ドル近くを稼いだ大ヒット作が作品賞を受賞するのは20年ぶりであった[66]。なお、第85回アカデミー賞における『アルゴ』以来10年ぶりに国内興行収入が1億ドルを超えた作品となった[67]。
アカデミーは2023年6月26日、第14回ガヴァナーズ賞授賞式で授与される名誉賞などを発表した[68]。なお、授賞式はWGAとSAG-AFTRAのダブルストライキの影響で2023年11月18日から2024年1月9日に延期された[69]。
2023年10月17日、ラージ・カプールとケイティ・マランがエグゼクティブ・プロデューサー、ヘイミッシュ・ハミルトンがディレクターを務めることが発表された。マランはハミルトンの制作会社ドーン・アンド・ダステッドの重役である[70]。11月15日、ジミー・キンメルが2年連続、4度目となる司会を務めることが発表され、彼の妻であるモリー・マクナーニーが授賞式のエグゼクティブ・プロデューサーとして復帰することが発表された[2]。
プレショーは3年連続でヴァネッサ・ハジェンズが司会を務め、共同で新たにジュリアン・ハフが加わった[71]。後述するスケジュールの変更により、プレショーは30分に短縮された[72]。
プレゼンターは2024年2月26日から順次発表された[73][74][75]。パフォーマーは2024年2月28日に発表されたが[76]、ライアン・ゴズリングが『バービー』の「I'm Just Ken」を歌唱することはその2日前にVarietyによって報じられていた[77]。プレゼンターの第一陣が発表された後、The Hollywood Reporterはアカデミーが第81回の授賞式で採用していた主要部門の複数名によるプレゼンター形式を復活させることを報じた[78][79]。
授賞式ではジョン・ムレイニーが『フィールド・オブ・ドリームス』のあらすじを要約しながら音響賞をプレゼン、ジョン・シナはほとんど裸の状態で衣装デザイン賞のプレゼンを行い、衣装の重要性を語った。なお、シナの登場前に司会のキンメルは第46回の授賞式でのストリーキング事件から50周年であることに触れていた[80][81][82][83][84]。
また、『落下の解剖学』に出演している犬のメッシも式典に出席し、観客席に自分の席を用意した。ハリウッド・レポーターによれば、ノミネート作品を持つ複数の会社がメッシがノミネーズ・ランチョンに出席し、映画の投票を有利に進めたことについて映画芸術科学アカデミーに苦情を申し立てたという[85]。司会者のジミー・キンメルはメッシがつくり物の脚を使ってあたかも拍手をしているかのような演出をしている様子を収めたビデオを公開し、式典では現在進行中のマット・デイモンとキンメルの確執ネタの一環としてハリウッド・ウォーク・オブ・フェームのマット・デイモンの星にメッシが放尿するシーンも披露された[86][87]。
なお、授賞式には長編アニメ映画賞を受賞した宮崎駿と鈴木敏夫、短編映画賞を受賞したウェス・アンダーソンは式典を欠席した[88][89]。
以下の人々がプレゼンターを行い、パフォーマンスを披露した[90]。
名前 | 役割 |
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デヴィッド・アラン・グリア | アナウンス担当 |
ジェイミー・リー・カーティス レジーナ・キング リタ・モレノ ルピタ・ニョンゴ メアリー・スティーンバージェン | 助演女優賞のプレゼンター |
クリス・ヘムズワース アニャ・テイラー=ジョイ | 短編アニメ映画賞と長編アニメ映画賞のプレゼンター |
メリッサ・マッカーシー オクタヴィア・スペンサー | 脚本賞と脚色賞のプレゼンター |
マイケル・キートン キャサリン・オハラ | メイクアップ&ヘアスタイリング賞と美術賞のプレゼンター |
ジョン・シナ | 衣装デザイン賞のプレゼンター |
バッド・バニー ドウェイン・ジョンソン | 国際長編映画賞のプレゼンター |
エミリー・ブラント ライアン・ゴズリング | 映画史に残るスタントマンへのトリビュート企画のプレゼンター |
マハーシャラ・アリ キー・ホイ・クァン ティム・ロビンス サム・ロックウェル クリストフ・ヴァルツ | 助演男優賞のプレゼンター |
ダニー・デヴィート アーノルド・シュワルツェネッガー | 視覚効果賞と編集賞のプレゼンター |
アメリカ・フェレーラ ケイト・マッキノン | 短編ドキュメンタリー映画賞と長編ドキュメンタリー映画賞のプレゼンター |
ゼンデイヤ | 撮影賞のプレゼンター |
イッサ・レイ ラミー・ユセフ | 短編映画賞のプレゼンター |
ジョン・ムレイニー | 音響賞のプレゼンター |
シンシア・エリヴォ アリアナ・グランデ | 作曲賞と歌曲賞のプレゼンター |
ニコラス・ケイジ ブレンダン・フレイザー ベン・キングスレー マシュー・マコノヒー フォレスト・ウィテカー | 主演男優賞のプレゼンター |
スティーヴン・スピルバーグ | 監督賞のプレゼンター |
サリー・フィールド ジェシカ・ラング ジェニファー・ローレンス シャーリーズ・セロン ミシェル・ヨー | 主演女優賞のプレゼンター |
アル・パチーノ | 作品賞のプレゼンター |
名前 | 役割 | 内容 |
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リッキー・マイナー | 音楽監督 | オーケストラ |
ビリー・アイリッシュ フィニアス・オコネル | パフォーマー | 「What Was I Made For?」 - 『バービー』 |
スコット・ジョージ オセージ族のシンガーとダンサー | パフォーマー | 「Wahzhazhe (A Song for My People)」 - 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』 |
ジョン・バティステ | パフォーマー | 「It Never Went Away」 - 『ジョン・バティステ: アメリカン・シンフォニー』 |
ベッキー・G | パフォーマー | 「The Fire Inside」 - 『フレーミングホット!チートス物語』 |
ライアン・ゴズリング マーク・ロンソン シム・リウ スコット・エヴァンス チュティ・ガトゥ キングズリー・ベン=アディル スラッシュ ウルフギャング・ヴァン・ヘイレン | パフォーマー | 「I'm Just Ken」 - 『バービー』 |
アンドレア・ボチェッリ マッテオ・ボチェッリ | パフォーマー | イン・メモリアムにて「Time To Say Goodbye」の歌唱 |
追悼企画「イン・メモリアム」では以下の人々が紹介された[91]。
企画の最後には劇場のメインスクリーンにケネス・アンガー、ノーマ・バーズマン、レア・ガルシア、ジェンヌ・カサロット、ジェイミー・クリストファー、テレンス・デイヴィス、カール・デイヴィス、アーリーン・ドノヴァン、ピーター・ワーナー、ダニエル・ゴールドバーグ、エリシャ・バーンバウム、ロス・マクドネル、ナンシー・グリーン=キーズ、シェッキー・グリーン、マシュー・A・スウィーニー、ゲイリー・O・マーティン、ウィリアム・F・マシューズ、ジョン・ハムリン、モー・ヘンリー、バリー・ハンフリーズ、ロン・シーファス・ジョーンズ、ロバート・クレイン、ダニエル・ラングロワ、ノーマン・リア、マイケル・ラーナー、ランス・レディック、ジェス・サーチ、トム・スモザーズ、スザンヌ・ソマーズ、デヴィッド・マッカラム、コーマック・マッカーシー、エルンスト・ゴルトシュミット、ノーマン・スタインバーグ、フランシス・スターンハーゲン、レイ・スティーヴンソン、ドン・マレー、シネイド・オコナー、コンラッド・パルミサーノ、シリア・ファン・ダイク、スティーヴン・ワイズバーグ、フレデリック・フォレスト、ジョージ・マハリス、パオロ・タヴィアーニ、ケヴィン・トゥーレン、パクストン・ホワイトヘッド、トリート・ウィリアムズ、イアン・ウィングローブ、バート・ヤングの名前が映し出された[91][92]。
式典は進行中のイスラエルとハマスの戦争によって、いくつかの点で影響を受けた。式典の開始は会場の外で行われた抗議デモによって劇場に通じる主要な交通路を封鎖して出席者の到着が遅れたため、予定されていた放送から6分遅れた[93][94][95]。出席者のうち、カウテール・ベン・ハニア、フィニアス・オコネル、ビリー・アイリッシュ、マーク・ラファロ、エイヴァ・デュヴァーネイ、ラミー・ユセフ、クアナ・チェイズングホース、マハーシャラ・アリらがガザでの停戦を呼びかけるArtists4Ceasefireの一員として赤いバッジを着用した[96][97][98][99][100]。
『関心領域』で国際長編映画賞を受賞したジョナサン・グレイザー監督は国際長編映画賞の受賞スピーチでイスラエルによるガザ攻撃の終結を訴え、大きな賞賛と批判を浴びた[101][102]。グレイザーのスピーチの一文で彼と同僚のプロデューサーであるジェームス・ウィルソンは「ユダヤ人であることを否定し、ホロコーストが占領によって乗っ取られたことを否定する男としてここに立っている」と語ったが、ある情報源は引用の語尾を「ユダヤ人であることを否定する」の後に置き、グレイザーがユダヤ人であることを否定していると広く誤解され、引用ミスされた[103][104][105]。多くの親イスラエル派の人々はこの発言を不承認とし[106][107]、式典の数日後にはイーライ・ロスやエイミー・パスカル、ジェニファー・ジェイソン・リーら映画業界の1,000人以上のユダヤ系製作陣がグレイザーのスピーチを非難し、イスラエル政府の行動を擁護する公開書簡に署名した[108][109][110]。また、脚本家のトニー・クシュナーや映画の舞台であり、その一部が撮影されたアウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館の館長などはグレイザーの発言を擁護する見解を示した[111][112]。
また、長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した『実録 マリウポリの20日間』のムスチスラフ・チェルノフ監督は受賞スピーチにて「ウクライナ史上初のアカデミー賞だ」と述べたうえで「このステージに立つ監督として初めて、『この映画を作ることがなければと願う』と語る」と語り、作品の題材でもあり、未だつづくウクライナ侵攻について言及した[113]。
助演男優賞ではプレゼンターとして前年のアカデミー賞にて、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で受賞したキー・ホイ・クァンが登場。『オッペンハイマー』に出演したロバート・ダウニー・ジュニアが受賞し、ステージに上がったが、クァンと目を合わせることがないまま、クァンからオスカー像を受け取り、同じくプレゼンターとして登場していたティム・ロビンスと握手した[114]。
また、主演女優賞においても、同じく前年のアカデミー賞にて、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で受賞したミシェル・ヨーがプレゼンターとして登場し、『哀れなるものたち』に出演したエマ・ストーンが受賞したが、ヨーからオスカー像をしっかりと受け取らず、最終的には同じくプレゼンターとして登場していたジェニファー・ローレンスからオスカー像を受け取る形になった[115]。
このため、ダウニー・ジュニアやストーンの行動は「アジア人を差別しているのではないか」との批判が上がり、SNSで炎上した[116][117]。これを受けて、ヨーは自身のInstagramにおいて、「私はあなた(ストーン)を困惑させちゃったけど、私はあなたの親友のジェニファーとあなたにオスカーを渡す素晴らしい瞬間を共有したかったです」とのコメントを述べる事態になった[118]。
作品賞ではプレゼンターとしてアル・パチーノが登場した。例年では同賞にノミネートされている作品の紹介をした上で受賞作品を発表することになっているが、今年はパチーノが登壇し、簡単なスピーチを述べた後、「私の目に映っているのは『オッペンハイマー』です」とノミネート作品の紹介をしないまま、突然受賞作品の発表を行った[119]。このため、会場内での混乱を招き[注釈 8]、パチーノの行為に賛否が集まる事態となった[120][121]。
この件について、パチーノは声明を発表し、「この演出を行ったのはアカデミー賞制作者による意向であり、自身の意図ではない」とコメント[119][121][122]。授賞式の演出を担当したモリー・マクネアニー[注釈 9]もバラエティの取材に対して、既に各部門の受賞結果発表の合間に作品賞にノミネートされている作品が1作ずつ紹介されていたことから、授賞式の時間短縮を図る目的で「パチーノにノミネート作品を読み上げないよう指示した」と述べ、謝罪した[119][123]。
ABCは例年午後5時から授賞式を放送開始していたが、中継終了時刻が午後11時(東海岸時間)を超えてしまうことが度々あったことから、この年は1時間繰り上げて午後4時(PDT、EDT午後7時)から放送[72]。授賞式後は『アボット・エレメンタリー』を放送するためプレショーは30分に短縮した[124]。
2024年3月11日、ニールセンは本中継の視聴者数を発表。複数の大ヒット作がノミネートしたことや前述の開始時間繰り上げが奏功し、視聴者数は前回から4%上昇し、1,950万人だった[72]。
第96回米国アカデミー賞において、宮崎駿監督作品「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞を、山崎貴監督作品「ゴジラ-1.0」が視覚効果賞を受賞しました。受賞を心からお慶(よろこ)び申し上げますとともに、関係者の皆様のこれまでの御努力に深く敬意を表します。
宮崎監督の持つ自由な想像力や鋭い洞察力、山崎監督の持つ卓越した技術力や表現力に基づいて創作されたそれぞれの作品は、国境や言語を超え多くの人々の共感を呼び、驚きや感動をもたらしたものと思います。
映画を始めとする我が国のアートやコンテンツは、世界中の人々に親しまれ高く評価されてきました。
政府としては、魅力ある日本文化の世界への発信とクリエイターの皆様の創造活動の支援を一層強化してまいります。 — 令和6年3月11日、内閣総理大臣 岸田 文雄
このたび、第96回米国アカデミー賞において、宮崎駿監督作品「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞、山崎貴監督作品「ゴジラ-1.0」が視覚効果賞を受賞しました。日本映画の米国アカデミー賞の同時受賞は、15年ぶり2度目の快挙であり、関係者の皆様に心からお祝い申し上げます。
映画をはじめとする我が国のメディア芸術は、海外でも高く評価され、国際文化交流や海外への文化発信の促進にも大きく貢献するとともに、我が国の成長力の強化にも資するものです。
文部科学省では、メディア芸術の振興のために、映画製作への支援、クリエイターの育成支援、海外映画祭への出品等支援などに取り組んでまいりました。
今後とも、これらの施策の充実を図り、我が国の文化芸術の国際的なプレゼンスの向上、魅力ある日本文化の創造と国内外への発信に向け、日本のソフトパワーの源となる文化芸術活動への支援の充実に努めてまいります。 — 令和6年3月11日、文部科学大臣 盛山 正仁
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